『天啓予報』シリーズあらすじと見どころ
2024年12月1日の「文学フリマ東京39」で領布した4冊それぞれのあらすじと、個人的な見どころ解説です
『天啓予報』 あらすじ
高校一年生の槐詩(かいし)は両親を亡くし、一人暮らし。アルバイトで生活費と学費を稼いでいる。
彼はある日、幼馴染の楊(よう)の紹介でアルバイトの面接に行く。だがレストランの楽師のアルバイトのはずが、ホストクラブ面接だった。槐詩は「芸は売っても身は売らない」と、ナンバーワンホスト・柳東黎(りゅうとうれい)の勧誘もきっぱりと断って帰途に就く。
帰り道、港湾で大きな爆発が起こり、さらに槐詩は路地で知らない男とぶつかり、男は口から金魚を吐き出して死ぬ。槐詩は警察に通報する。その夜、槐詩は何度も怪物に殺される夢を見て何度も目を覚ます。槐詩がやっと安らかな眠りについて再び目覚めた時、彼は完全武装の兵士たちに銃口を突きつけられていた。
槐詩は謎の機関に連行され、尋問される。そこにホストの柳東黎がやって来て、不思議な能力を使って槐詩を尋問する。槐詩は柳東黎の証言もあって港湾の爆破事件と無関係であることが証明され、尋問から解放される。
だがそれは、柳東黎の上司、車椅子に乗る謎の美女・艾晴(がいせい)の策略だった……
※見どころ
『天啓予報』最初のエピソードなので、基本的な世界観、登場人物などが解説されています。物語としては、一市民だった主人公・槐詩が、不審死に遭遇したことにより運命が変わり、烏鴉におちょくられつつ助けられ超能力者として覚醒し、冷酷美女上司・艾晴やホスト兼先輩の柳東黎等に虐げられつつ助けられ、無茶ぶりの任務に臨んでいくところだと思います。出番は少ないですが、最終決戦で超能力者として主人公よりはるかに実力を持った白帝子や符残光のアクションシーンもカッコいいです!
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『天啓予報 風評被害槐詩ちゃん』 あらすじ
天文会の工作員・槐詩(かいし)は、昇華者として第二段階にレベルアップし、山鬼(さんき)の能力を身につける。だが、山鬼が女性であることから、槐詩の外見は女性的になってしまう。
ある日槐詩は、上司・艾晴(がいせい)と共に緊急動員で金陵(きんりょう)支部に行く。天文会の海溝監獄からテロ組織「緑日(ろくじつ)」の囚人が脱獄したため、金陵支部内の内通者を外部の工作員によって探し出すのが目的であった。
槐詩は前からの予定通り、ついでに昇華者としての登録をするが、その際に緑日の風評(ふうひょう)によって拉致され、人質にされてしまう。
脱獄に加担した緑日のメンバーは天文会に退路を封鎖されたが、天文会の人間を七人人質に取り、天文会に封鎖を解くよう要求する。そして封鎖を解かなければ、人質一時間に一人ずつ殺し、それを闇ネットで実況するという。時間は過ぎ、人質は二人殺され、三人目として槐詩が殺されることになり、まさにその様子が実況されようとしていた……
※見どころ
『天啓予報』で、槐詩が14歳の美少女白帝子(はくていし)に告白したという誤解が広まってしまったために、槐詩が天文会の同僚たちからいわれなき中傷を受けるところは、日中の文化の差を感じました。テロ組織「緑日」の老人は、ここでは明言されていませんが『丹波動乱』で迫害されている「獣化特徴者」の一人と思われます。また緑日の風評が初登場しますが、彼は後の『丹波動乱』でも再登場します。
『天啓予報 金陵擾乱』 あらすじ
槐詩(かいし)は艾晴(がいせい)が政略結婚のために実家に戻ったと聞き、艾晴を連れ戻すために金陵にある彼女の実家へ行くことにする。
艾晴の実家・陰家(いんけ)の報復を危惧した柳東黎(りゅうとうれい)は槐詩を止めるが、槐詩は構わず金陵へ出発する。
艾晴の実家ではちょうど彼女の祖父の陰良驥(いんりょうき)の100歳の誕生日の祝宴が行われようとしており、艾晴と政略結婚の相手の婚約発表もその場で行われる予定だった。
柳東黎の後方支援を受けて艾晴を陰家から連れ出すことに成功したした槐詩だが、艾晴の従兄は、槐詩と艾晴の命に四億ドルの懸賞金をかける。
逃亡する二人の行く手に、賞金稼ぎの殺し屋が次々と現れ、その中にはかつて槐詩や艾晴とともに戦った里見琥珀(さとみこはく)の姿もあった……
※見どころ
槐詩と艾晴の、お互い憎からず思っているのに素直じゃない関係が超萌えです。翻訳しながら何度萌え死にそうになったか!艾晴は超ツンデレヒロインです……白馬に乗って闘う槐詩がかっこいいです。
『天啓予報 丹波動乱』 あらすじ
瀛洲(えいしゅう)の厨魔大会に参加した槐詩(かいし)は、艾晴(がいせい)からの指示でそのまま瀛洲の「獣化特徴者」、通称「混血種」である遺伝子学研究者神城未来(かみしろみらい)の捜索を命じられる。神城未来は研究室から危険なウイルスを持ち出して失踪していた。
懐紙素人(かいしもとひと)と名を変えて、混血種によって組織された暴力団に加入した槐詩は、そこで極道としての頭角を現しつつ、神城未来の行方を捜す。
同じ頃、槐詩の元同僚・柳東黎(りゅうとうれい)はシャンバラの療養所から失踪しており、槐詩は柳東黎の実家であるテロ組織「緑日(ろくじつ)」からも捜索を依頼される。
柳東黎はかつて、緑日と天文会の衝突を回避するために天文会の一員となり、そこで獣化特徴者人権保護草案の起草に関わっていた重要人物であったが、獣化特注者の代表とアメリカ共同体の代表の会談の行われる地で4万人が虐殺されるという「フォイエルバッハ事件」に遭って生き残り、それ以来、彼の体は毒に侵されていた。だが彼は以前天文会で末日警備員として働いていた時の能力でタイムリープを行い、槐詩や天文会の捜索の手を逃れていた。しかしタイムリープを行うための膨大なエネルギーを彼がどこから得ているのかがわからず、また彼の目的も不明だった。
神城未来は研究室から持ち出したウイルスで、短命な獣化特徴者を不死の怪物・スワンプマン化さることに成功し、そのウイルスを秘密裏に拡散していた。ウイルスが潜伏期間を過ぎて爆発的にスワンプマン化が起こる前に、天文会は丹波内圏に対して浄化プログラムを起動することになる。
スワンプマンウイルスの発現を防ぎ、丹波内圏を救うために、槐詩に残された時間はわずかだった……
※見どころ
限りなく現代日本のような架空の国・瀛洲が舞台だというところでしょう。しかも槐詩は瀛洲人になりすまして日本の暴力団に潜入するという、もうそれだけで面白いです。天文会の本部と瀛洲支部の確執や、緑日と日本の極道の繋がりなど、物語はかなり複雑で、しかもSF的要素が強いエピソードです。柳東黎の意外な過去も明らかになります。槐詩が獣化特徴者の生活向上という目的のために行動しながら、自分がしていることに意味があるのだろうか、これまで同じ志を持った人たちのように自分も失敗するのではないかと揺れ惑う心理が若者らしいです。初登場時の自分のことで精一杯だった頃に比べると、成長ぶりがうかがえます。