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人は何故、騙すのか。

 このお話は、今週私の身に起きた本当のお話です。自分で決断して選択した道とは言え、非常に後味の悪い終わり方だったので、誰かに聞いてもらいたいと思って記事を書いています。
 読んで頂いて、良かったら皆さんのご意見を聞かせていただけるととても有難いです!


◆Instagramで見知らぬ外国人からメッセージ

 このタイトルを見た時点で「ああ、あの話ね。」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、ことの経緯をお話しさせていただきます。
 私はエッセイ出版の為に、今年の元日よりInstagramを始めました。今までSNSから10年ほど遠ざかっていたのと、ペンネームでの活動とあって、フォロワーも数少なく細々と投稿を続けてきました。色んな投稿をしては、インサイトをチェックして、多くの人に見てもらえる投稿をするにはどうしたらいいかを自分なりに考えて頑張ってきたつもりです。

 で、先週あたりに誰か知らない人からメッセージが届きました。私のリール動画にコメントする形で
「とても優雅な女性。ひとつ質問してもいいですか?」
 そんな文章でした。その時点で、優雅って何だよ!しかも外国人かよ!!よくある詐欺か⁉︎と直感した私は、真実を確かめてみようと思ってしまいました。
 遊び半分だったのではなく、これが詐欺だとして、見過ごしてしまったら誰か別の被害者が出るかもしれない。それなら私で食い止めればいいんじゃないか⁉︎  という正義感からでした。自分の選択によって、誰かを傷つけることだけはないように。そしてその結末をキチンと受け止めようと心に決めて、返信をしたんです。

 私の返信には直ぐに返事がきて、当たり障りない会話を繰り返すと、相手は台湾に住む36歳の男性と言うことがわかります。
 会話の途中で、私にも少し興味が湧き、台湾では私の病気“複雑性PTSD”について、どの程度の認知度なんだろう? そんな疑問をぶつけてみたくなりました。
「複雑性PTSDって聞いたことありますか?」
と質問すると
「いいえ。教えてくれませんか?」
と返ってきて、詳細を説明。私が今そのことを広める為にエッセイを書いてることも話しました。そこからの話の食いつき方が凄くて、私が話を切り上げようと
「突然変な質問してすみません。ありがとうございました。」
と言っても、何通もメッセージを送ってきて、話を終わらせようとしませんでした。

 この時点で、私は
「まぁ、騙したいんだから、そりゃ必死になるよな。」
と余裕をかましていたのですが、でもまだ何かをされた訳じゃないし、もう少し様子をみようと会話を続けてみることにしました。


◆LINEで繋がりませんか?

 会話を続けていくと、本当かどうかは定かじゃないけれど、彼も学校でいじめに遭っていた過去があり
「私たちは同じ被害者です。私はあなたと互いに耳を傾ける人になりたい。」
と言ってLINE追加のURLが送られてきました。これは親友の証です、という文章と共に。

 私もバカじゃないので、めちゃくちゃネット検索しまくりました。ロマンス詐欺、LINE詐欺、外国人からSNSでDM…等々検索した結果、LINEへ誘導するのは常套手段とのこと。
「そうきたか。」
 私は調べたサイトをスクショしつつ、相手と会話を続けます。

 詐欺とか多いし、Instagramでもメッセージのやり取りできてるし、実際に2回変な男にひっかかった過去のある私は正直に不安であることを伝えます。すると
「InstagramよりLINEの方が安全です。今年5月にユーザーへの情報保障が向上しました。」
なんてそれっぽい文句を突きつけて、どうしてもLINEで繋がりたいと引き下がりませんでした。

