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仮面ライダーS/L23話

Tale23:Believe in Nexus

・デーモンとクロノスは同時に目をむいた。
「何あれ?新しいフォーム?」
馨が疑問。
「いや、飽くまでも一時的なものさ」
椎名が答える。
「仮面ライダーセーブレベル50B・サブリメノンゲーマー。そのブライトタブレットの能力は一時的にあらゆる作品のあらゆるキャラクターのあらゆる能力を使用可能とする。ちなみに将碁や僕がそのデータを入力する事も出来るけれど今回は父さんが少年時代に見たアニメがデフォルトで入ってるみたいだね」
「……なるほど。だから同年代のあの二人が反応してるんだ」
二人の視線の先。ライディーンと化したセーブは右腕の盾(ゴッドブロック)から弓を取り出す。
「ゴッドゴーガン!!」
さらに生成した矢を弓に番えて……
「……これどうやって発射するんだ?」
使用方法が分からなかった。
「な、何やってるんだ!?普通に弓矢を引けばいいじゃないか!」
「いや、弓とか触ったこともないし。え、これどうやって……こう?」
矢は全く飛ばずにその場に堕ちた。
「……ふん、一発芸フォームか」
デーモンが一笑に付しながら接近。矢を拾おうとしていたセーブの顔面に膝蹴り。
「ぐふっ!!」
転がりながらセーブは元の姿に戻ってしまう。それを見て椎名は頭を抱える。
「将碁!タブレットでまた別のヒーローの力を使え!!」
「い、いや、そんな急に言われてもな……」
「猪口才な。やらせると思うのか?」
デーモンの追撃。それをタブレットを盾にし、
「聖なるバリア・ミラーフォース!!」
「!?」
拳の一撃に反応してタブレットが白く輝けば、繰り出した力がそのままデーモンに跳ね返り、デーモンを遠く吹っ飛ばす。
「くっ!」
「お、こういう事も出来るのか。だったら……!」
タブレットを操作してとある画面を選ぶ。させぬとデーモンが迫ると、
「ふんぬ!!」
それを真っ向から受け止めたセーブの全身の筋肉が隆起する。
「これは……!!」
「キン肉マンで行く!!」
そのままデーモンの体を逆さまに持ち上げて跳躍。
「キン肉バスター!!」
相手の後頭部を自身の右肩で支え、相手の両足を手で掴み、その状態のまま100メートル上空からマッハ1の速度で地面に墜落。落下の速度と威力がデーモンの背骨と両脚に炸裂する。
「……くっ!」
デーモンは素早くセーブを振り払って立ち上がろうとするが、両足と腰のダメージが想像以上だったのか立ちくらむ。
「冥王星まで飛んでけ!!」
接近したセーブはデーモンの腕をつかみ、ジャイアントスイングでデーモンをはるか上空に投げ飛ばす。
「くっ!」
デーモンは一瞬で大気圏を突破して暗黒の海を光の何倍もの速さで突き進み、やがて冥王星の地表に叩きつけられた。
「……このデーモンの力を持ってしても天王星までがやっとだと言うのに、いくらスグルの力を使ってるとはいえレベル50のスペックでここまで……?……まあいい、地球に戻った際には真っ先に始末してやる」
言いながらデーモンは宇宙タクシーが通りかかるのを待つことにした。


・三日が経過した。巌の葬式や送別会を警戒しながら過ごし、暗い雰囲気の中、将碁、馨、雷王院が椎名に呼び出されて西武財閥本社にやってきた。そこには既に先客がいた。
「……檀正宗……!?」
即座に将碁と雷王院がベルトを構える。が、それを椎名と正宗が手で制す。
「心配しなくとも私は君達と戦うつもりで来たわけではない。証拠だ」
正宗が指を鳴らすと、奥の部屋から武が姿を見せた。しかもトリニティドライバーとライトニングのフルボトルを持っていた。
「……お前、」
「……早く受け取れよ。こんなこと本当はしたくないってのに」
武が悪態をつき、睨み返しながら雷王院が回収する。
「見ての通り、ライトニングのツールは返却した。しかし、喜屋武(きゃん)くんに関しては別に私が指示して部下にしているわけではない。彼の意思で私の下についているのでね。どうする事も出来ない」
「……武、どうして檀正宗のところに?」
