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6月の語学学習まとめ 時間こそパワー

6月の語学学習をまとめる。先月の反省やこれからの計画、現在位置を確かめる機会としたい。

語学の上達において何が一番大事か。「時間」というのが、自分がたどり着いた結論だ。よって勉強時間は愚直に計測と分析をしている。6月の各言語の勉強時間は以下の通り。

ドイツ語 69時間
フランス語 62時間
ロシア語 26時間
ポルトガル語 19時間
英語 8時間
その他(語感の言語化練習) 12時間

合計すると196時間で、5月の237時間に比べると少ない。この原因ははっきりしていて、5月は1日も働かなかったが、6月は労働の日が7日あったからだ。一応、仕事の日も通勤時間などの耳だけが暇な時間に聞き流しで何かしら外国語を聞いていたので、その時間(がんばれば一日3時間くらいは聞き流せる)を入れても良かったが、仕事を控えていると緊張やらプレッシャーやらでまったく勉強になっていないと感じる(帰宅の電車では緊張が取れて眠くなる)ので、その時間はカウントしていない。出勤日一日で過処分時間が10時間くらい削られる(午前7時半に家を出て、午後5時半に帰宅)ので、その分を加味すると5月並みに勉強をしたのではないかと思う。もちろん時間だけ増やせばいいというものでもないが、いかに時間を確保するか、タイムマネジメントが語学の上達において最重要であることは間違いない。つまり、できる限り働かなければいい。

学習の比重
現在は、同水準にある二つの外国語を同時並行で学習をするとどうなるかを個人的に実験していてフランス語とドイツ語がその二つになる。両言語は本格的に取り組み始めてから半年くらい。ロシア語とポルトガル語と英語は数年以上の学習歴があって、忘れないためのメンテナンスというゆるいスタンスでやっている。この力点の置き方も半年以上変わらない。6月に新しくやってみたのが、語彙力の底上げで「語感の言語化練習」として一つの単語を取り上げ、辞書ごとの語釈を比べたり、用例を調べあげて、自分なりの語感のズレを言葉にしていく作業を自分に課した。取り上げる語は「受動語彙にはなってるけど、自分が書く文章では使わないかな」と思うようなものにして、自分の語感と辞書の説明がどうも合わないものにした。各外国語の和X辞典を通して日本語の意味を考察したり、AIに自分の語感をどう思うか聞いてみたりした。これと似たような作業は、外国語を勉強しているときはいつもやっていることだ。分からない語を辞書で引き、どうもピンとこないので例文に当たるということを外国語の時は当たり前のように行なっているのに、日本語でわからない語に出くわしても「なんとなくはわかる」ことにして文脈から意味を理解したつもりにする。もちろん、そういった読みは大事で、個々の語に囚われすぎてしまうのも考え物だが、理解したつもりなっている語に敢えて立ち止まって辞書や用例を横断するという時間は、言葉に対する感性を研ぎ澄ませるよい訓練になった。例えば「一石を投じる」なんかは自分の中でだいぶ語感がズレていたなと分析していて思った。「一矢報いる」という表現の影響のせいか「大勢がAと言う状況に対して一人だけBと表明すること」のような語感を私は持っていた。語感というものがどのように形成されるのかを考えるのもなかなかおもしろい。

次に各外国語の勉強内容について簡単にまとめる。

1、暗記事項の反復
2、文法書の通読
3、洋書読解
4、聴解と発話訓練
5、動画学習
6、アニメ学習

このうち、1、2、4、6はフランス語とドイツ語、3と5は全外国語が対象である。

1、暗記事項の反復

語学において「覚えるしかない」ものは確実に存在する。基本的な語彙や動詞の活用などがそれに当たる。何かを記憶する際は、関連付けて覚える方が効率が良いとされるが、本当に基本中の基本事項においては何も経由せずに脊髄反射レベルで出て来るようにした方がいい。そう言う意味でこの勉強は地味な軍隊式のものになりがちなので、気力が充実している朝一番に組み込んだ。ドイツ語は単語学習で、辞書の例文を単語帳に登録し、ドイツ語から日本語のテストした後、今やったばかりの例文を日本語からドイツ語で作文していた。こうすると作文のハードルが下がるし、曖昧だったスペルなどが分かっていい。フランス語では動詞活用をひたすら書き写すということをやっていた。ふら塾さんの動画を今月も使った。1ヶ月経っても最後までいかなかったので、もっと密度を高めた方がいいかもしれない。