 補足なのですが、ここまでの相手の会話は全て、何かで変換したんだろうな? と思われるような違和感を感じる日本語です。
 そこもまた怪しさを増してるんですよね。


◆食事の写真やボイスメッセージ

 そうこうしている内に、展開はどんどん進みます。
 日本では詐欺のニュースも多いし、この流れどうみても詐欺だし、ひとまずオブラートに包んで
「お互いにフォローし合ってるわけでもないし、顔も知らないし、LINEで繋がるにはお互いをもっとよく知ってからでも遅くないと思いませんか?」
と伝えました。すると
「わかりました。」
と言って、私をフォローした後に自分の名前や職業、趣味なんかを語り始めます。そして私を信用させる為なのか夕食の写真が送られてきました。
-いやいや、それすらも信用するに値しないでしょ!
と心で思いつつも、私も開示できる情報は渡します。
 そして幾つかわかったことは

・彼の英語の名前はJ(訳あって実際の名前は伏せておきます)
・オーダーメイドのスーツを作っている
・絵を描いたり、美術館へ行くのが好き
・趣味はフィットネスと旅行

 機械が大の苦手の私が、頭をフル回転させてネット検索していくと、Jとは違うInstagramのアカウントがヒットしました。その人のプロフィールページを開くと、そこに投稿された写真の中に、幾つかJが投稿している写真と全く同じものが存在します。
 私は浮き足だって
「詐欺の証拠を見つけたぞ!」
とJに突きつけてみようとしたのですが、ここからちょっと状況が変わっていきます。


◆あれ? 本当は詐欺じゃないのかな…?

 初っ端からロマンス詐欺か何かだと疑ってかかっていた私ですら、相手が必死に訴える姿に疑問を抱き始めます。Jが本当に詐欺師なら、相手を騙す為の演技に過ぎないので必死なのも頷けますが、私の心が揺らぎ始めます。
 自分も過去にInstagramのチャットを通じてロマンス詐欺にあったとか、偽装した仮想通貨取引所を通じて資金を投入させようとしてきたとか、だからInstagramのチャットが怖いとか。それなら何で私にメッセージ送ってこれたんだよ!と突っ込みたくもなりましたけど、
「私について話しました。これでお互いをある程度知っていることになりますよね? だからLINEを、、、」
と何を言っても折れなくて。。。

 そして突然、私を説得する為なのか、ボイスメッセージを送ってきたんです!!!
「不安ならボイスメッセージ送ります。今幾つか送って、LINEで登録した後にも送ります。」
って。詐欺集団は色んな言い訳をしてテレビ電話をしたがらないと書いてあったので、だからボイスメッセージなんだろうなと思いつつ、私の中の私たちで緊急会議を開きます。

「みんなどう思う?」
『いや、これどう見ても詐欺でしょ。』
『そうだよ。証拠あるし!』
『てか、Jと同じ写真投稿してる人、乗っ取られてるのかな?』
『写真の投稿日を見ても、あの人の方が先にアップしてるもんね。』
『でも、送られてきたJの自撮り写真とあの人の顔同じだったね。』
『あの人にメッセージ送って、Jに使われてるよって言ったほうがいいのかな?』
『いやいや、もう少し様子みたほうがいいんじゃない?』

と様々な意見が出た中で、私の中の怪獣が
『もしかしたら本当は詐欺じゃないのかもしれないし、信じてみてもいいんじゃないかな。』
と自信なげに言ったのです。
 信じてみて、やっぱ詐欺でしたってなる可能性は大いにある。そこで私だけならまだしも、家族や友人知人に何か被害が及んだらたまったもんじゃない。
「ちょっと信じちゃうのは怖いよなぁ。」
 暫く会議を続けた後、Jに予め投資やお金にまつわる話は一切出さないことを前提に、Instagramのメッセージでのやり取りは続けることに。でも、JはやっぱLINEがいいと言って引かないんですよねー。心の中でたっぷりの溜め息をついて
「LINEを登録したとして、知らない人から急に連絡くるとか、投資グループに入れられるとか、情報売られるとかないですよね⁉︎」
 もうこうなりゃ直球勝負だ!と思ってること全部伝えて、それでも
「もちろんです。」
なんて言うから、私の中の怪獣はすっかり信頼モード。他のみんなはやめた方がいいと思ってるんだけど、ここは怪獣の成長を見守ろうということになりました。
 そして遂にLINEでJを友達追加することにしました。


