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仮面ライダーS/L 45話

Tale45:No beginning No exciting

・バグスター事変と名付けられた一連の事件から半年が経過した。
ゼノン率いる宇宙連合は衛生省宛に当面宇宙連合は地球に手出ししないことを宣言して地球を去っていった。
破れた世界からは一切連絡の類はなかったが、リセットされることもなく新世界は第二世界と名付けられた世界のまま毎日日々を刻んでいる。
恐怖の影との戦いで全世界の人々は己がバグスターであることに気付いた。だが、多少の混乱はあったものの暴動の類、自殺者などは発生しなかった。各国政府からの新しい法律にも大人しく適応していく運びだ。また、どういう訳かは不明だがバグスターにならず人間のままと言う者もごく少数だが存在していて各国政府や衛生省に保護されることになった。
「はぁ、どうしてこんなことになるのか」
武が新設されたCRの基地司令室でぐったりとソファに座る。
「仕方ないじゃないか。一番最初にバグスターになったんだから」
椎名が笑い、瑠璃が武にコーヒーを渡す。
現在武は衛生省からの依頼の下、ほぼ全人類と言っていいバグスターとなってしまった人間にその身の術を教える仕事をしていた。知識、情報としては衛生省が再三連絡しているが、技術などに関しては一日の長がある武に分があった。
バグスターとなってしまった人々は概ね普通の人間だった頃と同じように生活をしている。それでも法律などが幾度も変わったこともあり、令和の時代は波乱の時代になるだろうと全世界が確信していた。
「いいじゃないか武君。間違いなく教科書に載るよ?」
「……有名になるのとはちょっと違うんだけどなぁ」
「いいじゃないですか。戦うだけがヒーローじゃないんですから」
瑠璃がパソコンを操作しながら口を開く。どこか上機嫌そうなのは気のせいではない。武同様に長期間バグスターになっていたこともあり、正宗と嵐山もまた人々の役に立つための職員として活動している。かなり条件は付いているものの再び嵐山親子は一緒に生活できるようになっているのだ。
「上級バグスターももう残っていない。宇宙連合も手を引いた。エボルトも倒された。もう仮面ライダーとしてのお仕事もほとんどないんじゃないでしょうか?」
「だと思うよ。一部バグスターの暴徒が現れたとしてもその時はもうエグゼスターの警官隊が出撃して済まない話ももうないだろうしね。これからはガシャットも警官隊のためだけに作られるわけだ」
「檀正宗がガシャット製作のプロジェクトにいるんだって?」
「まあ、元々本業だしね。檀正宗も改心したというか、ある意味目的が達成したからか特に野心とかを見せることなく衛生省の管理の下に驚くほどまじめに仕事をしているよ」
「……黎斗さんがもういらっしゃられないからって言うのもあるかもしれませんね」
瑠璃が小さく呟く。平和になったとは言え、瑠璃は母を、正宗は息子を、武は家族を、将碁と椎名は父親を失ったままだ。もう戻ることもない。
「償いとかそう言う質じゃないだろうけど、でももう反旗を翻したりはしないだろうね」
実際衛生省も同じような判断をしているらしく、気付かれないように正宗や嵐山への監視を緩めている。ガシャットもドライバーも二人に触らせていないためかなりマークは薄くなっている。
「で、将碁は?ここ2週間くらい会ってないけど」
「ああ、例のプロジェクトに向けて動いているよ」
「例の……宇宙開発プロジェクトだっけ?けどバグスターは地球の外に出られないんだろ?」
「キングバグスターはそう言っていたね。でも実際何が理由で宇宙に出られないかが分からなかった。まずそこから調べたところ、バグスターはネット環境が必須らしいんだ。つまるところ21世紀の文明が必要なんだよ。バグスターが存在するには宇宙だろうが別の惑星だろうが21世紀のネット環境が必須。でもまさか宇宙人に頼むわけにもいかず人類がどうにかして宇宙にその環境を整える必要があるんだけど」
「……でもバグスターだから地球の外に出られない。環境を整えることすら出来ない」
