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和歌山市で見かける〈台湾〉

今日は、わたくしの住んでいる和歌山市を、台湾というフィルターをかけつつ、歴史的なつながりや台湾と似た雰囲気の場所を中心に紹介したいと思います(飲食店については別の機会に紹介したいと思います)。

和歌山市民図書館移民資料室

(南海和歌山市駅と和歌山市民図書館)
(南海和歌山市駅から見た和歌山市の風景)

南海和歌山市駅の3階に設置されている和歌山市民図書館移民資料室は、かつて海外移民の多かった和歌山県が郷土の重要な歴史として捉えることを目的に1984年に開設された国内の公立図書館で唯一の移民専門資料室です。

明治期以降に海外へ移住した日本人に関する資料を収集保存しており、ハワイや南米、満州国に関する移民資料が多く保管されています。台湾に関する資料も少なくなく、国立国会図書館のデジタルアーカイブと組み合わせて調べることで日本統治時代の台湾についてより深く理解することができます。

ときおりわたくしもここで調べ物をしていますので、見かけたときは声をかけていただければ。

雑賀崎のタイワンリス・友が島のタイワンジカ

(雑賀崎のタイワンリス このふくよかさはちょっとびっくりもの)

アメリカでは都市公園にリスがいることが一種のステータスとされることがありますが、日本でも例外ではありません。和歌山市では市内各地でタイワンリスを目にすることができます。和歌山のタイワンリスは、もともと和歌山城動物園で飼育されていたものが逃げ出したものといわれており、和歌山城公園界隈では多数見かけます。和歌山市東部の名草山や大日山などではほとんど見かけませんが、西部の雑賀崎に行くと多くのタイワンリスが棲息していて、餌付けされているのか、体格がずんぐりむっくりしたふくよかな個体が多くみられるのが特徴です。

(ラピュタの島・友が島)

ちなみに、ラピュタの島・友が島に生息するタイワンジカやクジャクも「なぜここに?」と思わせる存在。
台湾ではすでにタイワンジカは絶滅していますが、1950年に友が島が瀬戸内海国立公園に編入されるのにあわせ、南海電鉄が観光開発の一環として導入したもので、その後、1955年には向かいのみさき公園でも観光目的で放たれています。関西では奈良公園のシカが特に有名ですが、友が島のタイワンジカは現在では約50頭まで増えています。ただ、わたくしが取材したときは見つけることができませんでした。

台北紀州庵の末裔が営む〈ヒラマツ〉

(ヒラマツ 城東店)

ペリカンマークのスーパーマーケット・ヒラマツは、もともと日治時代に台北市西門と川端町(現在の同安街)で料亭「紀州庵」を営んでいた平松氏一族が第二次世界大戦後の1964年に和歌山市で開業したスーパーマーケットです。

台湾に特化した専門商店ではないため台湾らしい食材が手に入るというわけではないのですが、ほとんどの和歌山市民はヒラマツを知っていて、「紀州庵」との関係を知ることで新たに親しみを覚える「台湾迷」も増えてきています。かつてヒラマツは和歌山市各地に展開していましたが、現在はオークワの傘下として、城東店(和歌山市元町奉行町2-69-69)の1店舗のみが残っています。

(台北同安街「紀州庵」 ここに行くと和歌山市のパンフレットが手に入る)

ヒラマツの歴史は、単なるスーパーマーケットの枠を超え、和歌山と台湾のつながりを象徴する一つの物語といえるかもしれません。

本とマジョルカタイルの〈本町文化堂〉

本町文化堂(旧・本屋プラグ)は和歌山市北ブラクリ丁商店街の西詰向かいに位置する独立系書店で、新刊書や古書・絵本・ZINEはもちろん、雑貨や野菜など、さまざまな商品を取り扱っています。また、書籍や社会科学に関するトークイベントが定期的に行われていて、和歌山市から多彩なカルチャー情報を発信する場所として知られています。

(よく見ると、野菜が売られています。なにゆえ野菜?)

さてこの本町文化堂、実は台湾に関する造詣もとっても深く、建物のファサードに施されたマジョルカタイルや、絶妙にセレクションされた台湾書籍・雑貨からそのこだわりをうかがい知ることができます。ここで台湾探しをはじめると、おそらく、いくら時間があっても足りなくなるんではないかと思っています。

(マジョルカタイルが美しい)

わたくしは普段から思うのですが、書店や喫茶店は単に本を買ったりコーヒーを飲んだりする場であるだけでなく、そこから伸びていく幅広な価値にこそに意味があると考えています。

台南神農街の原型〈じゃんじゃん横丁〉

台南市中西区に位置する「神農街」は清朝時代から続く歴史的な街並みを持つ老街。近年では文創(文化創造)とよばれるショップやカフェ、ギャラリーが立ち並び、夜になると赤い提灯が灯り、多くの観光客や地元の人々が訪れています。

(こちらは台南神農街)

ところで和歌山市には台南神農街の原型となる空間があります。

じゃんじゃん横丁とよばれていて、戦後すぐに建てられたストリップ劇場の横丁にあった飲み屋街なのですが、大阪のジャンジャン横丁(南陽通商店街)のように栄えるようにと1955年に名づけられました。

(そして、こちらはじゃんじゃん横丁)

平成に入り、ストリップ劇場が廃業してから一帯は建て替えの計画があったのですが、オーナーは「このレトロモダンな建物にこそ価値がある!」と言って残したという逸話があり、この一角は改修を重ね、カフェやギャラリーが並ぶ瀟洒な空間となり、現在では和歌山市随一のフォトジェニックな場所として知られています。

(ここのコーヒーショップは国内外に知られている)

再現度の高い和製台湾夜市

(映画「ブエノスアイレス」のラストシーンを彷彿とさせる)

また、和歌山市では和歌山日台交流協会の主催による〈わかやま夜市〉というイベントが毎年秋に行われています。ボランティアベースのイベントですが、2017年10月に和歌山市の七曲(ななまがり)市場で行われた初回のイベントは、あまりにも台湾の再現度が高かったことから観光客が殺到し入場制限になったほど。こだわりぬく和歌山人がわかるエピソードだったりします。

(ここが和歌山だとは思えない)

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