仮面ライダーS/L34話

Tale34:刻はまさにParadox

・CR。
「お前は何を考えているんだ!?」
響く怒号。飛ばしているのは将碁だった。
「お前こそどうして止めた?おかげでカイトもパラドも逃げてしまった。人質もそのままだ。奴らの目的が聴けたことだけがあの場での成果だがそれ以外は全部最悪だぞ?」
雷王院は腕を組みながら将碁と真っ向から睨み合う。
「止めるに決まってるだろ!!お前はどうだか知らないし、かつての俺達もどうだったのかは知らない。けれど今の俺が仮面ライダーでいる理由は少しでも人々の平和な日常って言うのを守るためだ!そのために俺達が誰かを傷つける何てことしちゃいけないんだ!!たとえ人質に取られて勝利を逃したとしても!!」
「俺達仮面ライダーは絶対に負けちゃいけないんだ。元々俺達は守る側であって人間社会のルールもお構いなしにいつどこから攻めて来るか分からないバグスターやエボルト達に対して圧倒的に不利。そんな状況で一度でも負けを見せたらどうなる?お前達が守ろうとしている日常だって修正不可能なまでに歪まされ破壊されるかもしれないんだ」
「お前は何のために黎斗社長と戦ったんだ!?檀正宗を倒そうと決めたんだ!?犠牲をいとわぬやり方をするあの二人が許せなかったからじゃないのか!?それなのにお前が同じやり方をしてどうするんだ!?」
「以前までと同じやり方じゃここから先通用しない」
「それはお前が弱いからだろ!!勝てないからだろ!!」
「ああそうさ、力なき正義に価値はない。力で届かないなら覚悟を決めて手段を変えるだけだ。バグスターもエボルトも倒せると言うのなら悪魔にだって……」
「お前!!」
「そこまでだ、二人とも」
二人の間に椎名が割って入った。
「衛生省は今回の件は不問に取っている。ただ問題なのは春奈ちゃんをどう救出するかだ。あの上級バグスターがわざわざ連れて帰ったからには絶対に何か罠を仕掛けてくる。それをどうにかして対処できたなら今回の事はただの意見の相違だ」
「けれど椎名!!」
「将碁。君は悪くないとは言わないし、悪いとも言わない。今回の件で衛生省は雷王院君の方を危険視している。あとで呼び出しもされるだろう。けど雷王院君の言う通りもしもの時には僕達は人質を無視して敵を攻撃しなければならないんだ。結果論になるけれどももしも雷王院君があの時、あの上級バグスターをそのまま攻撃して撃破できていたならば春奈ちゃんの犠牲以外の問題に関してはすべて解決できていたし、場合によっては上級バグスターを2体も葬ることが出来たかもしれない」
「……椎名、お前まで人の命よりかも利益を取ろうって言うのか……!?」
「僕達は神じゃないから、出来る事には限りがある。必要ならそれを悪魔の心で補う事だってあるかもしれないさ。もちろん積極的に行うべき行為ではないだろうし、僕とて心を痛めるさ。将碁、覚悟を決めてくれ」
「……………………くっ!!」
苦い表情で椅子に座る将碁。同時に自動ドアが開かれて向こうから瑠璃と馨がやってきた。
「やあ瑠璃ちゃん。結果はどうだったかな?」
「知っていて言っていますよね?……私の体内のバグスターウィルスの質と量がこれまでとは比べ物にならない程強化されています。これまでは弱小バグスターのウィルスでしたが今は上級バグスターであるアイギスバグスターが直接私の体内にいます。今は完全に私の意思で言動で来ていますがいつ肉体を乗っ取られるかは分からない状態です」
「……パラドが言っていた通りのようだね」
「……なあ、」
将碁がいつもよりも若干低い声で瑠璃たちを見た。
「そのバグスター、除去できないのか?」
「え?」
「馨さんのもそうだけどバグスターウィルスを対内から出して仮面ライダーの力で除去すれば治るんだよな?」