「でも、将碁はまだ人間だ。今まで通りの設備さえあれば宇宙に行くことが出来る。だから一足お先に宇宙に出てネット環境を整えてやがてバグスターになってしまった人類でも宇宙に出られるように頑張っているんだ」
「……けどそれってしばらくの間はあいつ一人で宇宙での作業をすることになるんだよな。そのためのガシャットを開発したとしても大丈夫なのかよあいつ」
「それなんだけど実は今日、」

Transfer中庭。バグスターになった事で病院はいい意味でほとんど機能しなくなった。況してやホスピスなどは無用となり、ここTransferはかなり患者が減り、今では半ば老人ホームの一種に近い扱いとなっている。
「……失業した俺に何の用だ?」
ベンチに雷王院が座っていた。当然、正面には将碁がいる。
「いや、災難だったと思うよ?正式な医師免許を取った瞬間に医療がいい意味で崩壊したなんてさ」
「笑ってるじゃねえか」
二人、ベンチに座って缶コーヒーを飲む。飲料に関してもバグスターになればほとんど必要はなく、もはや趣味嗜好の一部としてしか扱われていない。故に自販機の数が大幅に減少。コンビニなどでも今まで程取り扱われなくなった。尤も、衛生省が認可している上に絶対に無下にできない存在であるため積極的にこの二人には人間に必要な消耗品などが提供されることになっているからあまり困らない。
「お前、これからどうするんだ?」
「どうって?」
「仮面ライダーの出番ももうない。終末医の出番ももっとない。医者としての出番ももうないだろう世界になった今でさ。衛生省の手伝いとか?」
「……まさかと思うがお前のところにスカウトしに来たのか?」
「正解だって言ったら?」
「ごめんだな。お前が上司や先輩だなんて悪い冗談だ」
「安心しろ。そんな気はない」
「……」
コーヒーを飲み、熱いカフェインを喉に流し込みながら雷王院は青空を見あげた。
「まだ決めかねている。しばらくは衛生省からの報酬金で遊んで暮らせるだろうが、それもあまりに退屈が過ぎる」
「……気になってたんだが旧世界の頃はどうだったんだ?新世界になってからは旧世界での戦いとかが理由で終末医になった訳だろ?ならその前は?」
「……エボルトが襲来したのは大学生の頃だ。夢なんてありはしない。その点だけを見れば
旧世界での経験も決して悪くはなかったのかもな」
「……そっか」
「……歯切れが悪いな。そんなことを話しに来たんじゃないんだろ?今日お前は何をしに来て俺をここに呼んだんだ?」
「…………それはな、」
将碁がコーヒーを飲み終えてベンチに置く。立ち上がり、ポケットからガシャットを取り出した。
「……決着をつけたくて」
「…………本気なんだな」
「…………ああ」
「……」
雷王院もまたコーヒーを飲み干すと立ち上がり、フルボトルを取り出した。


CR基地。衛生省からの報告を受けた椎名と武が同時に紅茶を吹く。
「はぁ!?将碁と雷王院が決闘!?」
「……本当に最近の将碁には驚かされるよ……!」
椎名が目くばせするとすぐに瑠璃が車の準備をした。
「……思ったけどもう車って必要ないんじゃ?」
「喜屋さんは私を失職させたいんですか?」
「……そう言うわけじゃないけど」
「早く行くよ!」
3人が車に乗って出発した。


Transfer中庭。既に避難がされたそこで将碁と雷王院が見合い、構える。
「ネオスターライトドラグーン!!」
「ライトニング・バージョンティガ!!」
ガシャットとフルボトルがそれぞれ電子音を奏で、両者の腰にベルトを出現させる。
「そのガシャットでいいのか?」
「お前こそ」
言葉は続かない。
「「変身!!」」
「レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ホワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!!」
「不死身のサンダーボルト!ライトニングスリィィィィィイイイイェェェェェェイ!!!」
変身を完了したセーブとライトニングが見合う。
「真剣勝負!!」
「……いざ!!」
そして、両者が走り、激突を果たす。
「先手必勝!!」
