相席屋合コンで女子柔道家と出会った男性の末路_1
ある東京の渋谷街。
18時を過ぎると、今日も仕事を終えたサラリーマン、公務員、政治家など、様々な人が夜の街に溢れ出る。
同僚と飲んでストレスを発散する社会人
カラオケやボーリングで盛り上がる学生達
風俗で性欲を満たすべく、はしゃぐ若者達
今日も平和な渋谷街の中で、ハチ公前で待ち合わせをして立っている人物がいる。
彼の名は『小谷一郎』
ある大手食品企業に勤めており、社会人3年目である。
ただし、大学院まで進学したので年齢は27歳だ。
身長は165cm、体重は57kgでやや痩せ型の体型をしており、大学の頃は文化系の部活に所属していた。
小谷一郎は社会人になってからは彼女ができた経験はなく、それよりは仕事が忙しくそれどころではなかった。
ようやく最近になって、仕事がひと段落したということで、そろそろ彼女を作りたいと考えているところだった。
それで、今日は大学の同期3人組で、相席屋デビューをしてみようと企画し、現在待ち合わせているところだった。
「なるほど…。女性の話をしっかり聞いてあげる男性の方が印象は良い…と。盛り上げる時は…」 小谷一郎はスマホで初対面の女性との話し方や盛り上げ方を調べながら、同期が到着するのを待っている。 大学院も研究で忙しかったこともあり、久々の女性との出逢いにテンションが少しずつ昂っていく。
「おーい!一郎ー!」
19時ジャストくらいに、大学の同期の『三和義弘』と『中村武志』も合流した。
三和健人は173cm、65kgの標準体型。
バスケ部に所属していたチャラ系爽やか系男子で、昔から女子に人気がある。
中村武志は180cm、82kgの大型体型。
大学はアメフト部に所属しており、未だその太く鍛えられた筋肉は健在である。
「健人も武志もめっちゃお洒落してきてんじゃん!」
「こういう時くらい気合い入れないとな!」
普段チェックしか着ない武志も高級ブランド系の服装を着込んでいて、大型系の体格ではあるが、見事にオシャレに着こなしている感じがする。
「今日は一郎が案内してくれるんだろ?」
健人もブランドの帽子や靴など細部までコーデを合わせてきており、気合いが入っていそうだ。
「おう!こっちだ!じゃあ行こうか!」
そうして、同期3人組は渋谷のある相席屋に入って行った。
受付を済ませると、店員さんに席の方へ案内された。
受付や各テーブルに綺麗な女性達がちらほらと視界に映り、男性陣の心がソワソワと踊り始める。
「こちらでございます。女性のお客様がご案内されるまで少々お待ちください。」
掘りごたつ式の部屋に案内されて、一郎達は片側の席に座る。
テーブルも広く、5対5くらいまでは普通に座れそうなくらいだった。
案内係の店員さんはドアを閉めて戻っていった。
「この部屋に入るまでも、綺麗な女性沢山いたね!ていうか店員さんもめっちゃ可愛かったし!」
「緊張するなぁ〜!この待ってる時のドキドキがたまんねぇぜ!」
「お前ら、テンション上がりすぎてハメ外し過ぎるなよ。」
テンションの上がる一郎と武志に対して、健人は冷静そうだが、事前の作戦会議をするなど、女性陣が到着するまで男性陣で盛り上がる。
そうして数分経過した時にノック音が聞こえ、先程の案内係がドアを開けた。
「お待たせいたしました。こちらでございます。」
先程の案内係の姿が見えたと思うと、その横から3人の女性がゾロゾロと入ってきた。
「ありがとうございま〜す!あ、ひろいですね〜!」
「へー。掘りごたつなんだ〜。」
「……………………」
元気で明るい感じの女性が1人、綺麗でお淑やか系の女性が1人で、その2人はモデル並みの美貌で大半の男性なら「おお!」と惹かれるような雰囲気があった。
残る後ろの方にいる女性は少し大型の女性で、ガッシリとした逞しさが感じられた。
表情は大人しそうといか、少し暗そうな感じがあり、人と話すことをあまり得意としなさそうな雰囲気が漂う。
「は、初めまして!こんにちは!」
