仮面ライダーS/L27話
Tale27:GOD降臨
・人造バグスターの神・ゲムデウスが降臨した。ただそれだけで全国に存在していた人造含むすべてのバグスターが突然フリーズを起こした。
「……何が起こっているんだ……!?」
それらの報告を受けた椎名。その手前で2つの変化。
「な、何だ……頭が痛い……!!」
片方は頭を抱えて唸り声を挙げながら倒れる武。もう片方はガシャットを構える将碁。
「将碁!アクセラレーションは使うな!!」
「分かってる。あれは1度使ったら24時間は使えない。けど、やるしかない!!」
「ネオスターライトドラグーン!!」
「変身!!」
「胸に秘めた熱い思い!!感じるフリーダム!!アイムアレベル50サブリメノンゲーマー!!!」
将碁が変身してゆっくりと空から降りてくるゲムデウスへと向かっていく。
「……」
ゲムデウスは顎を軽く傾ける。と、
「……」
グラファイトとパラドがゲムデウスの前にやってきてセーブを受け止めた。
「お前達何を……!?」
「ゲムデウスは人造とは言えバグスターの最上位種。たかがレベル100未満が逆らえる存在ではない」
葉巻を吸いながら正宗が言い、グラファイトの刃とパラドの拳がセーブに叩き込まれる。
「があああああっ!!」
「将碁!!」
椎名の手前。セーブが墜落し、地面をバウンド。再び地面に叩きつけられた時には変身が解除されていた。
「嵐山を倒してくれて助かったよ。おかげで君達を楽に始末できる」
「……くっ!」
椎名がガシャットのスイッチを押す。と、どこからか車が走ってきてパワーアームのようなもので倒れている将碁と武を車内に放り込む。
「っ!」
一瞬で逃走の意思を読み取った雷王院は、血だらけで倒れたまま動かない瑠璃を担いで車に飛び込む。
「……逃がすと思ったか?」
正宗が笑い、グラファイトとパラドが車に向かっていく。
「来い!!」
雷王院が叫ぶと将碁と武の懐からスターライトとガンナーのフルボトルが飛び出し、それがサンダーウルフバグスターの姿になる。
「頼んだぞ!」
椎名が運転席に乗ると同時にサンダーウルフがグラファイトとパラドに向かっていき、しかし5秒と持たずに撃破された。その時には既に車は見えなくなっていた。
「……まさかバグスターを使役出来るとは」
正宗が地面に落ちた2つのフルボトルを拾う。
「……いや、これは違うな。確かスマッシュと言ったか。バグスターにカモフラージュして生み出されている。旧世界の遺産と言う奴か」
正宗が再びベンチに座ると、ゲムデウスは着地。パラドとグラファイトをカプセルのように小さく丸めて体内に吸収して収納する。
「さあ、真のゲームの始まりだ」
・Transfar近くの小さなアパート。雷王院が借りているアパートに将碁達はやってきた。
「助かったよ、雷王院君」
「……いや、いい。こいつらやお前の家は知られているだろうからな」
返事をしながら雷王院は瑠璃の服を脱がす。
「君、何してるの?」
「医師免許は持っている。この子は既に致命傷だが、やってみてもいいだろう。お前達は隣の部屋で作戦会議でもしていろ」
「……はいはい」
椎名が将碁達に向き直る。どちらも畳の上に転がっていた。
「……くっ、流石に上位バグスター2体相手はきついか……」
「まだ目が回る……うううっ!」
傷だらけの将碁も激しい頭痛がしている武もすぐには動けなさそうだった。仕方ないので雷王院の手際を見ることにした。やがて雷王院もしびれを切らしたのか技術に関係しない部分だけ手伝わせることにした。手術開始から5時間。
「……ふう、鏡先生なら2時間くらいで出来ただろうな」
「いやいや。初めての心臓系手術成功しただけでも十分すごいでしょ。ここそんなに設備とか整ってないのに。君、執刀医になったら?」
「気が向いたらな。それよりも」
瑠璃をベッドに寝かせてから雷王院は他3人を見る。既に将碁も武も立ち上がれるほどには回復していた。
「椎名、さっきから会社から何か連絡受けてただろう。何があった?」
