(デザイン⑪)意味づくりとしてのデザイン ~不二という考え
最後は、東洋思想から本質を見極める考え方を紹介したい。それは、西洋思考の二分法に対する、「不二」という思想。一般的には考え方の思考のようではあるが、私が受け取ったのは思想に近い。
二分法はAかBか(or)というシンプルでわかりやすい反面、相手を認めない/否定することに大きな問題がある。これは今の社会の分断と同じ構図で、西洋思考が現代社会の分断という歪みを生んだとも言える。
二分法では、知らず知らずのうちに、相手と比べることで、いや否定することで、自分の存在(価値)を明らかにしてきた。しかし今、社会は共存の方向に向かおうとしている。共存の鍵になるのが、不二。
不二という思想にふれたことで、AでもありBでもあり(and)、さらにAもBも越えた先(beyond) に向かう発想ができるようになった。
この不二は、東洋思想に関する本(鈴木大拙や井筒俊彦など)に出てきて、本を読んで初めて知った。知ってから、想像力が豊かになった。二分法だと心が疲弊していくが、不二だと心が安らかにそして豊かで幸せな気持ちになっていく。
私は不二を、「対立する二つがまだわかれていない状態」と解釈している(厳密には違う気がしているが)。対立してしまうと、対立する前に在った共通する本質に気づかなくなる。いや、気づけなくなる方が正しいのかしれない。第三者的な立場で話を聞くと、根っこは同じなのにと思うことがよくある。
同じ目的地に向かっているにも関わらず、行き方(やり方)が違うだけで、争いを始める。
同じ目的であるなら、競うことはあっても争いにはならないはずなのに、行き方で争いを始める。
対立している先にある向こう側の景色を同じように眺めている(望んでいる)のに、具体的な表現の違いから批判・否定をしあう。
共通する本質の存在を軸にして、相反する二つを認め合いつなぎ直することで、対立が解消されていく。この存在に気づく/お互いを知る(認識する)ことが「本質の意味を浮き上がらせる」ことで、私の考えるデザインである。