◆証拠を突きつけてさよならだ、と思いきや…

 ネットに疎い私はこの時まで、Jから送られてきた写真をネットで検索にかけられるということを知りませんでした。質問掲示板みたいなやつ? で、これって詐欺ですかね⁉︎と質問する人に
「明らかに詐欺です。写真もネットから拾ってきてるようですし、早めに手を打った方がいいですよ。」
なんて返信してる人を見て、どうやって調べるのか試行錯誤しながら、Jから送られてきた写真を調べました。

 LINEで友達追加した翌日も、朝食の写真とかボイスメッセージが送られてきて、だんだん私の心の中がザワザワし始めました。
 信じてみたい怪獣と、やめた方がいいと思いつつも見守るみんな。そしてどうするか判断を迷う私。そのせいで食欲もわかなくなって、昨日は夜も眠れなくて、コンディションは最悪。しかもそんな日に限ってトラウマ治療がある。いつまでもこんな気持ち引きずってたら、日常に支障をきたすどころか、やるべきことが何も進まない。
-もう終わらせたい!!!
 焦った私は、トラウマ治療へ向かう道中、意を決してJにあの人のアカウントの存在を伝えて
「私を騙してましたよね? 私たちの関係はここまでです。」
とLINEに送って、早速ブロック。Instagramもブロックして、Jが写真を使っていたであろうあの人のInstagramに事情を説明してJのアカウントの存在を知ってますか? と正義感を振り翳したメッセージを送った。

 そしたらですよ。この時ほど自分は探偵気取ってたんだなと思い知らされたことはありません。何が起こったか、想像できますか…?




 Jが写真をパクってだんだろうなと思ってたあの人のアカウントも、Jのものだったと言うことが判明したんです。
 何故わかったかと言うと、私が別人だと思って送ったメッセージにJが返信してきたからでした。これは私のメインアカウントだと言ってきました。
「え!?嘘でしょ!??どうゆうこと???」
 私の頭はパニック状態です。
「あなたは酷い。私を裏切った。どうしてそんな酷いことかできるのか。私たちの信頼は破綻しました。」
 そんな文言を送られて、一瞬で血の気が引いていく。マオ先生の元へ向かう途中、頭の中はドウシヨウで埋め尽くされました。焦った私は
-最後まで信じられなかった私のせいだ。
と自分を責め始めます。怪獣は
『やっぱり信じてよかったんだ。』
と少しホッとしたりして、でもでも
『え⁉︎だって送られてきた朝食の写真見たでしょ⁉︎あれ画像検索したら、全く違うアカウントで使用されてたじゃん!しかもJよりも1ヶ月も前に投稿されてる。間違ってないよ!』
 そう言ってくれる私もいました。状況的には詐欺の匂いがプンプンしてるのに、予想だにしなかったことが起こって、Jに責められて、私は正確な判断ができない状況になっていたのです。
 そんな状況の中でも、送られてきた朝食の写真が誰かの使い回しだったことを説明してとメッセージを送りました。それでも誰かが勝手に使ったんでしょうと言うし(明らかに怪しいんだけど)、だったら今すぐビデオ電話できるかと言っても
「これ以上自分のために証明したくない。」
と言うし。もう昼ドラに匹敵するくらいのドロドロ具合。
 そしてふと、こんなことを思ったのです。

