仮面ライダーS/L35話
Tale35:侵されたLightning
・あの戦いから一週間が過ぎた。重傷を負っている将碁と雷王院の二人はまだ退院できないが、いち早く回復した武と椎名、利徳だけでCRの活動は続けられていた。
とは言え、あれ以来上級バグスターは出現せずエボルトの脅威もない。ビルゴサイトはもはや忘れられつつある。
「まず、春奈ちゃんの検査結果だけど」
CR会議室。椎名がホワイトボードの前に出て武と利徳、馨と瑠璃の視線を集める。
「パペットが言っていたように完全にバグスターとなっている。しかもパペットの操り人形とでも言うように彼女の命令しか聞けずそれ以外には何もせず眠ったままの状態だ。CRの技術力でも今の彼女を元に戻すことは出来ない」
「将碁のあのタブレットの力ならいけるんじゃないのか?」
「可能性は十分にある。けど、この前のキングとの戦いで将碁自身はもちろんだけどネオスターライトドラグーンのガシャットにも無視できないダメージが発見されていてね。将碁自身もしばらく動けないようだしこの機会に一度メンテナンスをしようと思っているんだ。ついでに将碁からの要望で何とかサブリメノンアクセラレーターの制限時間をなくすかもっと長くしてほしいって言われてるからそれもどうにか出来たらしようと思っている」
「……まあ、ビルゴサイト相手だと1対1じゃ1分以内に倒しきれずにいるし、キング相手では引き分けがやっとだった。最大戦力を強化するのは悪くない手じゃないのか」
「……何か言いたげだね、武君」
「そろそろ俺のパワーアップもお願いしたいんだよね。強化前のパラドやグラファイト相手にすら苦戦しちまってる。もうそいつらはいないけどあのカイトの強化フォームが相手だと流石に厳しいと思う」
「分かっているよ。けどね。ちょっと困ったことがあるんだ」
「困ったこと?」
「そう。実は先週の段階で君の強化パーツは完成していたんだよ」
「え、マジで!?」
「うん。と言ってもあのネビュラトリガーだけどね。檀正宗の制御下になく、それでいてスタンド込みでかなりパワーアップされてる」
「何で渡してくれないんだ?欠陥でも見つかった?」
「武さん、忘れたんですか?」
「んあ?」
利徳が煎餅かじりながら武に向かう。
「パラド達上級バグスターはガシャットとフルボトルがあればそこのお姉さんみたいに強化フォームを与えられる代わりにその肉体をいつでも乗っ取れるって言ったんですよ?つまり、フルボトルとガシャットの力を重ねて使用できる武さんのあの姿を出せば上級バグスターからしたらいい餌じゃないですか。ガシャットもフルボトルも自前で用意してくれているわけなんですから」
「……なるほど。お礼に俺の煎餅も半分分けてやろう」
「やったー!って食いかけじゃないですか!!」
「と言うわけだよ、武君。上級バグスターの狙いが分かった以上、フルボトルは強化として取り入れられない。かと言ってガシャットではレベル100以上を作るのは非常に厳しい。あの3悪が猛烈にいいアイデアがないか暴走中だけどそれでももう一週間近く経過している」
「……将碁のアクセラレータの量産とかは出来ないのか?」
「難しいね。あのシステムは父さんが現役時代に作ったもので、今は製造されていないパーツとかも含まれている。ブライトタブレットも同じくだよ。だから現状こちらの強化は手づまりな状態なのさ」
「……やれやれだよな」
「けど、利徳君がパラドから渡された新型のクロニクルガシャットは現在調査中だ。敵のパーツを使うのは非常に危険なのだけれどももしかしたらそこから何か強化の手口が見つかるかもしれない」
「……新型のクロニクルガシャットか。具体的にどういう感じで強化されてるんだ?」
「まずすでに体内にバグスターウィルスが入っていないと使用できなくなっているよ。その代わりに最初から上級バグスター並みのスペックを引き出せるようになっている。しかも、これを上級バグスターに読み込ませることで一時的だけど上級バグスターはかなりレベルアップするらしい。クロニクル状態だっけ?あの状態の上級バグスターを調べれば他にも何かあるかもしれないけど流石に厳しいよね」
「分かることはレベル100なんてもんじゃないくらい強くなってるって事だな。……あれ?利徳って体内にバグスターウィルス入ってたっけ?」
