スズメの巣　第１話

あらすじ

今回は、Mリーグをモチーフとした小説に挑戦します。
主人公はプロではなく、チームスタッフ。
下手な文章でありますが、お手柔らかにお願いします。

巨大エンタメ企業「ＪＯＹグランドスラム」に勤務する橋口　海。
たたき上げとエリートの両方を備え持つ橋口は、ある日社長より呼び出しが。
任されたのは団体麻雀リーグ「リーグ・ザ・スクエア」のプロ麻雀チームの運営！
それも、チームのＧＭ（ゼネラルマネージャー）を任せられることに！
麻雀ド素人の橋口は、麻雀猛者の鳳、同期でプロ雀士の資格を持つ金洗、
リーグ・ザ・スクエアオタクの愛田とともにチームを創り上げていく。
これは、０から麻雀チームを作った１年強の軌跡である。

※この物語はフィクションです。
出てくる人物及び場所は実在のとは関係ありません。

第１話　イーピンってなに？

さわやかな風の中にも寒さが混じる４月のこと。
橋口　海（はしぐち　うみ）は、悩んでいた。
「何からやればいいの？」と。

巨大エンタメ企業「JOYグランドスラム」。
日本のエンタメに関する事業を手広く行っている大手企業だ。
音楽レーベルから芸人などのマネジメント業務といった芸能関連はもちろん、飲食店経営や屋内遊園地。地域振興も事業として行っている。

そこで働く一人が、橋口である。
橋口は、８年前に高卒で入社した。
入社３年目のときに応募した企画が社内企画オーディションで優勝し事業化。
今や会社の柱となる事業を手掛け、入社６年で事業本部長を任せられるようになった。
人員配置や采配はかなりの腕である。
いわば、叩き上げとエリートのハイブリッドと言える。

３月下旬。そんな彼女に１本の内線電話があった。
「はい。橋口です。」
「社長室です。お疲れ様です。突然で申し訳ないのですが、今日１５時ってあいてらっしゃいますか？」
「あっはい。空いてますが？」
「良かった。では本日１５時ちょうどに社長室にお越しください。」
「了解です。失礼します。」と電話を切った。
役員昇進？いやまさか地方に飛ばされる？どっちだ？
不安になりながら、１５時まで待った。

１４時５５分
社長室に向かった。
緊張がすごい。ドキドキが止まらない。
１５時になった瞬間。ノックをした。
「失礼します。」「どうぞー。」
重たいドアをキィーと押して入室した。
「失礼いたします。」
「よく来てくれた。まぁ掛けてくれ。」
「ありがとうございます。」と言ってソファーに腰かけた。

天地　和（あまち　かず）この会社の社長だ。
１代でこのＪＯＹグランドスラムをここまでの巨大企業へと作り上げた。

「呼び立てて申し訳ない。」
「いやとんでもございません。」
「まぁ。前置きは良しとして本題に移ろう。」
橋口は、唾をのんだ。拳も硬くなっていた。

「来年及び来シーズンから３つのプロリーグへの参入をわが社が実施することになった。つまり、３つチームを作るわけだ。」
「スポーツですか。」
「確かにスポーツではあるが、エンタメも兼ね備えている。」
「どういうことですか？」
「参入するのは、ダンス、e-sports、麻雀の３つ。役員会では承認済みだ。」
「なるほど。確かにそれらは、文化的な面もありそうですね。でもなんでその件を私に？」
「結論から言う。その中で、君には、その中の麻雀。リーグ・ザ・スクエアのチームのGMとしてチームを作ってもらいたい。」
「はいぃ！？」
橋口は茫然とした。

「私、麻雀なんかやったことないですよ！」
「だからいいんだ。第三者の目からプロを育成、采配をしてほしいんだ。」
「ですが・・・私に務まる気がしません。他の方のほうが・・・。」
「こう言いたくなかったが、これは社長命令です。とはいえ、いきなり優勝とかはさすがに無理だろう。既存の８チームに加え、来シーズンから新規８チームが下部リーグとして参入することになっている。うちのチームは、下部からのスタートだ。だから来シーズンはまず、１部昇格を目指してほしいんだ。」
社長命令で断りづらい状況だ。橋口は、押しに弱い性格だ。
橋口は、ため息をついた。
「分かりました。頑張ります・・・。」
「よろしく頼むよ。」