「……将碁、お前こそどうしてそいつと一緒にいるんだよ。そいつのせいでお前はあの日、おじさんと最後の一日を無事に過ごすことが出来なかったんだ。それにこの前だってこいつがもっと何とかしていれば、いやそもそもこいつが関わってさえいなければおじさんはもっと長生きできたかもしれないんだ。言ってみればすべての元凶だぞ?」
「……武。別に俺もこいつの事を許したわけでもないし況してや信用したわけでもない。ただ共闘を認めただけだ。人類すべてをバグスターにしようとしているその男や、あれだけの力を見せた嵐山、その嵐山の背後にいる存在から地球や人類を救うには仮面ライダーの力を合わせる必要があるんだよ。そう思ったから……」
「そいつは仮面ライダーなんかじゃない!!ただのくそったれなエゴイストだ!!お前も見ただろ!?そいつのせいで仮面ライダークロニクルプレイヤーの多くが死んだ!そいつが主導してプレイヤーを集めて殺し合わせたんだぞ!?バグスターなんかよりよほどひどい悪魔なんだぞ!!」
怒号の武。
「……檀正宗。一応聞いておくけど、」
「私は何もしていないよ。これだけの殺意は彼本人の感情だ。……喜屋武くん、私は彼らと話がしたいからここへ来た。少し黙っていてもらえると助かる」
「……ちっ、」
武は舌打ちしてから部屋の奥へと下がる。
「……で、話って?」
将碁、雷王院、馨の視線が正宗へと移る。
「嵐山を倒すために同盟を組まないかと言う話だ」
正宗はソファに座ったまま葉巻を吸い始める。
「バグスターの面々からエボルトについて聞いた。嵐山の背後にエボルトがいるのであれば、先ほど西武将碁君が言ったように脅威的だ。力を合わせる必要が出てくる」
「……言っておくが、嵐山はともかくエボルトは仮に全ライダーと全バグスターが力を合わせても勝ち目はないぞ」
雷王院が告げる。
「そちらについてはまだこれから検討していこう。まずは嵐山即ち仮面ライダーデーモンだ。私がガシャット技術の粋を集めて作り上げたクロノスであっても1対1では勝てない。だが君達はこの前にデーモンを退けて見せた。私と君が手を組めばデーモンにも勝てる。そう思ったのだよ」
「……まさかと思うが隙を見てネオスターライトドラグーンのガシャットを奪うつもりじゃないだろうな?」
「保証しよう。だが、無事にデーモンを倒した暁にはそのガシャットを私に売ってほしい」
「何だって!?」
「先日君はその力を使いこなせていなかった。だがあれほどの未知の性能を含んだガシャットだ。私の手で100%使いこなせるようにして量産すれば或いはエボルトにも通用するのではないかと思うのだがね」
正宗が視線を将碁と雷王院に向ける。
「……確かにあの力の可能性はガシャットの域を超えていると言ってもいい。それこそかつての大戦でエボルトの力を封じたフルボトルの力に近い存在なのかもしれないな」
「……」
「だが、忘れるな。バグスターは倒すべき脅威であり、そのバグスターに味方するならばあんたもまた俺達の敵と言える。共闘するのは構わないがそれ以上を求めるべきではない」
「……黙って聞いてれば何勝手に話進めてんだよお前」
武が歩み寄り、雷王院の襟首をつかむ。
「正宗さんが協力してほしいって言ったのは飽くまでも将碁であってお前なんかに誰も期待してないからな?俺に傷ひとつ与えられないような雑魚がまた大事な話の足を引っ張って台無しにする気かよ」
「話の腰を折って大事な場面で間違ったアクセル全開にしているのはいつだってお前の方だ。発言権与えられていないのが分からないのか?」
「お前の方だろうが」
睨み合う両者。椎名と馨が嘆息。将碁が無表情で拳を握り締め、しかし正宗が口を開く。
「なら勝負で決めてみるのはどうかね?私と君が対デーモンに必要でその際に共闘すると言うのは互いに了承と言う事でその先。私にそのガシャットを売るかどうかを勝負で決めると言うのは」
「……勝負?」
「そう。そこの猛犬とその猛犬が目の敵にしている彼とを戦わせてみて勝った方の陣営の勝利とする。喜屋武君が勝てばデーモン撃破後にそのガシャットを売ってほしい。無論君の言い値で構わない。雷王院君が勝てば、そうだな。これまでに仮面ライダークロニクルでゲームオーバーし、バグスターとなりその上でもなお撃破されて消滅したプレイヤー達を復活させよう。無論人間に戻すことは出来ないからバグスターとしての復活になるが」
「何だと……!?」