ライトニングの素早いワンツーがセーブのずんぐりむっくりボディに叩き込まれる。が、
「だが効かん!」
セーブの鋼鉄ボディには傷1つつかない。逆にセーブがその腕を掴んで関節を決める。
「俺だって少しは強くなった!」
そして関節を決めたままライトニングを背負い投げる。
「……悪くない体術だ」
受け身を取ったライトニングはセーブが手を離した瞬間に立ち上がってセーブのずんぐりむっくりをたやすく持ち上げてはもろともに跳躍。
「だが、体術とはこうやるんだ!!」
逆さまにしたセーブの両手足を完璧バスターのように決めながらパイルドライバーで頭から地面に叩きつける。
「ぐっ!!」
「どんな防御力も関節までは厚くないはずだ!」
ライトニングがセーブから離れると同時、セーブが苦痛の声をあげながら倒れる。
「ま、まさかサンクチュアリゲーマーにダメージを与えるなんて……けど、それでこそだ!オープンウィング!!」
「胸に秘めた熱い思い!!感じるフリーダム!!アイムアレベル50サブリメノンゲーマー!!!」
装甲が花開くように翼となり、セーブが立ち上がる。
「行くぞ!」
さらにセーブの姿がストライクフリーダムへと変わり、ドラグーンを起動しながら両手にビームサーベルを握り、超高速で空を飛び回る。
「ストラーダ!!」
対してライトニングはドラグーンによる全方位砲撃を最低限の動きだけで回避しながら槍を手に、ストフリの左右からの斬撃を受け止め、払いのける。
「カリドゥス!!」
「っ!」
ライトニングに斬撃を払われた直後、ストフリの胸から至近距離用ビームが発射されてライトニングに直撃。その体を10メートル以上吹っ飛ばす。
「…………くっ、」
「次!」
着地したセーブはライジングマイティフォームのクウガに変身する。
それを確認したライトニングが立ち上がり疾走。
「行くぞ!!」
猛烈な勢いからストラーダの刺突のラッシュが迫る。全てを目で追うことは出来ない。最初は回避に専念していたセーブも直ぐにライジングタイタンフォームになって防御を優先するようになる。
さらに、
「!?」
「こういうのもある!」
いつしかタイタンフォームのボディが漆黒に染まる。放たれたストラーダの穂先の方がその漆黒ボディに命中すると潰れてしまう。
「まさか、アメイジングタイタンフォームとでも言うのか……!?」
「ただ真似るだけで終わるのがサブリメノンゲーマーじゃない!」
続いて放たれたストラーダの穂先を今度は完全に握りつぶし、奪い取ると色はそのままにセーブの姿だけが変わる。
「アメイジングドラゴンフォーム」
ライトニングがそれを認識すると同時、セーブはとんでもない速さでライトニングの全身をアメイジングドラゴンロッドで殴りまくる。
「くっ!」
杖術も棒術も使えないセーブだがロッドによる攻撃をただの鈍器による打撃として扱い、拍子を崩されたライトニングが、しかし退く事も出来ずにただ連続攻撃を受けるばかり。
「こういう事も出来る!」
セーブがアメイジングドラゴンのスピードで迫り、激突する寸前でアメイジングタイタンフォームへと変身。勢いのままのショルダータックルがライトニングを強く大きく遠く吹っ飛ばす。
「ぐうううっ!!」
100メートル以上離れた建物の外壁に叩きつけられるライトニング。思わずその手から潰れたストラーダが落ちてしまう。
「……アイデアだけはある奴にそれを実現させるだけの力を与えるとこうも強くなるか。分かってはいた事だが、なかなか勝てるビジョンが見えないな」
小さく呟きながらも立ち上がり新たなストラーダを出現させるライトニング。
すると、その直後にストラーダを握った左手首に矢のようなものが突き刺さる。
「!?」
見れば、100メートル先からアメイジングペガサスフォームになったセーブがこちらを狙撃していた。
「超感覚特化のあの姿じゃ100メートルなんて目と鼻の先だろうな。なら!」
「!」
ライトニングがストラーダを正面に放り投げる。と、それが閃光弾のようにまばゆい光をあげて爆発する。
「ぐっ……失明させる気か……!?」
「そんなつまらないところで終わるならそうするんだな!」
「!」
