語感の言語化練習#4〈虎に翼〉
今の朝ドラが始まるまで「虎に翼」という慣用句を私は知らなかったので、心のなかで「鬼に金棒」に変換して理解していた。しかし「鬼に金棒」は「もともと強い者に対してそれに似合う強力な武器を与えることでさらに強くなる様子」という語感だったが、「虎に翼」はむしろ普通ではない組み合わせだ。実際、翼の生えた虎は想像しにくい。キメラかペガサスの類を連想してしまう。 スペックの高い剣士キャラクターに聖剣エクスカリバーを装備させることは「鬼に金棒」に違いないが、同じ剣士に「賢者の杖」を装備させるのが「虎に翼」ではないか、というのが私の語感だった。
「虎に翼」の用例を探していると、東洋文庫の『中国古代説話集』に「虎に翼」の項目があった。
この文脈では「翼」は天子の権力であり「虎」は腕っぷしの強さといった武力を意味しているようだ。やたら生産性だけは高い粗暴なアルバイトを時間帯責任者に上げてしまうようなものだろうか。フィジカル面での強さが増すという意味での「鬼に金棒」の語感とはだいぶ違う。
朝ドラの「虎に翼」を見ていないので、この慣用句のドラマでの意味については何も言えないが、用例を見る限りではあまりいい意味ではなさそうだ。