見出し画像

いかに安全で時間通りに、お客さまにも楽しんでいただけるフライトをご提供するか。~#空の仕事人 #10~

こんにちは。ZIPAIR note編集部です。

「空の仕事人」連載第10回はZIPAIR運航乗務員の高木さん。

「パイロットはどのような点を考慮してフライトをしているのか」、実際のフライトの例と共に高木さんが日々心掛けていることをご紹介します。

少しマニアックな内容をお楽しみください♪

***

こんにちは、ZIPAIR運航乗務員の高木です。

突然ですが、ZIPAIRではどんなことを考慮して日々飛行機を運航していると思いますか?

私たちZIPAIRのパイロットは「安全」「定時」「経済」「快適」の4つの運航方針を考慮して毎日のフライトを行っています。
その中でもZIPAIRでは「安全」を「別格の存在」であり運航方針の土台と考えていますので、仮に安全に懸念が生じた場合は、安全の回復に集中するようにと社内で徹底しています。

ではZIPAIRの運航方針「安全」「定時」「経済」「快適」の場合、実際にはどのようなフライトとなるのでしょうか?
成田空港からロサンゼルスまでのフライトを例にお話しします。

まず「飛行ルートを選定するシーン」に当てはめてみましょう。
ロサンゼルスまで向かう太平洋の上空では西から東向きに時速約200km以上の強いジェット気流が流れています。
この追風に乗ると対地速度は音速くらい速くなるので目的地にも早く到着することができますし、使用する燃料も節約できます。

しかしこれにはデメリットもあります。ジェット気流の周辺には場所によっては機体が揺れるエリアも存在します。機体が大きく揺れるとシ-トベルトサインを点灯させなければならなくなり、お客さまへサービス提供ができない可能性も出てきます。もっと強い揺れに発展すればお客さまはもとより乗務員が怪我をしてしまう可能性も出てきます。

ではジェット気流を避けたルートを選定するとどうなるでしょうか?揺れは少ないかもしれませんが飛行時間が長くなり、その分燃料を消費することになります。
例えば多少時間がかかっても遠回りしたとします。ボーイング787型機の場合、1時間ほど飛行すると約4,500リットルの燃料を消費します。
仮に1リットル100円とすると450,000円にもなります。
さらに到着時間も遅れてしまい定時運航ができなくなり、お客さまにもご迷惑をおかけしてしまいますし、折り返し便の遅延も生じてしまう可能性もあります。

次に目的地の天候です。
ロサンゼルスはZIPAIRが到着する早朝にはよく濃い霧が発生します。霧は太陽が昇ると自然と解消していきますが、時には長引く場合もあります。
その場合は霧が晴れるまで上空で待機するか、最悪の場合は他の空港へダイバート(当初の目的地以外の空港などに着陸すること)しなければなりません。

ボーイング787型機の場合、上空で約30分待機すると約2,300リットルもの燃料を消費します。仮に1リットル100円とすると230,000円にもなります。
では30分の上空待機を見越して燃料を追加したものの、何とか無事に着陸できたとします。しかしこの時に追加した2,300リットルが丸々残るわけではありません。2,300リットルの燃料自体をロサンゼルスまでの約9時間搭載して運航するのに約530リットルの燃料を消費してしまうのです。
これを「タンカリングロス」と言うのですが、この場合53,000円が無駄になってしまいます。

また、余分に搭載した、消費する予定の燃料が余ったままでは着陸重量が重くなり滑走路内で停止できない可能性も出てくるため、安全にも影響がおよぶ可能性があります。
したがって、パイロットはフライト前のブリーフィングなどで気象データを慎重に解析し、コストも含めあらゆる事象を考慮し、運航方針に則った最良の判断を下す必要があるのです。

今回ご紹介したのはほんの1つの例ですが、私たちパイロットは常に運航方針を頭に叩き込み、総合的に判断し、いかに安全で時間通りに、会社の利益を最大限に追求しつつ、お客さまにも楽しんでいただけるZIPAIRらしいフライトをご提供できるよう日々心掛けています。

このように常に冷静沈着で正しい判断が要求されるパイロットにとって体調管理は非常に重要です。特に空気が乾燥するアメリカ西海岸へのフライトの機会が増えた今、私は携帯用加湿器を持参するようになりました。
USBケーブルで簡単に充電ができ、小型で持ち運びも簡単です。最近はステイ先のホテルの枕元に置いています。シュワーっと加湿し、悩まされていた喉の不調も一発解消です!
皆さんも使ってみてはいかがでしょうか。

今年は私たちZIPAIRにとってさらなる飛躍の年です。
これからも安全運航に努めてまいります。