セーブが怯んでいると既にライトニングは眼前まで迫り、装甲の薄い下腹部に膝蹴りを叩き込み、浮き上がったセーブのボディに左拳を全力で叩き込む。
「ぐおおおおおおおおおおおおおりゃあああああああああああああああ!!!!!!」
衝撃波をも生むパンチが今度はセーブのボディを吹っ飛ばし、一瞬でグローイングフォームにまで退化させる。
「くっ、ダメージ受けすぎるとこうなるのか……」
「デメリットまでコピーしているようだな」
「重々承知の上だ……」
立ち上がったセーブは元のサブリメノンゲーマーの姿に戻っていた。
「?」
「この姿はコピーだけが取り柄じゃない!」

セーブがタブレットを握ると、
「スライドフォーミング・ゼブラ!!」
セーブの姿がシマウマのような形に変わる。
「……これは……」
「サブリメノンゲーマーは元々ジャンクゲーマーの強化形態!ジャンクゲーマーの力だって使えるんだ!」
しかしレベル2の頃の数十倍以上のスピードでセーブは走り、その勢いのままライトニングを突き飛ばす。
「くっ!」
「ロックシューター!!」
さらにセーブの背中から銃が生えて来て石で出来た銃弾を連射する。
「何でもありだな……!」
放たれたすべてをストラーダで防ぎつつ着地するライトニング。そこへ再びセーブの突進。
が、命中する寸前に
「スライドフォーミング・スライム!!」
「!?」
その姿が液体に変わり、ライトニングのボディを突き抜けライトニングの足元に水たまりが出来ると、そこから
「やっぱパワーなんだよな!!」
サンクチュアリゲーマーの姿のセーブが浮き上がり、ライトニングを背後から羽交い絞めにする。
「2度同じ攻撃をしない、それでいて変幻自在で的確にて強力!これが仮面ライダーセーブか……!」
「スターライトだった頃は知らない!これが今の俺、西武将碁だ!!」
「……だが、変わったのは、強くなったのはお前だけじゃない!」
背後からがっちり固められていたセーブがこれまでとは比べ物にならないほどのパワーを発揮してセーブを振りほどき、拳の一撃でその鋼鉄ボディをぶっ飛ばす。
「な、何だこのパワー!?……いや待て。確かその姿にはラーニング機能がついてるとかあったな……!まさか、」
「そうだ。お前がブライトタブレットの力で様々な力を見せてくれればくれる程にこのライトニング3はそれを学習してどんどん強くなっていく。姿形は一切変わらないが強さは同じ程度にはとどまらない!」
「……俺はその強さが欲しかった……だからこそ!!」
「Acceleration!!」
セーブがスイッチを押せばその鋼鉄ボディが一瞬ではじけ飛び、
「Believe in Nexus!!」
「サブリメノンアクセラレーター!!」
ネオスターライトドラグーンの第三の姿が解放される。
「……なりたいと思った憧れのヒーローから一時的に能力をコピーするネオスターライトドラグーンが、なりたい自分を未来や様々な時空から呼び寄せて自分自身を最大限に強化する姿」
「なりたい自分は他の誰の鏡写しでもない。強くなった自分自身だ!!」
踏み込み、加速。一瞬でそれまでのスピードとはけた違いの速さになってセーブが彼我の距離を縮める。
辛うじて反応出来たライトニングが攻撃に対するガードを取りながらも吹き飛ばされる。
「くっ!」
「サブリメノンアクセラレーターにギリギリ対応できるくらいまではラーニングされたか、そう言えばビルゴサイトの学習データをさらにラーニングしたんだっけか!?」
「ああ。そうだ。一人で戦い続けることしか出来なかった俺自身の限界を超えるために常に仲間と戦い続けるお前の強さを知りたかったからだ!!」
吹き飛ばされながら体勢を立て直し、追撃に来たセーブの拳を受け止める。手を止められたセーブは前蹴りを放ちライトニングをさらに吹き飛ばそうとするがライトニングは両足で前蹴りを受け止め、膝関節をばねのように扱い、セーブの頭上にまで跳躍、その勢いのまま顔面に膝蹴りを打ち込む。が、セーブはそれを首だけで回避してライトニングの右足を掴んではジャイアントスウィングの要領でライトニングを地面へと投げつける。地面に向かって猛烈な勢いで投げ落とされるライトニングはしかし受け身を取りながらストラーダを新たに生成し、しかし手では掴まずに生成させた勢いでまるでミサイルのようにセーブに向かって放たれていき、セーブの胸に直撃する。