2、文法書の通読

これもどちらかといえば苦行になりがちな勉強なので、朝の早い段階でルーティンに組み込んでいる。フランス語は先月に引き続き『日本語から考える!フランス語の表現』に取り組んでいて、最初はものすごく時間がかかっていた仏作文にもだいぶ慣れてきた。常に日本語から考えてフランス語のアウトプットをするのが吉とは限らないが、両言語の構造的な違いを意識して表現を選択する訓練はやっておいて損はない。単純に「日本語→フランス語」の回路を活性化させるのにも一役買っている。ドイツ語は『ドイツ語練習問題3000』をやり始めた。これもかなり硬派な問題集で、1課4ページの構成、文法解説、基礎問題、発展問題、応用問題、というつくりになっている。文法の運用力を高めるのにちょうどよく、応用問題はテキストなので、全訳すれば読解力向上も期待できる。やり通すのはしんどいけど確実に力がつくタイプの本だ。


3、洋書の読解

シンプルに原書を読む勉強。「読む」といっても流し読みから精読までさまざまな段階があり、自分の実力や本の難易度によって調整して飽きないようにしている。現在の読書リストはこんな感じ。

ドイツ語:ヘッセ『車輪の下』(Hesse „Unterm Rad“)
フランス語:ルソー『孤独な散歩者の夢想』(Rousseau «Les Rêveries du promeneur solitaire»)
英語:イェスペルセン『言語 その本質・到達・起源』(Jespersen “Language Its Nature Development and Origin” )
ポルトガル語:マシャード・ジ・アシス『ドン・カズムッホ』(Machado de Assis “Dom Casmurro”)
ロシア語:ドストエフスキー『虐げられた人々』(Достоевский «Униженные и оскорбленные »)

6月から新しく始めたのは、フランス語とポルトガル語で、ルソーの『孤独な散歩者の夢想』はフランス語の小説で頻発する単純過去があまりなく、口語体のように読めるので、その点は馴染みやすい。しかし語彙の格調は高いし、動詞の活用語尾が現代と違うものもあるので、そういう意味ではとっつきにくい。ただ哲学書ではなく日記のようなものなので、そこまで深遠で難解な内容というわけではない。学習歴半年でも邦訳を並べて取り組めばそれなりに味わえるレベル。ポルトガル語のマシャード・ジ・アシス『ドン・カズムッホ』はブラジル文学の傑作と名高い作品だが、原文はかなり難しく、私のポルトガル語の知識では背伸びだった。これも現代のポルトガル語とスペルが異なる語彙が多く、当時のブラジルの社会や文化についての知識がないと理解が難しい。最初は邦訳なしで行こうと思ったが、結局邦訳と照らしての読書になった。まず最初に原文だけで読み、二度目は邦訳を読み、三度目は両方を見比べながら読むという感じでやっている。内容は分かったり分からなかったりだが、邦訳なしでは筋を見失っていたと思われる。

4、聴解と発話訓練

スクリプト付きの動画を一つ選んで、その動画の音声をコピーしていく勉強。一文一文じっくり聞き込んで、聞こえないところは、youglish(Youtubeから当該のフレーズが検索できるサイト)で別の文脈の音声を大量に聞いて耳を慣れさせる。音源と同じタイミングで口が動くようにすることで、その言語の標準的なリズムが自然と身につき、話すときの反射神経が鍛えられる。「聞いたものをすぐに口に出して言う」をひたすら繰り返すことで、リスニングにもスピーキングにも効果が期待できる。音声の分析によって、辞書で聞いた単語単体の音声が文のなかでどのような変化をしているかもわかるようになるため、実際的な音を聞き取るよい訓練になっている。

