記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』感想対談:絶食三平・わかしょ文庫

はじめに

妻であるわかしょ文庫さんと、最近観た映画の感想を語り合う会を定期的に設けることにしました。今回は第二回目『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』についての感想会です。
ネタバレしてますので、未鑑賞の方はご注意ください!


『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』紹介

あらすじ
理不尽な世の中の代弁者として、時代の寵児となったジョーカー(ホアキン・フェニックス)。彼の前に突然現れた謎の女リー(レディー・ガガ)とともに、狂乱が世界へ伝播していく。孤独で心優しかった男の暴走の行方とは?誰もが一夜にして祭り上げられるこの世界――彼は悪のカリスマなのか、ただの人間なのか?衝撃のラストに備えよ。
監督・脚本・製作:トッド・フィリップス
出演:ホアキン・フェニックス、レディー・ガガ、ブレンダン・グリーソン、他

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ワーナー公式サイト

失礼な映画だなっていう憤りがあった

わかしょ:つまんなかったね。

絶食:つまんなかったぁ・・・・・・

わかしょ:ね、本当にもうやめてくれって感じで、嫌な予感はしてたけど、それにしても予想を遥かに超えるつまらなさでした。ホアキン・フェニックスとレディー・ガガのキャリアに傷がつくんじゃないかって思ったし、レディー・ガガってあんまり良い映画出てないなって気もしてきちゃった。キャスティングした方も持て余してるっていうか、面白くない映画をレディー・ガガのパワーで何とか成立させよう、みたいな。存在が本物すぎて、とりあえず居るだけでも場が持ってしまっていう悲劇が起こってる。『ハウス・オブ・グッチ』も良くなかったし、『アリー スター誕生』も別にすごく良い映画ってわけでは無かったし、そんな映画にばっかりに出て何がしたいんだろう、って思っちゃう。

絶食:それはさ、エージェントが悪い可能性は結構あるよ、いや『アリー スター誕生』は分かるのよ、レディー・ガガを持ってくる理屈も分かるし、そうすることによって企画としても、賞を狙う上でも良いっていうのは分かるんだよ。『ハウス・オブ・グッチ』は単純にウルサイ小柄な人だったからね、ガガの必然性はなかったね、歌うシーンもないし。まあ、俺は『ハウス・オブ・ザ・グッチ』は大好きなんだけど、あまりにも何でもなさ過ぎて、こんなことお金かけてやる?みたいな気分になる、大金かけた世界仰天ニュースの再現VTRみたいな・・・・・・あ、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の話をしなきゃいけないのに、あまりにも面白く無かったから避けてしまった・・・・・・ジョーカーの話をしましょう、ジョーカー。

わかしょ:うーん、レディー・ガガが全くハーレイ・クインでは無くて、もはやジョーカー・ミーツ・レディー・ガガって感じで、それってどうなの?って思った。アメコミ映画ってキャラクターを楽しむもので、新しい解釈を見出していくのがお約束だと思うんだけど、そういう映画にはなってないよね。しかもハービー・デントが出てくるじゃん、検事役で。とりあえず出しとけばいいだろうっていう適当な感じで、皆がイヤイヤこの映画撮ってるんだな、って思った。

絶食:確かに、ハービー・デント出すからには顔面を半分焼くのかと思ったけど、焼かないからズッコケたな。いや、焼くくらいはできるでしょう、と。爆発の後、なんか倒れ込んで怯えてましたけど。そういえば、今回のハービー・デント役の俳優さんも顎が割れてたから、「あー、これちょうどやっぱり顎のラインがね、『ダークナイト』におけるアーロン・エッカートの顎割れ事件の再来だな、また今回も顎の割れたラインを境にして、顔面をキレイに半分で焼いてくれるんだな」と思ってたら、全く顔面を焼いてくれない。

わかしょ:でも、あの『ダークナイト』はトゥーフェイスになるところが一番萎えるよね。結構リアル寄りの映画なんだと思って真面目に観てたら、あそこだけ急にCG丸出しで顔面が焼けててすごい萎えた。

絶食:『ダークナイト』がリアル寄りだと思ってた時期もあったなぁ・・・・・・っていう、懐かしい気分だよ、トゥーフェイスの顔が人体模型ぽかったもんね。・・・・・・あ、だから『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の話をしなきゃいけないんだって。

