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キラッとプリチャンVSアイドルタイムプリパラ~友情!ダイヤモンドタッグマッチ!!6話「フレンドパスワード」
・ダイヤモンドタッグマッチ、準決勝第2試合。
「準備はいいんだもん?」
控室。だいあが訪ねる。話し相手は当然虹ノ咲だった。
「……うん。怖いけど頑張ってみる」
「虹ノ咲さん、キラッと頑張ろうね!」
「……うん!」
みらいがときめきのピンクジュエルコーデに着替え、虹ノ咲は、ミルキーレインボーのファイティングイナズマコーデに着替える。
「でも対戦相手はあのえもちゃんとあんなちゃんなんだよね……。アンジュさんやめるちゃんにも勝った……」
「……そうだね。あたしだって勝てるかどうかわからないし、不安に思ってるよ。でもやらなきゃいけない。ううん。やってみたいの。友達だからこそ全力で戦わないといけない時もある。1年前にあたし達ミラクルキラッツがメルティックスターに教わったことだよ。だからそれをぶつけないと」
「みらいちゃん……」
「……じゃあそろそろ行こうか」
「だいあもみらいちゃんも頑張ってねー!!」
だいあのエールを背に二人は控室を後にする。そして正面。天空リング。
「……あ」
ちょうど、二人の眼前にゆい達4人を担ぎ上げたミーチルが下りてきた。
「幸多さん……」
「ミーチルと呼ぶがいい。……ようやく自分自身で戦う気になったようじゃの」
「……うん。後悔したくないから……みらいちゃんと一緒にやってみたいから」
「……うむ。それでいいのじゃ。さて、相手が待っているようじゃぞ?」
「……相手……」
ミーチルが去り、開けた視界の向こう。そこにあんなとえもがいた。
「みらい、虹ノ咲さん。色々よくわからない事とかあるけれど考えるのもうやめたよ。ただ全力で勝負をする。それがあたしらしい事だから」
「黄色いのの言う通りですわ。デザイナーズ10の力、このわたくしが確かめて差し上げますわ」
「……えもちゃん、あんなちゃん……」
竦む。そんな虹ノ咲の手をみらいが握った。
「みらいちゃん……」
「やろうよ!虹ノ咲さん!!」
「……うん!」
4人は視線を交わした後、天空リングへと駆け上がる。
「見ものですね。この勝負」
「そうですね。今までのどの勝負も決して軽んじていいものではありませんでした。いずれも決勝戦だと思ってもおかしくないプリズムの情熱を感じていましたから」
「しかし、この勝負は現状唯一全員が顔見知りと言う勝負になるわけですか」
解説席。あいら、なる、そしてサイコマンがそれぞれ感想をこの緊張に流していた。
「あの、どうして完璧始祖のサイコマンさんが?」
「いえね、私も暇なのですよ。おかしな世界に紛れ込んでしまったために武道さんから任された完璧超人の育成と言う大事なお仕事も出来そうにありません。それに、あの萌黄えもさん。彼女がどこまで強くなったのか知りたいではありませんか」
「……サイコマンさんは依然えもちゃんと戦ったことがあるんでしたっけ」
「ええ。あの時はあのツインテを骨ごと引き抜いて、しかし思わぬ反撃を受けた事で少々手こずってしまいました。あの時点でぎりぎり下等超人の枠を超えるかどうか位の実力でしたので楽しみなのですよ。オメガの民との戦いを経てどこまで強くなったのか」
「……えもちゃんもまたすごい人から期待されちゃってるんだなぁ……」
解説が盛り上がっている間にリング中央に二つの影。
「ダイヤモンドスマイルからは桃山みらいちゃんが!!ツインテールズからは赤城あんなちゃんが先鋒としてリングインしたようです!!」
めが姉ぇのアナウンスを受けて客席が一気にヒートアップ。主役二人は無言でしかし緊張に引き締まった笑顔のまま視線だけを交わらせている。