「ぐっ!」
受け身を取る。しかしそれでも絶大なダメージがライトニングを襲う。
対してセーブはストラーダの穂先が刺さった瞬間にストラーダを排除しながら着地。
「……」
彼我の状態をセーブは見やる。時間制限があるとはいえまだその1割にも達していない上にほぼ無傷の自身ともはや気合だけで起き上がってくる満身創痍のライトニング。普通に考えればこちらが圧倒的有利。だが相手は……。
「……全力でやってやるぜ!」
フィールドが展開されて戦場を覆う。3分しか持たないこのフィールドはしかしセーブが全力を出しても一切のリスクがかからない。
「……くっ、」
立ち上がったライトニングは気付いた時には数えきれないほどの攻撃を受けていた。その速度は先ほどまでの3倍以上。ただでさえ満身創痍な今、受け続けていい攻撃ではない。
「……赤心少林拳・梅花の型」
防御の極意。力に耐えて柔らかく、我慢に我慢、耐える事。それが極意と見つけたり。
「せっ!」
正面から迫りくる超速の連続攻撃を集中を重ねた制空圏ですべてを逸らしていく。開花していく梅の花が川の流れに逆らわずしかし流されることもない様を彷彿とさせるように。
「お前、梅食べられないだろうが!!」
「酸っぱいもんは嫌いなんだよ!」
ついにはセーブが梅花の型を取ったライトニングの両腕を掴む。直後狙いすませていたようにライトニングのベルトからストラーダが射出されてセーブの下腹部を貫く。
「がはっ!!」
「ラーニング完了……!!ぐおおおおおりゃああああああああああああ!!」
咆哮をあげたライトニングの左拳はセーブの咄嗟の防御の穴を抜け、まっすぐ顔面に突き刺さる。
「……お前の未来はどこにある?」
「……お前の想像の先にある」
顔面を貫かれたセーブ。その手から落ちたブライトタブレット。そのタブレットが地面に落ちた瞬間に
「レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ホワッチャネーム?」
「何!?」
「アイムア仮面ライダー」
そのタブレットの画面からレベル1のセーブが飛び出して、
「レベルアップ!!ジャンジャンジャンキージャンジャンセーブジャンジャンジャンクセーバー!!」
レベルアップし、
「キメワザ!!」
ガシャットのスイッチを押すと同時にライトニングの背後に岩ブロックが出現する。
「これは……」
「これが仮面ライダーセーブの力だぁぁぁぁぁっ!!」
「ジャンククリティカルフィニッシュ!!」
「てやーりゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!」
単純なライダーキック。その一撃がライトニングの胸に撃ち込まれ、背後の岩ブロックを粉砕し、どこまでも蹴り飛ばす。
「ぐはっ!!」
やがて100メートル以上先でライトニングが足を止める。打点からボディに亀裂が走り、そして変身が解除されて雷王院が膝を折る。
「ゲームクリア!!」
「……大した奴だ」
その視線の先。着地したレベル2のセーブが消滅し、顔面に穴の開いたセーブが倒れて変身が解除。顔面から大量の血を流しながら将碁が青空を見あげた。
「……太陽がまぶしいな……」
「呼んだかな?」
青空が遮られ、青筋立てた椎名の顔が出現した。
「おわっ!?」
起き上がってみれば椎名だけでなく武や瑠璃、利徳や春奈までやってきていた。
「全く君達はどこまで無茶を重ねれば気が済むのかって何度僕に言わせれば気が済むんだい?」
「……いや、まあ、悪い」
「謝って済めば仮面ライダーは要らないんだよ?」
「バグスターじゃないんだから死んだらおしまいなんだぞお前達」
雷王院に肩を貸して立ち上がらせる武。
「……人間だからこそ、弱いからこそ俺達は戦ったんだ。……なあ、将碁」
「……まあな」
二人して瑠璃の車に運ばれ、それから衛生省管理の病院へと直行。職員からすげぇガミガミ怒られたうえで
「……雷王院先生、医者がそれでは困りますと言ったはずですよ」
「……すみません、鏡先生」
二人そろって鏡執刀医のお世話になるのだった。