仮面ライダーS/L26話
Tale26:Storm of silience
・ラビットハザードスマッシュ、タンクハザードスマッシュを傍らに宇宙からやってきた嵐山。その服装はこれまでのスーツからいかにも宇宙服と言った様相になっていた。しかし、どことなく有機的にも見える。まるで宇宙服をそのまま肉体の一部として吸収したように。そして一見してから気付くまでにしばらくかかったが嵐山はどうも浮遊して自らの意思でゆっくりと地上に降りてきているように見えた。
「嵐山、人間であることを捨てたか」
「ライトニング。地球人だけが人間だという考えは愚かだ。旧世界で共に戦った者たちは人間ではないと?」
「そういうことを言っているんじゃない!故郷を裏切り、自分が生まれた星を破滅へと導くためにエボルトの力を借りたお前は人間のする事じゃないと、心を持っている奴のする事じゃないと言っているんだ!」
「力と言うのは使いよう。私はエボルトから与えられたこの力でこの地上を支配する。人間もバグスターも関係ない。この私の下で絶対的な支配を与えれば世界は平和になるのだよ」
嵐山が完全に着地し、エボルドライバーを腰に巻き、2つのフルボトルを取り出す。
「サタン!!ライダーシステム!!エボルマッチ!!!Are you Ready?」
「変身」
「デーモン!デーモン!!デッドデッドデビィィル!!ヌゥハハハハハハハハハ!!!!!」
禍々しい電子音から嵐山が仮面ライダーデーモンの姿に変貌する。
「……お前達は嵐山を。俺は傍らのスマッシュと戦う」
「殊勝だな」
「スペックを考えた結果だ。俺はあのハザードスマッシュに勝てるかどうかも分からない。正直こっちがサポートしてほしいくらいだが孤軍奮闘してみせる。だからその間にお前達が嵐山を倒せ。手段は問わない。狙うはベルトだ。頼んだぞ……!」
ライトニングが走り出し、2体のスマッシュに向かっていく。それを見送ってからセーブ、リボルバー、ローズがデーモンの方に向かっていく。
「さあ、どこからでもかかってくるがいい」
「……武、椎名。行くぞ!」
「「ああ!!」」
3人が同時に走り出す。セーブが一番先にデーモンに到着し、タックルを仕掛けるがデーモンは片手で受け止めて一気に大気圏外まで投げ飛ばす。
「させないよ!」
が、ローズが手首から薔薇の蔦を伸ばし、火星に落ちそうになっていたセーブを回収して地球に一気に巻き戻す。その間にリボルバーがデーモン向けてハンドガンを連射する。
「む、この力レベル2じゃないな」
「今の俺はあんたが知ってる俺の50倍だ!!」
「ぬるい!せめて100倍になってから我が前に立つのだな!!」
しかしデーモンは射撃をものともせずに接近。リボルバーの腕につかみかかりそのまま握りつぶそうとして、
「だるまさんが転んだアタタタック!!!
上空から引き戻されたままセーブがデーモンの上に落ちてくる。まるでローズが使ったハンマーのようだ。
「くっ、ドラム缶の分際で……!」
「ドラム缶舐めるな!!」
転倒したデーモンの上でゴロゴロ転がってその重量を何度も叩き込む。が、長くは続かずデーモンによって再び宇宙まで投げ飛ばされる。
「またか!」
ローズが蔦を伸ばす。が、
「させん!」
その蔦をデーモンが掴んで止め、
「貴様にも宇宙旅行をプレゼントしてやる!」
「げ、」
ローズが蔦を切り離そうとするが間に合わずローズもまた一瞬で大気圏の外まで投げ飛ばされた。
「お、おいおい……」
リボルバーが後ずさる。デーモンは小さく笑いながらゆっくりとリボルバーに歩み寄る。と、
「オープンウィング!!」
「胸に秘めた熱い思い!!感じるフリーダム!!アイムアレベル50サブリメノンゲーマー!!!」
「カムバァァァァァァック!!!」
翼を広げたセーブがローズと共に帰ってくる。
「ファイヤァァァァブリザアァァァド!!!」
上空で闘将ダイモスの姿になり胸から2600度の火炎を放射する。
「これは……!!」
デーモンが一瞬で炎の渦の中に閉じ込められ、
「フリィィザアアアストォォォォム!!!」
続けてセーブがマイナス240度の冷凍光線を発射する。が、
「順番が逆だ!!」
デーモンは掌に集めた炎を投げつけて冷凍光線を相殺。
「何!?」
空中で大爆発が発生してセーブとローズが着地前に吹き飛ばされる。
「今だ!!」
その瞬間にリボルバーがガシャットのスイッチを押す。
「キメワザ・ガンバズクリティカルバースト!!」
「FIRE!!」
至近距離から発射された必殺のエネルギー。それがデーモンの背中に命中する。
