大中の中国
《中華雑貨「大中」、最後の原宿店が3月末に閉店》 という記事が出ていた。
「大中」が全国的にどれだけ有名なのか判らないが、上に書いてあるとおり「中華雑貨」のお店だ。
僕は、1970年代の終り頃、東京に出てきた。
その当時から「大中」というお店が、よく行っていた渋谷にあったのか記憶にないけど、いつ頃からか「大中」に行き始めた。
そこでは色んなものを買った、安かったから。コップとか、時計とか、そこそこ実用的なものから、役に立たないチープなおもちゃまで。
当時、中華雑貨を扱うお店は他にもあって、「宇宙百貨」とか、中華雑貨だけでは無かったけど「文化屋雑貨店」などにも、チープな中国製のおもちゃは売られていたと思う。
それらのお店で売られているポップな中華雑貨は「毛沢東」でさえ、かわいく思えるカンジ。ここでの中国のイメージは「安い・可愛い・オシャレ」だ、今ほど、反中感情も、反日感情も無かったのだろう。
僕にとっても中国は無だった、のちに中国人と結婚するとか、中国に住むとか考えた事も無かった。
まったく深く考える事無く中国製品を受け入れていた。
だが、「大中」が無くなるのは必然だろう、もう中国に、おもしろい雑貨が存在しなくなったのだ、中国は独自に育てた「安い・可愛い・オシャレ」を捨ててしまった。
1980年代の終りに中国に初めて行ったのだけど、その時には北京にでさえ「大中」の中国は残っていたのだけど、2015年に来た中国には、すでに
「大中」の中国は無くなっていた。
中国は発展のために中国を捨ててアメリカになろうとしている、地方都市は取り残し、都会は最先端の近代化を目指し、金魚の泳ぐ絵柄の湯のみ茶碗は捨てて、スターバックスのマグカップでお茶を飲む。
みんなでiPhoneを持って、外車に乗る、それが中国人の近代化だ。
地方都市も都会について行こうと必死で、形だけまねた発泡スチロールのマンションが立ち並ぶ。
1970年代にあった「大中」の中国は、あと30年もすれば中国人が懐かしむ宝石箱のような店舗だと思う。
しかし、もう売るものが無い、粗悪な偽スターバックスのマグカップとか、ナイキをマネしたネイキのシューズ・・・そんな違法なモノしか面白いものは無くなってしまった。
今、「大中」に行っても、昔の中国をイメージしたオリジナル商品がほとんどではないのだろうか・・・
中国にいてさえ中国らしさが無いと感じるのは、「大中」が無くなるより淋しい。
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