
詩「湯豆腐」


喜びにあふれた思い出だけで、
心が満たされたらいいのに。
と、君が呟く。
喜びの隣に悲しみが寄り添うには、
喜びを際立たせるためなのかな。
と、僕が応える。
この悲しみの向こうに、
どんな喜びが待っているのだろう。
それとも、そこにあるのは、
新たな悲しみなのかな。
僕たちは、その問いの前に、押し黙る。
しばしの沈黙のあとで、君が訊く。
今晩なにが食べたい?
湯豆腐! と僕。
私も食べたかった! と君。
僕たちが考えていることは、
同じことなのかも知れない。
#################
湯豆腐。
このシンプルな鍋料理が大好きです。
冬場にはかかせません。
湯豆腐に限らず、食べたいものが妻と
一致したとき、ささやかな喜びを感じ
ます。