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仮面ライダーS/L33話

Tale33:危険なNewgame

・10月下旬。
「何でまだ普通に期末試験とかあるのかねぇ」
本宮利徳は図書館に来ていた。春奈も一緒だ。あの戦いが終わってしばらくの間は唯一人間に戻れたバグスターだったこともあって毎日のように検査を受けていたのだが今ではそんなこともない。普通の男子中学生に戻っている。その日常に文句をつけるつもりはない……とまで達観しているわけでもない。あの戦いは決して楽なものではなかったがしかし楽しいものでもないとまでは言えない。少なくとも雷王院と一緒に行動してクロニクルプレイヤーと戦ったり上級バグスターや檀正宗と死闘を繰り広げたあのスリルはそうそう体験できるものでもなく、正直言えばくすぶっている。
「君はもうバグスターじゃないしクロニクルプレイヤーでもないんだから中学生らしい生活に戻りなよ」
そう言って椎名はマジで10万円をくれたし、お勧めのエロラノベとかも全巻セットで受け取った。それはそれで豊富な夜を過ごすことになったがどうにかして関われないか、日々妄想に襲われている日常なのである。当然雷王院とも連絡を取ったのだが多忙なのと椎名と同意見だとしてそれ以来音信不通の状態が続いている。しかし、テレビのニュースやSNSなどでまだ仮面ライダー達の戦いが終わっていないことも耳にしている。
「はぁ、こんなことなら春奈の分のクロニクルガシャットまで渡さなきゃよかった」
「何言ってるのよ。衛生省から厳命が出てたじゃない。全国でクロニクルガシャットを持っている人はすぐに衛生省に返却をしなくちゃいけないって。仮に隠し持っていたとしてもその時は警察のお世話になっちゃうよ?」
「けどさ、」
その時だ。
「何かいっぱい金出せ!!」
ロビー。そこでまだ幼さが残る大声が響いた。最初はただふざけているだけかと思ったが、実物を見て仰天した。
「バグスター……!!」
まだ小学生低学年くらいの少年がピラニアバグスターの姿に変身したのをちょうど目撃してしまった。ピラニアバグスターはロビーにいたスタッフの胸ぐらをつかんで再び金銭の要求を行なう。ここは市立の図書館で当たり前だが無料である。本を借りる際にはコンビニのレジにあたるようなロビーで色々する必要はあれどレジスターは存在しないし、盗むだけの大金もありはしない。精々絞め上げているスタッフの財布から盗めるだけのものしかない。これくらいは中学生の利徳にもわかる。つまりそれすら分からない小学生のバグスターが今ここで暴れているという事だった。
とは言え、全く放置していい状況でもない。
衛生省からの情報で恐らくどんなに遅くても1時間以内には仮面ライダー達か武装警官達がやってくるだろう。しかしその間に犠牲者が出ないとも限らない。少なくとも今あそこで絞め上げられているスタッフは一番危険だろう。1分もしない内に殺されてもおかしくない。よしんば生き残れても人質にされる可能性はある。
「……ん?」
気付けば隣に春奈ではない人影があった。身長は180をはるかに超え、190近い青年だ。
「あのピラニアバグスター、レベルは18だ」
「……あんた……」
「ゲームがしたいんだろ?仮面ライダークロニクルで最後まで生き残ったプレイヤー・本宮利徳」
「……あんた、その声、どこかで……」
「俺の事なんてどうでもいい。それよりも、」青年は懐からクロニクルガシャットを取り出した。
「仮面ライダークロニクル……!?」
「つまらない日常送ってるそうじゃないか。俺じゃとても耐えられない。日常なんて牢獄はな。お前も同じだろ?ほら、大義名分はあいつの手の中にあるんだ。久々に暴れてみないか?」
「……」
利徳は無意識のうちにガシャットを手に取っていた。
「レベルは?」
「可変式。お前自身の腕でどうにでもなる」
「……悪くない」
「仮面ライダークロニクル・パラドックス!!」
「変身!!」
「Ride on the game Riding the Evolution!!」
ガシャットが発動し、一瞬で利徳の姿が変身され、
「……これ、エグゼスターか?」
「違う。パラゼスターだ」
