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セルフホステッド(自宅クラウド)のMust-have appを5つ選ぶ
手もとにあるWindows 11パソコンを、マウスカチカチだけで30分後にはGoogleなど巨大テック企業と同じようなクラウドサービスが動くプラットフォームにできる「CasaOS」。
CasaOSは、24時間365日動くセルフホステッド(Selfhosted、自宅クラウド)をだれでもかんたんに手にすることができ、動画や音楽のストリーミングサービス、GoogleドライブやDropboxを置き換えたり、独自のホームオートメーションシステムを作れるのがウリだ。
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そんな「なんでもできるすごいやつ」を与えられると、なにから手をつけていいのか分からなくなる。GitHubやRedditを巡って苦労してアプリの設定を終えても、これならわざわざセルフホステッドしなくてもいいんじゃ?ってアプリも多い。なにがセルフホステッド向きなのか、そもそも、あえてセルフホステッドすべきアプリはあるのか。
というわけで、この記事は、私が気に入っているセルフホスト型アプリのリストだ。日本語にもきちんと対応していて、インストールで試行錯誤することのない「かんたん便利」なアプリを選んだつもりだ。
1. Memos
Memosは、にわかに流行っている「Self-text(自分にチャットメッセージを送る)」タイプのジャーナルアプリ。Self-text といえば、LINEには自分あてにメモを送る「Keepメモ」があるし、Slackを個人メモとして使っているひとも多いだろう。iPhoneには標準で「ジャーナル」がある。
Memosはそれらを、もっとアイデアの書き留めと見える化にふって行動につなげやすくし、なにより 寝ぼけているときの誤爆などの恐怖 から逃れられるようにした専用アプリだ。そして、容量や保存期間、内容の検閲、サービス終了を気にせずに使い続けられる。かといって、自分の操作ミスなんかも含めてなにかのはずみでデータが消えても、ダメージは小さめ。だから「セルフホステッドはじめたばかり」にぴったりだ。
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Memosとがっちり連携する、iPhoneやAndroidの「Moe Memos」アプリもよくできていて便利。Webのクリップもかんたんだ。
とはいえ、セルフホステッド界で絶賛かというと……「無視されている」が近いだろうか。中国製(と、かんたんには分からないように対策している)であることへの政治的嫌悪感が「本場」では私たちの想像以上にあり、それを抜きにしても、アプリの注目を集めるための彼らの組織的かつ身勝手な行動は批判されて然るべきではある。あとは flomoとそっくりすぎる ことへの批判もあるが、そんな元ネタも中国製だ。ちなみに、CasaOSを作っている会社(IceWhale Technology)も上海ベースの中国企業だ。
2. Immich
Immichは写真や動画の管理アプリで、つまり、早い話「Googleフォトの代替アプリ」として人気が高い。
これまでも、SynologyなどのNAS製品にはGoogleフォト「っぽい」アプリがあった。が、率直なところどれもいまいちで使う気にならなかった。Immichは精度の高い顔認識や地図表示、AIを活用した検索機能、データの完全なコントロール、そして使い勝手のよさで、ホンモノの「Googleフォトの代替アプリ」となっている(あとは安定性さえ……)。だから、容量の制限やお金の心配をせず、写真や動画のプライバシーとデータ所有権を重視したいユーザーにぴったりだ。
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ただ、最初のうちはGoogleフォトからの全力移行など目指さず、元データ(原本)はImmichで、Googleフォトは「節約画質」にしてクラウドになくてもいい写真や動画を削っていく、といったゆるい取り組みがよいと思う。くわえて、クラウド向きではない画像 で想像するようなデータはImmichで管理するとかが、バランスよさそうだ。
一点、Windows 11のWSLでCasaOSを動かしている場合に限定の設定を。Immichは「外部ライブラリ」機能で、すでにあるフォルダをそのまま管理対象とできる。ので、Windowsにある画像や動画をImmichにアップロードしないでも扱えれば便利このうえないわけだけど、それが、かんたんにできる設定だ。そう、「WSLのUbuntuは、Windows側のファイルを /mnt/c/ といった指定だけでシームレスに参照できる」仕組みを応用しているだけ。
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3. Jellyfin
「Jellyfinを使うことで、パソコンに保存したメディアコンテンツをNetflixのようにストリーミング再生できるようになります。ただし、著作権法を遵守し、個人利用の範囲内で使用することが重要です」といったアプリ。
