大阪のアホvs東京の男子校vsアンジェラ・アキ【M-1グランプリ2024】
まだ去年の令和ロマンのネタが脳裏に焼き付いているというのに、あっという間に一年が経っていました。
エムワン以上に熱いコンテンツって世界中どこ探してもないんじゃないか。
正直「コンテンツ」っていうのも失礼というか違和感があります。
目の前の人間を笑わせたい、幸せにしたいという人間の営み、そして生き様がこの大会にはあると思います。
日本でHIPHOPが流行らないのは「お笑い」があるからだという仮説はおそらく合っているだろうと思わざるを得ません。だってこんなに日本中を夢中にして、ときには誰かの人生を救い、ときには人生を狂わせる。それはHIPHOP流行らせるのそう簡単じゃないでしょう。
圧倒的な主人公感 バッテリィズ
東京で育った私としては、やっぱり大阪・関西への憧れというのがどうしても消えないんですよ。これはもうしょうがないものです。
「言うてる場合かー!!」
まっすぐにこのセリフを吐けるのは大阪人の特権です。私たちは死ぬまで口に出すことができないのです。
エムワンで優勝するのに必要不可欠なもの、それは主人公感だと思います。真空ジェシカも言っていました。ちなみに真空ジェシカは自分たちに主人公感が足りなすぎることを嘆いてましたが。
頭脳派絶対王者に立ち向かう、天真爛漫でまっすぐなアホ「エース」。
少年ジャンプ過ぎるでしょ。そんで芸名「エース」ってなんだよ。
(本当は、「芸名『エース』ってなんやねんって言いたいのに関東人にはできないのです。関西人には、言える幸せを噛みしめてほしい)
バッテリィズはほぼ初見でした。YouTubeでエースさんのギャグ「歌舞伎運転なり~!」を見たことがあるくらいです。
改めて考えてみると、実は漫才の型としては寺家さんのほうがボケなんですよね。意外にも。それがすごく新しいと思いました。
で、苗字「寺家」ってなんやねん、珍しすぎるやろ。せやかてせやかて。
少年ジャンプだったら絶対に優勝かっさらう流れなんですが、令和ロマンが異常でした。多分まだ一話目とかなんでしょうね。一回は負けるよ、みたいな。
ただ、次のエムワン、言ったら手の内がバレてる状態で優勝するのもかなり難しいと思います。今年のヤ―レンズみたいな立ち位置でしょうか。
二位の宿命ですよね。
あと、アナザーストーリーで、はるかぜに告ぐのとんずさん達が大阪の劇場でバッテリィズを迎えるシーン。ドラマじゃん。
とんずさんとか大阪の権化みたいな人じゃないですか。エースさんしかり。大阪にしかないあたたかさだと思います。
本来あの場にカメラがいるのは野暮ですよね、ごめんなさい、ウエストランド井口さん。でもあれは、見たいでしょ。
所詮いぐちんランドの言うことですからね~。
M-1を終わらせた男たち 令和ロマン
本当に終わらせたと思います。エムワン20回目の節目で、史上初の連覇。
だってまず優勝したのに出るっていうのがおかしい。
去年のエンディングでくるまさんが「来年も出ます!」って言ってスタジオ及びお茶の間をざわつかせましたよね。もうあの瞬間に私たちの心は完全に掴まれてしまっていたと思います。手のひらで転がされました。
今までこんな人居ましたか?
