【解説】早稲田大学理工数学2024[III]
問題
点$${\rm{O,A,B,C}}$$を頂点とする四面体$${\rm{OABC}}$$を考える。辺$${\rm{OA, OB, OC}}$$の中点をそれぞれ$${\rm{P,Q,R}}$$とし,辺$${\rm{BC, CA, AB}}$$の中点をそれぞれ$${\rm{S,T,U}}$$とする。
(1) 辺$${\rm{PS, QT, RU}}$$が1点で交わることを示せ。
(2) $${\rm{OA^2+BC^2=OB^2+CA^2=OC^2+AB^2}}$$のとき,点$${\rm{P,Q,R,S,T,U}}$$が同一球面上にあることを示せ。
(3) (2)において,辺$${\rm{PS}}$$が辺$${\rm{OA, BC}}$$と直交し,辺$${\rm{OA, BC}}$$の長さをそれぞれ$${a, k}$$とする。点$${\rm{P,Q,R,S,T,U}}$$を頂点とする八面体の体積$${V}$$を$${a}$$と$${k}$$を用いて表せ。
(4) (3)において,$${k=1}$$のとき八面体の体積$${V}$$の最大値を求めよ。
解説
前半は幾何的な証明問題で、後半は求積問題です。$${\overrightarrow{a} = \overrightarrow{\mathrm{OA}}, \overrightarrow{b} = \overrightarrow{\mathrm{OB}}, \overrightarrow{c} = \overrightarrow{\mathrm{OC}}}$$とおき、これらの基底ベクトルを用いて解いていきましょう。※(4)は出題ミスであることが発表されていましたが、そのまま解いています。
(1)
まずは、3つの辺が1点で交わることを示す問題です。以下の2つのステップに分けて証明します。
$${\rm{PS}, \rm{QT}}$$がただ1つの交点を持つことを示す
これが辺$${\rm{RU}}$$上にあることを示す
まず、辺$${\rm{PS}, \rm{QT}}$$がただ1点で交わるための必要十分条件は、
$$
s\overrightarrow{\mathrm{OP}}+(1-s)\overrightarrow{\mathrm{OS}}
= t\overrightarrow{\mathrm{OQ}}+(1-t)\overrightarrow{\mathrm{OT}}
$$
を満たす実数$${s(0\leqq s\leqq1), t(0\leqq t\leqq1)}$$がただ1組存在することである。上の式を$${\overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}}$$で表すと
$$
\frac{s}{2}\overrightarrow{a} + \frac{1-s}{2}(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}) = \frac{t}{2}\overrightarrow{b} + \frac{1-t}{2}(\overrightarrow{a}+\overrightarrow{c})
$$
となり、$${\overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}}$$は一次独立なので、この式を満たすための必要十分条件はそれぞれの係数が等しいこと、すなわち
$$
\begin{cases}
s = 1-t\\
1-s = t\\
1-s = 1-t
\end{cases}
$$
が成立することである。この連立方程式の解は$${s=t=1/2}$$のみだから、交点もこれに対応する一つのみであることが示された。
また、この交点の位置ベクトルは
$$
\begin{array}{lll}
&&\cfrac{1}{4}(\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})\\
&=&\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{1}{2}(\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}) + \cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{1}{2}\overrightarrow{c}\\
&=&\cfrac{1}{2}\overrightarrow{\rm{OU}} + \cfrac{1}{2}\overrightarrow{\rm{OR}}
\end{array}
$$
と変形できることから、辺$${\rm{OR}}$$上にあることが分かります。
以上より、辺$${\rm{PS, QT, RU}}$$が1点で交わることが示されました。
(2)
(1)の議論からもわかる通り、辺$${\rm{PS, QT, RU}}$$の交点は各辺の中点でした。そのため、この交点を中心とする球面上に$${\rm{P, S, Q, T, R, U}}$$があると予想できます。これを示すには、辺$${\rm{PS, QT, RU}}$$の長さがすべて等しいことを言えれば十分です。
$${\rm{OA^2+BC^2=OB^2+CA^2=OC^2+AB^2}}$$のとき、
$$
{\rm {OA}}^2 + {\rm {BC}}^2 = |\overrightarrow{a}|^2+ |\overrightarrow{b}|^2+ |\overrightarrow{c}|^2 - 2 \overrightarrow{b}\cdot\overrightarrow{c}
$$
のように変形できることから、
$$
\overrightarrow{b}\cdot\overrightarrow{c} = \overrightarrow{c}\cdot\overrightarrow{a}