男性陣も少し緊張しつつも、立ち上がってペコっとお辞儀しながら、丁寧に挨拶をする。
「こちらこそ今日は宜しくお願いしますー!」
手前の女性2人は笑顔で挨拶してくれるが、残る一人は緊張しているのか無言で頭を少し下げるくらいの仕草だけだった。
男性陣の中では、1人がハズレだが、残る2人が当たりといった意識が早くもよぎり始める。
6人とも席に座った後は、店員さんからシステムの説明を受けて、ファーストドリンクをそれぞれ頼んだ。
男性陣はビールが、女性陣はカクテルがテーブルに置かれる。
「それでは、乾杯しましょうか!」
やや緊張感が漂う中、一郎は男性陣代表として乾杯の音頭を取る。
「今日は楽しい時間を過ごしましょう!かんぱーい!!」
「かんぱいー!!」
お互い少し照れつつも、元気な乾杯の声が響き渡り、相席屋による飲み会が始まった。
「まずは自己紹介しましょうか。僕は小谷一郎、27歳です!宜しくお願いします!」
一郎は進行役として、自己紹介から進めていく。
続いて、三和健人、中村武志も自己紹介を済ませ、女性陣へと移った。
「わたしは佐藤しずか。先月21歳になりましたー。宜しくお願いしまーす。」
佐藤しずかは、身長160cmほどで、黄色のタイトスカートを履いており、大人びた美人系な顔立ちをしている。
やや目つきが鋭く、少し気の強そうなSっぽいオーラも漂う。
「あたしは花宮優衣です!20歳で〜す!好きなタイプは優しくて、気が利く男性でーす!」
花宮優衣は、身長150cmほどで丸顔で可愛らしい顔立ちをしている。
服装は白いワンピースで、明るく元気な女の子といった感じで、アイドルっぽい幼さやあどけなさも感じる。
男性陣もレベルの高い女性陣に、やや顔がニヤけながら、手をいて拍手する。
「わ…、わ、わたしは杉本香織と…、も、申します。よ、宜しくお願いします…。あ、23歳です…。」
杉本香織は、身長170cmもあり、腕や脚もやや太く、ゴツいような身体付きをしている。
そして、他の女性と比べると、明らかに緊張していて、声も小さく、オドオドとしているようだ。
先程までニヤついていた男性の表情も硬くなり、一瞬空気が重くなりそうになったが、すぐに一郎が動いた。
「そんな緊張しなくて大丈夫だよ!香織さん、今日は宜しくね!」
「は、は、はい!よ、宜しくお願いします!」
杉本香織は少し顔を赤くしながら、緊張してお辞儀をした。
「香織先輩は、少し男性と話すの緊張してるかもしれないですけど、凄く素直で良い人なんですよ〜!」
花宮優衣が笑顔でフォローするが、香織は下を俯いたままだ。
そうして、男女6人の相席屋合コンが始まった。
好きなお酒とか、ここにいる全員が今日初めて相席屋にデビューしてみたなど、たわいの無い話題からスタートする。
女性陣は、元気で明るい花宮優衣とお姉さんタイプの佐藤しずかがメインで会話している。
男性陣も少しずつ緊張がほぐれてきて、それぞれ少しずつ口数も増えていく。
当初から緊張気味の杉本香織はほとんど会話に参加できていないが、それ以外の5人で徐々に会話も盛り上がっていく。
「そういえば、先ほど、香織先輩とか言われてましたが、普段はよく会っている仲なのですか?」
小谷一郎が女性陣に質問したところ、
「実はあたしたち、実業団で柔道をやってるんですよ〜!」
花宮優衣が笑顔でサラッと答えたが、男性陣はみんな「えぇ!?」と、驚きの声をあげる。
「えぇ?実業団って、オリンピックとかも出るんです…か…?」
三和健人は、こんなに綺麗で可愛い人たちがガチの柔道家ということに、驚きを隠せない。
「2ヶ月後くらいにオリンピック代表選考会があるかなぁ。」
「マ、マジですか…!?」
佐藤しずかが淡々と答えるも、男性陣にとっては、オリンピック選手、下手したらメダリスト選手になるかもしれない方々と対面していることに恐縮してしまう。
「へぇ〜!優衣さんとしずかさんは、マジで全然格闘技やってそうな感じに見えないのに凄いっすね!香織さんは確かに最初見た時から全体的に太い印象というか…」