「パラゼスター……!?ま、まあいい、行くぜ!!」
パラゼスターとなった利徳が走り出し、ピラニアバグスターの手を払いのけ、逆に腹に拳を叩き込む。
「ぴぎゃあああああああああああ!!!」
一撃で20メートル以上吹っ飛んだピラニアバグスターはエントランスの自動ドアを突き破って歩道に転がる。
「利徳!?」
春奈の声を無視してパラゼスターが走り、数秒でピラニアバグスターの傍まで接近すると、
「もうよせ。誰に言われたのか分からないが、ここに金はない。お前まだガキなんだから親御さんと一緒に謝り倒せば衛生省も許してくれる」
「くっ、そんなの……」
血を吐きながら立ち上がるピラニアバグスター。しかしもう明らかに戦えるだけの力は残っていない様子だ。利徳が宥めようと肩に手を置いた瞬間。
「敗者には敗者らしいエンディングを辿らないとな」
「!?」
どこからか火炎弾が飛来してピラニアバグスターが火だるまになった。
「ぴぎゃあああああああああああ!!!」
「お、おい!!」
火を消そうとする利徳だったがまるで間に合わず数秒と持たずにピラニアバグスターは跡形もなく消え去った。
「…………最初からこれが狙いだったのかよ?え?パラドクスバグスター!!」
振り返る。と、そこには満面の笑みを浮かべた先程の青年・パラドがいた。
「へえ、俺の事覚えてたんだ」
「忘れる方がどうかしてる。あの日、お前のおかげで俺の運命は変わったんだからな。今更俺に力を与えてどうしようって言うんだ?」
「ゲームをしようと思ってな」
「ゲームだと?」
「そうだ。俺が檀正宗に協力して仮面ライダークロニクルを配ったのはその優勝者と熱く激しいゲームを楽しむためだったんだからな。グラファイト程短絡的じゃない俺もまさかここまで邪魔が入るとは思わなかった。散々じらされたんだから精々俺の心を躍らせてくれよ?」
「バグスターが!!」
走る利徳。同時にパラドはパラドクスバグスターへと変身して、両者の拳が空中で激突を果たす。パワーは互角。
「このっ!!」
利徳はパラドの腕を掴んで引き寄せてから膝蹴り。パラドはそれを敢えて受け止めてから利徳を真後ろに投げ飛ばす。
「くっ!」
「不思議だよな。クロノスもライトニングもスマッシュもレベルなんてものはない。けど俺達バグスターとそれをモデルにして作られた仮面ライダーにだけはレベルなんてものがある。俺達バグスターはそのレベルだけを頼りに下級中級上級と分けられてきた。その上でレベル99となった俺は上級バグスターになった。俺にとってレベル99は誇りだった。けど今ではそんなものに何の価値も感じちゃいない。レベルと言うくくりを払った今の俺はただのバグスター。バグスターの限界を超えるためのパラドクスバグスターだ」
起き上がった利徳に急接近。その長身からのかかと落としが利徳の脳天に炸裂する。
「ぎっ!!」
「そして俺の力をコピーして生み出されたそのパラゼスターもまたレベルと言う制限はない。いくらライトニングと一緒だったとはいえそこそこ仮面ライダークロニクルを勝ち抜いたお前の実力ならもっと力を見せてくれるはずだろう?もっと俺を楽しませてくれよ?そのための鍵は何だ?正面からの殴り合いか?間合いの読み合いか?それとも、」
パラドが火炎弾を発生させ、利徳の後方で戸惑う春奈に向けて放たれる。
「!?」
「恋人を失った怒りか!?」
「くっ!!」
加速。利徳は全速力を超えたスピードで移動して春奈の眼前、その背中で火炎弾を受け止めた。
「があああああああああああっ!!!」
「利徳!!」
背中から煙を出しながら利徳が膝を折り、わずかに触れた春奈のスカートが焼け付く。
「どうして……こんな……」
「……俺、パラドクスバグスターが許せない。こうして春奈をまた巻き込んだあいつだけは絶対に許さない。けど、それでも確かに俺はこの状況を喜んでるんだ。つまらない日常から引きずり出してくれたこの力に感謝してしまっているんだ。……馬鹿だろ?最低だろ?わかったらさっさとどっか行け。戦いの邪魔だ」
立ち上がった利徳。加熱したボディが春奈に触れないようにしてパラドに向かって走り出す。
「へえ、やるじゃん。まだ立ち上がってこれてまだ俺と戦おうって言うのか。面白い。それでこそだ」
