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「何でみんなと話さないの?」

2021-04-26

「何でみんなと話さないの?」

この言葉を言われた瞬間、ぐわん、私の頭が一回転した。
血の巡りが速くなって、代わりに視界がぼんやりと滲んでいった。

話せるもんなら話してるんだよ、と、その時は思った。でも、違った。私はまた甘えていた。

新しい学校、新学期。私は結局、誰かが話しかけてくれるのを待っていた。自分から一度も話しかけようとした事はなかった。
だから、急に投げかけられたその言葉は心中で、私の心に刺さって抜けなかった。

「人見知りだから?」
と、その後に続いて聞かれて、ただの興味本意で私に話しかけたのだとわかった。
私はうん、人見知り。となんとなく答えて、それで、そしたら、その場から逃げ出したくてたまらなくなった。
その後は、中身のない会話をして、もう何も覚えていない会話。それで、その日の学校は終わった。



学校からの帰り、もうこれはだめだと思って、自分へのご褒美として100円ショップでゼリーとラムネとグミ、古本屋で250円の文庫本を買った。
『死にたい夜にかぎって』

古本屋の近くで人が倒れたらしく、本を選んでる中で救急車のサイレンが聞こえた。サイレンは、いつもより長く大きく聞こえて、耳を塞ぎたくなった。



古本屋からの帰り道、私はまた幼いふりをして、白線の上をグラグラしながら歩いた。

危うい少女になりたかったのだと思う。儚く、心配させるような。



家に着いて、買ったゼリーを食べた。一番お得なミックスゼリー。味は薄かったけれど、中に入ってる缶詰めの果物がやわらかくて甘くて、おいしかった。私は飲み物みたいに喉を潤した。

それで、透明なゼリーを食べて、私も透明になれたらいいのに、とか思った。


そしたら、結局私は、儚い少女になりたいのだなと、また気づかされた。


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