「それでは見合って見合って……試合開始っ!!」
ゴングが鳴った。同時に走るみらいとあんな。2秒とかからずに互いにリング中央でタックル同士を激突させる。
「まずはタックル勝負です!!これは本来体格の小さいあんなちゃんが不利!!ですが実際に激突した結果は全くの互角です!!」
「あんなちゃんは自分の身長が低く体格的に不利になることが多いとわかっているでしょうからこういうパワー対決で負けないように工夫をしている筈です」
「わたしもよくやりますね。仲間内で一番背が低かったので。だから少しだけあんなちゃんの気持ちが理解できるかも」
「あちらの赤いお嬢さんはそこそこお強くなったようですね。以前はガンマンさんにパワー負けしていましたがその時よりかは強くなっているようです。対してピンク色のお嬢さんは特別な素質はない代わりに基礎を鍛えているようです。赤いお嬢さんのテクニックに問題なく追随しています」
「おおっと!!タックルのぶつけ合いから試合が進展します!!あんなちゃんが飛び上がりました!!」
「!」
「遅いですわよ!!」
「振り向いたばかりのみらいちゃんの顔面にドロップキック!しかしみらいちゃん倒れず着地したばかりのあんなちゃんを脇固め!!冷静沈着です!!テクニックで負ける相手に対してサブミッションで応じるのは決して愚策ではありません!!」
「流石ですわね。他のキラッツ……いいえ、他のあらゆるプリチャンアイドル超人の中でも特に目立った性能特質は持ち合わせていないあなたが、しかしわたくしは一番侮れない相手だと思っていますのよ」
「……あんなちゃん……」
「だからこそ私の正義のレッドジュエルが燃え上がるのですわ!!!」
「あああ!!!あんなちゃんの正義のレッドジュエルが早くも燃え上がりました!!現在超人強度は3000万パワー!!!たやすくみらいちゃんの脇固めを外し、カナディアンバックブリーカー!!い、いえ違います!!!カナディアンバックブリーカーの体勢から飛び上がってこれは……パイルドライバーです!!!」
「真のプリチャンアイドル超人であれば一度に複数の技をかけることくらい出来て当然!!!」
「なら、それにこたえないとね……!!」
「みらいちゃん!!この連携技を難なく受け身!!さらに凝固したポニーテールがまるで駒の軸のように二人分の体重を支えながら高速回転を始めましたぁぁぁっ!!!」
「フライ・ハイ・セメタリー!!!」
「見る見るうちにみらいちゃんの下半身とあんなちゃんの全身が竜巻に飲み込まれていきます!!ものすごい風圧です!!この回転速度と風圧でしかしみらいちゃんはあんなちゃんを両足でホールドしたまま離す様子がありません!!これはサブミッションを超えた新しい組技と言えるでしょう!!!」
「くっ……!!」
「あんな!!」
リングサイドでえもが身を乗り上げる。ここで相方を助けるのは簡単だ。だがそれで状況がどうにかなるのか。タッチなく自分がリングに出てしまえば相方のKOチャンスを潰してしまうのではないだろうか。
「よく耐えましたわ!!」
えもの苦悩を打ち破る声。
「!?」
天空でみらいによって固められた状態で高速回転させられていたあんなが赤く輝く。やがて少しずつみらいの回転速度が落ちていき、
「ファイヤースピングレネードですわ!!!」
ついに赤い輝きを纏った逆回転の竜巻となってみらいの全身を激しく高速回転の渦に叩き込む。
「オ・レ!!」
そして回転速度が音速を超えると同時に飛び上がり、上空2000メートルから赤い火の玉となったみらいをマッハ20の速度で天空リングに叩きつける。
「みらいちゃん!!!」
虹ノ咲の叫びも激突の轟音によって遮られる。夥しい量の土煙や火炎が巻き上がり、大炎上する天空リング。マットの上にあんなが着地する。
