オススメ小説紹介『ダレン・シャン』
みなさんは、子供の頃、どんな本を読んでいましたか?
私が小学生の頃、まわりで流行っていたのは『ハリー・ポッター』でした。
箒で空を飛び、杖で戦う・・・細かいところまで描かれた魔法の世界に、みんな夢中でした。
私もそのうちのひとりで、特に3巻は大好きで何度も何度も読み返しました。ですが、5巻あたりで登場人物の多さに混乱し、挫折してしまいました。
そんな私が、12巻という長さを全く苦にせず読み続け、大人になった今でも読み返してしまうほどに、夢中になった小説があります。
それが、『ダレン・シャン』です。
※実は以前にも、シミルボンで紹介したんですが、noteでも紹介したいくらい好きなので、書いた次第です。もしよろしければこちらも合わせてお読みいただければと思います。
『ダレン・シャン』とは
『ハリー・ポッター』を”魔法使いモノ”と呼ぶなら、『ダレン・シャン』は”吸血鬼モノ”です。小説内では、「バンパイア」という呼称が使われています。
全12巻構成、外伝1冊、前日譚4冊、と結構なシリーズですが、わりとサクサク読めます。ちなみに外伝と前日譚は別に読まなくても物語としては大丈夫です。あくまで外伝。
あらすじを紹介したいので、1巻分だけですが、ちょっとネタバレになります。事前情報ゼロで読みたい方はここでストップ推奨です。
・・・
好奇心旺盛で、蜘蛛が大好きという、ちょっと変わったところもあるけれど、基本的にはいたって普通の少年、主人公のダレン・シャンが、悪友のスティーブと共に「シルク・ド・フリーク」という奇怪なサーカスへ行くところから物語は始まります。
しかし、「シルク・ド・フリーク」には、人間とは別の存在、バンパイアのラーテン・クレプスリーが出演していたのです。そんなことには気付かず、彼のショーに出て来た巨大な毒蜘蛛の「マダム・オクタ」に目を奪われるダレン。彼は、蜘蛛を盗み出す決心をします。
そしてダレンは、色々あって、蜘蛛の毒にやられた親友を助けるかわりにクレプスリーの手下となり、半バンパイアとして夜の世界に生きることになる・・・
といったところが、1巻の内容です。
やたら”リアル”なバンパイア達
バンパイアと聞いて、あなたは何を想像しますか?
夜の生き物。血を吸い、永遠の時を生きる者。
蝙蝠に化け、暗闇に溶け込み、十字架や聖水でのみ祓われる怪物。
・・・とか思うじゃないですか。なんか、カッコイイ感じの。
ところがどっこい、『ダレン・シャン』に出て来るバンパイアたちは、この耽美なイメージをことごとくぶっ壊してくる、やたらリアルな存在なのです。
まず第1巻に出て来る、主人公ダレンを闇の世界に誘うバンパイア、ラーテン・クレプスリー。
真紅のマントを羽織って、なぜかサンダルを履いてます。
この時点で「ん?普通のオッサンかな?」という感じ。
そして、バンパイア伝説で有名な「十字架、聖水、ニンニク、日の光に弱い」「不死身」「生き血を吸い尽くして奴隷にする」などなどの特徴ですが・・・
『ダレン・シャン』のバンパイアは、そういうのはありません。
①普通に死ぬ
バンパイアは、別に杭を心臓に打ち込まずとも、高いところから落ちれば死にますし、感電しますし、炎で焼け焦げますし、基本的に人間と同じように致命傷を負ったら死にます。また、寿命もあります。
ただし、普通の人間より身体は頑丈ですし、風邪にもほとんどかかりません。10年に1歳、というペースで年をとるので、数百年は生きられます。
また、十字架や聖水、ニンニクは平気です。普通に教会で寝泊まりしたりしています。ですが、日の光は、駄目です。(後述)
②太陽で即死しない
バンパイアというと某漫画のごとく、太陽浴びた瞬間にバサーッ!と灰になって死ぬイメージがあるかもしれませんが、『ダレン・シャン』では即死しません。