わかしょ:いやぁ・・・・・・『ジョーカー:なんとかかんとか』とかっていう映画は、観たばっかりなのに何も思い出せないよ。

絶食:そういえば、レディー・ガガのミュージカルシーンであなた爆笑してたでしょ?面会室でレディー・ガガが妊娠したことを伝えるシーン、ガガが歌い出した途端にすごい勢いで蠢き始める影が隣に見えたから、何事かと思って慌てて影の方を見たら、あなたが身を捩るほど爆笑してて・・・・・・

わかしょ:異様に歌上手いし、もはや笑えてきちゃって・・・・・・あの辺から歌い始める度に「また始まったよ」ってよぎるようになっちゃって。ミュージカルシーン観ててこんなにイライラしたのは『ラ・ラ・ランド』ぶりかな。あ、ちょっと『ラ・ラ・ランド』っぽいところあったよね、今回のジョーカーは。私はとにかく『ラ・ラ・ランド』が大嫌いで、あの映画で感動したとか言ってる奴は「ホントにマジで頭どうした?」って思うんだけど。

絶食:「東京の女の子、どうした?」

わかしょ:いや、違うけど。まあ『ジョーカー:なんとかかんとか』は頑張って好意的に解釈すると、やっぱりジョーカーの真似事をする人たちが出てきちゃったことへの言い訳なんだろうね。映画の中で映し出されてきたビジョンはもう死んでしまったってことを表現するためにこんなにつまらない、完全に終わってるとしか表現しようのない映画を撮ったのかな、って。いや、でもそれってすごい失礼なことだよね、やっぱり。現代はいわゆる映画の黄金期ってわけじゃなくて、簡単にはフィクションの持つ力とかを信じられないわけじゃん。そういう中でさ、もうお終いなんだ、映画は終わったんだ、物語は終わったんだ、って喧伝することってただの手抜きだよね。こういう状況でも皆で頑張って、いや終わってないんだ、まだやれるんだ、って新しいことにチャレンジして、物語を作ってる人がいるわけじゃん。そういう人たちに対しての冒涜だと思えてきたな。今回の映画の中でもさ、1950年代の甘いラブソングみたい曲とか、急にカーペンターズの曲が流れてきたから「どうした?」って思ったけど、ロマンチックな音楽とかって全く今の流行じゃなくて、こういった音楽の陰には、男は労働力としてこき使われて、女性は家庭の中に縛られて、みたいな環境をごまかすために作られたものって側面があって、そういったことが露見してる現代では終わってしまった音楽と言えるんだけど、だから言って「終わってるよね」と声高に言っても何にもならないよ。やっぱり失礼な映画だなっていう憤りがあった。

悪の輝きみたいなのを全部剥ぎ取る必要あった?

絶食:結局、作り手が“萎えさせる映画”ってことに無策なまま映画を作ってるから、単純にどんどん面白くない方向に映画が展開せざるを得なくなっちゃうんだよね、別に性格が悪い映画でもないくせに。ラース・フォン・トリアーとか居るわけじゃない、性格の悪い映画を作る人が。

わかしょ:うん確かに、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』観ればいいじゃん、って思っちゃったし、今回の映画は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』にもなりきれてなかったよ。私は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』、別に良い映画だと思わないけど。

絶食:やっぱりさ、ネクラが作らなきゃダメなんだな、って思ったよ。ジョーカーっていう現象を持て余しちゃってることだけが伝わってくる映画だったんだよね。そういえば、気に食わないところがあって、一作目の『ジョーカー』の後にジョーカーを模倣する人がいっぱい出て来たっていう反省に基づいた映画なんだけど、実は世界規模では『ダークナイト』の方が影響は大きかったと思うし、銃乱射とかもヒース・レジャーのジョーカーに影響を受けて起きてたわけでしょ?しかも『ジョーカー』とインセルの世界的な問題っていうのはタイミングが被っただけなのに、作り手が勝手に「俺たちのせいでこんなことに・・・・・・」とか言って、今作では起きてない現象に対する反省を延々と今作ではやってるから、「そもそも知らねーし」って気持ちになっちゃった。

