カンボジアで出会った少女から学んだこと。~#自分史上最高の旅 #05~
こんにちは。ZIPAIR note編集部です。
世界遺産「アンコール・ワット」をはじめとする神秘的な遺跡が点在するカンボジア。寺院や大小さまざまなマーケットがあり歴史と共に人々の活気を感じられ、旅行先として人気のある国です。
「自分史上最高の旅」連載第5回では、そんなカンボジアで運航乗務員の長島 聡さんが感じた魅力と、現地で出会った一人の少女とのエピソードをお届けします。カンボジアへ訪れたからこそ気づけたこと、そしてこの出来事をきっかけに今も大切にしている考えとは。
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私は3歳になる息子の父であり、パイロットでもあります。
「息子が自分の夢を自分で見つけて幸せな生活が送れるよう、親として何ができるか?」といつも考えながら育児に仕事に日々奮闘しています。
私が今回ご紹介したい国は、“相手のことを常に考えながら取り組むことの大切さ”に気付くきっかけにもなった「カンボジア」です。
「アンコール・ワット」は構成自体はシンプルなのにもかかわらず、中に入ると迷路のように複雑で、壁は高く方向感覚を失うほど。巨大な壁面を埋め尽くす多くの浮彫装飾は圧倒されるほど美しく、神秘的で非日常的な空間に心を奪われます。
また「アンコール・ワット」の日の出は、夜明けが近くなると寺院の姿が次第に浮かび上がり、朝日が顔を出す瞬間は本当に美しいです。
マンゴージュースは1ドルで購入でき、フレッシュマンゴーをその場で皮をむいて種をとって、豪快にミキサーに入れて作ってくれます。カンボジアはマンゴーがたくさん収穫されるのだそうです。
甘くて濃厚で、それはそれはとても美味しかったことをよく覚えています。
「アンコール・ワット」は神秘的で素晴らしく「1ドルのマンゴージュース」は感動的に美味しく、カンボジアは大変魅力的な国です。
一方、こうしたカンボジアの魅力とはまた違った意味合いで印象的な出来事がありました。ここからは、この旅で出会った、2歳近くの少女の泣き顔から学んだことを述べていきたいと思います。
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「1dollar……1dollar……」
私は、お土産を売りに来た人を見て驚きました。
箱いっぱいにアンコール・ワットのお土産を持って仕事をしていたのは、2歳近くの小さな小さな子どもではないですか。
あまりにかわいそうに思えた私は、その子に日本から持ってきたお菓子を渡そうとしたところ、その子は目に涙をたくさん浮べながら絶対にそのお菓子をもらおうとしませんでした。
「このお菓子をもらったら、お土産を渡さないといけない。そしてお金はもらえない」と思ったのでしょうか。そんな気持ちと戦いながら、去っていったのだと思うと本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
今、同じような歳の子をもつ親となり強く思うのが、トイレもまだ一人ではできない私の子が、言葉も通じないような相手にものを売る仕事をするなんてできるはずがないということ。
カンボジアでは子どもが労働の担い手として考えられていることが多く、教育を受けたり、子どもらしく遊んだりする機会が奪われてしまっている現状があるということ。
この出会いを経験するまで、私は恥ずかしながら世界の子どもたちが影響を受けている貧困問題について深く考えることはありませんでした。ですがこの旅で貧困の現状を目の当たりにしたことで「このような環境で育つ子どもたちに私は何ができるのか?」と思いました。
自分にできることを調べ、古着やお金を寄付することの大切さ、無駄な消費をしないことの重要性を心に刻みました。その過程で、自分一人では小さなことかもしれませんが「一人一人が相手を想う小さな行動をしていくことで、あの少女のような子どもの笑顔を増やすことができるのではないか」と考えるようになったのです。
その先にいる相手のことを考えて行動することの大切さに気付き、同時に「世界を変えるような大きなことはできないけれど、自分なりにできることを常に考えながら生活していきたい!」と思う大きなきっかけになる出来事でした。
それが今「子育てにおいて環境というのはとても重要なことで、親としてどうしたらよいのか?」と思うことをはじめ、育児や仕事において相手のことを考えながら行動するということにつながっていると思っています。
日本だけで生活していては、絶対に経験できない出会い。私にとって衝撃的だったカンボジアでの出会いを心の中で大切にして、自分にできることを常に考えながら世界中を飛び回るパイロットとして、父として奮闘していきたいと思います。
世界は広く、その国に行ったからこそ得られる気づきや学びがたくさんあります。再び自由に海外へ行けるようになったそのときには、皆さんもぜひさまざまな国を訪れてください。そしてZIPAIRの翼でそのお手伝いができたら嬉しいです。