「それがパラドに最初に接触された時に少しだけ感染させられていたみたいで」
「……抜かりなしかあの野郎。まあもう将碁に倒されたしな。俺が倒したアイギス。将碁が倒したパラドとグラファイト。これで上級バグスターは3体倒されて残り半分。カイトもキングも重傷だろうし、パペットはあまり戦闘向きじゃないだろうからこっちもしばらくの間は動けそうにないだろうな」
「油断は出来ないけどね。……噂をすれば」
椎名がモニタの隅に出現したアラートメッセージを見る。
「武君、利徳君。お願いしていいかな?」
「分かった」
「椎名さん、春奈をお願いします」
「ああ、もちろん。頑張ってね」
「……椎名会長、私はいかなくていいんですか?」
「瑠璃ちゃんはまだ駄目。その体内に上級バグスターがいるわけだしね。でもこの間みたいにもし万が一ここを襲撃された場合の自衛には参加してもらおうと思ってる。今は耐えててね」
「分かりました」
商店街。パチンコ店。自動ドアを突き破って中から出てきたのはムカデバグスターとマラキータバグスターだ。どっちも飲酒をしてパチンコして負けて喧嘩になって大暴れしている飲んだくれバグスターである。当然もとは人間であり、仮面ライダークロニクルで殺されてバグスターになった冴えない左官屋二人だ。人間体で含んでいたアルコールはバグスター化した際に猛烈なアドレナリンへと変換されて結果暴走している。
「また民間バグスターの喧嘩かよ」
そこへ武と利徳がやってきた。
「衛生省からの通達で勝手にバグスターになって騒動起こしたら以降の人権は保障されないってのに!」
「武さん、やりましょう!」
「ああ!とりあえず目を覚まさせる!」
二人がガシャットを取り出した時だ。鼻歌が聞こえた。それはこの騒動で既に客が逃げ出したパチンコ店の中からだ。
「お、いいねいいね」
いかにもオタクな格好をした中年男性がノリノリでパチンコをしていた。
「お、おいおい!この状況でパチ遊んでやがる!?」
「フィーバーしすぎて気付いてないとか……!?」
二人が驚き、そして2体のバグスターがその中年に向かっていくと異変は起きた。
「おいおい、雑魚ども。今いいところなんだ。邪魔すんなよな」
中年は振り向かずに片手で2体のバグスターの突進を受け止めた。
「な、何だあの人!?」
「か、カンフーの達人とか!?」
「げ、ボーナス外しちまった。……は~あ、」
大きなため息をこぼしてから中年は椅子から立ち上がり、
「てめぇらのせいだろうが!!この雑魚!!」
振り向くと同時に放った廻し蹴りで2体を遠くぶっ飛ばし、電柱に叩きつけた。
「……流石に達人とかってレベルじゃないよな、あれ。バグスターか?」
「お?あんたたちCR?」
「……あんた何者だ?下級とは言えどうやって生身で2体のバグスターを倒した?」
「そりゃ上級だからさ」
「上級?……あんたまさか……!!」
「そう。俺の名前は角永。その正体は……んっんっ!!マンモスバグスター!!レベルは測ってねえ!!」
中年・角永は一瞬でバグスター怪人の姿に変身した。
「ガンガンリボルバー!!」
「仮面ライダークロニクル・パラドックス!!」
「「変身!!」」
「ガンガンバキュンバキュン!!ガンガンズギャンズギャン!!ガンバズギャットリボルバー!!」
二人が変身すると、角永……マンモスバグスターはラジオ体操をしていた。
「お?変身終わった?じゃあバトルと行こうか」
「待て。上級バグスターに新種がいるなんて聞いてないぞ!?」
「質問していいなんて言ってないぜ?」
突進。その迫力とスピードは確かに上級バグスターのものだった。
「俺が!!」
「引っ込め吹っ飛ばせハリケーンボンバー!!」
前に出た利徳をその大きな牙での突進で突き飛ばす。
「ぐがああああああああああ!!!」
「利徳!!」
「俺の攻撃まだ終わってないんだがな!」
「!」
突進は続いていた。むしろ加速して迫るマンモスの突進をリボルバーはギリギリで回避する。
「答えろ!!」
「決まってるだろ?立て続けに3体も倒されちまったこれまでの上級バグスターは不甲斐なさ過ぎたのさ!!」
「お前もその一員になるってのにか!?」
「面白い冗談だ!!」
Uターンして戻ってきたマンモス。スピードはさっきよりも上がっている。リボルバーは回避行動をとりながら射撃。しかしマンモスの暑い皮膚にはほとんど通用せずに突進の直撃を受けてしまい、100メートル以上吹き飛ばされる。