わかしょ:一作目の『ジョーカー』がそうなることを予想して作ったのかは分かんないけど、腹括ってない感じがあるのは本当に腹立つね。一作目はホアキンのアーサーに対する解像度がめちゃくちゃ高かったから成立した映画だと思ってるんだよね。コミュニケーション能力のない哀れな男がジョーカーになるまでっていう話だけのところに、ホアキンが全く話の通じない愚かな人間を熱演してしまった迫力があった。

絶食:そうそう、一作目って本当は「弱い者イジメしてると殺されるぞ」っていう話だったはずが、ホアキンに体重がすげえ乗っちゃったが故に「イジメられたから殺す」っていう話に見えちゃうんだよね。一作目はそのこと自体を映画の中では否定しないんだけど、なぜか今回の二作目はそうなってなくて、急に「それは誤解があって、やっぱり人を殺すのはよくない」とかって言い出すから、なんか急にお行儀よくなっちゃったなって。正直これは言い方の問題だと思ってて、もっと慌てふためいた映画にしちゃえばよかったのにと思って。「いやいや、そうじゃないんですよ」みたいなすまし顔で言ってくるから印象悪くて、「ごめん!あれはやっぱナシで!」って慌てて言ってくれれば良かったのにと思うし、たぶん出来たと思うんだよね。二作目って絶対的な物差しが全く無い映画で、一作目に対して相対的に「一作目はあっちだったから、今度はこっちにポジション取りします」っていうことでしかない映画だったから、それをやるんだったら「やっぱナシ!」っていう言い方にも出来たはずなんだけよね。今回は一生懸命「誤解を招いたことは申し訳ありませんでした」みたいなことを言ってくるわけじゃんか、「別に誤解してねぇし!」としか思わなかったし、っていうかそれも織り込み済みで一作目は観てたんだけど、って感じ。

わかしょ:なんかこの映画の批判に対する揶揄で「観たかったものと違うからって、インセルが怒ってるだけ。ジョーカーが暴れてくれないから怒ってるんでしょ」みたいなのを見たんだけどさ、それは全然違うと思って、単純に面白くない映画っていう。

絶食:そうそう単純に面白くないのよ。一作目にあったユーモアも欠けちゃっていて、例えばアーサーは笑えないギャグをやっちゃう人として居て、チャップリンを出したりとかして、主観的に見ると悲劇だけど客観的に見ると喜劇になる、っていうマインドをバックボーンにして描いてたんだけど、今回はそういうマインドもどっかにいっちゃってて。

わかしょ:確かに、余裕のない感じを受ける映画だったよね。正直、どんな残虐なことも物理的には出来てしまうわけで、映画っていうのはそういうことを描くものだと思うんだけど、今回はそういうのも無くって、「法が定めるから、人は殺しちゃいけません」みたいな話になってる。ポリコレが表現をつまらなくしてる、みたいな言説は本当に大嫌いだけど、今回に関しては本当にポリコレが表現をつまらなくしてるように見えちゃう感じになってるよね。映画の中ぐらいでは人が面白おかしく死んだっていいじゃん。それにどう影響を受けるかは人それぞれだし、映画が終わってから先は観客が自分で考えることだから。

絶食:俺、爆発して裁判所から逃げた後、「イェーイ!このまま逃げろ!看守をぶっ飛ばせ!」とか思って観てたんだけど、なんかレディー・ガガにフラれてしょんぼりして、またすぐ捕まっちゃうからよく分かんなくなっちゃって。

わかしょ:法律なんてどうせ人間が作ったものなんだから、その枠の中で無理に映画なんか作らなくても、って感じ。せせこましい悪とか惨めな悪の中にも、人はちょっとした美みたいなものを感じ取っちゃうもので、それはフィクションの中だけで止めましょう、ファンタジーの中だけで憧れましょう、っていう約束事のはずなのに、それすらも許さない映画だったから嫌だった。ハロウィンの時にジョーカーやハーレクインの仮装したりするのも、皆そのお約束を承知の上でやってたんでしょ?それすらも否定しなくてよくない?それでしかも今回の映画では最後に死。アーサーが薄汚く、愚かなりにジョーカーとして生きてく中で、意図せずに身につけてしまった悪の輝きみたいなのを全部剥ぎ取る必要あった?それが落とし前をつけることなのかもしれないけど、そうでもしなきゃいけないんだったらもう誰も映画なんて作らなくていいじゃん。法律の範囲内で許される美しいものとか心動かされるもの、倫理的に正しいものだけを愛でることしかできなんだったら。うーん、やっぱり腹立ってきたな・・・・・・。

そもそもシネコンでかかってるハリウッド映画なんか観てるのが駄目?