高比良くるま。ただのエンターテイナーですよ。なんというか、二本目のネタなんか特に顕著だと思いますけど、客を楽しませるだけの漫才ですよね、本当に。漫才のための漫才ではない。
良い意味で彼にはプレイヤー意識がないと思います。
エムワンというゲームに「高比良くるま」というアバターで参加していて、そのゲームをテレビの前でコントローラー握ってプレイしている本当の高比良くるまが居るんですよ。
だから、ゲームがおもしろければ良い。そんなような雰囲気を感じます。そういう人が優勝してしまうというのも皮肉な話です。まさにエムワンをハックしたと言えるでしょうね。
まったく関係ない話ですが、くるまさんとラッパーのJinmenusagiさんって纏っているオーラがすごく似ていると昔から思っています。インテリジェンスの奥に煌々と燃え滾る情熱を感じるんです。
両方知っている人、共感してくれませんかね。
非常に言語化が難しいのですが、冷静に見えて本当は熱い、いや、というよりも目的に対して誰よりも本気だからこそ冷静なんでしょうね。
冷静でいることが最適解だと知っているから。
お二方とも生粋のシティボーイですわ。
きっと未来のエムワン優勝者達は「令和ロマンより面白くなかった」と思われ、言われ続ける宿命にあるでしょう。それくらいとんでもないことをしてしまったと思いますよ。
だからこそ来年も楽しみなんですがね。
日本国民全員の内輪ネタ 真空ジェシカ
やっぱり人力舎推しの私としては応援してましたよ、今年も。
4年連続ですか。真空ジェシカが世に放たれてから4年が経つんですね。
私の感覚としてはまだ4年しか経ってないのか、という感じです。それくらい自分の中ではあたりまえの存在というか、ずーっと面白いので。ラジオ父ちゃんもギガラジオも聴いてるので。
過去のエムワンでは、内輪すぎると言われたり、はたまたもっと攻めてほしかったと言われたりと、振り回され続けていましたけども、なんだかんだ決勝まで進んでくるという圧倒的な実力。もう多分審査員は誰も川北を落とせなくなってますよ。
ファーストラウンドでは政治要素を入れてきました。この瞬間、どうしてもインターネット的な内輪ノリとしての枠組みを超えきることができなかった真空ジェシカが、国民全員の内輪ノリを成立させてしまったわけです。
それはもう手が付けられない。真空ジェシカは元ネタが分かりさえすれば面白いのは確実なので。
それで言うと二本目のネタのアンジェラ・アキ。このチョイスも絶妙ですよね。このネタ、いつ作ったのかは分かりませんけど、アンジェラ・アキっておそらくエムワンの視聴者全員知ってると思うんですよ。年齢層がちょうどいい。
でもそれでいてなんか分かんないけどそんなにメジャー感がない。
おそらくですけど、みんなで一緒にアンジェラ・アキを共有した時間って多分そんなになくて、各々が家のテレビとかYouTubeの動画とか合唱曲の楽譜とかそんなんで知ってるんですよ。これは自分がドンピシャの世代じゃないからなのかもしれませんが。
それが謎のインディー感を醸し出していて、内輪ノリブーストをかけているのではないかと思いました。
しかし、優勝はならず。
いや、正直見せ算ですよね、これ。見せ算枠。真空ジェシカはウケてたという点では違いますが笑。
台詞のない時間もたっぷりあったりして、明らかに「爆笑に次ぐ爆笑」みたいな優勝者に欠かせない尻上がりの感じのネタじゃないじゃないですか。
ただ単に川北さんがみんなに伝えたい”おもしろ”を紹介しただけですよね。
ただ、去年だかの密着インタビューで川北さんも「自分にはこういうネタしか書けないので何かを変えるってことはない」って言っていたので、本気で優勝しようとしていたかもしれません。確かに、優勝ネタのつかみが智春さーんは綺麗ですし。
だからこそ王道じゃないこのネタでの優勝も見たかったですね。
今年の顔 エバース
詳しくは知らないんですが、どうやら今年の賞レースでことごとく優勝していたらしい。ちなみにナイツもこのパターンで優勝を期待されたが、エムワンは取りこぼす、ということがあったようです。漫才のスタイルもナイツに似てますよね。
