存在

証明なんかいらない、存在するだけでいい。彼に全く同じことを思う。私と彼の関係を証明するものはなにもないし、そもそも中身が空っぽだ。それに私を証明するために彼の存在を使うなんて傲慢なことなどできやしない。彼にとっては私の存在などどうでもいいから。いつだって私は大きな母体の中に居る。個にはなれない。
彼のことを考えるだけで泣きそうになってしまうよ、すきとかあいしてるとか、もうそういう次元ではない気がするけれど、他に当てはまる言葉もない。愛おしいよりも上の言葉を知りたい。丸呑みしたいだとか一体化したいだとか、私にはそういう気持ち悪い言葉しか思いつかない。彼の言葉が好きだよ、彼の世界がすきだよ。どんなにやわらかい言葉を使っても、私が吐いた瞬間全ての言葉が鉛に変わっていく。
傍から見たら私は本当に馬鹿な事をやっているのだと思う。返信が来ない相手に毎日愛を送り、顔の見えない相手に嫉妬をし、自分でも馬鹿馬鹿しいと思う。けれどもうこれは私の生活の一部になっていて今更私にはどうすることも出来ない。
彼に愛を送ることはコミュニケーションではない。全て私の独り言、受け取るか受け取らないかは全て彼次第だ。コミュニケーションをする場面がもしあったとしても、彼から私に話しかけることは絶対にない。いつだって会話は私からだ。伝えたい時に伝えたいことを伝える。私はそうやって6年間やってきた。だから本当に今更どうすることもできないのだ。
「今目の前 目に映るのは君だよ それしか見ない!」ステージの上でそう彼が歌った時、彼が特定の誰かを指ささなかったことにひどく安心した。彼の口から紡がれるその言葉は、絶対に特定の誰かのものであってはいけないから。
嫉妬とか欲望とかそういう小汚い感情を捨てて、月を見るように純粋無垢に彼だけを見つめていたい。存在しているだけでいい。彼の存在が私の証明?証明なんかいらない。彼が生きていてステージに立っていて、それが全てなのだ。私は居ても居なくても何も変わらない。彼と私の間に相互作用は起こらない。私の存在は彼の世界には関係していない。私が死んでも彼の世界は何も変わらない。そんなんだったら最初から私は存在しなければよかった話で。
だから来世はきみの記憶になってきみの脳に棲みつきます。きみの存在そのものになります。一緒に生きて一緒に死のうね、よろしくね。

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