「……この程度でどうにかなるあなたではないのでしょう?」
「もちろんだよ、あんなちゃん」
声。直後リング内の炎や煙をすべて吹き飛ばし、みらいが立ち上がった。決して無傷とは言えない様子だがしかし戦闘続行には何の問題もない力強さが感じられる。
「ふむ。頑丈さはどちらも下等超人の域を超越していますね」
サイコマンが笑みを浮かべたまま呟く。その目にはみらいとあんなの動きが0コンマ1秒単位でしっかりと見えていた。
「動きますか」
それによりあいらやなるとほぼ同じ速度で戦況が動く姿が見えた。
「えも!」
「OK!!」
合図。それはえもがリングインして双極必殺技(ツープラトンフィニッシュホールド)を繰り出すという合図。つまりはかつては8600万パワーを誇るオメガマンアリステラやつい昨日白鳥アンジュをも沈めたあの技が来るかもしれないという予感。その予感を受けたみらいは心にわずかな緊張と警戒を抱く。
「行くよ!!」
えもが走る。リング中央で構えるみらいと手四つで組み合う。えもとの力勝負に集中しながらもあんなの動きを警戒する。
「せっ!!」
「ぶぐっ!!」
あんなが動くと同時に鋭い前蹴りがえもの鳩尾に撃ち込まれる。体勢を崩したえもの腰回りにワンレッグショルダータックルを叩き込み、後方のあんなと衝突させる。そう言う算段だった。しかし、
「上出来ですわ!」
「!」
あんなは吹っ飛ばされたえもを踏み台にしてさらに跳躍。一瞬にて未来の背後を奪い、しかし着地しない。
「!?」
「お待ちかねのOLAPですわ!!」
「こ、これはあんなちゃん、奇怪な立ち関節技を披露しました!!みらいちゃんと背中合わせに、自身の体重をかけた両脚はみらいちゃんの両足の内股と、がっしり掴んだ両腕に半分ずつかけています!!これではあんなちゃんの体重によってみらいちゃんの両手足と腰が砕けてしまいます!!恐ろしいサブミッションを披露してくれています!!」
「あなたほどの相手ならこれくらいは必要でしょう!!」
「う!!」
みらいはスーパーコンピュータよりも冷静に正確に迅速に状況と対策を整理する。今のままでは1分と待たずにめが姉ぇの言うとおりに自分の解体が完了してしまうだろう。これほどまでの技を持ち出してくれたあんなをバラバラ殺人の下手(げしゅ)に仕立て上げてしまうのはみらいの超人魂が許せなかった。これほどの技だ。弱点などないだろう。となればパワーの掛け合いでバランスを崩してから一気に振りほどくのがセオリー。しかし、中途半端にこの状態を崩せば最悪えもが加わりそのままレボリューションコンビネゾンをかけられて今度こそ一巻の終わりだ。虹ノ咲に助けを求めようにもそれをさせぬために既にえもが虹ノ咲の動向を注視している。
「ううっ!!」
「股関節にひびが入ったようですわね。もしかしたら腰にまで亀裂が?」
あんなが言いながらより確実に仕留めるためにさらにパワーを加速させる。このままでは5秒後には両肩の関節が外れる。
「……これしかない!」
「っ!」
直後、あんなが仕掛けたOLAPは終焉を迎えた。突然みらいが自身の両腕と両肩の関節を自ら外したのだ。これにより上半身のホールドが緩み、あんながバランスを崩し、
「さぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
自分の前に逆さまに落ちてきたあんなの脳天に強烈な蹴りを打ち込み、サッカーボールのようにあんなの小柄をリングの外まで蹴り飛ばす。
「あんな!?」
「サッシュ!!」
次の一瞬で外した関節を戻して驚愕しているえもにショルダータックル。リングロープに吹っ飛びその弾力で戻ってきたえもの顎にサマーソルトキックを打ち込み、あんな同様にリングの外まで蹴り飛ばす。
「す、すごい」
「まだ!!!」
「え!?」
