毎日、なんとか、生きれない。


「もうつかれたよ」


今朝、また伝わらなかった。
いつもどおりの朝、いつもどおり母親は私を急かす。なにやってるの、また遅刻かよ、急げよ。またそうやってわざと遅れようとしてるんでしょ。
母親から逃げるように洗面所に行って、電気もつけずにぐしゃぐしゃな髪の毛をブラシで梳かす、となりにある洗濯機が揺れている、学校行きたくないよ
パチッ
電気がついた、リビングから母親が追いかけてきた、そんなんやったって何も変わんないよ、はやく学校行けよ
髪をとかす手を止めた、ブラシが床に落ちる。行きたくない、行きたくない行きたくない行きたくない、ただそれだけで頭の中が埋め尽くされた、死にたい、死にたい死にたい死にたい、となりの洗濯機が揺れている、水を回すスピードがどんどん加速していく、洗濯機は小刻みに震え出す、トン、トン、トン、トン、トントン、トントン、トントントントントントントン、感情も心臓の音もそれに合わせるようにどんどん加速していった、溢れていく、感情が、怒りが、悲しみが、諦めが、希望が

全てを壊したい衝動に駆られる。目の前の鏡を殴った。1発、2発。視界は髪の毛で真っ黒なヴェールに包まれていた。黒が滲みだす。
許して欲しくて、泣いた。
洗面台に涙をぼろぼろ零した。
許して欲しかった。学校に行けない私を、この世界に許されたかった。私にしか肯定されない私を、誰かに肯定してもらいたかった。泣いたって何も変わらねえよ、上から言葉が降ってくる、洗濯機はまだ震えている、

「もうつかれたよ」
嗚咽に混じってふと本音が零れた。


「何に疲れたの?学校行くだけなのに」





学校から反省文を渡された。
今月遅刻を10回したかららしい。遅刻理由を書く欄に、朝が苦手だから、学校に行きたくないから、と書いたら笑われた。
みんなできてるのに、君がちゃんとできないわけ、ないでしょ?
あーあ。

担任はまた笑っていた。
HRが終わって教室から出た私を追いかけてきた。後ろから手を伸ばして、リュックをつかんできた。汚い笑顔で私を空き教室に手招く。怖くて仕方がなかった。なんでこの人は笑っているんだろうか、服から煙草の匂いがして、余計気持ち悪くなった。



家に帰って、ご飯を食べている間に、また汚い言葉が飛び交う。もうよく覚えてないけれど、私が言って欲しいことと反対のことばかりを言っていた気がする。思い出したくもないけれど。



朝起きて、着替えて、電車に乗って、お腹が痛くなって駅のトイレに駆け込んで、なんとか学校に着いて。授業中も休み時間も彼のことで頭をいっぱいにしてなんとかやっていた、そのなんとかが私にはもうできない。つかれた。文章の締めは大事ってよくいうけれど、脳がクタって何も思いつかなさそうです、あーなんとか、なんとかかんとか。

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