「ああ、うん。実は西武財閥の方で仮面ライダークロニクルによってゲームオーバーになってバグスターとなった人々の経過観察を行なっていたんだけど、あのゲムデウスとかって奴が出てきた途端、様子がおかしくなったらしい」
「具体的には?」
「喜屋くんのように激しい頭痛がしたり、人間ではないバグスターの姿になって暴れだしたりしたそうだ。現在判明した人たちに関しては西武財閥で収容されている」
「……出現しただけで全国のバグスターを操るだけの力があるのか。……で、どうしてそいつは頭痛が起きた?」
雷王院の視線が武に向かう。
「知るかよ。……前から手足が落とされても、変身前にどれだけダメージを負ってもすぐに治るんだ。お前が言っていたハザードレベルって奴が高いからじゃないのか?」
「ハザードレベルはフルボトルに干渉してライダーシステムの性能を底上げする効果があるのは確かだがそんな効果があるとは聞いたことがない。それにお前はもうフルボトルを使ってないだろう。……檀正宗に何かされていたのかもしれないな」
「そんな事より、将碁。嵐山を倒したあの力ならゲムデウスを倒せるか?」
「……分からない。ゲムデウスそのものとは戦えてないからな。けどグラファイトとパラドなら問題ないと思う」
「だが問題もある。ゲムデウスが他のバグスターを操れるとなると、もしかしたら僕達の体内にあるガシャット用のバグスターウィルスまで操られるかもしれない。そうなったらもう……」
椎名の視線が雷王院に注ぐ。
「……俺の方も戦力は十分とは言えない。ゼリーボトルが消えたからな。通常のライトニングではどうにもならないだろう」
「……フルボトルで思い出したけどあのサンダーウルフ何なんだ?お前使役してただろ」
「……あれは旧世界のお前達だ」
「は?」
「新世界に移る際にお前達がくれたんだ。自分達は戦いを捨てるが、何かの助けになるかもしれないとして。だからもしもの戦力としてバグスターに偽装して作り上げたんだ。……まあ、科学的な知識はないから作ったのは別の奴だがな」
「……俺達、前にあのサンダーウルフとは何回か戦ってんだけど」
「俺の意思じゃない。かつてのお前達が望んだことなんだろうな。あの二つのフルボトルには僅かだがかつてのお前達の意思のようなものが残っているみたいなんだ。再び戦うことを選んだお前達を試そうとでもしたんじゃないのか?」
「……どうだかな」
将碁達の反応を見ずに雷王院はソファに横たわる。
「俺は休む。流石に疲れすぎた」
「……疲れてるのはお前だけじゃないっての」
「まあまあ将碁。彼はかなりやってくれたよ。彼がいなければ嵐山はハザードトリガーを使っていてもっと苦戦したに違いないし、瑠璃ちゃんだって助からなかった」
「……けどもう戦えないってなら大人しく後方支援でもしててくれればいいよ」
「俺相手にかろうじて引き分けられる程度の力ももう出せないみたいだしな。邪魔にならないようここに引っ込んでてくれればいいよ」
言いながら武は冷蔵庫を開けた。中には何も入ってなかった。
「……何か飯買ってくる」
そう言って武は部屋を出ていった。
夕方。武がコンビニで弁当と飲み物をいくつか買い、雷王院の家に戻る最中。
「……ん、」
正面。いくつかの人影が見えた。それは、人間の姿をしたグラファイト、パラド、カイト、パペットだった。
「お前達……!!」
「……」
4体の上位バグスターは一瞬でそれぞれグラファイトバグスター、パラドックスバグスター、クラーケンバグスター、リザードバグスターへと変身し、一斉に武に向かっていく。
「くっ!!」
「ガンガンリボルバー!!」
「変身!!」
「ガンガンバキュンバキュン!!ガンガンズギャンズギャン!!ガンバズギャットリボルバー!!」
4人の攻撃を回避しながら変身し、正面にいたリザードバグスターを殴り倒す。
「……」
しかしリザードが尻尾でリボルバーの足を掬い、バランスを崩したところをクラーケンが8本の触手で絡めとり、そこをグラファイトとパラドが攻撃を集中させる。
「ぐっ!!流石に上位バグスターと4対1は厳しいか……!」