= \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}
$$
であることが導けます。この内積を$${\alpha}$$とおいて、$${\rm{PS}^2}$$を変形していくと
$$
\begin{array}{lll}
\rm{PS}^2 &=& |\overrightarrow{\rm{OS}} - \overrightarrow{\rm{OP}}|^2 \\
&=& \left|\cfrac{1}{2}(\overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} - \overrightarrow{a})\right|^2\\
&=& \cfrac{1}{4}(|\overrightarrow{a}|^2+ |\overrightarrow{b}|^2+ |\overrightarrow{c}|^2 + 2\alpha - 2\alpha - 2\alpha )\\
&=& \cfrac{1}{4}(|\overrightarrow{a}|^2+ |\overrightarrow{b}|^2+ |\overrightarrow{c}|^2-2\alpha)
\end{array}
$$
となります。同様にして
$$
{\rm QT}^2={\rm RU}^2=\cfrac{1}{4}(|\overrightarrow{a}|^2+ |\overrightarrow{b}|^2+ |\overrightarrow{c}|^2-2\alpha)
$$
となるから、$${\rm{PS=QT=RU}}$$です。繰り返しになりますが、辺$${\rm{PS, QT, RU}}$$の中点はすべて一致するため、この中点から点$${\rm{P, S, Q, T, R, U}}$$までの距離はすべて等しく、これらの点は同一球面上にあることが示されました。
(3)
後で示しますが、$${\rm PS}$$と四角形$${\rm{QRTU}}$$は直交します。そのため$${V}$$は
$$
V = \frac{1}{3}\times四角形{\rm{QRTU}}\times{\rm PS}
$$
と表されます。以下、
四角形$${\rm{QRTU}}$$の面積を求める
$${\rm PS}$$の長さを求める
四角形$${\rm{QRTU}}$$と$${\rm PS}$$の直交性を証明する
の流れで進めます。
まず、三角形$${\rm{OAB, OCA}}$$に着目すると、中点連結定理より、$${{\rm OA}/ \! /{\rm QU}/ \! /{\rm RT}}$$です。同様に三角形$${\rm{OBC, ABC}}$$から$${{\rm BC}/ \! /{\rm QR}/ \! /{\rm UT}}$$です。これと(2)より、四角形$${\rm{QRTU}}$$は対角線の長さが等しい平行四辺形なので、長方形であるとわかりました。さらに、三角形$${\rm{OAB, OBC}}$$に着目すると、これもまた中点連結定理より$${{\rm UQ}=a/2, {\rm QR}=k/2}$$です。よって四角形$${\rm{QRTU}}$$の面積は$${ak/4}$$となります。
また、$${\rm PS}$$は$${\rm QT, RU}$$と等しいため
$$
{\rm PS} = \sqrt{\left(\frac{a}{2}\right)^2 + \left(\frac{k}{2}\right)^2}
$$
と書けます。
ここで、$${\rm PS}$$は$${\rm OA}$$と垂直であるから、$${\rm OA}$$と平行な$${\rm TU, RQ}$$とも垂直です。また、$${\rm PS}$$は$${\rm BC}$$と垂直であるから、$${\rm OA}$$と平行な$${\rm UQ, RT}$$とも垂直です。したがって、$${\rm PS}$$は四角形$${\rm QRTU}$$と垂直です。
以上より、
$$
V = \frac{1}{3}\times\frac{ak}{4}\times\sqrt{\left(\frac{a}{2}\right)^2 + \left(\frac{k}{2}\right)^2} = \bm{\frac{ak}{24}{\sqrt{a^2+k^2}}}
$$
となります。
(4)
これは出題ミスらしいですが、そのまま解くとどうなるか見ていきます。(3)において$${k=1}$$と固定すると、
$$
V=\frac{a}{24}\sqrt{a^2+1}
$$
となります。ここからは、仮定を満たす四面体の存在条件から$${a}$$の範囲を決め、その範囲で$${V}$$の最大値をを求めるのですが、今回$${a}$$は無限に大きくできてしまうようです。四面体に課せられた条件は
$${\rm{OA^2+BC^2=OB^2+CA^2=OC^2+AB^2}}$$
辺$${\rm{PS}}$$が辺$${\rm{OA, OB}}$$と直交
$${{\rm BC}=k=1}$$
$${{\rm OA}=a}$$
の4つでしたが、任意の正の実数$${a}$$に対し、以下の手順で決定した正四面体$${\rm OABC}$$はこれらの条件をすべて満たします。
ちなみに、初期状態では$${{\rm OB}^2=(a^2+1)/4}$$で、距離を離していくことで$${\rm OB}$$は無限に大きくすることができるので、必ず$${{\rm OB^2}=(a^2+1)/2}$$となる位置は存在します。
したがって、$${a}$$の上限が存在しないため、$${V}$$は発散し、最大値は存在しません。
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