「お、おい!」
中村武志の失言に、小谷一郎と三和健人が即座に口を塞ごうとするがやや遅かった。
「すいません、こいつたまに訳わからんこと言う時があって!」
「別に大丈夫ですよ〜。香織先輩は78kg級なので、普通の男性よりも重たいですからね〜。」
一郎と健人が即座に謝罪するも、優衣は笑顔で説明を続ける。
「ただ、香織先輩は78kg級でこの前の全日本選手権は準優勝だったし、凄く強いんですよ〜!あと、しずか先輩は57kg級で、あたしは48kg級で頑張ってます〜!」
「あんたちゃっかり体重とかアピールすんのやめなさいよ。」
「そんなことないですよ〜!階級について説明してるだけじゃないですかぁ〜!」
佐藤しずかと花宮優衣が元気よく話しているが、杉本香織は相変わらず下を向いて恥ずかしそうにしている。
そして、それから彼女らの柔道トークが始まった。
週5〜6で1日10時間くらい厳しい稽古を積んでいること。
全日本選手権で日本代表に選ばれるよう、休みの日も筋トレしたり、対戦選手を分析したり、忙しい日々を過ごしていること。
男子選手とも練習はするみたいだが、一般の男子大学生くらいだったら、普通に勝てる実力を持っていること。
柔道漬けの日々だが、今回は相席屋とかで男性と出会いを楽しんでみたくなったことなど、女子柔道選手の様々な日常の話題が続く。
ただ、飲み会が始まって数十分経過したが、杉本香織があまり会話に参加できていないことを小谷一郎が気遣い始める。
「香織さんは休日は何して過ごしているんですか?」
一郎は、俯いて黙り込んでいる杉本香織に話題を振る。
「わ、わわ、わたしは休みの日はアニメとか…。」
「へぇ〜、どんなアニメ見るんですか?」
「えっ、えっと…、暗殺教室とかダンまちとか…あとはえっと…」
「香織先輩アニメ好きなんだけど、あたしたちよくわかんないんですよ〜!」
「だんま…ち?ってなんだ?アニメの名前?」
香織が色々と見ているアニメを列挙するが、花宮優衣と佐藤しずかは全然分からない領域のようだ。
三和健人と中村武志も同様にあまりピンときていないようだ。
しかし、小谷一郎だけは多少のアニメ知識を有していた。
「ダンまちはダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?っていうアニメですよね!ベルくんとカッコいいよね!」
「そ、そうなんです!ベルくんが凄い大好きで…、凄い可愛くて…!家にぬいぐるみもあるんです…!」
「そういう系が好きなんだ。なら、暗殺教室なら赤羽くんとか渚くんとか好きそうだね!」
「そうなんです!渚くんは凄い大好きで、落ち込んでいる時に凄く元気もらえるんです!あとは、文豪の太宰くんとか…、」
アニメの話になったことで、それまで寡黙だった杉本香織のテンションが急激に上がり始めた。
「すごーい、香織先輩のアニメを分かってくれる人がいるの初めて見た。」
「俺はあんまアニメ見ないし、鬼滅くらいしか分からないからなぁ…。」
「あたしもドラマは見るんだけど、アニメ全然見ないんで分からないんですよ〜!」
「ドラマだったら、この前までやってた半沢直樹とか…」
花宮優衣と佐藤しずかは小谷一郎に感心するも、他の男性陣も含めてアニメの話はあまり分からず、気づいたらドラマの話に移り変わってしまった。
場は盛り上がっているように見えるが、杉本香織がまた会話に参加できなくなり、黙り込んでしまっている。
小谷一郎は、『女性全員をしっかりと楽しませること』と、事前に勉強していた合コンの鉄則が頭によぎる。
そして、席を立って杉本香織に近づいて、個別に話しかけた。
「香織ちゃん、ちょっと一緒にドリンク取りに行こうか。」
小谷一郎としては、特別に香織を狙っている訳でもないが、個別にドリンクに誘い出す。
「えっ!?は、はい!」
香織は慌ててグラスを持って、一郎と一緒にドリンクコーナーの方へ歩いて行った。
この相席屋では、ドリンクのお代わりはセルフとなっており、ドリンクコーナーでは、ビールサーバー、酎ハイ、ワインなど様々なお酒が充実している。