「……いや、難しいんじゃないかな。瑠璃ちゃんはもちろん馨さんの体内にいるウィルスも上級バグスタークラスである可能性が高い。これまで上級バグスターに感染して治療出来た人物は存在しない。それが可能だったら檀黎斗も馨さんを忌避せずにとっくの昔にどうにかしていただろうしね」
「……だとしたらバグスターの力を借りるのは不可能だな」
雷王院がソファに座り、コーラを飲みながら言う。
「既に肉体を失っていたアイギスですら感染したら治療が厳しいのにあいつらの力を借りてエボルトに対抗すると言うのは恐らく難しい話だろうな。あいつらもエボルトとは敵対関係にあるからその時に協力こそすれど、その後は一気に俺達の肉体を奪いかねない」
「……お前ならどうにかできるんじゃないのか?ネビュラガスはバグスターウィルスと共存しないとか言ってなかったか?」
「ああ。それも上級バグスター相手にまで通じるかどうかは分からないし、通じなかったとしたら最初から俺はあいつらの対象にならずお前達だけがしかし全員今よりはるかに強化された状態で敵に回る。……俺一人が仮に残ったとして一体何がどう出来ると言うんだ」
「……それもそうか……」
「ところで気になったんだが、あのバカと利徳の奴はどこに行ったんだ?」
「……まさか……!!」


バグスター達が住んでいる電子空間。
「オラァァァッ!!!」
リボルバーがそこに突入していた。
「……まさか単身乗り込んでくるとは思わなかった」
正面。カイトがパラドと麻雀しながらこちらを見る。
「そういう馬鹿は嫌いじゃないぜ?」
「うるせえ!人質返せ!!」
「パペットに言ったらどうだ?」
「あ!?…………げっ!!」
奥。そこにはベッドがあった。バグスターは睡眠を必要としない。そのためバグスターしか入れないこの空間にベッドがあることなど本来あり得ない。しかしそこには二人の少女の姿があった。
「…………あらやだ」
パペットがこちらに気付いて起き上がる。その細い腕で抱きしめていたのは春奈だった。
「カイトからのお土産の美少女、おいしかったわよ。あなたももう少し顔面偏差値あげればまとめて相手をしてあげるのに」
「俺は今のこの姿が気に入ってんだ。心までバグスターに成り下がったつもりはない。そんな事よりもその子を返してもらうぞ。と言うか、どうしてこの空間にその子が入れるんだ?」
「決まっている。既に人間ではないからだ」
「……何だと!?」
「私の目的何だったのか忘れてない?美しい人間をバグスターにして私のハーレムとして永久保存する事。あれからレベルの上がった私なら人間を一瞬でバグスターに変えられる。ちょっとボディが貧相だったから私好みにバストアップしてあげたわ。でも可愛すぎてこのまま人間の世界に返したらこの子、その日の内に大変なことになっちゃうかも」
「……くっ!お前達バグスターは……!!」
「お前ももうバグスターだっての」
「それよりも喜屋武。私達と組まないか?君は既にバグスター。おまけに実力だけなら上級バグスターの中でも群を抜いてトップクラス。エボルトを相手にしてもなお十分勝利できるだけの逸材だと私は思っている」
「ふざけるな!俺は人間でいたいんだよ!!オラァァァッ!!」
リボルバーが発砲。ゲームセンターが爆発炎上し、
「あーあ、俺達のアジトが……」
通常空間にてカイト、パラド、パペットが姿を見せる。
「……は、春奈!?」
と、そこにいた利徳がパペットの腕の中にいた春奈の姿を見て突進を止めていた。
「あらら。王子様の登場ってわけなんだ」
「春奈を返せ!!」
「こいつと交換な!」
利徳の突進をパラドが受け止めてその腰にベルトとガシャットを装着させる。
「くっ!!」
「仮面ライダークロニクル・パラドックス!!」
「くそぉぉぉっ!!」
強制変身させられた利徳はそのままパラドを殴り飛ばす。パラドは空中で笑いながらバグスターの姿に変身して両手に拳銃を握る。
「銃なら俺が相手だ!!」
