洋館の中で見つけた日記 104 【IWGP/池袋ウエストゲートパーク】
20☓☓年。
研究所にて自分らしさを忘れてしまうP-ウイルスが流出した。
瞬く間にウイルスは蔓延。
世界はポカンハザードに陥る。
ポカンから逃れるため古い洋館に駆け込んだ。
そこである日記を見つけた。
◆池袋ウエストゲートパーク
石田衣良の小説『池袋ウエストゲートパーク』は池袋を舞台にしている。
IWGPはその略称。
このシリーズは1998年から2010年にかけて第1シーズン10巻、2014年から第2シーズン8巻が刊行されている。
主人公は池袋西口公園近くの果物屋の息子、真島 誠(マコト)。
依頼された事件を解決して“池袋のトラブルシューター”と呼ばれている。
ときにギャングのGボーイズを束ねるリーダー安藤崇(キング)など魅力的な仲間がマコトを助ける。
作者が扱う題材はその時々の社会問題。
私は第1シーズンの10巻を読んだ。
東京を訪れたのは2016年。
小説の発売時から変化している部分もあるが物語を思い返しながら東京を観光した。
池袋は超高層ビル「サンシャイン60」を中核とした複合商業施設サンシャインシティがあり若者が集まる町。
東京に住む友人とパフェテラス ミルキーウェイで待ち合わせた。
店内は若い女性が多く、キラキラした星のゼリーが入ったカラフルな飲み物を飲んでいた。
友人と私はアイスコーヒーを注文。
2階のガラス窓からは池袋駅を見下ろせた。
沢山の人が歩いていて、制服を着た学生が連れ立って楽しそうに歩いていた。
その後友人に案内してもらってサンシャイン水族館の『へんないきもの展』にいった。
サンシャイン水族館はサンシャインシティの一角、ワールドインポートマートの屋根上にある。
砂と同じ色の平べったいカエルやペンギンショーを見た。
池袋駅西口を出ると白い大理石と円形の噴水と野外ステージがあった。
少し下町の方に歩くと、キングが利用していた雰囲気の焼き鳥屋やマコトの家のような八百屋を見つけられた。
東京の商店街にはびっしりと飲食店が並んでいる。
神田駅の中華料理店は中国人の方が営業していて、リーズナブルで本格的な味だった。
小説には外国人が多く登場する。
姉が中国の工場で過酷な労働をしている中国人、チャイナタウンの裏組織、最低賃金以下で働く技能実習生。
日本で安く買えるおもちゃは外国の過酷な労働環境によって生産され、技能実習生は不当に搾取される話。
東京にいると北海道と比べてコンビニやチェーンの居酒屋で働く外国人が多いと感じた。
友人に鳥貴族に連れて行ってもらった。
それから安くて美味しい鳥貴族をよく利用するようになったが、そこでも多くの外国人が働いていた。
ただし時間とともに状況は変わる。
以前の問題は改善されることもあるし、新しい課題が生まれる。
一つ最近の新聞記事を紹介する。
10月9日の日経新聞朝刊
『進む円安 細る外国人労働 ドル建て賃金4割減、生活環境改善も急務』
過去10年で主な外国人労働者は中国人からベトナム人に変わった。
円安や本国の経済成長で外国人が日本で働く魅力は下がっている。
したがって外国人労働者の賃金上昇につながる制度や魅力づくりをしないと外国人労働者は減り、日本全体の労働需給が逼迫する恐れがある。
東京を歩いているとラーメン店が多いと感じた。
看板に書いてある価格は500円ほど。安さにも驚いた。
調べてみると東京のラーメン店数は2,437軒で日本一。
2位の北海道1,384軒を大きく引き離す。
※『都道府県別統計とランキングで見る県民性(調査方法タウンワーク)』を参照した。URL:https://todo-ran.com/t/kiji/11806
ラーメンと言えばキングのボディガードの双子(通称ツインタワー1号・2号)。
双子はGボーイズを引退してラーメン屋を開いた。
そこで働くリスのように小柄な女の子は人前で食べ物を食べられないという摂食障害をもっていた。
私も摂食障害で悩んだ時期があるので共感した。
新宿の高架下にホームレスがいた。
ホームレスも北海道と比べて多いなと感じる。
小説ではホームレスから通称あぶれ手帳(日雇労働者非保険手帳)を取り上げて不正受給する話、非道な暴力の話などが扱われる。
ホームレスが売っているビッグイシューを知っているだろうか。