「さっきのアニメでさ、太宰くんは…」
一郎は香織と一緒に歩きながら、先程までのアニメの話を振ると、香織は嬉しそうに語り始めた。
先程まで暗かった表情が明るくなり、少し垂れ目な感じで可愛い表情だなぁと、一郎は素直に感じた。
ただ、78kg級ということで、一郎よりも身長が少し高く、身体も結構大きいので、もう少し小柄だったらタイプだったかなぁと思いながら、アニメの話を続けていた。
一郎と香織はどちらもカシスオレンジをグラスに注いで、席に戻っていく。
「あとは、ベタなんですけど、『君に届け』の早川くんも凄い優しくて〜」
「早川くんは今時の女子に凄い人気あるみたいだね、爽やかだし、困っている子をほっとけないタイプだし…」
「そうなんですー!どんな人にも優しくて、でもたまに強引な一面を見せることもあって〜!」
香織は先程までの沈黙は何だったかと思うほど、凄く元気に楽しそうに喋り続けている。
一郎も、まさかここまで明るく話す人だとは思わず、少し面をくらったところはあったが、楽しく話してもらえることができたこと自体は良かったと安心した気持ちもあった。
ただ、また席に戻って6人で話したら、また香織が孤立しそうな予感はしていた。
一郎は少し考え込み、今回は女性を楽しませる係に徹しようと覚悟を決める。
最初の掘りごたつの席に戻ってきて、香織が自分の席に座るが、一郎もその隣に座る。
「もうちょっと色々と話聞かせてよ。早川くんのこととかさ。」
「え…。は、はい…!君に届けは映画でもやってたんですけど〜」
少し席に戻って不安そうな香織の表情が一転して明るくなり、また元気に喋り始めた。
一郎と香織以外の4人でも話はそれなりに盛り上がっているようで、その4人グループと一郎と香織の2人グループに分裂した形で、各々楽しく会話が続いている。
一郎は香織の横で話を聞きながら、香織の腕や脚の太さに少し目がいってしまう。
57kgの一郎からすると、身長はそこまで変わらないのに、78kgの香織とは20kgほど体重差があり、その20kg分が全身の筋肉量の差と考えると、凄い普段から鍛えられているのだなと感心するほどだった。
香織と隣同士で座っていて、一郎の右腕の10cmほど離れて香織の左腕が見えるが、1.5〜2倍くらい自分の腕より太かった。
また、香織の膝丈のスカートから出ている生脚も、自分よりも2倍以上は太く、脹脛の筋肉もボコッと盛り上がっており、筋肉のつき具合が、まさにアスリートだった。
太ももはスカートで隠れてよく見えないが、自分の胴体近くあるのでは無いかと言うほど、威圧感があった。
腹筋や背筋などの胴体周りの筋肉も分厚い感じがして、全体的な筋肉量や筋肉の質が一般人とはまるで違うことは分かった。
男性の中でもやや細身の一郎からすると、初めて真近で見る重量級女性アスリートの肉体の迫力に少し圧倒されそうになりつつも、香織との会話を楽しむ。
香織も一郎と横に並んだことで、どうしても二人の腕と脚が一緒に視界に映ってしまい、自分の腕や脚が一郎よりも明らかに太いことに、若干気になり始める。
「あの…一郎さん。わたしみたく身体が大きい女性って、男の方はどう思うのですか?」
香織は少し不安そうな顔をして一郎に尋ねる。
「全然何とも思わないよー!俺はすごくカッコ良いなーって思うくらいだけど、女性の方が大きいカップルとか実際あるし、それこそ少し前の漫画だけど、『ラブ☆コン』とかはそういう漫画で大ヒットしてたしね!」
「『ラブ☆コン』懐かしいですね!映画では小池徹平くんもやってて、凄いあれも好きでした!」
「バレーボール選手とか、俺の高校にも180cmくらいの女性とかいるし、逆に今は身体大きい方が需要もあるくらいな気がするけどなぁ〜!」
「本当ですか!?たしかに〜」
一郎が即座に大柄な女性をフォローする回答をしてしまったことで、香織は少し興奮気味で嬉しそうな顔に戻る。