「くっ!!」
「よく耐えたな!!だが一度受けたら最後!!バラバラの粉々になるまで俺の攻撃を受け続ける運命って決まってるんだ!!」
マンモスが今度は空を疾走して突進。落ちてきたリボルバーに激突。リボルバーをさらに上空へと跳ね飛ばす。
「だったら!!」
「キメワザ・ガンバズクリティカルバースト!!」
「FIRE!!」
エネルギーを集中させた一撃。ビームになって放たれたエネルギーの塊が空中を走るマンモスに真っ向から激突する。
「やったか!!」
「フラグだ馬鹿野郎!!」
発生した爆発を余裕で突破してマンモスがリボルバーをヘッドロック。
「げっ!!」
「くらえ!!マウンテンクラッシャァァァァッ!!!」
首と腰の関節を決めた状態でマンモスがリボルバーを道連れに高度1000メートルから落下。その衝撃によってリボルバーの首と胴体を粉砕。リボルバーの体を三分割してスクラップにする。
「イエスアイムアチャァァンピオオオォォォン!!」
「……うっさい奴だな……」
「お?」
マンモスが雄たけびを上げると既にリボルバーは五体満足の状態になっていた。
「……あーあー、なるほど。ゲムデウス細胞持ってるんだっけ?」
「そうだ。いくらバラバラにされたって俺には通用しないぜ!!だから根競べと行こうぜマンモス野郎!!」
「ん~?それは嫌だな。だからこうする!ブリザードアワー!!」
「!?」
突如マンモスが鼻から冷凍ガスを放ち、瞬く間にリボルバーの全身が凍てついていく。
「リボルバーさん!!」
利徳が走ってくるが、それは衝撃以外のものによって止められた。
「あん?」
何故ならマンモスの背後の電柱の上にビルゴサイトが立っていたからだ。
「おーおーおーおー、そう言えばいたらしいなこんなやつ」
「……」
ビルゴサイトが音もなく電柱から飛び降りるとその0.001秒後にはマンモスの眼前にいてその腹に拳を叩き込んでいた。
「ぐっ!!効くねぇ……。けど俺っちはよ、このために生まれたんだ。満足させてくれよぉ!?稲妻印のコズミックガラクタ野郎!!」
「稲妻印のコズミックガラクタ野郎?」
利徳の疑問。その表情の先でマンモスとビルゴサイトの攻防が続く。
「……おかしくないか?確かあのビルゴサイトって奴は将碁さんでもやっと倒せるくらいの強さで、その強さはパワーアップした上級バグスターが3体で挑んでも歯が立たなかったのにどうして新型とは言え上級バグスターが1体でそこそこやり合えているんだ?」
「それは俺が作ったからだよ」
「!?」
利徳の隣。いつの間にかそこにはエボルトが立っていた。
「お前、確かその姿はエボルトか!!」
「よく勉強してるな本宮利徳」
「お前……作ったって……」
「そのままの意味さ。あの角永って奴は俺が作った上級バグスターだ。いや、超級バグスターとでも言った方がいいかな?その実力は上級バグスターをはるかに超越している。おっと!」
直後、一縷の稲妻が迫りエボルトが片手で受け止める。
「よう、ド疲れさん。けがは大丈夫かな?ライトニング」
「エボルト……!!」
利徳の視線の先。そこにライトニングがいた。
「雷王院さん!」
「利徳、下がっていろ!そいつは俺がやる!!」
「お前ごときに俺が?おいおい、お前いつから医者の真似事から芸人になったんだ?そっちの方が向いてるよ」
「黙れぇぇぇっ!!!」
走るライトニング。助走をつけたパンチもエボルトには片手で受け止められてしまう。
「足元がおぼつかないな。上級バグスターごときから受けたダメージが痛すぎるんじゃないのか?生涯現役なんてモロボシ・ダンくらいしか出来るものじゃねえぜ?」
「お前がその名を口にするな!!」
「はっ、会ったこともないお前がどんな口で言ってるんだよ。……立場的にも逆になりつつあるってのに」
「くっ!!」
パンチラッシュ。槍や稲妻も交える。だがエボルトには全く当たらない。逆にエボルトの掌底一発でぶっ飛ばされて利徳の足元に転がる。
「ぐっ……ううううううう!!!」
「雷王院さん!!まだその傷じゃ無理ですよ!!」
「だ、だが……!!」
「少年。1つ面白い事を見せてやろうか?」
エボルトが指を鳴らすと、右方で激闘していたマンモスが電子変換で姿を消す。それによりビルゴサイトが動きを止める。