去年の敗者復活?だったかのケンタウロスのネタで初めて観たのですが、そのときから気になっていました。
エバースって電車で隣の人達の会話を盗み聞きしているときのようなリアリティがありますよね。言ったら全部アドリブに聞こえるというか。とてつもない技術だと思います。そのおかげで思わず耳をそばだててしまいます。
そうやって聞き入っているところで「流石に末締めだろ」
町田さん独特のキャラの味が徐々に効いてくるんですよ。なんなんですかね、町田さんのあのキャラ。髪型が奇抜かつ面長で高身長、全体を通して困惑しつつもたまに納得したり。見たことないあんな人。
強烈な個性で勝負するタイプではないと思うので、来年、再来年と決勝に上がってきたとしてもハードルは上がらないと思っています。なので優勝候補筆頭でしょうね。
ラスト・トム・ブラウン
扇風機のところが多分今年のエムワンで一番笑いました。捌けるまえの一言、「悔いはないです、ありがとうございましたー!」が爽やかだった。
また決勝でトムブラウンが見れてよかったです。
まーごめ ママタルト
まさか本家本元のまーごめが決勝で見れるとは。感動ものです。いや、本家ではないか。義丹さんか、ほんとの本家は。
私が最初にママタルトを知ったきっかけは「僕がもっと細ければ」というフレーズでした。懐かしい。
審査員から檜原さんのツッコミが立ちすぎてるって言われていました。確かに初見であのツッコミの面白味を伝えるのはなかなか難しかったように思います。
檜原さんの会話とかフレーズのテンポって独特で、ラジオを聞いてたりしても感じたことがあります。言語化が非常に難しいのですが、言うなればひとりで、ひとつのセリフで緊張と緩和を完結させているかのような。
なんかクセになるんですよ。
あれはツッコミというか「おもしろいこと言い」なんですよね。漫才の型としても大喜利系で真空ジェシカと重なる部分があります。
「僕がもっと細ければ」もツッコミではないですもん。ダブルボケに近い。
でもそう考えると往年のボケ・ツッコミみたいな関係性のコンビってもはや決勝にいたか?って感じなんですよね。令和ロマンの二本目とか思い返しても、ケムリさん人斬りまくってましたもんね。
ボケとツッコミって表裏一体だと思います。くりぃむしちゅー上田さんとかも、あのツッコミはもはやボケなんじゃないかと。
ここ数年で一番はっきりしているのは錦鯉ですかね。ぱっと思いつく感じ。
頭をペチーンと叩いてるのを見たとき、びっくりしたんですよ。なんか久しぶりに見たな、こういうのって。すごくストレートな漫才でした。私が子供の頃、漫才のイメージは完全にタカアンドトシだったのですが、いま思うとそういうタイプの漫才師って最近あんまり見なくなったように思います。
予選で面白かったコンビ
コーツ
私が今年のエムワン全体で一番面白かったのはこのコンビ、コーツです。
永田敬介に逆襲してほしいんですよ、結局は。この才能が決勝で観られないまま終わるのはお笑い界の損失とさえ思えますよ。
例えば「ミミズに家を追い出された」って完全に子供のときに永田さんが何かで目にしたフィクションのあるあるじゃないですか。そのときに感じたであろうちょっとした違和を、現在まで擦り減らせず持ち続けている。これって真似しようと思って出来るものではありませんから。
イチゴ
華がありますよね。ぱっと見たときに。エムワンで優勝するために結構大事だと思います。ボケのイクトさんは美大に通っていたとき、ラッパーのTohjiとルームシェアをしていたそうです。初めて聞いたときに謎の納得感がありました。
あと絶対触れなきゃいけないのはラパルフェですか。でもラパルフェに関してはいいよね、もう。ズルじゃないですかあれは。
M-1の歴史にひとつの区切り
つけたと思います、令和ロマンが。
連覇という形でエムワンのフェーズがいったん終わりを迎えたような気がしますね。苗字のあるあるネタという王道過ぎてもはや誰も手を付けていないようなところを使ってここまで完成させるのか、という圧倒的な技量とカリスマ。
なんか、合唱コンクールでいう課題曲と自由曲みたいでしたね、今年のエムワンの一本目、二本目のネタの感じ。特に令和ロマンと真空ジェシカを見ていると。
今年のエムワンは格別でした。