触手を振り払い、ハンドガンでクラーケンをヘッドショット。迫りくるグラファイトの斬撃を受け止めながら膝蹴りで弾き飛ばし、パラドの額を撃ち抜く。人間のように即死ではないものの激痛故か怯むクラーケンとパラドを一度無視して突進してきたリザードの頭上を飛び越えてその背中にドロップキック。立ち上がると同時、背後からパラドが炎と氷の塊を叩き込んでくる。
「ぐっ!!」
大きな爆発が起きてリボルバーがぶっ飛ばされる。さらに空中でグラファイトが刃でリボルバーの腹を切り裂く。
「これは……っっ!!」
火花をあげながら地面に叩きつけられるリボルバー。さらにクラーケンが無理矢理触手を使ってその手からハンドガンを奪い取る。立ち上がって取り返そうとすればリザードが突進してきてリボルバーを押し戻していく。
「ぐっ……!!」
踏みとどまり、リザードの両腕を払いのけ逆にその胸に数度のパンチと飛び蹴りを叩き込む。
「……っっ!!」
吹っ飛ばされたリザードは血だらけのパペットの姿に戻り、大量に吐血する。それを見届けてから次の目標を定めようとすると、いつの間にかパラドによって足元が凍らされていた。それに気付いた瞬間にグラファイトが刃で切り刻んでくる。
「足を封じられ、射撃も使えない状態でグラファイトに集中攻撃されるか……ここまでかもな」
ダメージが重なり、肩を揺らすリボルバー。その意識が消えていく。しかし、
「Ready Go!!」
「!?」
電子音。次の瞬間には目の前にいたグラファイトが弾き飛ばされる。
「ぐっごばぁぁっ!!」
吹き飛ばされた先でグラファイトが人間の姿に戻り吐血。
「……こ、ここは……」
「グラファイト!意識が戻ったのか……!?」
「……お前はリボルバー……!?どうして……俺は何をしていた……?確か檀正宗が……思い出せない」
頭を抱えるグラファイト。そこへパラドが迫る。が、
「動く!!」
足元の氷が解けていたリボルバーが走り、パラドを横から殴り倒す。
「…………」
不利と見たからかパラド、クラーケン、パペットはその場から姿を消した。
「……いったい何が起きている?」
グラファイトが立ち上がり、変身を解除した武の傍に寄る。しかしその武の視線の先にはとある男が立っていた。
「……お前は……馬鹿な……!!」
午後6時。疲労による睡眠に入って2時間ほどの雷王院を誰かが叩き起こした。
「誰だ……!?」
ソファから起き上がるとそこには
「やあ、ライトニング」
「お、お前は……檀黎斗!?」
黒スーツの長身。檀黎斗がそこにいた。一瞬夢かと思ったがどうやら夢ではないらしい。
「……お前、生きていたのか……?いや、それよりどうしてここにいる?」
「喜屋君に連れて来てもらった。彼が街で上級バグスターに襲われていてね」
「……その上級バグスターが一人ここにいるように見えるのは気のせいか?」
黎斗の後ろ。何故か将碁とグラファイトが腕相撲で勝負していた。
「……事情を説明しろ」
「いいとも。あの日、檀コーポレーションで私が君に敗れた後だ。嵐山によって私は下水道に捨てられた。致命傷を負っていたからさすがの私も死ぬかと思った。だが、意外な奴に助けられたんだ」
「意外な奴?」
「桐生戦兎」
言われるや否やすぐに雷王院はスマホを出して喫茶店へと電話をかける。
「はい、もしもし?どうかしたか?」
「何お前檀黎斗助けてるの?」
「お、合流したのか。いや、大変だったぞ。本人の希望で病院には連れていけなかったし。俺が治療用ロボット作ってずっと喫茶店の地下室で治療してたんだ。ついさっき完治したから野に放ったんだよ」
「……はぁ」
「まあ詳しくは本人に聞いてくれ。俺は今忙しいんだ。じゃあな」
「あ、おい」
通話が切れた。見れば黎斗は椎名と一緒にコンビニ弁当を食べていた。
「……逆にお前は今の状況知ってるのか?」
「ああ、知ってる。父が生きてて嵐山を殺したんだろう?で、ゲムデウスを起動させて全国のバグスターを操り始めたと」
「……お前には聞きたいことが山ほどあるんだ」
「質問を拒否するつもりはない。だが、今はその時間もないだろう?だから私の方から最優先で言うことを説明しておこう。まずはゲムデウスの事だ」
