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(マネジメント⑩)新しい組織のカタチ ~分権型組織とハイブリッド型組織

リーダーがいる権限集中型組織に対する “リーダーがいない分権型組織(開かれた組織)” について、『ヒトデはクモよりなぜ強い』(オリ・ブラフマン他著)で詳しく書かれている。副題は、「21世紀はリーダーなき組織が勝つ」。

この本での “リーダー” は、経営を導くピラミッド階層の上にいるごく一部の人たちをさし、チームやグループのリーダーとは違う。ここではわかりやすくするためにビジネスリーダーと書くことに。

分権型組織

権限集中型組織では、ビジネスリーダーは、掴んだ権限を守るために、管理統制をしていく。掴んだ権限を手放さないために、更に管理統制を強めていく。階層の上にいくほど、権限が増えていく。いや、増やしていく。
このように考えると、なぜ管理統制をするのかがみえてくる。それは、相手を組織に、ビジネスリーダーに従わせるため。

しかし分権型組織には、権限を集中させて相手を従わせるビジネスリーダーはいない。ビジネスリーダーはいるが、権限を手放している。やっと掴んだ権限を手放すのは難しい。それは、手放すことに対する恐れがあるから。
与えられた権限を駆使して人を従わせていたからこそ、その権限を失うとどのような反応があるかが予測できるから、恐れてしまう。また手放し方がわからず、両手に権限を抱えたままのケースもある。

それ以上に、大きな課題がある。それは、「手放した権限はどうなるのか」「どのような関係性をこれから築いていくのか」など。課題の解決策を考えていく上で、ビジネスリーダーのいない組織の特徴を探っていく。

まず分権型組織の特徴について、『ヒトデはクモよりなぜ強い』では次のように書いている。

許可を求めたり、承認を得たりする必要はなく、お互いを助け合う。だからこそ、開かれた組織ではすばやく状況に適応し、対処できる。
( P37より )

権限を手放すことで、階層型組織では煩わしかった諸々の手続きがなくなる。特に、階層型の構造ツリーが高いほど、下から上への報告・承認の意思決定手続きに多くの時間をかけていた。この経験は、誰もがあるだろう。煩わしさを感じたにも関わらず、階層の上に行くとなぜかはわからないが煩わしさを求めてしまう。

しかし分権型組織では、より早く行動に移すことができる。これは、マネジメントにおいて、大きなメリットになる。煩わしさがなくなり、ビジネスに求められるスピード感を得ることができる。それ以上に、権限も意思決定も手放すことで、本来すべき仕事に集中できる。

これができるのは、「柔軟で、権限を多数で共有し、いろいろな点があいまい」という特長にある。権限集中型組織では決して許されない “あいまいさ” が、分権型組織では重要になってくる。
あいまいと聞くと、決断力がないなどよくないイメージを持ってしまいがち。しかし、実はこのあいまいさがマネジメント2.0を考えていく上で必要だと考えている。

あいまいさとはゆとりのある状態で、権限集中型組織にはこのゆとりや弛みがない。もしあったとしても管理を更に締め付けて遊び(ゆとりや弛み)を奪い、常に緊張感のある組織にしていく。

しかし、常に糸(緊張)が張り詰めていると、射ても遠くまで飛ばない。結果や成果は、予測した数値(計画)に届かない。遊びが生まれることで仕事に楽しさが加わり、結果に現れてくる。
近年よい結果や成果を出している会社の特徴は、仕事を楽しむ環境があること。これは決して偶然ではない。よりよい結果や成果を出すためにも、あいまいさが組織には必要になってくる。

分権型組織の他の特徴に、「信頼して任せること」がある。これについては、次のマインドフルな組織と高信頼性組織に共通してくるので後でふれることに。ビジネスリーダーのいない分権型組織の特徴は、権限集中型組織の特徴の否定と考えてもいい。

分権型組織を進化させたのが、ハイブリッド型組織。

ハイブリッド型組織は、分権型組織と権限集中型組織の両方の良さを掛けあわせて進化した組織のカタチである。「AかBか」や「AからBに」という選択ではなく、「AもBも」という統合型の組織構造になっている。

ハイブリッド型組織のような「どちらかを選ぶのではなく両者のよさを調和し、よりよいカタチにすること」が、マネジメント2.0に求められる。いやマネジメントだけでなく、あらゆるところで求められてくるだろう。

ただし調和するには、俯瞰的にマネジメント全体を観る眼が必要になる。両者の意見や考え方などがわかって初めて、調和することができる。この “わかる” ということが、考えている以上に難しいけれど、それ以上に重要になってくる。

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