「くっ、確かにこの力レベル100だな……だが、その程度だ!!」
デーモンはその一撃を振り返りながら片手でかき消す。
「マジ!?」
「大マジだ!!」
デーモンのラリアットが炸裂し、リボルバーがぶっ飛ばされる。
「ちっ!」
2体のスマッシュに追い詰められていたライトニングにまっすぐ飛んできたリボルバー。ライトニングはラビットハザードスマッシュを引き寄せてリボルバーと衝突させる。
「いてっ!!て何だこいつは!」
「うるさい!」
「チャァァァァジクラアアアッシュ!!」
怯んだ隙にライトニングが電光を纏った左の廻し蹴りをラビットハザードスマッシュの顔面に叩き込む。
「ぐおおりゃあああああああああ!!!!」
衝撃に首が胴体から外れてラビットハザードスマッシュは膝から崩れ落ちて爆発四散した。
「俺を使ったのかお前!!」
「飛んできたお前が悪い。ナイスサポート。また行ってこい」
「くっ!」
リボルバーはタンクハザードスマッシュの腹に一発ぶち込んでからデーモンへと向かっていく。
「ふん、こざかしい仮面ライダーどもめ!!」
笑うデーモン。3方向からセーブ、リボルバー、ローズが迫りくる。
「北斗百裂拳!!」
「おららららららっ!!!」
「たぁぁっ!!」
ケンシロウの姿になったセーブが連続パンチを、リボルバーが少し離れたところからハンドガンの連射を、ローズが両腕のかぎ爪でデーモンに殴りにかかる。しかし、
「ぬるいわ!!」
それらすべてを手で払いのけ、3人まとめて片手でつかみ取り、一気に太陽に向かって投げ飛ばす。
「ま、まずい……!!」
気付いた時には大気圏を超えていた。太陽激突まであと1秒未満。セーブはとっさにタブレットを操作。ゼータガンダムのウェイブライダー形態に変身して二人と共に急速展開。ギリギリで太陽の引力圏に捕らわれずに地球への帰路に就く。
「……しぶとい奴だ。やはりあのガシャットは破壊すべきだ」
デーモンの正面。セーブ達が帰還すると今度はデーモンが走り、一気にセーブの前まで迫る。
「やらせないよ!」
が、ギリギリでローズがデーモンの両腕を捕らえる。
「!」
そこからリボルバーもローズ同様に腕を掴んで止める。二人のレベル100の力がデーモンの両腕を抑えることで容易には振りほどけない。その間にセーブが距離を取り、タブレットを操作する。
「やり方は覚えた!!」
ライディーンの姿になり、弓矢を構える。
「ゴッドゴーガンで!!」
しかしその矢を放とうとした時にセーブは咄嗟に矢を真上に向かって放った。何故なら
「瑠璃さん!?」
セーブとデーモンの間。そこにアイジスが飛来したからだ。
「瑠璃か……」
「お父さん!!もうやめて!お母さんを生き返らせるために私達は行動してたじゃない!!どうして地球を支配しようとするの!?」
「瑠璃、母さんを生き返らせたところでバグスターがいる限りその命は保証されない。だから父さんはバグスターも人間も支配して家族3人が安全に暮らせる世界を作ろうとしているのだ。下がっていなさい」
「……けど……クロニクルガシャットは願いを叶えてくれなかったじゃない!!お母さんは生き返らなかったじゃない!!」
「……何だって……!?」
瑠璃の発言にはセーブ達もまた驚愕を示す。これまで死んだ人間でもバグスターにこそなってしまうがしかし蘇生は確認されていた。それが出来ないと言うのは初めてだ。
「他のバグスターどもが邪魔をしていたに違いない。なおの事他のバグスターには根こそぎ消えてもらわなければならないのだ」
「それじゃ……どうして仮面ライダークロニクルを販売したの!?あれは他の人間をバグスターにする事くらいしか出来ないのに……。クロニクルガシャットのせいで何千人がバグスターになったか……」
「ならば千でも万でも殺し尽くすだけだ!バグスターは俺達3人だけでいい!!」
「……そんなこと……」
「そう。そんなことは許されない」
声。デーモンが力ずくでリボルバーとローズを払ってバックステップ。するとデーモンがいた場所にパラド、グラファイト、マグテラーそしてアイギスが姿を見せた。
「……!?」
「嵐山。随分勝手なことをしてくれたものだ。その悪魔の力を再び地球には跋扈させない!」
マグテラーたちが構える。しかし、デーモンとアイジスの視線はアイギスにだけ注がれていた。
「……馬鹿な、どうしてお前がここにいる……!?」
「お、お、お、お母さん!?」
「何だって!?」
特に大きな驚愕の声を出したのはリボルバーだった。