ときめきのピンクジュエルのパワーを開放して超人強度7000万パワーまで引き上げたみらいがリングから飛び降り、空中で体勢を立て直そうとしているあんなとえもに高速で追いつき、二人の首にダブルラリアットを打ち込み、そのままもろともに地面に叩き落す。
「これは凄い!!今までに見たこともないほどアグレッシブなみらいちゃんのストロングスタイルです!」
「……流石ザ・マンが目をつけるだけのことはありますね」
完全に笑みを消していたサイコマンが小さく呟く。それはみらいだけではなく今の衝撃をそれぞれツインテで防いでいたあんなとえもにも充てられていた。
「「せ~の!!!」」
「!?」
そのままツインテの弾力を最大限に生かし、正義のレッドジュエルと勇気のイエロージュエルの力を発動し、みらいを抱えたまま手も足も使わずに地上100メートルを浮いている天空リングまで戻ってくる。さらに、
「あんな!!」
「えも!!」
「くっ!!」
身構えたみらい。その両足を両手でがっちりとえもが掴み、足でキャメルクラッチするようにみらいの首をホールド。さらにあんなが前に回り込み未来の両腕を閂で封じ、両足でみらいの腰をホールド。その上で二人のツインテが伸びてみらいの全身をグルグル巻きにしてから三つ編みに結ばれる。
「「レボリューションコンビエモン!!!!」」
地上6000メートルまで吹き上がりそこからマッハ40の速度で天空リング向けてみらいの脳天を叩き落す。その威力は厚さ5メートルを誇る天空リングの鋼の底を余裕で貫通してそのまま大地に巨大な赤い花を咲かせる。
「と、とんでもないことになりました!!!」
大地が割れ、めが姉ぇの叫び声が響く。あいら、なる、サイコマンの視線が鋭くなり、わずかに口が開かれる。
大爆発が起きた地上。まるでミサイルの直撃でも受けたかのように抉り返った大地。その中心地。
「……助かった」
「間に合った……」
みらいの頭は地面にぶつけられていなかった。リングに叩きつけられる寸前に虹ノ咲に受け止められていたのだ。しかしあまりの威力に受け止めきれずにこうしてリングを貫通してしまっていたのだ。だがみらいも虹ノ咲も無傷!ばかりか虹ノ咲から出る友情のレインボージュエルコーデパワーが完全にあんなとえものホールドを解いていた。
「……」
サイコマンが指を鳴らすと、4人が立ち上がった大地が大きく隆起して新しい岩盤リングが誕生した。やがて大地から切り離されて第二の天空リングとなったそこで4人の戦いが再開された。
「負けられませんわ!!」
一番背が低いあんなが最も早く動き、みらいの下腹部にタックル。まだダメージ残る股関節を刺激するためにみらいの左足を両腕でがっちりホールド。あんなの攻撃を予見したみらいは全力のエルボーをその脳天に叩き込む。が、
「ぬああああああ!!!」
ものともせずあんなは勢いよくみらいの左足を持ち上げることで完全に左足側の股関節と大腿筋を破壊。さらにえもがスライディング気味の超超低空ドロップキックをみらいとあんなの全体重を支えている右軸足の膝に叩き込む。
「くううううう……!!!」
「みらいちゃん!!」
虹ノ咲はえもの足を掴んでジャイアントスイングの要領であんなに激突させる。
「大丈夫、みらいちゃん?」
「へ、平気だよ……。自分のほかにリングの上で誰かが立っている限り痛みに屈する超人なんているはずがないよ!!」
立ち上がるみらい。しかし既にその下半身はかなりの重傷。ただ立つだけでも重労働。それでもみらいはピンクジュエルのパワーを開放させて天空リングの上で立っていた。
「……あんなは少し休んでなよ。あたしはまだほとんどダメージ食らってないからさ」
「……お言葉に甘えますわ」
「おおっと!!えもちゃんがあんなちゃんから正式にタッチを受けました!」