「?」
「3,2,1、ほらよ!!」
エボルトがライトニングにビームを放つ。と、
「……そんな……!?」
ライトニングの前にビルゴサイトが立ち、今の一撃を受け止めていた。
「……ビルゴサイトが雷王院さんを庇った……!?」
「どうだ?面白いだろ?」
「……どういうことだ……?」
そこへヘリから降りて将碁、椎名がやってきた。エボルトが指を鳴らすとリボルバーの氷が解けて解放される。
「……何でビルゴサイトがあいつを庇ったんだよ……?」
「……1つ仮説があったんだ」
椎名が口を開く。
「ビルゴサイトは旧世界での宇宙連合の残した無人兵器。現代の地球の技術では模倣することは出来ない。けど、宇宙連合にコンタクトを取れば不可能ではない。そして現状、宇宙連合と接触できる可能性があるのは、雷王院君だけだ……」
「……雷王院、まさかお前……」
「…………」
「どうしたライトニング?言ってやらないのか?俺を倒すために宇宙連合と協力してビルゴサイトやお前達がハザードモンスターと呼ぶ怪獣を作ってそいつらを利用して戦力を高めようとしてたってよ」
「……え!?」
「ビルゴサイトとセーブを戦わせてその戦闘データを回収。おまけにセーブ、お前も少しは成長できる。さらにそれだけじゃ足りないからと、ハザードスマッシュを分析して怪獣を生み出してはビルゴサイトやセーブの糧にさせた。全部俺を倒すためにお前が暗躍してたことなんだよなぁ?俺が憎くてお前は地球を、人間どもを裏切ったんだよなぁ!?」
「……くっ!!!」
ライトニングが睨めば、ビルゴサイトが走り出しエボルトに向かっていく。だが、
「こんなおもちゃで俺を倒そうとか妄想も甚だしいよなぁ!?本当惨めでおかしくって仕方ないぜお前ぇ!?笑いが止められないぜ全くよぉ!!あーはっはっはっはっは!!!!!!」
エボルトはビルゴサイトの攻撃を止めては額にデコピン。その一撃でビルゴサイトは全身が銀色に光だしやがてスマッシュと同じ色の姿になった。
「どうだ?俺が進化させてやったぜ?名付けてブラックハザードってのはどうだ?」
「き、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
走るライトニング。しかしブラックハザードが瞬間移動でライトニングの前に立ちふさがり、膝蹴りの一撃でライトニングの腹を穿った。そこは先日手術したばかりの場所だった。
「がはっ!!」
「ぬははははははは!!!俺を倒すために生み出されたそのおもちゃを俺が強化してやってお前に牙をむく!!面白過ぎるだろ?ぬうはははははっはっはっは!!!!!」
「エボルト!!」
将碁が走り、ガシャットのスイッチを押す。そして次の瞬間にはサブリメノンアクセラレーターに変身していてエボルトに向かっていく。
「お前も傷ついた身でよくやるよな。俺には誰も勝てないって教えられなかったか?そこの裏切者くんによぉぉぉ!?あ~っはっはっはっはっはっは!!!!!」
セーブの顔面を鷲掴みにしたエボルトはそのままセーブを地面にたたきつけ、翼を踏みにじる。
「このっ!!」
「どこまで遊べる?足だけで戦ってやろうか?それともベロだけでいいか?あ、俺ベロねえや。あーっははっはっは!!!」
立ち上がったセーブの全力ラッシュをエボルトはすべて片手で受け止め、逆に蹴りの一撃でぶっ飛ばし昏倒させた。
「がはっ!!!」
「え、エボルト……!!」
立ち上がったライトニング。しかしブラックハザードのパンチが顔面をぶち抜き、
「あらら。玩具は大事に扱えよ?ブラックハザード」
エボルトの前でライトニングは倒れ、変身が解除された。
「……………………くっ、」
雷王院は顔の至る所から血や涙を流す。
「泣き虫だなぁライトニング!!俺にかすり傷1つ負わせられないのがそんなに悔しいのかなぁ?それともお気に入りのおもちゃを取られたのがそんなに悔しいんでちゅかぁ~?あーっははっはっは!!!笑いが止まらねえ!!!!」
「……こ、こいつ!」
セーブとリボルバーが同時にエボルトに向かっていく。しかしブラックハザードが阻みどちらも軽くいなし、一撃の下で叩きのめしていく。
「どうだ?ライトニング。お前がやりたかったことを俺が代わりにやってやったぜ?感謝しろよな?あ、それともその涙は感謝の涙か?……ぷっ、ぬうはははははっはっはっは!!!!!」