「Jは嘘をついてなかったのかも。」

 とにかくJはたぶん凄い怒ってて、でも私も頭がごちゃごちゃで、
「今から病院なので、後で連絡します。」
と伝えてマオ先生の元へ急ぎました。

 ワークの中で、やっぱりJとの出来事が姿を現して、色んな感情が渦巻いて、私の中の怪獣が過呼吸を起こし始めます。私の心臓もバクバクで、胸の辺りのザワザワは増す一方。そこへ私の中の私たちみんなが集まってきて、
「みんなでこの子を守ろう!」
と言って、輪になって怪獣を囲って、この子を傷つける出来事や悪意から守ってあげていました。すると不思議と心臓も穏やかに脈打ち、ザワザワも消えていきます。

 私の中に住む怪獣とは、幼い頃から母親に色んなことを言われて罵られてきて、自分は醜い生き物だと思い込んでいる私でした。怪獣と言っても可愛らしい七色の怪獣の着ぐるみを着込んだ私で、素敵な心を持っているのに、私は醜いからと曝け出さずにいる。
 私はJとの出来事を、この子の成長に繋げたいと思いました。私たちが、怪獣の“純粋に信じる心”を守ってあげれば、円滑なコミュニケーションをとっていけるんじゃないかと思って、ワーク終了後に早速Jへ連絡します。メッセージの内容も怪獣の気持ちになって書きました。

 臨床心理士の先生と、トラウマ治療をしてきました。私の話が理解できないかもしれないですが、全部伝えます。
 私は多重人格ではないけど、心の中にたくさんの“私”がいます。母親から虐待されて、生まれてこなければ良かったと言われて、傷ついた私がたくさんいます。
 私があなたを信じていないと言う言葉は、その通りなのかもしれない。でも、私が1番信じられないのは自分自身です。最初から思っていました。あなたのような素敵な仕事に就いて、しっかりと自分の足で立っている人が、何で私なんかにメッセージを送ってきたのか?そんな人が、何故私なんかと友達になりたいと思うのか?心の中の私は、自分が醜いと思っているから、あなたの気持ちが理解できていませんでした。
 あなたを信じられず、色々と詮索してあなたを傷つけ怒らせました。最初から、ありのままのあなたを信じることができなくてごめんなさい。

 いや、本当は詐欺なんでしょ⁉︎  なんて気持ちも充分にあるんですよ? でも、私の中の怪獣は誰かを最後まで信じていたかった。
 ただ、既にJを傷つけたあとで、取り返しはつきませんでした。もう連絡してこないで欲しいと言われ、私は素直にわかったと返事を送りました。

◆詐欺に引っかかりそうになってわかったこと

 そう、多分あれは詐欺でした。信じたいと思う怪獣の心がそれを曇らせるけど、詐欺だと確信するような事実は確かにありました。
 でも、自分で選択して進んでみて気づいたのは、終わってみた後の心が抉られたような感覚でした。

 私はJを傷つけてしまったんだろうか。
 最後まで信じてあげられなかった。
 せっかく友達になれたかもしれなかった。
 何であんなこと言ってしまったんだろう。

 心の中は、何故だか後悔で埋め尽くされました。
 私はハナから疑ってかかっていたのでまだいいんですが、これ本当に相手を信じていたらどうなっていたんだろう…とちょっとゾッとします。
 こうして記事を書いている間も、ずっと
-私が悪かったのかな。
と思っています。そして、Jは本当は詐欺師ではなく、私も最後まで信じてあげられた筈の未来を想像したりしてます。
 ロマンス詐欺⁉︎  なんだそれ、なんて鼻で笑ってた自分を恥ずかしく思いました。騙される方が悪いと思ってだんだけど、実際に私も心は揺らいでるし、純粋に信じていて結果詐欺でした、となったら、被害にあった方の心はそれは深い傷を負ったのだろうなと“今の私”ならわかります。

 みなさんは、こんな体験ありませんか? そして私の体験についてどう思われますか??
「詐欺で間違いないでしょ!」
「いや、違ったんじゃないの…」
などなど、ご意見聞かせていただけると嬉しいです。今後の私の生き方に反映させていただきたいです。

 はぁ。まだ胸は少しざわついてる。
 でも、自分に約束。無理はしない。

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