パラドが笑い、指を鳴らす。と、一気に周囲の気温が低下していき10月でありながら東京の気温が0度を下回る。
「!?」
利徳が春奈含めた周囲を見る。10月の気温に合わせた服装でしかない多くの人達は突然の氷点下を受けて一気に体力を奪われてその場で震え始めた。逆に利徳には何の影響もない。
「何の真似だ!?」
「タイムリミットだよ。俺を倒すまでに一体何人凍死するかな?」
「くっ、貴様!!」
走る利徳。再び放ったパンチは今度はパラドの胸部に命中して後ずらせる。
「ぐっ!速く重くなったな……!そうこなくちゃ!!」
利徳の腕をつかみ、その腕を凍らせていく。が、利徳は腕を振り払い手刀でパラドの左こめかみを穿つ。
「くっ!」
「これが本場の空手チョップだ!!」
次いで放たれた手刀がガードしたパラドの手首を傷つけ、緩んだガードを払って今度は貫手を打ち込んでパラドの鎖骨の胸の間を貫く。
「…………空手チョップはプロレス技だけどな」
体内から掴んだ鎖骨ごと体外へと引きずり出し、苦しむパラドの額に飛び膝蹴り。左胸から血を流しながらパラドが凍ったコンクリートを転げまわる。
「……想像以上だ……これは下手なハンデをしているとゲームオーバーになっちまうか。けどそれでこそ面白い。攻略のし甲斐がある」
「早口だな!余裕がないのかバグスター!」
「舐めるなよ!!」
パラドが指を鳴らすと、彼我の間、ちょうど中心点にあたる場所に剣と銃が出現する。
「?」
「好きな方を選べ!先着順だ!!」
「くっ!」
走り出したパラド。それより先にたどり着くため走り出す利徳。スピードはわずかに利徳の方が速い。狙いは剣だ。余裕があれば両方とってもいいかもしれない。しかし、異変はあった。
「え!?」
剣を抜こうとして、しかし刀身がなかった。
「残念!偽物だったようだな!!」
その隙にパラドが銃を掴んで至近距離から射撃。利徳の無防備に次々と着弾して火花を散らしていく。
「ぐうううう……!!」
「二本目、行くぜ」
再び両者の間に剣と銃が出現する。やや利徳からの方が距離が近い。
「今度はこっちだ……!」
走り切り、銃を手に取る。しかし引き金を引いても銃弾が出ない。
「?」
「セーフティってのがあるんだよ!」
そこへ剣を持ったパラドが斬撃。利徳を吹っ飛ばすと、その手から銃を奪いセーフティを解除してから、
「バン」
わざと擬音を口にしてから引き金を引き、先ほどよりも重い銃弾が発射されて利徳の胸に命中。
「ぐっ……がああああっ!!!」
「よく効くだろ?一発しか撃てないんだが威力は十分あるんだぜ?」
パラドの手から剣も銃も消え、三度両者の間に銃と剣が出現する。
「……くっ、か、完全にペース奪われた……。予想以上にきついかも……」
何とか立ち上がった利徳。見ればパラドは銃と剣の前で、しかしどちらも手に取らずに両手を腰に当ててこちらの様子を窺っている。明らかに罠だろう。しかし、今この場を何とかできる可能性があるのは自分だけ。その想いを言い訳に立ち上がった時だ。
「利徳!選手交代だ!」
「え……?」
声。振り返れば雷王院が走ってきた。
「雷王院さん!?」
「事情はあとで聞く。だが今は休んでいろ」
「……ライトニング、今は俺とそいつのゲームなんだけど?」
「乱入はゲームにつきものだ」
「ライトニング・バージョンティガ!!Are you Ready!?」
「変身!」
「不死身のサンダーボルト!ライトニングスリィィィィィイイイイェェェェェェイ!!!」一瞬で変身を終えたライトニングが利徳とパラドの間に立つ。
「……まあいいや、お前にも用はあったし」
「ほう、何か面白いゲームでも企んだのか?」
「それはこっちのセリフだ。お前の用意したくだらないゲームのために俺達バグスターが計画を早めることになったんだからな!」
「ほう、」
走り出し、パラドの振るう剣と銃の攻撃をライトニングは回避してその顔面に拳を叩き込む。
「くっ!!」
「今更上級バグスターごときが相手になると思うなよ」
「上級バグスターなんて肩書はもうない!」
ライトニングの腕をつかみ、一瞬で凍り付かせたパラドは手に持った銃をライトニングの胸に突きつけて零距離で連射。
「くっ、ぐおおおおおおおおおりゃあああああああああ!!!」