大笑いするエボルト。すると、天空より1つの光が降り注いだ。
「……そろそろ来る頃だと思ってたぜ」
エボルトが笑いを止めてその光を見上げた。
「……宇宙の悪魔・エボルト」
「宇宙連合総司令官・ゼノン」
ゼノンと呼ばれたその宇宙人はゆっくりと大地に降り立つ。
「ライトニング。貴様にこの星を任せたのが間違いだった」
「……ぜ、ゼノン……」
「この星もろともにエボルトを殲滅する」
そう言うとゼノンは高エネルギーをその右手に集約する。
「ほう、放てば銀河系の1つを消し去ると言うシャイニングインフィニティをここで使うか」
「貴様もこの距離で受ければ無傷では済まないだろう?」
「確かにな。だから俺もメインパートに行かせてもらうぜ」
「何?」
直後、世界は時間を忘れた。エボルトが懐でクロノスのガシャットのスイッチを押していたのだ。
「本当、お前は俺の掌で踊ってくれたよライトニング」
そしてゆっくりと雷王院へと歩み寄る。
「え、エボルト……」
「もうお前の計画は終わりだ。俺は倒せないし、地球の仲間は裏切ったし。宇宙連合にも役立たずとして太陽系ごと消し飛ばされる。だが、1つだけ生き延びる道はある」
「……それは……」
「俺と融合する事だ」
「……!!」
「幸い俺には憎悪を力に変えるネビュラシステムがある。お前のその憎悪を力に変えれば……さらにあの玩具も糧にすれば信じられない力が手に入る。お前も生き延びる。どうだ?」
「…………」
「そうか。もう心に決まっているようだな。受け取れ、俺の力を」
「……ん、」
時間は再開された。皆が時間が止められていたことに気付いたのは異変があったからだ。そう、エボルトとブラックハザードの姿がなく代わりに無傷の姿の雷王院が2つのフルボトルを手に立っていたのだから。
「あれは……」
「ライトニング!ライダーシステム!!エボルマッチ!!Are you Ready?」
「…………変身!!!」
「終億の霹靂!!エボルレイライトニング!!ヌゥハッハッハッハッハッハ!!!」
「……雷王院とエボルトが合体した……!?」
その場にいた全員が刮目をした。全ての景色に写るは仮面ライダーエボルレイライトニングの姿。
「……もうすべてが遅い。だけど、この上なく気持ちがいい。この醜悪。邪悪の極み!!ああ、世界は今から始まるんだ。この俺の手で」
ライトニングが酔いしれたような言葉を空気に吐き捨てる。そして、
「ゼノン?その傲慢。まずはそこから打ち砕く」
「……貴様……」
ゼノンがエネルギーの集約を終えると、身構えるよりも先にライトニングが接近を終えていた。
「体たらく」
「!?」
直後、ライトニングの腕がゼノンの腹を穿ち、衝撃だけで周囲の大地をえぐり砕く。
「ぐっ!」
「器が小さい。その程度でどんな秩序が作れる?貴様程度だから旧世界は滅んだんだよ。その足りない魂で贖え」
「ライトニング……!!」
空中。激突する両者の拳。廻し蹴り。ビーム。ゼノンの技はいずれもサブリメノンアクセラレーターをもはるかに超えるものだ。しかしライトニングには通用しなかった。ブラックハザード譲りの演算能力が100%その動きを予測して見せているからだ。その上でエボルト由来のとんでもないパワーが使える。
「弱い!脆い!遅い!!抵抗の真似事しか出来ないのならその身を呪いながら果てろ!!!」
放たれた手刀は閃光を切り裂きゼノンの胸から大きく鮮血を迸らせた。
放たれた廻し蹴りはゼノンの鍛えられた腹筋をたやすく胴体ごとまっぷたつにした。
放たれた拳はゼノンの胸を貫き、その衝撃波は地球から3光年離れた場所にあった宇宙連合の前線基地をも破壊した。
「ら、ライトニング……」
「灰となって消えるがいい、愚者よ」
そしてゼノンは文字通り青白い炎に燃え上がりながら灰となって消えていった。
「そして開闢せよ!!この俺のためだけの世界をぉぉぉおぉ!!!!」
ライトニングがもろ手を挙げて叫ぶと、一瞬で世界の全てが暴風雨荒れる洪水した大地へと変貌を遂げた。
「発動・悪夢の領域ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!」
突然変貌したそのすべてに一同は何も言えずにただただ驚愕することしか出来なかった。