「勝っても負けても君が失うものは何もない。いい話だと思うが?」
視線を正宗から雷王院へと向ける。雷王院は一瞬だけ将碁と視線を合わせる。
「好きにしろ」
「だから何でお前が決定権持った振りしてるんだよ」
正面からの悪罵は無視する。
「……分かった。その勝負に乗ろうと思う」
「交渉成立だ」
正宗が指を鳴らす。すると、一瞬でその場の景色が変わる。
「これは……!?」
「バグスターには空間を操る能力も存在する。まあ、一瞬でその場にいたすべての存在を電子に乗せて仮想空間に転移する程度の力はバグスターに触れていれば誰にでも出来る。さあ、ここでなら好きに戦えるだろう」
正宗が指を鳴らすと、武の懐でトリガーのセーフティが解除される。
「排除する!!」
「ドグマ!!」
「ガンガンリボルバー!!」
「エクシーズマッチ!!Are you Ready!?」
「変身!!!」
「背信のロックンロール!!ドグマトリガー!!!イイイイェェェェェェイ!!!!」
「……」
「どうした!?変身する間だけ待っててやる!!さっさと変身しろ!!」
「……もうお前はどこにもいない」
「あ!?」
「……」
雷王院はトリニティドライバーを腰に巻いた。直後雷王院の傍らにサンダーウルフバグスターが出現する。
「サンダーウルフ!?」
将碁達が驚く中、サンダーウルフバグスターは光り輝き2つのフルボトルの姿となる。
「……」
「トリニティセレクト!ライトニング!!スターライト!!ガンナー!!ハイパーベストマッチ!!!Are we Ready!?」
「変身……!!」
「轟け流星!閃け銃声!撃ち抜け迅雷!!We’re 三位一体……」
「……」
「エラーマッチ!!」
しかし、そこで電子音が中断。トリニティドライバーから3つのフルボトルが弾き飛ばされてしまった。
「っと!」
将碁が自分のところに飛んできたスターライトフルボトルをキャッチする。
「……何だこれ、懐かしい感じがする……」
「……やっぱりだめか」
雷王院はトリニティドライバーをライトニングフルボトルに収納し、代わりにライトニングゼリーボトルを取り出した。
「スクラァッシュドラァイバァァァ!!」
スクラッシュドライバーが電子音を叫ぶ。
「ライトニングゼリー!殴ぅる痺れぇるぶっちぎるぅ!!ライトニングインチャージ!!」
「変身」
「ブルァァァァァァァァァァアッッッ!!!」
電光の渦を打ち砕き、ライトニングチャージがその姿を見せる。
「……ふん、何をするかと思えば結局そのぼろ負けした姿か。3勝目も頂かせてもらう」
リボルバーが銃口を向けて引き金を引く。
「くっ!」
銃撃一発で装甲に亀裂を走らせながらもライトニングは走り、可能な限り彼我の距離を縮めることに努める。しかしリボルバーもまた敵の進撃に合わせて後ろに下がることで彼我の距離を縮めさせない。
「……実際この勝負、雷王院君の不利だと思うよ?」
椎名が呆れを隠さない表情で。
「……だろうな」
「それなのに君は父さんの形見を賭けたのかい?まさか負けたとしても無茶な金額吹っ掛けて買わせないつもりとかか?多分物理的に可能な金額なら相手は集めてくると思うよ?」
「別に俺は生涯仮面ライダーをやるつもりはない。嵐山もエボルトも倒した後なら正宗さんに渡しても構わないと思ってる。もちろん人類をバグスターにしようと言うのは許せないけど、それでも以前あの人が言っていたようにあの人が政治家になり民衆の声がそれを望むんだとしたらたとえ人類であることを捨てる決断だとしても従ってもいいんじゃないかと思う。それが理由の1つだ」
「もう1つは?」
「今のままじゃあの二人はどうしようもない。あの野郎を倒すことであの野郎以上の実力となった武が帰ってきてくれるのならそれはそれで構わない。俺は一度あの野郎を捨てた。けど今は大きな目的があるとはいえ一応協力関係にある。それを武は絶対に許せないと言った。それであんなに変わって……。けど俺はそれだけ不純な事をしたんだ。だから筋は通す。俺は仮面ライダーとしての使命のためにあの二人のうちどちらか勝った方を仲間とするつもりだ」
「……何でこんなことになったのかねぇ」
「え?」
「僕はさ、君達とはそこまで関係はなかった。けど何回かは君達3人が楽しそうにしている姿を見ているんだ。ところが今はこんな状態。いったい何があればこんなことになるんだろうなって」