野菜を避けて肉と米だけ食う黎斗。視界に馨がぷかぷか浮いていることに気付くと咽る。しかし冷静を努めて続ける。
「ゲムデウスは仮面ライダークロニクルの最終兵器。設計だけは完成していたが開発に関しては目途が立っていなかった。それをあの男が完成させたのだろう。そしてとある理由から私が作った設計からそのまま開発した可能性が高い。それを前提にするならばゲムデウスを倒すことはほぼ不可能だ」
「……どういうことだ?」
「私が仮面ライダークロニクルで想定していたのはエグゼスター同士の対決の末、その最終進化系とも言うべき仮面ライダークロノスを使ってラスボスであるゲムデウスを倒すことによってゲムデウスが有する全バグスターの使役能力を獲得。全人類をバグスター化することで地上の平和、秩序を成し遂げることだ。ゲムデウスによる全バグスターの使役能力をグラファイト達自然発生したバグスターどもに奪われないようにするためにゲムデウスにはセキュリティを用意しておいてある。そのセキュリティはある条件を満たさない限りゲムデウスの運命を左右することは出来ないと」
「……その条件は?」
「仮面ライダークロノスの出現とクロノスとの戦闘。つまり、ゲムデウスはクロノスでしか倒せない。いや、そもそも出現させることすら出来ない」
「……けどあんたの父親がクロノスでしかもゲムデウスを使役してるぞ?」
武が痺れた腕をぐーぱーしながら言う。
「だから問題なんだ。本来クロノスはレベル100以上まで鍛えたクロニクルガシャットを人間が使用することでしか変身できない。そう言う設計にしてある。だがあの男はクロニクルガシャットを開発した際にそこに手を加えた。……自分だけがクロノスに変身できるように。他のプレイヤーがクロノスの力を手に入れないようにするために」
「……今までゲムデウスを檀正宗が使わなかった理由は?」
腕を抑えて地面にうずくまりながら将碁が尋ねる。
「将碁君。君のガシャットと似ているよ」
「え?」
「君達の言う上級バグスターのうち誰かがゲムデウスの存在を知っていてその復活を阻止していた。いや、どこかに隔離していたんだろう。だが嵐山との戦いで最低でも2体の上級バグスターが倒されたことでそのどちらかが管理していたゲムデウスをあの男が奪取。クロノスの力を使って復活させたんだ」
「……なるほど。マグテラーが隠していたのはゲムデウスだったのか」
グラファイトが椎名を指で招き、しかし拒否されながらつぶやく。
「少なくとも俺やパラドはゲムデウスの存在を知らなかった。恐らく他の3人もそうだろう」
「……檀正宗はクロノスの力を手に入れしかしゲムデウスの隔離場所を知らなかった。或いは封印を解除する手段を知らなかった。その状態でこれまで何度か撃退されてそれで痺れを切らしたのか。……檀黎斗、お前は父親が死んでいなかったことは知っていたのか?」
「薄々とはな。だが姿を見せない上にちょうど良くクロニクルガシャットの設計を終えてくれていた。だから私が開発して完成させようとした。その最後の一歩であの男に奪われてしまったのだ。忌々しい……!」
「……話は戻すけど、あなたや檀正宗がクロニクルガシャットや仮面ライダーの力を手に入れてもバグスターにならずに人間のままだったのは……」
「そうだ。クロノスになるには人間のままでいるしかない。バグスターの力を手に入れたとしても生身の人間でないとゲムデウスを使ってバグスターを使役することが出来ない。だから少なくとも私は人間のままあり続けた。……まあ、このあたりに関しては手を打っていないわけでもないのだが」
「……それを確認しても?」
「駄目だ。あの男がゲムデウスを使い始めた以上、それは勝利を確信している。そこにイレギュラーであり想定外である私が生きていただけでもあの男はどんな行動をするか分からない。もしかしたら私にならゲムデウスやクロノスの対策が出来るのではないかと情報を窺う可能性だってある。だから私は生きている事すらあの男に伝わってはいけない。そのためにも桐生戦兎のところで静かに世話になっていたのだ」