現在ドイツ語で取り組んでいる動画。「あなたは何?」

フランス語はネリー先生によるパリ五輪についての解説動画を教材にしている。数字の練習にもなる。

5、動画学習

まず、なんでもいいのでyoutubeから素材となる動画を見つけ、その動画をLingQという言語学習プラットフォームにインポートして、テキストを聞いたり読んだりしている。やっていることはただの動画鑑賞だが、LingQでは音声が文字起こしされるので、どんな動画も教材になる。もともとの動画に字幕がついていないと正確でないこともあるが、基本的にyoutuberがしゃべってる内容のものなら、そこまで学習に支障は出ない。とにかく自分の興味のあるyoutubeの動画が全て教材になるので、いくらでも勉強になる。私は朝起きたら登録したチャンネルに更新がないかをチェックし、新しい動画が投稿されていたら、すぐさまLingQにインポートし、隙間時間に何度か聞く。午後の集中力がなくなってきたくらいの時間や夕食後のリラックスタイムの時に、動画をスクリプト付きで見て、わからない語は辞書を引いて内容理解に努める。同じ内容のものを別の形式で繰り返し聞くのが大事で、耳に慣れさせる段階と脳に理解させる段階を分けるようにしている。聞き取りだけでかなりの程度内容が理解できたと思っていた動画も、文字で見ると理解度は全然異なるので、気になった動画はとにかく目を通す。理想は1日で5言語1本ずつだが、そう上手く素材や時間が合うとは限らないので、あくまでその日アップされた動画のラインナップを見て調整している。英語ならBBCやスティーブン・カウフマンの語学系動画、フランス語とドイツ語は語学教師の学習者向けの動画、ロシア語はブックチューバーが出している買った本や読んだ本の動画、ポルトガル語は自己啓発的な内容を短時間で説明する動画など、自身の外国語のレベルに合わせてチャンネルをセレクトしている。

英語は、カナダのポリグロット、スティーブ・カウフマンの動画をよく見ている。たぶん存命するなかで一番有名な多言語話者だと思う。彼の学習観には共感できる部分が多い。

フランス語は最近、ニュースにも目を向けていて、アメリカ大統領選のような国際ニュースならば、教材として私のフランス語もけっこう通用するようになってきた。背景知識がちゃんとある話題ならもうニュースもマテリアルになる。

ドイツ語は語彙に課題があるので、レーラ先生の単語表現紹介動画なんかが今の自分に刺さる。youtubeの語学教師は動画を入り口にしてオンラインスクールとかに誘導するのが常套だけど、無料でもいろいろな言語のいろいろな先生の授業が受けられるわけだから、使いようによっては留学以上の成果が出る。

先月一番の発見だったチャンネル。SejaUmaPessoaMelhor はポルトガル語で「よりよい人になりなさい」という意味だが、自己啓発本にありそうな内容を短時間で述べる動画を投稿している。リンクの動画は「なぜ貧しそうに見えることが重要なのか」について。この種の内容はワンパターンなので理解しやすい。ちゃんと字幕が用意されているのもポイントが高い。

ロシア語はブックチューバーを中心にチャンネルを登録しているが、その中の一人、ポリーナさんの動画。買った本や読んだ本の紹介が主だが「再読はなぜ重要か?」「なぜ私たちは本が好きなのに本を読めない時期があるのか」といった読書全般に関わるテーマで動画を出すことも多く、単なる情報ではなく読者コミュニティとしての場にもなっている。