「え、うちの馬鹿弟と……え、あの上級バグスターが嵐山の……!?」
リボルバーは変身してよかったと思う。もし生身だった場合きっととんでもない冷や汗をかいていてしかも尋常ではない表情をしていたに違いないからだ。そんなことはつゆ知らずアイギスが口を開く。
「あなたの事はわずかに記憶にあります。ですが私は既に上級バグスターのアイギス。バグスターに徒なす存在には死を以て消えてもらいます」
「……な、何てことだ……」
体を震わせ後ずさるデーモン。アイジスもまた体を震わせている。両者の表情は分からない。だが、唯一表情が判明しているアイギスは至って冷静で無表情だった。そしてそれがやがてガルーダバグスターへと変貌する。
「そう言うわけだ。さあ、一気呵成に仕留めるとするか」
パラドが言い、3人の上級バグスターはいずれも戦闘形態へと変身する。
「ゲーム開始だ」
パラドの言葉を合図に4人のバグスターが走る。レベル100の二人には何とかその動きが追えた。幸い狙いはデーモンただ一人のようだった。そのデーモンは他のバグスターはともかくガルーダ相手には手出しが出来ない状態だ。無理もない。探し求めていた相手が倒すべき相手の中にいたのだから。高レベルの上級バグスター4人の攻撃を立て続けに受けてデーモンはついに膝を折る。
「うぐうううう……!!」
「チェックメイトだ!!」
「や、やめて!!」
「瑠璃さん!!」
セーブの前、アイジスが走り、ガルーダの嘴による攻撃からデーモンを庇いその一撃を胸に受け止めた。
「る、瑠璃……」
「もう……やめ……て……」
そこでアイジスの変身は解け、血だらけの瑠璃の姿となって崩れ落ちた。
「……これだから人間は」
ガルーダは倒れて動かない瑠璃の頭を踏みにじる。
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
リボルバーは叫ぶ。引き金を全力で引き抜き、銃口から発射されたビーム弾が背後からガルーダの背中と右翼を貫いた。
「ううううっ!!」
「っ!!」
デーモンの胸に倒れてきたガルーダ。その胸で受け止めると同時元のアイギスの姿に戻る。
「あ……あ、あああ……」
「……愚かな人類には死を……バグスターに永遠の繁栄を……」
それだけ言ってアイギスはデーモンを突き飛ばし、しかしそれが最後の力だったのか瑠璃の上に倒れこんでは無数の0と1に分解されて空気中に消滅していった。
「……くそっ」
リボルバーが震える手を強く握りしめる。
「……う、うううう……うおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああ!!!!!」
吠えるデーモン。一番近くにいたマグテラーの顔面を鷲掴みにし、
「!?」
「消えろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
今まで以上のパワーとスピードで大気圏外にまで投げ飛ばす。
「ぐっ……まずい……!!」
溶岩の翼を広げるが減速は間に合わず気付いた時には木星すら追い抜いていた。
「地球を離れるわけには……このままはまずい……!!」
真空。少しずつマグテラーはその体が分解されていった。そして……。
「ぐおおおおおおおおおおおおがああああああああああああああ!!!」
怒声。怒りに震えるデーモンがグラファイトとパラドを同時にわしづかみにして何度も振り回し、その空気摩擦だけで全身に亀裂を走らせていく。
「ぐっ!なんてパワーだ……!!」
「まだ投げられてもいないのに……!!」
「嵐山……!!」
リボルバーが走り、暴れ狂うデーモンにドロップキック。
「貴様……!!」
「それでいい!!俺を恨め!!俺に意識を向けろ!!その恨み、全力で買ってやる!!」
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
デーモンはパラドとグラファイトをその辺に投げ飛ばし、すぐさまリボルバーにとびかかる。リボルバーは秒速10発のペースで連射し、確かにデーモンの胸部装甲に火花を散らすのだが全く止まる気配はない。
「ぐっ!!」
そして両腕を掴まれてしまい、一気に投げ飛ばされる。
「うがああああああああああああああ!!!」
が、今までにない加速だからか或いはリボルバーレベル100の細腕だからか、リボルバーの両腕だけが大気圏外に飛んでいき、本体は地べたを転げまわる。
「……ぐっ!!」