「……まあいいがな」
「けど、僕達は早ければ明日には檀正宗と戦う予定だよ。将碁の最大戦力が復活してからね」
「構わない。長期戦になればこちらが不利だ。……今度は君達から情報を聞きたい。一応ライトニングから桐生戦兎、そして桐生戦兎から私に話は来ているのだが直接本人たちから聞いてみたいのでね」
「……その前に、桐生戦兎って誰?」
「……旧世界で一緒に戦った仮面ライダー」
「……その人は戦えないのか?」
「ああ、もう戦えない。エボルトの力を封じるために自らの体内のネビュラガスをほぼすべて使い果たしてしまったからな。生き残ったから記憶は引き継いでいるがそれ以上ではない」
「……と言うか、黎斗社長……もういいや、黎斗社長で。黎斗社長も旧世界の人間なんだよな?」
「ああ、そうだ。当時は私が仮面ライダーではなく桐生戦兎同様科学技術での後方支援がメインだったがな」
「檀正宗は違うのか?」
「あの男は旧世界では戦争が起こる前に死んだ。エボルトには一切かかわっていない」
「……そうか。……あれ、嵐山は?」
「私と同じだ」
「って事はあんた達はそろいもそろって旧世界の事を知りながら色々暗躍してたってわけか」
「私達にも事情はあった。何せエボルトは偶然地球に来たわけじゃない。とある物体が目的でこの星に来たんだ」
「物体?」
「パンドラボックスだ。エボルトは旧世界で最初の仮面ライダーだった。自分の星で開発された超技術の塊であるパンドラボックスを使ってエボルトは仮面ライダーに変身する。だが宇宙連合との戦いの際にパンドラボックスを手放してしまった。それが偶然地球に流れ着き、エボルトはそれを追って地球に来たんだ。もしも我々科学者達が迅速にパンドラボックスを見つけ出し解析できていたならばエボルトによる被害はもっと少なくできたかもしれない。少なくともパンドラボックスから漏れたネビュラガスなどと言う危険なものを不可欠としたライダーシステムなど発明しなかっただろう。だから新世界になって最初に私はネビュラガス以外の方法で仮面ライダーのシステムを開発してそれを用いて地球上の管理を行い、万が一にもエボルトが復活した際には迅速に迎撃するためにも全人類をバグスターにするべく仮面ライダークロニクルを発明したのだよ」
「……いまいち釈然としないな」
「スケールが大きすぎて何とでも言えるんだよな。どっかの誰かさんみたいだ」
「お前達誰の家にお邪魔してるか分かってて言ってるんだろうな?」
将碁、武、雷王院の視線が交差する。
「……新世界で何があったんだこの3人」
「……それも含めていろいろ情報交換しようじゃないか」
ひそひそ話の黎斗と椎名。
それから3時間後。グラファイトがコンビニで買ってきた缶ビールを飲んで完全に出来上がった黎斗に将碁、武、雷王院の3人が正座させられていた。
「貴様らぁぁぁぁっ!!何喧嘩してんじゃぼけぇぇぇぇっ!!!ライトニングぅぅ!!分かってるのくぁぁ!?旧世界で私が開発したトリニティドライバーを使うには貴様ら3人の呼吸と精神が合わさってないと無理だったのだぞぉぉぉぉ!?」
「……仕方ないだろ」
「仕方なくなぁぁぁぁぁい!!!いまエボルトが来たらどうするつもりだぁ!?ビルドもグリスもローグもいない状態で誰があの悪魔を倒せると思っているのだぁぁぁぁっ!?と言うか、フルボトルをサンダーウルフバグスターに改造していただとおぉぉぉぉっ!?通りであのバグスターが妙な反応を示すわけじゃないかぁぁぁぁぁぁ!!!」
「サンダーウルフバグスターに改造したのは桐生戦兎だ!」
「桐生戦兎おおおおおおっ!!!」
黎斗がスマホで通話と言うかリモート説教を始めた。速攻で通話ブロックされた。しかし黎斗の勢いが止まることはなくそれから夜更けまで3人は正座をさせられたままだった。ちなみにこの夜だけで15回他のアパートの住人から苦情が入って雷王院はクタクタの身なのにひたすら謝り倒していた。
「……そう言えばどうしてグラファイトがここにいるんだっけ?」
将碁、椎名、雷王院は意識が途切れる前にふと理由を聞いていないことを思い出した。