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学習初日

ルリナの学習指導が今日から始まった。

もともとの予定では、土曜の午後にルリナが私の家に来るはずだったのだけど、なぜかルリナは午前中からやってきた。

念のため、母親のマナミと連絡をとると、マナミは恐縮していた。
「すみませんねぇ、ルリナが昨日から楽しみにしていて、
 朝から勝手に出てってしまって…、ご迷惑でしたよね?」

いやいや、私はべつに迷惑ではない。
まあ、週末は私も基本的には仕事をオフにしているので、朝からでもかまわない…と、答えてやった。

そして、私はこんな提案をしてみた。
「それなら昼頃にマナミさんもうちに来ていただいて、
 3人でランチするってのはどうですか?」

しかし、それはマナミから断られてしまった。
最近、マナミは土日も仕事のシフトを入れているのだという。
土日は人手不足なのでシフトを入れると職場でも感謝されるし、マナミも早くも責任のある仕事を任されるようになってやりがいを感じ始めているし、何よりも平日よりも時給も高くて楽しいから…とのこと。

マナミは真面目で働き者なのはいいが、そうやって時間さえあるとすぐに仕事を入れてしまうクセがあるらしい。
おそらく、娘のルリナは小さい頃からずっと家の中に放置されて、ひとりぼっちだったのかもしれない。
ちょっとルリナがかわいそうな気もしたが、他人の家庭の問題にまで首を突っ込みすぎるのもどうかと思ったので、それ以上のことはマナミに何も言えなかった。


ルリナとの勉強は、最初から飛ばしすぎてもよくないと考えて、途中で休憩時間をちょいちょい挟みながら、焦らずに進めることにした。

意外なことだったが、ルリナは地頭がとてもいい子だと思う。
ものすごく集中力があるし、覚えが早いし、数学なんかは一度覚えた解法を他の類題で応用する能力にも長けている。
磨けば輝く原石かもしれない。

昼ご飯は、私がつくった。
それほど料理が得意なわけではないが、ずっとひとり暮らしで自炊歴だけは長いので、冷蔵庫にあるものでパパッと短時間でつくることはできる。
緑黄色野菜を使った栄養バランス最高のサラダとともに、デミグラスソースのオムライスをつくってやった。
形はちょっと不格好だったけど、ルリナにとっては「おしゃれなごちそう」だったそうだ。(ほんとかな…)

ルリナは痩せているわりによく食べる。
「おいしい!」と言いながら、あっという間にたいらげてくれた。
今度またつくってやろうかな。

勉強の後、ミルクティーを飲みながらルリナの話をいろいろと聞いていたら、すっかり夕方遅くになってしまったので、ルリナをアパートまで送ってやった。

アパートに着くと、マナミはまだ仕事から帰って来ていなかった。
いつも結構遅くまでマナミは仕事に出ているらしい。
あまり無理をしないほうがいいのに…。

でも、ルリナとの学習はこれからうまくやっていけそうだ。

なんだか充実した初日だった。