絶食:俺、今回の映画はかなり設定が飲み込み辛くて、下手したらアーサーは塀の中の方が楽しそうなんだよね、話し相手もいて、タバコ吸い放題だし。やっぱり一作目は観てて、「そんな状況になっちゃったら、そりゃ人も殺しますわな」みたいな気持ちにくらいに辛い環境だったんだけど、今回の映画は劇中の全てがアーサーにとって都合の良いように出来てるのが腑に落ちなくて。まず精神病院の設定が飲み込み辛くって、設定では犯罪者を収容する精神病院だから、医療刑務所相当のはずなんですよ、それなのに自らの申し入れで入院したレディー・ガガと同じクラスでアーサーが合唱してるの、おかしくない?精神病院と監獄って別物のはずだし。あとはタバコ。タバコは吸えるの?あれもよく分からなくて。アーサーのキャラクターとしてはヘビースモーカーで、一作目からずっと吸ってるからはそれは別にいいんだけど、それにしても70年代のニューヨークの刑務所ってタバコ吸い放題だったの?トイレも無いような独房で粗悪な暮らしをさせられてるんだけど、タバコだけは「ちょっとちょうだいよ」って感じで成立してるのが全然飲み込めなくて。そういうところでブレちゃってて、別にそこで暮らしてるのがしんどいようにあんまり見えないんだよね。テレビも見放題だし、映画も見れるし、ピアノも弾けるし。現実のシーンに今みたいな引っかかるところが多いから、妄想のミュージカルシーンになっても別に入り込めなくて。しかもミュージカルシーンでは全く物語も動かないし。俺が思うダメなミュージカルのパターンって、歌ってる間に物語が止まっちゃうやつなんだけど、今回はまさにそんな感じのミュージカルシーンでずっとイライラしちゃった、また歌うのかよって感じで。

わかしょ:『RRR』のナートゥダンスも物語止まってない?

絶食:あれはいいの!あれは主人公2人のキャラクター説明になってるし、2人が絆を育んでいく様子とかロマンスの萌芽が活写されてるし、あとイギリスの植民地支配に対するフィジカルな対抗っていう物語の大テーマも描かれてるからいいの!ナートゥダンスは最高!ミュージカル関連でジョーカーの悪口を蒸し返すけど、今回のミュージカルシーンで結婚式を模したシーンがあったけど、法廷で半ベソかかされてた低身長症のオジサンも介添人としてシーンに参加させられてて、「どういうつもりなの?」ってムカついちゃった。

わかしょ:私は低身長症の人のシーンは不要だったよな、って思っちゃった。法廷のシーンで一作目に出てきた人たちの証言が延々続くんだけど、それって結局一作目で終わった話を繰り返してるだけで全部不要だったな、って。

絶食:あ、そうそう、一作目って殺人だけが客観的な事実で、他のことは全部嘘かもしれないっていう信頼できない語り部の映画なんだよね。『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーもそうで、口が裂けて理由の説明とかは毎回違っていて、ジョーカーってシンプルに嘘つきなの。だから一作目っていうのも無数に語られてきたジョーカーのワンパターンに過ぎない、っていうつもりで観てたんだよね。でも今回の法廷のシーンで、アーサーの虚言かもしれなかった部分が事実にされちゃうから、もはや一作目が不憫に感じたよ。しかも法廷のシーンは精神疾患や自閉傾向を多重人格とごっちゃにして語る部分があって、そういった症状を持つ人に対して非常に失礼な描写になってると思うんだよね。あと一作目を見返すと、アーサーには微妙に責任能力が問えない気もするんだよね。やっぱり精神疾患ではあると見えるバランスだと思う。そういうところで一作目は脇をきっちり締めて作ってる感じもあって、再評価したい気持ちになったかな。