香織は、自身の体格が大きいことに対して、若干のコンプレックスがあるみたいだったが、一郎と話していくことで、少しずつ安心感に満ちた表情に変わっていく。
「わ、わたし…、今までそんな風に言われたことなくて…。今…、すごく嬉しいです…。」
「えっ?」
香織はそっと左手を一郎の右手の上に無意識に置く。
そして、湧き上がってくる嬉しさの分だけ、握力に力が入ってしまい、『ギュゥゥッ!』と一郎の手を握り締めていく。
軽く握ったつもりだったが、少し力が入ってしまい、小柄な一般男性の右手からは『ピキッ!』と骨が軋む音が鳴る。
「い、痛たた…!」
一郎は反射的に右手で振り払おうとするも、香織の一回り大きな手でガッチリと握られており、ピクリとも振り解けなかった。
「あっ…!ご、ごめんなさい!!」
香織は一郎の異変に気づくと、すぐに左手を離した。
一郎の右手には、強烈な力で圧迫されたような赤い跡が残っている。
「ほ、ほんとにごめんなさい!わたし…、そんな力入れてるつもり無かったのに…。。」
「だ、大丈夫だよ!ちょっとピキってなったくらいで大したことないよ」
「本当ですか!?ちょっと手をいいですか!?」
香織は一郎の右手を両手で優しく掴んで、少し手を揉んだりしてチェックをする。
一郎は自分の右手をチェックしている香織の手を見ていると、手の大きさも指の太さも自分よりも大幅に上回っており、男性の自分よりも全ての部位で大きさや力が上回っている女性アスリートに対して、自分とは住んでいる世界が違うような異次元の感覚をも感じながら眺めていた。
「良かった…。骨は折れてないですね…!練習でもうっかり骨が折れちゃうこともあるので…。あと…」
香織はホッと安堵した様子で伝えながらも、まじまじと一郎の右手を握り締めながら見つめている。
「一郎さんの手って…、すごく綺麗ですね。」
「えっ?手がそんな綺麗?」
「あ!いや、すいません!わたしの手は柔道の稽古でゴツゴツしてるし、擦り傷とかあるけど、一郎さんは指とかもスラっと細くて綺麗だなぁ〜って思って…。すいません、変なこと言って…。」
香織は照れたような顔をしながら、両手で握っていた一郎の右手をパッと離した。
顔が赤くなっていて、何を離して良いか分からず黙り込んでいるようだ。
「俺は細くてモデルみたいな女性より、強くて健康的な女性の方が好みだけどね!最近、女子格闘選手のYouTuberも増えてるし、需要も増してると思うよ!」
一郎の本心は細めの女性の方が良いが、香織を傷つけないように気遣いながら、上手く会話をリードしていく。
「そうなんですね!確かに、◯◯さんのYouTubeとかよく見てます!」
「そうそう、あとは△△さんともコラボしてたり〜」
少し落ち込み気味だった香織も一郎のフォローがあってか、元気を取り戻し、再度2人の間で会話が弾んでいく。
先程まではアニメの話が中心だったが、それ以外にも柔道の稽古内容とか、テレビやお笑いなど、様々なジャンルの話題で盛り上がっていく。
香織の笑い声も頻繁に響き渡るようになり、4人グループで話している花宮優衣と佐藤しずかも、意外そうな目でチラッと香織の様子を見る頻度も増える。
そうして、2グループに分かれつつも、それぞれでお酒を追加しつつ、楽しい時間が流れていく。
30分くらい経過した時に、香織と話している一郎の背後から花宮優衣が近づいてきて、一郎の左隣に座り始めた。
「一郎さんって凄いですね〜、香織先輩がそんな楽しそうに喋っているところ初めて見ました〜!普段練習でも口数少ないし、あたし凄くビックリしました〜!」
「えっ?あ、そ、そうなんですね!」
優衣が優しく一郎の左腕にボディタッチしながら接近してきたことに、一郎は一時的にテンパリ始める。
「わたしも一郎さんとお話ししたいな〜って思ってて、ずっと待ってたんですよ〜!わたしともお話ししましょうよ〜!」
優衣は、両腕で一郎の左腕を抱き抱えながら、一郎に密着していく。
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