「……きっと誰もが譲りたくない意地をぶつけ合わせてしまったからだろうな」
「それが原因で人類の未来を変える戦いを巻き起こすか。……人は一人では生きていけない。けど人が複数いる限り歴史から戦争は消えない。その理由がどこか分かったような気がするよ」
「……それが人々が仮面ライダークロニクルを求める理由だ」
正宗が付け足す。
「人間はどのような理由であれ今のままではいけないと、もっと先を見てみたいと言う想いが一番強くなった時に最大の力を発揮する。私はそれを欲望と言う形で与えた。だからクロニクルプレイヤーは尽きない。ゲームに敗北し、人間をやめてもバグスターと言う逃げ道がある。バグスターである限り死ぬことはない。肉体の死を迎えてもバックアップデータが残っていればいくらでもバックアップが可能だ。死ぬことはない、どんどん強くなる、それでいてある程度強くなれば願いが叶う。9割方の人間は世界に蔓延る建前よりかもその願いを優先する。君達はそれに歯向かおうとしているのだよ。既に君達が守りたがっている人類の多くはその心だけならもうバグスターも同じ。諦めて私の計画に乗りたまえ。全人類がバグスターとなり不死となりレベル100の力を手に入れればエボルトと言えども容易には勝ちは拾えないはずだ」
「……1つ前から気になってることがあるんだよね」
椎名が言えば正宗が視線を向ける。
「あなたはバグスターを肯定している。それこそ全人類をバグスターにしたいほどに。しかしあなたはバグスターになっていないように見える。あなたの息子もそうだった。人類に何の価値も見出していないように見えてしかし人間をやめていないあなた方親子には一体何があると言うのかな?」
「……」
正宗は語らない。ただ、視線を戦いへと戻すだけだった。
「くっ!!」
ライトニングの拳がリボルバーのわずか数センチを通り抜けた。直後に至近距離から発射された射撃がライトニングの肩を貫く。
「ぐううっ!!」
既に装甲の大半は削り剥がされている。今貫通した銃弾は本来守られている筈の生身をも貫いていた。だが、それでもライトニングはリボルバーへ距離を詰め続けている。
「しぶとい奴だな!そこまでまだ俺達を困らせたいのか?ストーキングしたいのか?え、ホモ野郎!」
「………………クソガキは思い切りぶん殴ってやらないといけないフレンズだからな」
「ふざけんじゃ……!!」
リボルバーが銃口を向ける。その時だ。先程散らばった最後のフルボトル……ガンナーのフルボトルが突如リボルバーの眼前に出現した。
「……こいつは……!?」
「思い出せ。仮面ライダーリボルバーではなく、仮面ライダーガンナーとなった時の事を」
「……!?」
突如として巻き起こる記憶の波。ここではない遠いどこかでの記憶。頭に覚えはないのに体に覚えがある謎の記憶。いつかどこかで夢見た今の自分ではない仮面ライダーである自分の姿。苦境に立ち尽くしてもなお決して諦めなかったあの仲間達の姿。
「……くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
リボルバーは引き金を引く。銃口からビームが発射されてフルボトルを吹き飛ばす。が、
「この馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
直後にライトニングの拳がリボルバーの顔面にぶち込まれる。頭蓋も脳幹も揺り荒らす衝撃に後ずさるリボルバーへライトニングは追撃を繰り出す。激しい電撃を纏った拳の連打が次々とリボルバーの装甲を破壊していく。
「チャァァァァジライトニングクラァァァァァァァァァッシュ!!!」
「ぐおおりゃあああああああああ!!!!」
電気エネルギーを集約した左足が神速を以てリボルバーの右腕に叩き込まれる……直前に。
「ポーズ」
「!?」
その場の全ての時間が止まった。
「……ここで負けるわけにはいかないのでね」
停止して動かないライトニングとリボルバーの間にクロノスが立っていた。
「……ふむ、既にキックが右腕にわずかながら命中している。これを阻止するのは不可能だな。だが、」
クロノスがリボルバーを後ろに蹴り飛ばし、そのままライトニング向けてキックを繰り出す。その時だ。
「レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ホワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!!」
「!?」
あり得ない筈の電子音。それが聞こえた時には自身の放った蹴りをドラム缶が受け止めていた。
「やっぱりこういう事だろうと思った!」
「セーブだと……!?」
セーブはクロノスの蹴りを受け止め、押し出す。
「馬鹿な、どうやってこのポーズ空間の中に……!?」
「未来から来たんだよ。あんたがポーズを使ってこいつを倒した後に俺がタブレットの力を使って時間を巻き戻し、ポーズへの耐性を持った状態でここにやってきたんだ。あんたに歪められた未来を戻すために!」
「くっ!」
クロノスを突き飛ばし、セーブは背後のライトニングに触れる。と、一瞬だけセーブの姿がウルトラの母のものへと変わり、傷ついたライトニングの体と装甲が完全に回復する。
「檀正宗、仮面ライダークロノス。あんたはここでゲームオーバーだ!」
「オープンウィング!!胸に秘めた熱い思い!!感じるフリーダム!!アイムアレベル50サブリメノンゲーマー!!!」
電子音。装甲の翼が開かれセーブは姿を変える。
「たかがレベル50ごときが!!」
クロノスの接近。なんとか反応出来たセーブはパンチをギリギリのところで回避しつつタブレットを操作。
「この三日間何もしなかったわけじゃない!!」
やがてセーブの姿が闘将ダイモスのものへと変わる。
「ファイヤーブリザード!!!」
その胸から強力な火炎放射が発生し、クロノスの全身を2600度で燃やす。
「くっ、これは確か……!!」
「フリーザーストーム!!」
続いてマイナス240度の冷凍光線が発射されてクロノスの全身を金属疲労を起こしながら凍結させる。
「まずい……!!」
「必殺・烈風正拳突き!!」
動けなくなったクロノスにパワー全開の正拳突きを打ち込み、凍結ボディを破壊してクロノスを20メートル以上吹っ飛ばす。
「ぐっ!!」
「リスタート」
ポーズが解除されて世界が時間を取り戻す。
「……ん、ポーズか」
セーブの背後でライトニングが一瞬で事態を把握する。
「……なあ、」
「ん?」
「後で正拳突きのやり方教えてくれないか?」
「……いいだろう」
「じゃあ、まずはあいつからだ!」
正面。ところどころ変形したり変色したりしているクロノスがゆっくりと立ち上がる。
「おのれ……!!」
「俺はルールを破る奴が一番嫌いなんだよ!!」
「キメワザ・ヴィクテムクリティカルフィニッシュ!!」
「敗戦を良しとしない奴。人、それを小物と言う」
「チャァァァァジライトニングクラァァァァァァァァァッシュ!!!」
セーブとライトニングが跳躍。空中でセーブが4枚の翼で羽ばたき、一気に加速。
ライトニングが左足に200万ボルトの電撃を纏ってリニアモーターカーの要領でミサイルのように加速。
「「てやーりゃああああああああああああ!!!!」」
結果的に二つの火球となった両者が全く同時にクロノスの胴体に激突。
「ぬうううううううううっ!!!!」
クロノスのボディを100メートル以上吹っ飛ばし、空中で変身が解除。ボロボロになりながら正宗が電脳空間の地べたを転がりまわる。
「……勝負ありってところだな」
声。見ればパラドが姿を見せて演技気味に拍手をしていた。
「クロノスを倒せるようにまで成長するなんて流石だな。あいつの時間経過ごとに攻撃力と防御力を増す特性はあの装甲にあったわけだがいの一番にそれを破壊するとはやるじゃねえか」
「……パラド、お前達バグスターは何を……」
「お喋りをしに来たわけじゃない。敗者にふさわしいエンディングを見せに来たんだが」
パラドが見れば既に正宗の姿はなかった。
「……逃げたようだな」
パラドが指を鳴らす。と、セーブ達その場にいた者が全員元の社長室へと戻ってきた。既に変身は解除されている。
「1つ教えておいてやるよ」
パラドは背を向ける。
「俺達上級バグスターも元々人間から生まれた。即ち人間だった頃の記憶を持ってもいるんだが俺はバグスターになれてよかったと思ってる。そう言う奴もいるってのは忘れるなよ」
「……」
将碁達は答えず、そしてパラドもまた軽く手を振ってから姿を消した。