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摩天楼の夢
夢を見た。
気がつくと、私は暗い部屋の中にいた。
大きな窓があって、そこからは摩天楼が見える。
東京でもニューヨークでもない、奇妙な大都市だ。
思い出した。
地上では新種の殺人ウイルスや毒ガスが充満していて、もはや人間が出歩けない状況になっている。
でも、地上から離れれば離れるほど、空気はまだ汚染されていないらしい。
人々は競い合うように都市の上層階に逃げ込んで、ようやく私も高層ビルの一室を確保して生活しているという状況だった。
窓から見下ろすと、下界のほうは廃墟と化していた。
遺体らしきものが路上のあちこちに放置されているのも見えた。
もしかすると、人類の滅亡も時間の問題なのかもしれない。
窓から部屋のほうに振り向くと、そこにはマナミとルリナがボストンバッグを提げて立っていた。
「じゃあ、もう行きますね。今までお世話になりました…」
マナミが私にそう挨拶して、今まさに出て行こうとしていた。
私達は3人で一緒にこの上層階に滞在していたのだけど、それも今日でお別れだということらしい。
マナミはルリナを連れて「地上に戻る」と言う。
「そんなのダメだよ! 死んじゃうよ!」
私は必死になって二人を止めようとしたが、マナミはまるで死を悟っているかのように涼しげな眼差しで微笑み、ルリナは悲しげな瞳で無言のまま私をじっと見つめていた。
そして、マナミとルリナは下りのエレベーターに乗り込んで、あっけなく行ってしまった。
どうしたらいいのか、分からなくなった。
もう私には生きる理由もない。
知人は誰もいなくなり、マナミとルリナさえもいなくなった今、私はこの場所で何のために生き続けていればいいのだろう。
(そうだ、この窓から飛び降りてしまおう…)
私は、そう思い立った。
窓のロックを外すと、意外にも簡単に窓が開いて、強風が部屋の中に激しく吹き込んできた。
私は翼をひろげるみたいに大きく両腕を伸ばすと、そのまま眩しい夜景の中へと身を投げた・・・
そこで 目が覚めた。
いかにも近い未来にありそうな、なんとも微妙に生々しい夢だった。
予知夢でないことを祈る。
大都会を闊歩するときに、なんとなく聴きたくなる曲。
"Englishman In New York"(Sting)