絶食:アーサーの妄想っていうのもあるんだけど、レディー・ガガがその場に居るレディー・ガガと妄想の中のレディー・ガガとで、歌い方を少し使い分けてるわけじゃん。そんな中でエンドロールにレディー・ガガがカバーした『That's Life』が流れてきて、もう完全に見失っちゃった感じがあって。「それが流れる意味って何!?」ってもはやビックリするぐらい意味不明で。劇中で『That's Life』なんか10回とか100回とか流れてたのが、最後に役柄を演じてすらいない普通に歌の上手いレディー・ガガのカバーバージョン。しつこいよ、ってゲンナリしちゃって。しかもその後にホアキンが弾き語った渋い曲が流れるんだけど、歌詞の内容はどちらかと言えばアーサーに必要だったケアみたいな内容で、別にアーサーが歌うべき内容じゃないのよ。それを役柄から離れたホアキンが歌ってる。「どこからの何の視点!?」ってこれもビックリしちゃって。

わかしょ:あの曲は「あなたがこの世の全ての人間から本当に見放されたとしても、NPOがあなたを受け止めてくれますよ」っていうことだから、最後にこう・・・・・・相談窓口の番号が表示される、みたいなこと?なんじゃないかな。好意的に解釈すると。

絶食:あっ、終わった後にレディーガガとホアキン・フェニックスの2人から、「今日はご来場ありがとうございました!お礼の気持ちを込めて、皆さんに一曲ずつお歌のプレゼントです!」っていう爽やかなカーテンコールってこと?え?そんなの正気の沙汰じゃないよ・・・・・・。

わかしょ:今回の映画は、一作目の『ジョーカー』に自己を投影したようなインセルは、人に馬鹿にされたからって相手を殺せば死刑になるし、人に馬鹿にされても我慢してると馬鹿にされるだけの人生が待ってるし、っていうそういう話、そこからの解決策はない、報われることは一生涯ない、っていう悲惨な話。お腹刺されて死んじゃったからね、最後。バットマンにジョーカーがボコされる日もやってこないわけで。あーダメダメ、もうバットマンもジョーカーも皆すぐ真似して犯罪起きるんだから、発禁、全部発禁、もうバットマンとか作っちゃダメ、暗い物語は一切禁止でハーレークインが活躍するフェミニズム映画みたいな、明るく楽しい映画ばっかり作ってもらって。

絶食:でも不思議だよね、一作目と同じ監督、脚本、主演で作ってるのにこんなに違っちゃうか、って感じ。

わかしょ:作り手が興味を失ってしまったんじゃないか、という気持ちにしかなりません。それだからといって、ヒドい作品を人に見せていい理由にはならないけどね。たまに、たまにっていうかしょっちゅう、自分の文章がヒドいもののように思えて凹むことがあるんだけど、この映画が世界中で公開されてしまうことを考えたら、私の文章は案外大丈夫かもしれないって気持ちになれてきたよ。・・・・・・って今回文句ばっかりだけど、これって原稿に使える部分ある?

絶食:今回はまあそういう回ってことでいいんじゃないかな、ほら褒めるだけが感想じゃないし・・・・・・。

わかしょ:確かに、観ないと悪口は言えないからね。だから私は『君の名は。』とか『花束みたいな恋をした』の悪口は言いたくても言えない。しかし最近、面白い映画って観てないな、って思っちゃったよ。どっかにあるんですかね?面白い映画。そもそもシネコンでかかってるハリウッド映画なんか観てるのが駄目?もっと昔の映画を観ればいいのかな?


絶食三平(@3peiZessyoku
平日はサラリーマン、休日は脚本・演出家。「だしもの」ユニットSUANAで演劇っぽい雰囲気を担当。また同人誌として映画評論誌『映画ばかり観てるとバカになる』を刊行。

わかしょ文庫(@wakasho_bunko
作家。代表作に『うろん紀行』(代わりに読む人)。現在は出版社トゥーヴァージンズSIDE TRACKで「美しきもの見し人は」連載中。また同人誌のランバダシリーズなどを刊行。

いいなと思ったら応援しよう!