会話を終えた橋口は、社長室をでると、さっきよりも大きなため息が止まらなかった。
マジか・・・。
どうしよう・・・。
そう思いながら、自分の席へ戻った。

とうとう迎えた人事異動の日。年度初めの４月２日。
簡単な挨拶を済ませ、荷物をまとめて新オフィスへ向かった。
ため息は止まらない。
肩書としては、”プロスポーツリーグ事業部共同本部長兼リーグ・ザ・スクエアチームGMという役職だった。
後日社長室の噂だと、ダンスもe-sportsも未経験者が抜擢されたという。

新オフィスは同じ本社内でオフィス・ミーティングスペース・練習室・応接間など広くすべて合わせると、５０帖近くはあるだろう。
机に貼られた名札を見ながら自分の席を探していた。
席を見つけ支度していると、ノックが聞こえた。
「失礼します。」
ドアが開くと、ショートボブの女性が入ってきた。
「今日からお世話になり・・・うーみん？」
「えっ。」振り向くと知り合いがいた。
「さくちゃん？」
お互いにキャーと言ってハグした。
「久しぶりー」
「元気だったー」
「そっちこそー！うーみんがGMなんだ。」
「麻雀全然分からないんだけど大丈夫かな～」
「サポートするから大丈夫よ！」

金洗　さくら（きんせん　さくら）は橋口と同期で、同じ部署に配属された。いわば戦友である。その後接客スキルが買われカフェ事業部でマネージャーとして勤務していた。プロ雀士としても活躍しているらしい。余談だが、会社の忘年会ではユニットをもう２人とともに結成し余興グランプリで大賞をとったこともあるらしい。

そんな２人の会話を遮って「失礼します。」と聞こえた。
「あ！先輩～」
振り向くと知ってる先輩が２人いた。
「お前らもこの部署か、よろしくな。」
「なんだ知ってる２人じゃないの。」

入ってきた２人は、橋口と金洗が入社後配属された部署の先輩だった。
明らかに熱血漢のような男の名前は、愛田　麻好（あいだ　まさよし）。
入社２０年目の中堅社員だ。
どうやらリーグ・ザ・スクエアが好きすぎて社長にこのプロジェクトを直談判したそうだ。
好きすぎるからこそ、熱い男ながらも様々なデータを集めるギャップがある。

もう１人は、鳳　十人（おおとり　じゅうと）。
社内きっての麻雀猛者だ。
社内で開催される麻雀大会では勤続２８年の中で連覇を４回、合計１０回の優勝を誇り、プロとも互角に戦いプロアマタイトルの決勝まで駒を進める実力者だ。
なんかヘラヘラしているのが、玉にキズだ。

愛田と鳳が荷物を置き、愛田が問いかけた。
「そういえば、橋口って麻雀打てるの？」
「実は・・・全然やったことなくて。」
「あっそうか。よしミーティングもかねて打ってみるか。」

そこから、麻雀のルールやマナーを教わり、何とか分かる形になってきた。
当然ラス４回という惨劇だったそうだ。
鳳は「まぁこんなところでしょ。自分たちが強くなくていいわけだし。」と励ました。

「じゃあ。お疲れ様～」と愛田と鳳は部屋を出た。

金洗は支度しながら「じゃあ私も帰るね。ところでうーみんさぁ明日夜空いてる？」と聞いてきた。
「空いてるけど？」
「２人でさ女子会しない？多分あの２人がいたら話せないこともあるだろうしね！」
「オッケー。了解。」
「じゃ。お疲れ様～」といって笑顔で部屋を出た。

残った橋口は、リーグ・ザ・スクエアについて調べ始めた。
いろいろ情報が多すぎて、追いつかない。
橋口は、「何からやればいいの？」と頭を抱えていた。

外はすでに暗く、春なのに寒空がガラス越しに見えて、寒々しかった。

第２話へ続く。

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第２話

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