すがたかたち
鏡に写った自分の体つきや下着姿を見ることが苦な時期がありました。出来るだけ目に入らないように、過ごしていたように思います。それは年々存在を主張してくる下っ腹や短い足のせいだけではありません。
私は自分の性別に疑問があったのです。
明確に自認したのはだいぶ歳をとってからでしたが、片鱗はそこかしこにありました。
制服を着たくなかったり、長髪の自分を気持ち悪いと感じたり。下着などというものは、女性の象徴というイメージが強かったため、着用はするものの、出来るだけ関わらないように生きてきました。
社会人になった年、そんな私に母がクリスマスプレゼントをくれました。
レースのついた可愛らしい上下セットの下着です。
学生時代の物を長年使っていたので、不憫に思ったのかもしれません。
初めて手にしたちゃんとした下着でした。
可愛いなと思うと同時に、自分には似合わないだろうとも思いました。けれど、自分の体は女性です。
着用した姿を鏡で見ると、不思議と不快感はなく、最近の下着はお洒落だなあなどと感じました。それから自分でも購入するようになりました。
いつの間にか、鏡の前で下着姿を見るのが苦ではなくなっていました。
新しく買った下着を着けて、やっぱりお洒落だなあと思います。派手な色味に挑戦した日には、これでなかなかいいではないかと自画自賛までしています。
下着姿を見ると必然的にプロポーションが気になり、小さな願望が芽生えました。
綺麗に着たい。
そこには性別など関係ないのだと思える自分がいました。ずっと否定してきた自分を少し肯定できた気がします。
見た目がメンズライクだったとしても脱いだら凄いんだぜ、と誰に言うでもなく誇らしく思うほどに気が楽になっていました。
これからもお洒落な下着に出会えることを楽しみにして生きていこうと思います。
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