ビッグイシューは1991年にイギリスで始まった世界で最も発行されているストリートペーパー。
ホームレスや生活困窮者に定価300円で販売してもらい、その売り上げの50%を彼らの収入にする。
正当な報酬を得て、社会復帰できるように支援する活動だ。
一人のときは経路案内標識に書かれた主要駅を目指して歩いて観光した。
食事はマクドナルドとミスタードーナツ、宿泊は新宿のカプセルホテルかマンガ喫茶。
小説ではネットカフェ難民が扱われる。
非正規労働でいくら働いても現状から抜け出せないという話だった。
マンガ喫茶で寝ると足を伸ばせない。
周りの音や明かり、硬い床が気になり2時間おきに目が覚めた。
新宿のカプセルホテルを4日間利用した。
お酒の匂いがする中年男性や夜の仕事を終えた若い人がたくさんいた。
1〜3日は個室に泊まった。
10メートル四方ほどの部屋に2段重なったカプセルが20個ほど。
宇宙船のようだった。
カプセルの中はシングルベッドくらいの広さ、1メートル位の高さ。
4日目は大部屋に泊まった。
50人くらいの人がマットに横になり毛布にくるまって寝ていた。
サウナを出て大部屋に行くと足がつった。
睡眠不足だったしマクドナルドばかり食べていたので栄養失調になっていたようだ。
まず左の太ももがつり、そこを伸ばすと逆側がつって、体勢を変えると逆の足がつった。
従業員の方に小銭を渡してポカリスウェットを買ってきてもらった。
少し動けるようになって足を引きずりながら食堂に行った。
イスに着くと再び足がつる気がしたので床に足を伸ばして座り、肉じゃがを食べた。
ネットカフェ難民の生活は想像以上に過酷だということを身をもって知った。
これらの東京で感じたことは『池袋ウエストゲートパーク』を読まないと深く考えなかったことだと思う。
その他『池袋ウエストゲートパーク』第1シーズン10巻ではドラッグ、LGBT、集団自殺、オレオレ詐欺、リベンジポルノ、シングルマザー、キャッチセールス、放火、児童虐待、商材の高額販売、自転車事故、地下アイドルとストーカーなどが扱われている。
第2シーズンは2014年から第2シーズン7巻が発売されている。
私ははまだ読めていないが、
ノマドワーカー、YouTuber、ブラックバイト、美容整形などを題材にしているようだ。
最後に魅力的な登場人物を紹介したい。
私は主人公のマコトがどんな相手にも対等に接するところが好きだ。
警察、ヤクザ、ヤンキー、子供、ホームレス、外国人、オタク、困っている人、性的マイノリティー、引きこもり、社会的地位のある人など誰に対してもフラットに関わりを持つ。
趣味はクラシック鑑賞と読書。八百屋でクラシックを聞いている姿が面白い。
マコトの母は女手一つでマコトを育て、チンピラの脅しにも動じないパワフルな人。
シングルマザーのメンターになったり、身寄りのない中国人を養子にしたりする。
ゼロワンは凄腕のハッカーで情報屋。
ファミレスが根城。
なんとファミレスにてラーメンを出前する。双子のラーメン屋から。
ガス漏れのような声とスキンヘッドが特徴。
頭部に金属片をインプランティングして頭に直接メッセージを受信しているらしい。
水野俊司(シュン)はアニメオタクで特にラムちゃんが好き。
イラストが得意な専門学校生。
波多野秀樹(ラジオ)は電波マニア。
盗聴・盗撮・映像編集などの達人。
コンビニで働いていてマッシュルームカットが特徴。
貝山 祥子(ショー)はマコトの小学生時代の同級生。
元々の性別は女性だったが性転換して男性になった。
苦労を乗り越えた強さと優しさがある。
『池袋ウエストゲートパーク』は東京の池袋を舞台にしている。
タイムリーな社会問題、マコトと仲間たちの活躍、夢を追うことや人への優しさが描かれた物語だ。
私はこれまで東京23区の4分の3、千代田区から時計回りに目黒区あたりまで回った。
ストーリーを思い返しながら東京を観光するのは楽しかった。
この記事を書いていると、まだ読めていない続きを読みたくなった。
その後に機会があれば、石田衣良の『4TEEN』の舞台の月島やまだ行ったことがない品川区などを歩きたい。
『池袋ウエストゲートパーク』を知らなかった方はぜひ読んでみてほしい。
全国旅行支援が始まった。
旅行支援を利用して小説の舞台を実際に訪れて楽しむのもおすすめだ。
よろしければ東京観光の記事もご覧ください。