(マネジメント⑯)マネジメントから、“これからの会計”を考える②
なぜ会計は変わらないのか
「会計も変わる必要がある」と書き記してきたが、私以外にもきっと同じことを思ってきた人や会社はあったと思う。それにも関わらず、変わっていない。「変える必要はあるのに、なぜ変わらないのか、いや変えられないのか」という疑問が浮かんだ。
今まで “変わっていない” ことばかり目を向けてきたが、“変わってきた” こともある。何が変わって何が変わっていないから、何かがみえてくるかもしれない。
変わった例として、会計情報をもとにして作成する企業レポート(決算報告書/アニュアルレポート/CSRレポート/環境レポート/サスティナビリティレポート/統合報告書)がある。
20世紀末から社会そして地球環境に対する影響が投資判断に加わり、新しい投資が現れた。経営戦略にも社会貢献や環境活動が加わり、事業活動以外の活動をみせる企業レポートが現れた。
結果、社会そして投資家のニーズの変化にあわせて、経営戦略や経営結果・成果などを表す企業レポートは変わった。変わる必要性を、会社の外から迫られた。
「変わらないこと」「変わったこと」の二つを眺めていて、なぜ変わらないのかがふとみえてきた。それは、会計が “自分ゴト” になっていないこと。
会計の役割が会社のためでなかったから、会社が変わろうとしても、会計を変えようとしなかった。いや、他人ゴトのようにみていたのかもしれない。この自分ゴトや他人ゴトことについて少しふれることにしたい。
「なぜ危険を犯してまで粉飾や不正をするのか」「誰のために粉飾や不正をしているのか」について考えを巡らせると、会計の役割がみえてくる。
粉飾や不正の理由は、会社の経営をよくみせたいためであった。会社の外にいる投資家や社会に向けて、粉飾や不正した情報をみせている。会計は会社のためにしているようで、実際は “他人ゴト”。しかしふと考えると、よくみせることで株価が上がれば企業価値も上がる。この意味でいえば、“自分ゴト” ともいえる。
しかし、本気で自分ゴトにしていれば、粉飾や不正などは決してしない。他人ゴトだから偽っても何も感じず、傷つくのはあくまでも自分とは他人の会社だと思い、粉飾や不正をすることができた。
そう、会社はあくまで他人であって自分ゴトになっていなかった。
また一般的には、すべての経営情報を社員に説明していないし、オープンにもしていない。階層ごとに、みることができる情報は違う。
このことに気づいた時、新しい組織(Tealやホラクラシー)の数社が、経営情報のオープンだけでなく社内向けに毎期経営説明もしていることを思い出した。
経営の透明化が、情報の共有化が、会社の自分ゴト化につながっていた。
これからの会計
会計について思索していく中で、わかったことがある。組織やマネジメントの進化とはより自分ゴト化していき、反対に会計はより他人ゴト化していった。これからの会計も、組織やマネジメントと同じく自分ゴト化の方向に向かう必要がある。
会計の自分ゴト化が結果として、組織やマネジメントの自分ゴト化に適応し、業績をあげていく。これからの会計は、“自分ゴト化する会計”といえるだろう。
会計の自分ゴト化とは、組織の誰もが自分の仕事のために使いたくなる会計。今までの会計は、組織の内側ではあまり役に立っていなかった。経営層のための会計であり、外部に説明するための会計だった。自分の仕事とつながっていなかった。
新しいマジメントや組織にどのようにすれば会計が役立つのかという視点から、会計の見直しが求められる。
見直しのキーワードは、“自主経営のための会計” と “目的確認のための会計”。これについては、アカウンティング編にて。