両腕を失ったリボルバーが激痛に耐えながらなんとか立ち上がると、すぐにデーモンが襲い掛かってくる。
「……はは……終わったかも」
「終わらせない!」
が、突進するデーモンを左右からセーブとローズが押さえつける。
「……っ!!」
かつてない殺意を感じたライトニングはタンクハザードスマッシュを後方のパラド達に向けて投げ飛ばし、デーモンのところへと向かっていく。
「うがああああああああああああああ!!!」
唸るデーモン。その目前にハザードトリガーが出現し、ゆっくりとエボルドライバーに向かっていく。そして装着される寸前に
「させない!!」
ライトニングがハザードトリガーをつかみ取る。
「ライトニング!?」
「どけぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!」
デーモンの頭突きがライトニングの脳天を穿つ。
「ぐがああああああああああああああああ!!!」
ハザードトリガーを掴んだまま吹っ飛ぶライトニング。何度も地面を転がりまわり、変身が解除される。しかし、スクラッシュドライバーから外されたライトニングゼリーボトルがハザードトリガーと触れ合った瞬間、小さな閃光を放ってどちらも一瞬で消滅した。
「ゼリーボトルが……」
リボルバーの足元。血だらけでの雷王院が失神する。
「……お前、少しはやるじゃんか」
リボルバーが小さく鼻を鳴らし、雷王院を背後まで優しく蹴り飛ばす。と、
「弱気が吹き飛んだ」
振り向いた時には既にその胴体から両腕が生えていた。
「武!!」
「鉄槌を食らわせてやるんだ!!」
「応よ!!」
「キメワザ・ガンバズクリティカルフィニッシュ!!」
ガシャットのスイッチを押し、本来銃弾として発射されるエネルギーがリボルバーの右足に集約して赤い輝きを生む。
「出来ると思ってたぜ!!」
跳躍し、セーブとローズに動きを封じられたデーモンの胸めがけて飛び蹴りを放つ。
「ライダーキック!!」
「ごぐぅぅぅぅあぁぁぁぁぁっ!!!」
瞬間最大火力150トン。リボルバーの右足がデーモンの心臓付近の左胸に150トンの衝撃と共に叩き込まれ、
「くっ、」
「まずい……!!」
衝撃の強さにセーブとローズが同時に腕を離すと、ものすごい速度と回転でデーモンが後ろに吹っ飛んでいく。およそ100メートル程吹っ飛び、途中路上に停められていた車を数台弾き飛ばしたところでやっとデーモンが再び足を止める。
「くっ……!!ぬうう……がああああああああああああ!!!」
雄叫びを上げ、しかし既に限界を超えた体でデーモンはこちらに向かってくる。
「……セーブ、ローズ。俺はもう体力厳しいみたいだ。あとはお前達に任せた」
「ああ、ゆっくり休んでくれ」
「お疲れ」
セーブとローズがデーモンの前に立てばリボルバーはひっくり返るようにそのまま後ろに大文字に倒れた。
「……嵐山、7か月前のおじさん……西武前会長のあの事故。不可解なことがあった。あの時の運転手。どうして瑠璃ちゃんにやらせなかったのか。本来なら瑠璃ちゃんが運転手を務めるはずだったがしかしあの日あなたは別の用事のため瑠璃ちゃんではなく代わりのものを前会長の運転手に任命して運転させた。その運転手は前日まで何の体調不良もなく、健康診断の結果も良好。だのにどうしてあの日心臓発作で事故を起こしたのか。……それはあの代理の運転手にバクスターウィルスを感染させていたからだろう?」
「そんなもの知るかぁぁぁぁ!!!」
突進のデーモン。
「あの日の時点であなたは檀コーポレーションに付きっきりになった。正式な辞令もある。だが、その辞令はおじさんが出したものじゃない。あなたが無断で使用したものだ。普通ならおじさんが無事に帰宅すればすぐにばれて逮捕される案件だがそうはならなかった。何故ならあなたはあの日バグスターを使っておじさんを殺そうとしたからだ」
「知らないと言っている!!」
「あなたが今家族を失って荒れ狂っているように僕達もあなたに家族を奪われた。その贖い、全力でしてもらおう!!」
「キメワザ・インフェルノクリティカルスパイシー!!」
ローズが跳躍。すると、両手の手首から無数の細いツタが伸びて来て荒れ狂うデーモンをグルグル巻きにする。その上でスパイシーホットケーキが無限リピートされてる車が時速700キロで突っ込んできてデーモンに激突。
「ぬうううううううううううううううう!!!!」
そのまま地面から離れ、ミサイルのようにビルの中腹ほどに突っ込んでいく。
「セーブ、そろそろあれを使ってもいい頃だ」
「……いいんだな?やっと」
