つまらない文章

2022-03-22
つまらないゆめ
 

教室なんだけど席がぜんぶバスみたい、シートが並んでる
暗くてオレンジの光、照明が前に照らされている、埃がすごくて教室全体が煙たい

最初からそこは人間の世界なんかじゃなかったんだ、私はものすごい勘違いをしていただけだったんだ、周りを見渡すと気づけば怒りに呪われている動物だらけで、人間は私だけだった。
私が言う。
「あの子はどうしたの?」
「人間だったのさ」
その一言で全てを理解できた。殺されたのだ。綺麗なあの子は。その子の前の席は空席だった。私はその時もう1人の弱々しいあの子も人間だったことを知った。
後ろの空いている席に座ろうとした。ここに座っていた人間も、殺されたのだろうか。考えるのをやめた。横の牛顔のやつ、いや、牛が、ものすごく嫌そうな顔をした。牛は太っていて、隣の空席にまで腕の肉が入ってきていた。私は怯えながらその席に座ることを諦め、震える両手と踊り出す鼓動を脳内で必死に落ち着かせながら、次の空席を探しに教室の右側へ行った。
もうひとつ空席が見つかった。隣には細身の子馬が座っていた。彼も私が座ることに対して嫌悪の表情を浮かべたが、そんなものに構っているとキリがない。私は強気になって彼の隣へ身体をぐいと押し込んだ。
途端、教室の前に立っている虎が話し出す。黒いスーツとサングラスを身につけ、いかにもボスらしい格好の虎は重い雰囲気を纏っていた。そして皆を奮い立たせるように、叫び出した。
「人間なんていらない!!!この世は俺たちのためにある!!!!
動物、バンザイ!!!!!動物、バンザイ!!!!!!」
その時教室全体が赤くなったのがわかった。動物達は一斉に立ち上がった。
「動物、バンザイ!!!!!!」
オレンジは赤に変わってしまったのだ。照明なんてものはもう存在しなかった。言葉の圧は強く、赤黒く、音は迫り来て、その全てが私を襲う。逃げ出したくてたまらなかった。

真っ白な滑走路をどこまでもスキーで滑っていた。どこまでも、どこまでも続く。どうやらこれは大きな池をぐるりと囲む道らしい。道は平らで、何も変化がなく、進んでも進んだのか分からないようなものだった。左はガードレール、右はコンクリートでできた壁があって、高さは1mくらいだ。その上には木が沢山生えていた。ガードレールの向こうも木だらけだ。空は雲ひとつなく太陽が燦燦と降り注いでいる。私は巾着袋に必要最低限の物、財布と鍵、スマホ、そしてラムネを入れてまだ余裕のあるそれを自転車のカゴに投げるようにして入れた。すれ違う人はほとんど居ない。静かで、真っ白で、時々水色だけど。しばらくは気持ちよく滑っていたがだんだんと変化しない道に怖くなって来て、私は引き返すことにした。引き返す途中に、1台の白いミニバンが止まっていた。車には水色のペンキでなにか書いてあったけれど読めなかった。ただ、雪が似合う車だなあと思った。車のバックドアで、1人の白髪のおじいさんが何やら荷物を取り出している。釣りをする格好だろうか。白い頭にキャップを押し込み、上には釣り用のベスト、下にはシャカシャカな動きやすい紺のパンツに、足元には黒い長靴が居た。おじいさんは通りすぎる私に気づきもしないで、熱心に釣り竿を取り出していた。ここから池に行くのには木々を抜けなければいけないし、そもそもこんな冬の日なのだから水面が凍ってるのではないかと疑問に思ったが、私は初対面の相手に話しかけるような性格でもない。横目でチラと見ながら通り過ぎていった。


欲しいものはいつだって私だけが手に入らなかった、私と同じくらいの子がたくさんいるあたたかい木製のおしゃれなお店で、私は眺めることしか出来なくて、何も買わずに結局家へ帰った。帰り道、ショッピングモールを歩いているとそこで友達数人に会って、疎外感を感じた。でもあの子はいつも通り私に話しかけてくれて、「買い物に付き合って」と言って私の手を取って、ぐいぐいと引っ張るのだった。

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