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(マネジメント③)なぜ、新しいマネジメントが必要なのか ~マネジメント2.0

多くの組織は、「なぜ問題が起こったのか」という視点から、問題がもう起こらない解決策や対応策を考えていく。それは、目の前に起こっている問題そのものに焦点をあてているから、問題で苦しんでいる人を助けたいから。

しかしこれからは、問題が起こることを前提にした対応策を考えていくことになるだろう。問題が起こってからの対応に焦点をあてることになっていくだろう。

ここで、注意しなければならないことがある。問題を事前に、予測してはいけない。それは、不確実で想定外の出来事は予測できないから。予測してしまうと、想定外の予測できなかった問題が起こった時に、何も対応できなくなってしまう。
不測の対応が、より重要になってくる。何かが起こったときにどう対応するかが、鍵になってくる。VUCAで表されるように、“先がみえないならば、みえないなりの対応” が必要になってくる。

「どうすれば、みえないなりの対応ができるのか。」

一言でいえば、前提を変えること。今までは、これから起こることが予測できることを、未来がみえることを、前提にして考えてきた。

今までの予測するための前提①は、“変わらない/確実である/わかる/明らかである” だった。これとは反対の “変わる/不確実である/わからない/曖昧である” の、前提②に変える。前提①であるなら予測できるけれど、前提②になると予測できなくなる。

できないことをいくら頑張っても、できるようにはならない。やればできる、ということではない。できないということを認識して、予測できない現状に意識を向けることで、“予測できない、予測しない” という新しいマネジメントがみえてくる。この新しいマネジメントを実行していくことが、みえないなりの対応となる。

今までの20世紀型マネジメントを “マネジメント1.0” と、これからの21世紀型マネジメントを “マネジメント2.0” と区別して呼ぶことにする。

マネジメント1.0の特徴は、マネージャーを管理者と呼ぶことからもわかるように、“管理統制すること”。実は、この管理統制していくために、予測が前提として求められていた。予測できないことを、管理統制することは決してできない。
そして、予測した通りに行動が進んでいるかどうかを管理統制して相手に従わせること、これがマネジメント1.0である。

この時の予測するための前提条件は、前提①。しかし、VUCAの時代は前提①ではなく前提②に変わるので、前提①で予測することは難しい、いや予測できない。予測できなくなるので、マネジメント1.0の管理統制は十分に機能しなくなる。

そこで、「マネジメント2.0では、管理統制をしない」に前提を変えて、VUCAの時代に必要なマネジメントを思索していく。

マネジメント2.0を考えていく上で参考になった考え方の一つに、“自然・生物・進化” がある。自然の摂理から、生物の進化の過程から学んでいくという考え方。
自然を相手にすると、想定外の予測できない出来事が起きていく。このような出来事を未然に防ぐことはできない。できることは既にふれた通り、想定外の予測できなかった問題が起こった時の対応をすることだけ。

VUCAの世界に似た “自然界” で生き残った生物は、想定外の予測できない出来事や複雑な環境に対応し、変化に適応してきた。これらのことは、「変化に適応できなければ、滅ぶ」ということを意味している。
この意味がわかった時、マネジメントも同様であることに気づいた。「成長や成功して滅ぶよりも、“生き残る” ことの方が大切である」ということを発見した。

自然から学ぶことについては、『ベロシティ思考』(アジャズ・アーメッド&ステファン・オーランダー著)でも、「企業が求めている答えの多くは、自然の中にあると思っている」と書かれている。

またマネジメント1.0では、成長や成功をひたすら求めてきた。何が成長で成功かわかっていないまま、追い求めてきた。成長や成功を追い求めたのではなく、この言葉を追い求めた気が、今はしている。

近年は、量的よりも質的な成長や成功を求めるようになってきたと言われる。ただし、みえにくく、わかりにくい質的な成長や成功がわかるように、見える化・数値化・定量化をすることで、かえって誤解を招き、混乱を生んでいる。

マネジメント2.0では、成長や成功を追い求めず、VOCAの時代を “生き残る” ことが求められると考える。

( マネジメント2.0 )
● 想定外の出来事に対応する
● 変化に適応する

マネジメント2.0を研究していく中で、他にもマネジメントに求められることが変わろうとしていることに気づいた。マネジメント1.0では、「いかに付加価値を生み出して、優位性(差別化)を勝ち取るか」が求められた。付加価値の例としては、新機能/生産性/効率性などがある。

しかし、付加価値を生み出し続けるのは難しい。付加価値を生み出せなくなっても、付加価値を生み出すことを求められる。その結果、人も組織そして会社が疲弊していく。
特に業績が思わしくない時ほど、悪循環(負の連鎖)に陥りやすい。このことについて、これからの組織の姿について書かれた『ティール組織』(フレデリック・ラルー著)にあった、ピーター・ドラッカーの言葉が印象的だ。

我々が「マネジメント」と呼んでいるものは、その大半が人々を働きにくくさせる要素で成り立っている。
( P481より )

従来のマネジメント1.0では、「マネジメント力を強くすればするほど、人や組織そして会社のエネルギーを弱め不幸にしていく」という悲しい物語を生んでいく。このことに多くの人も気づき、新しいマネジメントや組織のカタチが生れつつある。これらについては、《新しいマネジメント》や《新しい組織のカタチ》で紹介をしていくことに。

「誰のための、マネジメントだろうか。」

ドラッカーの言葉を受けて、「これからのマネジメント2.0は、働きやすい要素で成り立つ」と考える。人や組織は、働きやすい環境のもとで働く。そのために必要なのは、人や組織を管理統制して従わせるのではなく、自由に任せること。結果、自主性や創造性を発揮して、人も組織も疲弊せずに生き残り成長を続けていくだろう。

そう、誰のためのマネジメントかが変わる。経営者・管理者のためから、働く人のためのマネジメントに変わる

ただし、人や組織がバラバラに道を歩き出すと会社として目指す目的地に辿り着けなくなる。結果、会社としての体をなさなくなり、会社が崩れていく。本末転倒の結果になる。
全員で目的地に辿り着くためには、「指針のような方向性を示す」ことが、必要になってくる。この考えに似たエッセンスとはいろいろな本で出会ってきたが、これもマネジメントの新しい方向性を示しているのかもしれない。

また、方向性を示すだけでは十分とはいえない。「どこに向かうか」という方向だけ示されても、道に迷い、道を間違え、道そのものを変えたりする。「今どこにいるのか」「方向は合っているか」「方向の修正がいるか」などの、「道を確認する」ことが定期的に求められる。

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