リボルバーがパラドに銃口を向ける。と、
「悪いが相手になってもらおうか」
そこへバグスター姿のグラファイトが出現して斬りかかる。
「グラファイト!!」
「楽しみにしていたぞ!強くなった貴様と相まみえる瞬間を!!」
「くそっ!!お前も所詮バグスターかよ!!」
グラファイトの斬撃を回避しながら射撃。しかしそれをグラファイトが回避してまた斬撃。目まぐるしい斬撃と射撃の攻防が超高速で行なわれている。それをドン引きしながら見ている利徳はパラドからの射撃を受け止めながら突進を開始。
「イメトレは十分なんだよ!!」
パラドの両腕を掴んで一本背負い。
「は!?お前柔術!?」
「意表を取るには十分だデータ野郎!!」
背中から地面に叩きつけられ数秒怯むパラド。それを無理矢理引き起こしてから、
「おらあああああああああああ!!!!」
全体重の乗った膝蹴りを下腹部に叩き込む。
「ごぶっ!!こいつ、ハザードレベルの方が適してるんじゃないのか……!?」
「だがそれもここまでだ」
そこへ再びカイトの声。見ればやはり春奈を人質に取っていた。
「ちょっとカイト。私のおもちゃ……」
「バックアップは取ってある。新しいアジトを見つけた後で大量生産していくらでもハーレムを作ればいい」
「ならいいけど」
「と言うわけだ。本宮利徳、喜屋武。変身を解除しろ」
「「おいカイト。また俺の楽しみを邪魔にするつもりか!?」」
グラファイトとパラドが同時に言う。
「うるさい。お前達の楽しみに付き合っていてはいつまで経っても効率化が出来ない。アイギスがいなくなった分まで私がすべてを管理しなくてはならなくなったんだ。少しは大人しく言うことに従ってくれ」
「ならお前も少しは大人しくしたらどうだ?」
「!?」
直後、カイトの背中に蹴りを叩き込むライトニングの姿があった。
「がはぁぁぁぁぁっ!!!」
生身のまま数十メートル以上も吹き飛び、幾層もの壁を突き破るカイト。いつの間にかライトニングの腕には春奈の姿があった。
「雷王院さん!!」
「利徳!これで貸し借りはなしだ!」
「ら、ライトニング……!!」
瓦礫から血だらけのカイトがゆっくりと立ち上がってくる。
「私は私の計画通りに動かない奴がこの世界で一番嫌いなんだよ!!」
「いい憎悪だ。殴り砕くにはちょうどいい」
「ライトニングぅぅぅぅぅ!!!」
カイトの姿がクラーケンバグスターへと変わり、ライトニングに向かっていく。
「ほらよ」
パラドがガシャットをクラーケンに渡す。クラーケンはそれを触腕の1つで受け止めて自分に突き刺す。
「クラーケン・クロニクル!!!」
ガシャットから流れ出た異常なデータとエネルギーがクラーケンの全身を駆け巡り、漆黒の姿へと変える。
「……イカってよりはウミヘビの化け物だな」
ライトニングは押し寄せる、もはや1つ1つが巨大なウミヘビのような触腕を切り払っていく。しかし、思った以上に一撃一撃が重く少しずつ押されていく。
「ラァァァイトニング!!!」
そしてついにクラーケンが手の届く範囲にまで接近し、ライトニングの首を両手で絞め、怯んだライトニングの全身を16本の触腕でぐるぐる巻きにしては猛烈なパワーで持ち上げてスープレックス気味に真後ろの地面に頭から叩き落す。
「…………ぐがばぁぁぁっ!!!」
コンクリートに巨大なクレータが出現し、ライトニングを固く縛るクラーケンの触腕の隙間から夥しい量の液体が流れ出る。
「雷王院さん!!」
「この程度で終わらせてやると思うな!!」
クラーケンはそのままライトニングを空高く持ち上げると、まるでハンマーのように振り回していくつもの高層ビルをなぎ倒していく。
「よっぽど欲求不満だったんだな、あいつ」
パラドが腹を抱えて笑う。
「隙あり!!」
「あっかよ!!」
リボルバーの射撃。それをパラドがキックで相殺。手に持った銃を向ければ、次の瞬間にはそれが剣に変わってリボルバーの胸部装甲を切り裂く。