耐えたライトニングは反対の拳でパラドの顔面を殴りつけてぶっ飛ばす。
「ぐっ!!」
「このままデリートしてやる」
「待て!!」
そこへ、ヘリから将碁と武が降りてきた。
「お前達……」
「パラドと話をさせてくれ」
「お前は引っ込んでろって。俺達は衛生省からの指示で来てるんだからな」
「……」
やがて将碁がパラドを振り返る。
「パラド」
「何だよ。さっきから俺のゲームの邪魔ばかりしやがって」
「気を害したことは謝る。だから俺達の話を聞いてくれ。今、エボルトの脅威が迫っているのは分かっているはずだ。だから、」
「手を組めって?言われなくてもエボルトの事は知っている。だから俺達バグスターが再び動き出したのさ」
「利徳に再び仮面ライダークロニクルのガシャットを渡して何をしようって言うんだ?」
「新しいゲームの始まりさ。お前達も気付いているはずだ。アイギス……アイジスだったっけか?お前達のところの女ライダーの異変に」
「……」
「結論から言えばな、俺達バグスターは檀正宗が残したネビュラトリガーを解析してフルボトルの力を吸収してバグスターウィルスをさらなる存在に進化させらることを突き止めた」
「……まさか、」
「そう。あの女が強化したのはフルボトルを吸収したことでアイギスが進化し、そのアイギスがあの女のガシャットに宿ったからだ。その力は本調子ではないとは言えあのエボルトをも圧倒した」
「……それは俺達に協力してくれることとどう違うんだ?」
「間違えるなよ?俺達は人間なんて嫌いだ。皆殺しにすべきだと思っている。けどそれだと少し都合が悪い。だから全人類をバグスターにしようとした。これもその一環だよ。確かにエボルトに対抗してお前達のガシャットは強化した。だが、その力を使うのはお前達じゃない。俺達バグスターだ。俺達はな、入れ物を探しているだけなんだ。エボルトを倒すための力を使う入れ物を」
「……つまりあの力を使えばお前達に感染する。そしていずれは肉体を完全に奪われるという事か。……エボルトをも倒せるあのガシャットの力と共に」
「その通りだ。別にストレートにガシャットに宿る事も出来るがそんなつまらないのは俺はごめんだからな。仮面ライダークロニクルに協力した目的であるその優勝者たる本宮利徳と戦ってその肉体を奪おうと思ってるわけだ。どっかの誰かみたいなちまちまするのとはわけが違う」
「……」
「……パラド、それを聞いた以上このままお前を利徳と戦わせるわけにはいかない。俺が相手になってやる」
「セーブか。面白い。少しからかってやるか」
パラドが笑い、将碁が前に出る。
「行くぞ!」
「ネオスターライトドラグーン!」
「変身!!」
「レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ホワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!!」
ドラム缶の姿になったセーブが走り、パラドが放った火炎を真っ向から撃ち破ってそのまま突進。
「相変わらず防御力が頭おかしいな」
しかしパラドは足を引っかけるだけでセーブを転倒させる。さらに大地を変形させてセーブを地面に固定、その状態で少しずつ地面の温度が上がっていきマグマへと変貌する。
「炎と氷、剣と銃……相反するものを使うのか……!けど、オープンウィング!」
それらすべてを撃ち破ってセーブが飛翔。タブレットを取り出して、デュークモンの姿に変身する。
「ロイヤルセイバー!!」
光り輝く槍を向けて高速突進。パラドは手に持った剣でそれを受け止めるが、
「くっ!今度は一気にパワーが上がりやがって……!!」
数秒と持たずに剣はへし折れてパラドは後方に吹き飛ばされる。
「もうよせ。バグスターはインフレに置いて行かれてるんだ。今更何をしようがインフレには追い付けない」
「だからこその策だろうが!!」
パラドは電子変換を起こしてその場から消える。しかし次の瞬間には、
「くっ!!」
利徳の背後にいて組み敷いていた。
「動くな!!」
パラドが制す。もしそれが1秒でも遅ければクウガ・ライジングペガサスフォームに変身したセーブの狙撃を受けていただろう。
「必死だな、パラド」
