スズメの巣 第34話

※この物語はフィクションです。

第34話 決意は勝手か

「申し訳ありません!!!」
大柄の男が、土下座している。
「やめてください!日ノ出さんが悪いワケじゃないですし!!」
橋口は、大焦りだった。

というのも。
日ノ出に橋口は、呼ばれた。
話があるので、お会いできませんか?

何かある。
そう感じた橋口は、チームオフィスに招いた。

「ご足労頂きまして。」
「いえいえ。わざわざ場所を用意して頂きまして。こちらこそ有難い限りです。」
大人な会話を見せた。
しかし、互いにけん制しあってるようにも見えた。

重い空気の中。
日ノ出は、口火を切った。
「実は、話というのが。このチームを抜けようと思っておりまして。」
「えっ?!」
橋口は、驚くしかない。

「いや・・・。何でですか!?1部昇格するんですよ!?みんなで戦っていきましょうよ!」
「いや、本当にごめんなさい!」
すると。
日ノ出は、立ち上がる。

「私が悪いんです!!本当に申し訳ございません!!」
とかくして、前述したシーンに行き着くわけだ。

「私は、これ以上ご迷惑をかけることは心苦しいです!!」
「チーム戦なんですから。リカバリーできますって!」
橋口は、必死の説得を続ける。

「いや。私は欠席が多い。それで、この前なんかチームの大事な試合でドタキャンですよ!そんなヤツ自ら身を引くべきです!!」
「日ノ出さん!落ち着いてください!日ノ出さんが不在の時。布崎さん・沖村さん・みくちゃんの3人が補います!以前にもそのお話はさせていたはずですが・・・。」
「でも。だからといって。これ以上は試合に出れないことが3人に負担になりかねません!!その責任を取らせてください!お願いです!」
「何度も言っていますが、これはチーム戦です!出れるときに出場していただいても、問題ないです!こちらも大変なのは百も承知ですから!」
「それでも甘えていられません!何かしらのケジメをつけないと・・・。」
「ですが・・・。そうだ別の方法を考えましょう!それなら・・・。」
「私は、腹を決めたんです。1シーズンでも参加できて楽しかったです。」
さえぎるように、日ノ出は断言した。
「えぇ・・・?」
橋口は、困り果てる。
いくら、自分から去りたいって言っても・・・。
もっと別の方法もあるはずだし・・・。
しばらく沈黙が続く。

橋口は、苦渋の決断を下した。
「・・・分かりました。ただし・・・。」
「ただし?」
「今後、チームミーティングを開催します。私を含めたスタッフ4名とチームメンバー3名の7票で過半数で賛成多数であれば、承認します。」
「なるほど・・・。」
「そのミーティングで、自分の口からお話してチームメンバーを納得させてください。」
「分かりました・・・。ちなみに反対の場合は?」
「反対の場合。日ノ出さんにはチームに残留していただきます。そして、ドタキャンや今後の方針を固めていく話し合いをしていきます。それでよろしいですか?」
「・・・。やっぱり、それは受け入れられません。私に責任を取らせてください。」
「チームの皆さんに、何もなくやめるというのは違うと思うんです。もし、これを受け入れないようでしたら日ノ出さんの提案も断固として拒否します。残留の話し合いをしましょう。」
「そ、それはあんまりだ!」
日ノ出は、動揺した。

「いいえ。それは違います。あくまでチームです。日ノ出さんに残ってもらいたいんです。あと、日ノ出さん。このリーグ・ザ・スクエアを夢にしていたはずです。そう簡単に諦めるんですか?私は、諦めて欲しくないんです。」
「・・・承知しました。ちょっと熱くなりすぎました。すみません。」
「いえ、こちらこそ。では。その方向でよろしくお願いします。」

橋口・日ノ出は、ともに頭を深く下げた。

見送った橋口は、頭を抱えていた。
「はぁ・・・。」

翌日。
スタッフ打ち合わせで、この件を共有した。
麻田が帰ってきて初の打ち合わせも、問題に直面した。
「絶対引き止めましょう!どうにかなるはずです!」
金洗は、力強く発する。

「いや・・・。日ノ出さんの意思を尊重すべきじゃねぇか?」
鳳は、渋い顔をした。
「どっちともいえますからね・・・。」
麻田は、中立と言ったところか。

「意見が一つにならない以上。チームのミーティングで投票して頂きたいです。」
「うーみんはどっちよ!」
金洗が、問いかける。
「私だって残ってほしい。でも、意思は固いみたい。」
「だからって。それで諦めるの?」

荒れ模様だ。
「だから、投票にするの。皆の判断に委ねたい。日ノ出さんの話を聞いて判断してほしいの。」
橋口は、話を続ける。
「正直どうなるか分からない。ただ真剣に日ノ出さんの話を聞いてください。よろしくお願いします。」

橋口は、頭を下げる。

「分かった。判断は全員でな。」
鳳が決意を固めたようだった。
「ありがとうございます。」

橋口は、頭を下げたままだった。

つづく。


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