「くっ!」
「そいつはそれの獲物だ!!」
グラファイトが走ってきてリボルバーを蹴りつけ、壁に叩きつけると
「ドドドドド怒轟流星剣!!」
「っ!!」
咄嗟にリボルバーがしゃがむ。と、直後にはグラファイトが放った一撃が背後にあった高層ビルを真っ二つにしていた。そして、真っ二つになったビルを粉砕してクラーケンがライトニングをリボルバーに叩き落す。
「ぐううううううあああああああああああああ!!!」
揃って地面に叩き伏せられて吐血。
「お前……負け癖つけすぎだろ……雑魚は引っ込んでろ……ぐっ!!」
上に載っていたライトニングを押しのけてリボルバーが立ち上がるが、しかしそのまま倒れて変身が解除されてしまった。
「……ちっ、」
ライトニングは立ち上がるが、しかしふらついている。立っているのもやっとそうだ。
「バラバラにしてやるぞ、ライトニング!!」
クラーケンが伸ばした触腕を左右の電柱に縛り付けてパチンコの要領で自身を発射。突っ立っていたライトニングに命中。
「…………っ!!!」
クラーケンの尖った頭部がライトニングの胸をぶち破り、胴体に大きな穴が開いたライトニングは何メートルも吹っ飛び、大木に叩きつけられては倒れ、変身が解除された。
「………………くっ、」
「ここまでのようだな。ライトニング」
ようやく冷静になったクラーケンが触腕を倒れて動かない雷王院の顔に忍ばせる。
「……ん、お前、泣いているのか?」
「…………くっ、ううううううう……!!!」
「惨めなものだな。我々バグスターは元々新世界の支配者となるべくキングバグスターによって生み出された。その最大の仮想敵がお前、仮面ライダーライトニングだった。そのお前がもはや、最弱戦力だとは。その惨めさに免じて、この首、取らないでおいてやろう」
クラーケンが触腕を引っ込めれば雷王院は視線だけでそれを追い、しかしやがて崩れ落ちた。
「……そんな、雷王院さんまで……」
「さあ、本宮利徳。そろそろ俺達の決着をつける時間だ。お前が勝てば手に入れた新たな力でライトニングたちを助けられるかもしれないぜ?」
「う、うるさい!!」
利徳が走り、パラドに殴りかかるもパラドは軽く受け止めて手に持った剣で切り払う。激しい火花を散らしながら倒れた利徳は逆さまになった景色である人物の姿を見た。
「……将碁さん……」
「……」
燃え盛る街。そこから将碁が静かに歩み寄ってきていた。
「……」
「ネオスターライトドラグーン!!」
「……変身」
「レッツゲームメッチャゲームムッチャゲームホワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!!」
サブリメノンゲーマーとなったセーブがタブレットを出し、ロックマンエグゼの姿に変わる。
「来たか。グラファイト、一緒に楽しもうぜ」
「そうだな。実力的にはどこまで遊べるか見ものだな」
パラドとグラファイトの二人がガシャットを取り出して自分の胸に突き刺す。
「パラドックス・クロニクル!!」
「グラファイト・クロニクル!!」
「……3対1ならば間違いなく排除できるだろう」
変貌を遂げたパラド、グラファイトにクラーケンが並ぶ。
「……エリアスチール」
セーブが能力を使うと、一瞬でセーブが3人の前に到着し
「Acceleration!」
「「「!!」」」
到着した瞬間にはサブリメノンアクセラレーターになっていたセーブが廻し蹴りの一撃で3人をまとめてぶっ飛ばす。
「やるな!!セーブ!!」
「楽しみにしていたぞこの時を!!」
「殲滅する!!」
「……砕く」
セーブはクラーケンの触腕を掴み、ものすごい力でクラーケンを引き寄せてはその顔面に拳を叩き込み、貫通。
「!?」
さらにそのまま走り、グラファイトをラリアットでぶっ飛ばす。
