梅宮辰夫さんのやさしい思い出。
2時間ドラマが全盛だった時代。
ある2時間ドラマの、一番下っ端の助監督の仕事についた。
まだ助監督になって2本目ぐらいの仕事で、我ながら出来の悪いポンコツ中のポンコツだった。
主演は梅宮辰夫さんと三田佳子さん。
古い日本映画ファンなら二人が共演した映画を何本も思い浮べる事が出来ると思う。
僕もそんなファンだったのでその二人の共演にちょっと興奮した。
TBS制作の2時間ドラマはリハーサルが多い、そんなリハーサル室で梅宮さんに困らされたのか、助けられたのか、の思い出がある。
梅宮さんはどんなスタッフだろうと、対等に話してくれる、偉ぶる事のまったくない人だ、そんな梅宮さんに声をかけられた。
今思えばポンコツで、怒られてばかりいた僕を見かねて、救う意味で助け船を出してくれたのかもしれない。
僕の隣にそっと来た梅宮さんが「ピストルはさあ......」そんな話題だったと思うが話かけられた。
当然大スターに緊張するが、梅宮さんは話続ける、今ではその緊張した雰囲気しか記憶にないが、これが困った。
いくらポンコツ助監督でも、先輩スタッフは梅宮さんが熱心に話しているので、僕を「早く、こっちに来て仕事に戻れ!」とは言いづらい。
僕もポンコツなので、梅宮さんの話をさえぎって「仕事に戻ります」とは言いづらい。
そんな事で、リハーサルはどんどん進むが、僕と梅宮さんは、見た目には{話し込んでいる}状態。
梅宮さんが僕を離さないので、リハーサルに参加出来ない。
かなり長い間だ。僕より上の助監督は当然面白くない、一番下っ端の助監督が大スターと話し込んでいて、するべき仕事をまったくしていない、先輩たちが雑用を全部しなくてはいけない。
タップリ20分はたった頃、梅宮さんがリハーサルに参加する場面になって、ようやく{話は終った}
そのあとの記憶はないけど、あとで監督に怒られた。
「お前がナニを梅宮さんと話す事があるんだ!」
確かに...... 返す言葉もない。
それから3年後、違う2時間ドラマで梅宮さんとご一緒したのだけど、3年たって、ちょっとポンコツから抜け出した僕に、梅宮さんは、ごくごく普通に接してくれた。
やはり、あの時は、怒られすぎていた僕を気遣ってくれていたのだろう。
こういう人が本当のスターなんだと思う。
少し寂しい。