別れる決心
2022年 監督:パク・チャヌク
韓国の岩山で男性が落下する事件が発生。
切れ者の刑事ヘジュンは、男性の中国人妻ソレを容疑者として調べるうち、彼女に惹かれていってしまう。
そしてソレもまたヘジュンへと惹かれていき…。
https://www.youtube.com/watch?v=as1an3mvn4E
刑事が捜査するうち、容疑者に惹かれていく。。。といった構造の話は過去にいくつか存在する。
ディアオ・イーナン「薄氷の殺人」
イドリス・エルバが主演する刑事ジョン・ルーサーにおいてのルーサーとサイコパス犯罪者アリスの関係性も似ているかもしれない。
刑事と容疑者の関係は感情云々さておき犯罪を取り締まる側と取り締まられる側(かもしれない可能性が高い)関係性で、だからこそ簡単に感情に振り回されるわけにはいかない。
そういった微妙な距離感が、表層としてプラトニックで何とも難しい関係性を描き出しやすい。
万年不眠症の刑事役を演じるのはパク・ヘイル。
一見何を考えているかわからない切れ者の刑事役を絶妙に演じていて、起きていても眠そうに感情が希薄そうだからこそ感情が高ぶってきたときの落差の演技が映える。
そして謎の中国人妻ソレを演じるのはタン・ウェイ。
アン・リーの「ロスト、コーション」でトニー・レオンと共演した実力派。
怪しくも魅力ある謎の女性を演じる。
刑事ヘジュンの妻がやたらと妊娠の話をするのも、彼女にとって求めているのは恋愛の相手ではなく日常のパートナーだということなんだろう。
夢見る時間は終わり、日常を過ごしたい。
一方で刑事ヘジュンの殺人事件を追う日常はある種の非日常。
そんな日常と非日常との間でヘジュンが不眠症を発症するのは日常と非日常をうまくコントロールできない暗喩だろうし、ヘジュンがソレと出会いようやく眠れるようになるのは非日常で出会った(暗に恋する)相手が非日常に存在するからだろう。
だが二人は刑事と容疑者。
中国人であるソレと韓国人であるヘジュンの会話の一部がうまく行かない(時折、スマホの翻訳機能を使う)のもそんな二人の住む世界の微妙なズレを暗喩に表現している。
監督はパク・チャヌク。
カタコト日本語を駆使した2017年「お嬢さん」以来の監督、脚本作だと思うが、やはりどこも繊細で脚本も演出もクオリティが高い。
基本的に恋愛ものって苦手なんですが、今作は甘ったるくもなく、現実はとても残酷で、切なさも含めて非常に満足する作品でした。
★★★★☆
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