「元々新世界は俺達バグスターのものだったんだ。それをエボルトだの仮面ライダーだの旧世界の産物どもが食い荒らしやがって……!」
パラドは一瞬で利徳のベルトからガシャットを引き抜き、変身が解除された利徳を突き飛ばすと同時に自分の首筋にガシャットを突き刺した。
「何を……!!」
「まだ不十分だが仕方がない!」
「仮面ライダークロニクル・パラドックス!」
「変身!!」
「バグルアップ!!」
ガシャットの禍々しい光がパラドを包み込むと、その姿を全く新しいものへと変貌させた。
「パラドックスバグスター・クロニクル!!!」
新しい姿に変身したパラドは発射されたセーブの狙撃3連撃を片手ですべて払落しながら接近。セーブよりも前にいたライトニングと真っ向から組み合う。
「くっ……パワーが格段に上がってる……!!」
「ライトニング!!まずは貴様からだ!!全ての元凶が!!」
ライトニングの両腕を振り払い、顔面に飛び膝蹴りを打ち込みライトニングが転倒。うつぶせになったライトニングに跨ってはキャメルクラッチで首と腰を一気に決める。
「くっ……!!!」
「このまま真っ二つにしてやる!!」
「させるか!!」
セーブが再びライジングブラストの3連撃を放つが、
「邪魔をするな!!」
パラドは口から光線を発射してその3連撃を撃ち破り、セーブに命中。激しい火花をあげながら、しかし猛烈な勢いでセーブの被弾箇所が凍り付いていく。
「ぐおおおおおおおおおりゃあああああああああ!!!」
その隙にライトニングが起き上がり、パラドを払いのけ、立ち上がったところでボディブローを叩き込む。
「ぐっ……!!ライトニング、フルボトルを寄越せ!!」
「フルボトル?……まさか、そう言う事か……!!」
ライトニングはパラドの突進を受け止めて巴投げ。
「ストラーダ!!」
槍を出現させてパラドの放った火炎を払いのけ、そのまま刺突でパラドの口から後頭部を貫通する。
「ぐぎゃ!?」
「勝負ありだな」
ライトニングが力を入れてそのままパラドを両断しようとした時。
「そうだな。武器を捨てたまえ」
「!?」
声。振り向けば後方にはカイトがいた。しかも春奈をその腕の中にとらえていた。
「春奈!?」
「む、むむむむ~!!」
強烈な力で抑え込まれている。そこに加減と言うのはほとんど存在しない。カイトの気持ち1つで春奈は首と胴体が離されてしまうだろう。
「カイトバグスター……!!」
「ライトニング。そして仮面ライダー達。この娘の命が惜しければ変身を解除しろ。そして持っているフルボトルをすべて渡してもらおうか」
「……」
「おっと、喜屋武。電子変換から奇襲をかけようとしても無駄だ。私達の本場からすれば君のそれは大げさすぎてすぐにわかる」
「くそっ……!」
「……ちっ、」
セーブは変身を解除して将碁の姿に戻りガシャットを足元に置く。が、
「……おい、雷王院?」
ライトニングは変身を解除しなかった。ばかりか、
「ふんっ!!」
パラドのベルトに向かって強烈な蹴りを放ち、パラドをぶっ飛ばす。
「ごぶっ!!」
ガシャットから火花が上がり、変身が解除されてコンクリートに倒れるパラド。
「ライトニング、貴様……」
「俺は今度こそ地球を守ると決めたんだ。そのために人質など意味があるわけがない。たとえ目に映る全てが犠牲になってでも俺は人類と地球の敵を根絶する!」
振り返り、ストラーダを向けてカイトに突進するライトニング。
「や、やめろ!!」
走る将碁。ガシャットを拾う暇はない。それでも止めるために走った。その時だった。
「!?」
いつの間にか将碁の手にはフルボトルが握られていた。走る振動に合わせてフルボトルが躍動して腰にベルトが出現する。
「これは……!!」
「スターライト!!Are you Ready!?」
「変身!!」
「天空の勝利者・スターライト!!イイイイエエエエエイ!!」
「何!?」
拳を放ったライトニングの前に立ったのは仮面ライダースターライトだった。
「お前……!?」
「お前は……間違っている!!」
ライトニングの腕を払い、翼で体を浮かせた状態から落ちないドロップキックを叩き込む。
「くっ……!」
「……今のうちに」
カイトが春奈を掴んだまま電子変換でその場を去った。