心の病で悩まされる方へ
心の病に悩まされる学生が少なからずいる。聞いたこともない病名もどんどん増えているように思う。人を直視できなかったり、難癖をつけたり、すぐ母親を連れてくる男子学生がいたりだ。うつ病、対人恐怖症などなど。現代医学が新しい命名行為を通して日々病気を作り出していることも事実だ。何らかの心の病を抱えている学生にはほぼ例外なく病原となる親の存在が認められる。
僕は医者とは異なる立場で人間と社会を研究している。専門がら東南アジアなどの比較的貧しい国々でフィールドワークをすることが多い。僕が行くところはほとんど貧しい農村地域が多いので住民の殆どが貧しい。そういう地域ではあるが、驚くほどの笑顔が溢れている。25年ほど前に初めて訪れたベトナムでは綺麗で神秘的な女性の目に魂を吸い取られそうになったことがあった。1回の旅で2回もこういう目と出会った。
ついて翌日。換金しようと訪れた換金所は暗い倉庫のような灰色で暗い建物だった。銀行ではなく換金所だった。怪しい警備員がギシギシと音のするエレベーターに同乗してくれた。西洋映画でよく見るようなエレベーターから廊下が見える構造だった。5階に到着したが人が見えない。？と思っていたら誰が連絡したのか若い女性がニッコリと笑いながら換金用のプレートに現地通貨を入れて現れた。この女性の目があまりにも綺麗だったのでびっくりした。なんて綺麗な目を！これを天使の目というのだろうか。今まで一度も見たことのない澄んだ黒い瞳。資本主義社会の泥田闘狗の傷跡が微塵も感じられない完全無欠の目だった。1万円を両替するつもりだったのに5千円だけ両替し、翌日も更にその翌日も5千円ずつ両替に向かった。
次はもの売りの老婆の目だった。HCMのコンチネンタルホテルの前のロータリを走る無数のバイクの群れの中、老女が僅かな死角地に座って何かを売っていた。こんな危ないところに座って何を売っているのかと近づいてみたら何と七輪だった。七輪を5個ほど横一線に並べて売っていた。もちろん英語も通じないので老婆が目で合図してた。「買って！」とその目が雄弁していた。その目が先の若い娘の目と同じだった。透き通っていて、微細血管など汚濁が一つもなく清潔で綺麗な目だった。瞬間僕の体は凍りついてしまってた。デンキウナギに感電されたように身動きができず、この一瞬が永遠のようにバイクの騒音が全て消しされ、僕は言葉を発することもなく老婆の目に魂を吸い取られていた。
何という綺麗な目を！僕は完全にベトナム人に同化されてしまった。貧しい農村でも、あらゆるゴミが捨てられ、巨大なインク瓶と化した溝川の中でわっぱくたちがハプハプ泳いでいる。みんな満悦の笑顔が溢れている。最初のベトナム訪問で僕は深く心を打たれ、この国を限りなく愛するようになってしまった。こんな神秘的な目と屈託のない笑顔の民を戦争が踏みにじってたとは。強大国に対する得体のしれない反感が僕に芽生えた。その後、僕はアメリカを嫌うようになり一度も訪れてなかった。数年前に研究調査のために出向いたときは僕の中には敵地に向かうような感覚だった。今でも心から好きにはなれない国の一つだ。誤解を防ぐために言うが、アメリカ人が嫌いという意味ではなく世界中の戦争を請け負う「国」が嫌いということだ。戦争請負会社ってご存知だろうか。今度のウクライナ戦争でも「民間軍事会社」が戦争を請け負っているそうじゃないか。戦争がビジネスとなっている人間の愚かさにはもっと腹を立てるべきではないだろうか。こんな馬鹿な世界に対してはもっと反発してもいいのではないか。
というわけで、人間にとって「幸せとはなにか」を僕は常に学生たちに説破している。GDP3万ドルを越える豊かな先進国日本の若者の多くが心の病を患っている。この国が果たして幸せな国といえるだろうか。日本の若者に是が非でも見せたい。一日の家族の稼ぎが1ドル2ドルの貧国の貧民たちの溢れる笑顔を見せてあげたい。僕をまたたく間に感電させ、魂を根こそぎ吸い取ってしまう神秘的で綺麗な天使の目をぜひ見てほしい。
自分自身で自分を変えられないとき、他人との接触で、カルチャショックで変わるきっかけを掴めることもありえるだろう。うつ病に苦しむなかれ！うつ病になれる人は心が純粋な人が多いはず。僕のように欲にまみれ世俗に身を任せ迎合してきた人間は汚れた人間で、僕のようなタイプの人間はうつ病になれない。うつ病になれる人は僕にとって見れば高潔な人格が多いように思える。うつ病のみならず、心の病を抱えている人はぜひとも東南アジアの農村の旅をおすすめしたい。行って天使たちに会ってほしい。
考えてみれば人間の幸不幸は紙一重の差に過ぎない。全ては分類の結果なのだ。一切唯心造であって、色即是空空即是色なのだ。僕の「心の内鍵」で手がかりを見つけてみてほしい。自信を持って、一歩だけ進めば見えてくるはず！！！