6、アニメ学習

これは4月ごろからやっているルーティンで、ドイツ語がきっかけでハマった『葬送のフリーレン』というアニメを吹き替え版で見るという勉強方法。字幕は表示できないので、音声だけの聞き取りになるが、音声を日本語にして外国語を字幕で出すことは可能なので、もともと日本語で印象に残ったフレーズなどは、どのように翻訳されているかを確認できる。1話につきドイツ語版とフランス語版を7回ずつ見たら次のエピソードに行くようにしているので、都合14回同じ映像を見ていることになるのだが、何度か見るうちに聞き取れる場面が増えていくのが楽しい。それが飽和するのが7回目くらいかなという気がしている。現在は12話まできており、最近は初見で聞き取れる箇所も多くなってきて、自分の上達具合を実感できるような学習方法にもなっている。


まとめ

基本的にはドイツ語とフランス語は一日交代で勉強していて、朝から「1〜4」をやった後、ロシア語、英語、ポルトガル語のうち二言語を選んで洋書(3)を読む、それが終わる頃には夕方になっているので、朝起きたときに見繕った新着の動画を夕方から夜にかけて見て(5)、夕食後に「葬送のフリーレン」を見る(6)というのが1日の流れ。食事中や散歩中、家事の合間の隙間時間は新着の動画を耳に流すことが多い。一日のなかで語学が関わっていない時間は、風呂と家族団欒(最近麻雀が我が家でまた流行ってきた)と就寝前の読書の時くらい。だがこれは一日が全て自分のものである日の話で、ニートの身分でないとこれをルーティンにするのは難しい。7月も8日くらい単発の仕事を入れているが、仮に仕事が中心の生活になった場合、どのくらいの勉強量が現実的だろうか。フランス語とドイツ語も学習歴が半年を過ぎて「聞き流しているだけでもそれなりに勉強になる」レベルにはなってきたので、聞き流すだけで語学は上達するか?フルタイムで働く日に自分が満足できるレベル(勉強になっているなあと自然に思える量と質)で勉強ができるか?冷静に考えると、多読はやらないと伸びないし、音声をじっくり聴くこともデイリーでやらないとすぐ衰えるし、単語や文法も積み上げが基本だし、ターゲット言語のフランス語とドイツ語に限ったとしても、結局今やってることは全部外せないと感じる。冒頭で述べたとおり、語学は時間をかければかけるほど上達する。理想を言えばご飯もお風呂も睡眠もキャンセルしたいくらいだ。フリーターの今ですら時間が足りないと感じる。やりたいことが多すぎるのはほとんどの現代人の悩みだろうが、どこかで折り合いをつけるしかない。時間をかければかけるほど上達はするが、逆に「最低どのくらいやれば実力が落ちないか」は依然として分からない。例えば今月でいうとポルトガル語は20時間弱しか勉強していないが、けっこう聞き取り能力があがったように感じる。ただこういう進歩の感触ってその原因は数カ月前からの積み上げだったりするので、やっぱりなんとも言えない。ドイツ語とフランス語を最低でも月50時間ずつ勉強するのをあと半年は続けたいかなと思う。本当は1年でも語学にかける時間としては足りないのだが、そこからは密度を落としてもすぐには忘れないだろうという見立てだ。現在フランス語が総計461時間、ドイツ語が376時間で、もう半年このペースでやっても1000時間もいかない。自分が望むレベルになるにはだいたい3000時間くらいと言われているので、半年経ったとはいえまだ折り返し地点ですらない。感覚的には1000時間ずつくらい勉強している気持ちなのだが、先はまだ長い。仕事でくたくたに疲れてスマホしかいじることができない状態でもターゲット言語のインプット学習ができる、という段階になるにはあとどれくらいやればいいのだろうか。そうしないと働き始めた瞬間にこれまでのことが意味がなくなってしまうから、まだしばらくは労働をミニマムにしたい。最小の時間で最大の効果を得られる魔法のような方法をどうしても望んでしまうが、まずは何が自分の時間を奪っているかを分析しないと語学は上達しない。時間は必要ないと向こうから言って煽ってくる情報は基本的に飛躍があると眉に唾をつけておく必要がある。

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