ただし、猛烈なスピードで日焼けします。4、5時間ほど浴びると火傷で死ぬことになります。日傘や日焼け止めクリームも有効みたいです。日焼け止め塗ってるバンパイア、だいぶ面白い。
②血はちょっとずつ飲む
バンパイアにとって血は生命の元です。飲まないと死にます。なので血は飲みますが、飲み干したりはしません。
あと別に、処女の血が好みとかそういうのもありません。ジョギング中のオッサンを気絶させて、血を飲んだりします。
ただし、飲み干すタイプの例外もいて、これは本をお読みになって確かめていただければと思います。
③見た目はほぼ人間と同じ
彼らは、一見すると普通に人間です。別に目が赤いとかもないですし、キバも生えません。
なので、首に噛み付いたりもしません。血を飲む時は、鋭く固くなった爪で太ももなどの目立たないところをちょっと傷つけて、血を飲んで、特殊なツバで傷をふさぐ。それだけです。
基本的にバンパイアたちは人間社会でバレないように生活するよう気をつけているので、歯で皮膚を食いちぎるなんてもってのほかなのです。
④血を吸われてもバンパイアにはならない
よくある伝説だと血を吸われて仲間になる、または奴隷と化す、みたいな描写が多いですが、『ダレン・シャン』の世界でバンパイアになるには、血を吸われるのではなく、血を流し込んでもらう必要があります。
まあ血吸われてバンパイアになっちゃうんじゃ、世の中バンパイアまみれになりますからね。困るよね。
・・・と、こんな感じで、薄暗いお城で処女の生き血の入ったグラスを片手に月を見上げる吸血鬼のイメージを、サンダル履きで散歩したりジョギング中のオッサンを気絶させて太ももあたりから軽く血もらって去るというリアルイメージでぶっ壊してくる、それがダレン・シャンです。
それでもかっこいい、バンパイア達
ここまで全然バンパイアかっこよくないじゃん!て感じで書いてきましたが、とんでもない、彼らほどかっこいい種族はいません。
バンパイア達は、常に「高潔であること」を大事にしています。
いたずらに殺生をせず、人間を傷つけず、この世を汚さないこと。
決闘する際は、飛び道具などに頼らず、真正面から堂々と行うこと。
老いや大怪我で思うように動けなくなったら、勇敢な死を迎えること。
老いてベッドで安らかに死ぬくらいなら、熊と戦って死ぬ。
それが彼らの世界の常識なのです。
バンパイア達の生き様を端的に表す言葉として、以下のセリフがあります。
「死してなお、勝利の栄冠に輝かんことを!」
・・・私がこの小説のなかで、最も好きなフレーズです。
彼らは、死は恐れるものではない、と考えています。卑怯な手を使って生きるくらいならば、戦って死ぬ。勇敢な死を遂げた者は、一族に尊敬されます。
別に戦闘狂がかっこいい、というわけではないですが、勇敢に戦った者を称える姿勢は、なんとも痺れる世界です。なんとなく、侍を彷彿とさせます。
まあ、この生き様をバンパイア達が貫いているせいで、メインキャラもじゃんじゃん死ぬんですけども。ほんとに児童向けか!?
ダレン・シャンの書く『ダレン・シャン』
私がこの小説を推す理由は、「バンパイア達がかっこいい」だけではないんです。ストーリーの完成度が、とにかく素晴らしい。
実は、『ダレン・シャン』の著者の名前は、「ダレン・シャン」なんです。主人公の名前が著者の名前。なかなか不思議だなと思います。
ですが、これにはきちんと理由があります。
全12巻、全てを読んだとき、その理由がはっきりとわかります。
そして読み終えたとき、きっとあなたは、サンダル履きのバンパイアがこの世のどこかに、もしかして身近に、いるのかも・・・?と思えることでしょう。
児童向けと言いつつ、大人でも十分に楽しめる作品です。
まずは1巻、『ダレン・シャン 奇怪なサーカス』だけでも是非、読んでみてください。
(個人的には4巻から一気に面白さが増していくと感じるので、できればそこまで読んでもらいたいところ・・・)