「ぐっ!!」
首の骨がへし折れて180度折れ曲がったグラファイト。構わずセーブの膝蹴りがグラファイトをさらに遠くまで吹っ飛ばし、腕から剥いだクラーケンを投げつける。音速を超えた速度で投げつけられたクラーケンは火球となって空中でグラファイトに激突。大爆発を生む。
「グラファイト!?カイト!?」
「ゲームオーバーだ。パラド」
眼前に移動したセーブのパンチがパラドの胸をぶち抜き、廻し蹴りで両断。頭突きで顔面を粉砕してから衝撃波でぶっ飛ばす。
「がばっはぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
セーブが着地すると同時、ズタボロの状態の3人が地面に墜落。全身の至る所が電子分解されていて今にも消滅しそうなノイズとなっていた。
「しょ、将碁……」
血を吐きながら武が唖然としてその有様を見ていた。いつものセーブとは程遠い圧倒的なまでのラフプレイ。とても昨日、パラドやカイトと交渉をしていた者と同一人物とは思えなかった。
「……雷王院」
「……」
雷王院が視線を向ける。
「お前が誰かを犠牲にしてでも地球を救いたいって言うのなら俺はお前を潰す。そして、お前の代わりに徹底的な平和を目指すよ。この力なら手段を選べる。誰の犠牲も必要としないで手に入れて見せる」
セーブが前に出る。一番近くに倒れているパラドへと歩み寄った。
「……ぁ、や、やめ……」
「敗者にふさわしいエンディングを迎えろ」
差し伸べるように振り下ろした手から放たれた光の衝撃がパラドに降り注いだ時、やがてパラドの全身は跡形もなく消滅した。
「……ぱ、パラド……」
「グラファイト。存分に強者と戦っただろう?お前との因縁もここまでだ」
セーブの手が今度はグラファイトに向けられる。ただの手が、それは今は死神の鎌だった。
「セーブ!!」
「消えろ、グラファイト。戦いを望む野蛮な愚者よ!!」
放たれた光がグラファイトに命中し、そしてグラファイトの全身を跡形もなく消し飛ばした。
「……しょ、将碁さん……」
変身を解除した利徳が雷王院を起こしながら、しかし戦慄を表情に隠せない。利害が一致していたとはいえ、共存を考えていた相手を虫けらのように消滅させた将碁の顔が今は仮面に隠れていてくれてよかった。
「……ん?」
セーブが顔を向ける。さっきまでカイトが倒れていた場所。そこには誰もいない。代わりにパペットがカイトを背負って電子変換で移動しようとしていた。
「やば……」
「消えろ、この世界にバグスターなんて必要ない」
「それを決めるのはお前じゃない」
「!?」
声。衝撃。それはセーブを弾き飛ばして姿を見せる。
「マグテラー!!」
「パペット、カイトを連れて可能な限り電脳の奥底に逃げろ」
「わ、分かったわ!」
「逃がすか!!」
「やらせない!!」
セーブのキックを受けてマグテラーは粉々に消し飛ぶ。しかし次の瞬間にはキングバグスターとなっていて正面からセーブと組み合っていた。
「!」
「セーブ!!コンティニューなんていらない!!ここでお前をデリートする!!」
「……やってみろ!!」
それから10秒間。人間の目にもバグスターの目にも映らない超高速戦闘が行われ、やがて、
「……くっ、」
血だらけの将碁が倒れ伏した。が、
「……な……さけ……ない……」
その正面には見慣れない白衣姿の青年がズタボロな状態で膝を折っていた。
「あれがキングの宿主にしていた人間か……」
「セーブ……俺にコンティニューさせたのはお前が初めてだ……。次こそ必ず消し殺す」
それだけ言って青年……キングは電子変換で姿を消した。
「…………とんでもないことになったものだよ」
住民の避難を終えて椎名がやってきた時には既に戦場は惨状でしかなかった。救急車で運ばれていく将碁、武、雷王院の表情はいずれも絶望とよくわからない色に染まっていた。