「ああ。存分に」
「ぐるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
車を殴り飛ばし、崩落しかけていたビルを大気圏外まで投げ飛ばし、傷だらけのデーモンがこちらに突進してくる。それに対してセーブは左手に巻いた腕時計のようなものを操作する。
「Acceleration!!」
電子音が響くとセーブの全身が光の繭のようなものに包まれる。やがてその光が周囲200メートルほどに広がり、光の結界の中にはセーブとデーモンだけが残る。
「こ、これは……!?」
「Believe in Nexus!!」
電子音が次ぐとセーブの姿が一瞬ガラスのように粉々に砕け、しかし次の瞬間には新たな姿として再生する。
「ま、まさか3段階変身するガシャットなのか……!?」
「そう。今の俺は仮面ライダーセーブ・レベルXサブリメノンアクセラレーター!!」
新たな姿を見せたセーブが走る。その速度はデーモンでも見えない。
「!?」
気付いた時にはデーモンは秒速100発以上の攻撃を受けて宙に舞っていた。
「こ、これは……!!」
「60秒間しか姿を保てない。だが、今の俺はレベルでは測れない。何故ならこのサテライトフィールドには加護がある。180秒しか持たないこのフィールドは俺の肉体へのダメージを激減させる。それを使ってもなお60秒しかこの姿は保てない。しかし、」
「……ぐ、ぐああああああああああああ!!!」
「1秒あればお前をも倒せる!!」
セーブが振り向けば同時にデーモンの全身の装甲が砕け散り、嵐山本来の姿になり、全身から鮮血を噴き上げながら結界の中に倒れた。腰に巻かれていたエボルドライバーと2つのフルボトルは閃光の中に消えていく。
「ば、馬鹿な……レベルで言えば150相当のこの私が……」
「サブリメノンアクセラレーターの力はレベルでは測れないと言った。何故なら過去未来あらゆる時空の俺自身が俺に力を与え続けてくれるのだから」
「……歴史がある限り力が無限に生まれ続ける……か。過去以外の全てを捨て去っていた俺が勝てないわけだ……」
やがて、光の結界は解除されセーブもいつの間にか変身が解除されていた。
「お、終わったみたいだね」
椎名が武や雷王院にセーブの新たな姿について説明をしていたがそれもちょうど終わったようだ。
「……お前、そんなチートがあるならどうして今まで使わなかったんだ?」
「完成してなかったからだよ。正確に言えばシステム自体は完成していたけれども何というか、2段階認証みたいで」
「そう。上級バグスター並みの膨大なデータから得られる経験値と、レベル100をも超える存在との長時間の戦闘。この2つがキーになってたんだ。今までは上級バグスターが倒せていなかったから変身できなかった。けど君がさっきアイギスを倒してくれたおかげでこの力がやっと使えるようになったわけ」
「……何か納得いかねえ」
「……完全に旧世界の時を超えているみたいだな」
各々感想を述べる武と雷王院。やがて4人は倒れたままの嵐山に歩み寄る。
「嵐山宗男。殺人未遂、西武財閥会長捺印の盗用及び権力の乱用その他もろもろの罪状はすべて警察庁に届け済みだ。このまま警察庁に僕と一緒に来てもらうよ」
「……」
「嵐山?」
4人がその様子を注視する。しかし、
「……死んでいる……」
雷王院が最初に呟いた。そして4人が同時に背後を振り向く。
「邪魔者には消えてもらったまでだ」
すっかり破壊されてしまった町。窓ガラスが完全に破壊されて野外と変わらない状態の喫茶店の中で正宗がコーヒーを飲んでいた。
「檀正宗!?」
「まさか、ポーズを使って嵐山を……!?」
「殺す必要があったのか!?」
「……言ったはずだ。邪魔者には消えてもらうと。そして次は君達に消えてもらう事になる」
正宗が懐からガシャットを取り出す。それは今まで見たこともないガシャットだった。
「新しいガシャット!?」
「……ん、あれは……!!」
そこへパラドとグラファイトが到着する。
「あのガシャットからとんでもないバグスターの力を感じる……!!」
「そう。ここからが本当の仮面ライダークロニクルが始まるのだよ!!」
「GameDeus!!」
ガシャットのスイッチを押すと、そのガシャットを中心に稲妻が迸り、一筋の光の柱となって天地を貫く。
「降臨せよ!!バグスターの人造神・ゲムデウス!!!」
高笑いの正宗。その頭上でまるで鬼神のような姿のバグスター怪人がゆっくりとその姿を顕現させていった。