もっとも、太字部分は読み飛ばされることが多いわけで、日本以外ではセルフホステッドなJellyfinのアドレスを公開しつつ、「Torrentで "The Office" 全話落として自動で登録して」云々、「Apple MusicとSpotifyのプレイリストをTIDAL(日本進出していない音楽ストリーミングサービス)で丸ごとぶっこ抜いたら1.5TB」云々といった、個人利用の概念が壊れた小さなNetflix屋さんがたくさんいるようではある。
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著作者の権利尊重への意識が高い……というよりも、アマゾンプライムビデオなどのストリーミングサービスが格安な日本では、積極的に違法行為に手を染める動機も薄い。そこで、私は映画やドラマではなく音楽ライブラリ用に使っている。Windowsはもちろん、iPhoneやAndroidのアプリからも同じ操作で、デバイスごとに音楽ファイルを取り込むことなく使えるのがうれしい。
あとは、iPhoneのアプリがダウンロードによるオフライン再生に対応してくれるとよいのだけど。iOS側の制約がいろいろで、何年にもわたるたくさんのリクエストに応えられない技術的な事情があるようなのであきらめている(Android版はダウンロードに対応している)。
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4. Mealie
Mealieはセルフホステッドでは異色といってよいレシピ管理アプリ。それなのに、といっていいのかすばらしい完成度で、この記事の5本のなかでもっとも感激したアプリだ。
レシピアプリなのにインストールした直後のレシピは空っぽ……なのだけど、たとえば「リュウジのレシピ(の書き起こしサイト)」も秒で取り込める。なんでもいいからレシピのURLをコピペすると、画像や材料や調理方法をよしなにまとめてくれる。そして自分用に書き換えできて(リュウジの味つけは私たちには濃いのだ)、作ったら写真も残せる。
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「写真をアップロードするとAIがレシピを作ってくれる」ようなすごすぎるAI機能は何度試してもレシピを作ってくれず、これは画像のテキスト認識機能を私が早とちりしただけだった。でも、すごい。とにかく、セルフホステッドだから、レシピサイトにありがちな「あれ、ひょっとして囲い込まれている?」感や「プレミアム、プレミアムしつこいよ!」はゼロだ。
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金曜日の夕食と土日の食事は私担当で、献立ローテはわりと決まっていたものの、このアプリのおかげで控え選手がぐっと厚くなった感じだ。もっとも、妻にはあわない。レシピなにそれで、そこにある材料と目分量でなんとかする。でもってインスタしていたらフォロワーたくさんついて、「これ使って作ってアップしていただけませんか」と食材があちこちから送られてくるようになった。天才なんだろう。あれ、なんの話でしたっけ。
5. Stirling PDF
Stirling PDFは、PDFファイルに対する「思いつく限りのあらゆる操作」を、シンプルかつセキュアに実行できるアプリだ。
PDFの編集というと「妙にあやしい」サイトが多い。いや、あやしくなくても、アップロードしたファイルが蓄積されて、あんなこと、こんなことって感じに使われていてもなんの不思議もない。それがセルフホステッドなら、どこにファイルをさらすわけでもなく、インターネットに出ることなく、手もとのパソコンのなかだけで完結できる。
嫌がらせのようになるが、トップページをスクショしてみた。PDFファイルに対する「思いつく限りのあらゆる操作」だと思う。
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おわりに
とまあ、「セルフホステッドはじめたばかり」の方があと一歩ふみだせるような記事ってないかなーとダラダラ書いてみた。この手のまとめだと、マニア向けというか、ハードコアなアプリに偏ることも多いのだ。
そうそう、AdGuard Home と Tailscale もMust-haveなのだけど、以前の記事でもう紹介してしまっているし、アプリというよりもインフラ側。それに、CasaOSにインストールするものではないから別腹かなと。
あとは、私はセルフホステッドでNotionやEvernote、OneNoteに代表される「Notes and Docs(メモとドキュメント)」アプリは使っていない。もちろん、この分野は「自分のデータを自身でコントロールする」セルフホステッドの真骨頂でもある。CasaOSのアプリストアにもObsidianやJoplin(サーバー)、Trilium、BookStack、Note Mark、SiYuan Note、Logseqと勢ぞろいしている。が、私はひととおりじっくり試したり検討したりして、結果、紙の小さなリーガルパッドと、デジタルおまとめアプリとしてNotion(の最低限の機能)を使い続けている。
さて、Must-haveとは逆に、こぢんまりと始めるセルフホステッドや自宅クラウドに向かないアプリもある。海外では絶賛されていても、日本ではどうなのってアプリもある。それらは、別の記事にまとめる。