「……みらいちゃんもここは私に任せて少し休んで」
「……虹ノ咲さん……」
「私も、みらいちゃんに格好いい所見せたいもん」
「……分かった。少し休憩してるね」
「ダイヤモンドスマイルもみらいちゃんが正式にタッチして虹ノ咲さんに選手を託します。休憩のためみらいちゃんとあんなちゃんは隣の穴が開いた第一天空リングに飛び移りました。さあ、えもちゃんと虹ノ咲さんの真っ向勝負です!!」
「いくよ、えもちゃん!!」
「来ぉぉぉぉい!!!」
岩盤天空リング中央で手四つで組み合う二人。パワーは全くの互角。リング中央を中心に二人のジュエルの光が巨大な渦を作る。
「虹ノ咲さんの勇気、あたしがどれほどのものか勝負で確かめて見せる!!」
「えもちゃんの勇気には私も支えられてきたのかもしれない。だからこそそれを全力で受け止めて受け返す!!それが私の友情だから!!!」
「虹ノ咲さんが動きました!!手を組んだままサマーソルトキックでえもちゃんの顎を砕く……寸前でツインテに遮られました!!」
「そこから!!エモーショナルスープレックスだ!!」
「その体勢からブリッジ!!えもちゃんが虹ノ咲さんを顔面から背後に投げつける!!が、」
「うああああああああ!!!!」
「えもも!?」
「力を振り絞った虹ノ咲さん!!なんと足の力だけでえもちゃんのツインテールを引きはがしました!!!えもちゃんの髪がほどけてストレートになります!!初めて見ました!!」
「……私も初めて見たかも」
「えええぇっ!?」
隣のリング。みらいの発言にあんなが驚く。
「あんなちゃんは見たことあるの?」
「そ、そりゃ一週間以上もずっと一緒に特訓してきましたので……」
「そうなんだ」
ツインテがほどかれて慌てて結びなおそうとするえもの両腕を閂にする虹ノ咲。
「レインボーアーチスープレックス!!」
「これは!足をばねにして通常よりも高く飛び上がり全体重をかけた閂スープレックスです!!!両腕の関節が決められた状態で二人分の体重がかかった一撃がえもちゃんに炸裂!!!今まで防御に使っていたツインテがないために直撃!!えもちゃんに脳天から岩盤リングに!!岩盤リングにぶちこまれましたぁぁぁぁぁっ!!!」
「虹ノ咲さんの話を信じるとすれば虹ノ咲さんはデザイナーズ10でありながらしかし超人レスラーではない世界から来た女の子。いくらこの世界に来た際に超人となることで大幅にパワーアップしたとはいえここまで強いなんて」
「私も驚きですよ」
「……ふむ。流石は我々完璧超人始祖と肩を並べる、下等超人でありながら神の領域に踏み近づく集団・デザイナーズ10の一人ですね。ガンマンさん辺りなら一瞬の油断から倒されてしまうかもしれません。おっと、あまり故人を悪く言うのはやめておきましょう。我々は新しく生まれ変わったのですから」
「でもえもちゃんも負けていませんよ」
なるが小さく、強く呟く。実際その視線の先でえもは立ち上がった。しかも、
「!?」
「いっぱいツインテで!!」
「こ、これはえもちゃんのストレートに降ろされた髪がまるでクモの足のように8本に分かれて虹ノ咲さんの両手足を完全にホールドしました!!」
「くっ!」
「萌黄拳法第一!!蹴る時は駒のごとく!!ドラグーンショット!!!」
「えもちゃんの強靭なミドルが虹ノ咲さんの腰に炸裂!!明らかに骨が砕けた音が響き渡ります!!」
「萌黄拳法第二!!殴る時には最低でも全体重を全身全霊かけて叩き込むこと!!クラッシュパウンド!!!」
「今度はパンチ版ドロップキックとも言うべきWダイビングパンチがコークスクリュー込みで虹ノ咲さんのお、お、おっぱいに炸裂!!豊かなバストの上から容赦なく威力が彼女の左右の肺を貫通します!!」
「うううううっ!!!」
「萌黄拳法第三!!投げる時には投げた先の大地をも砕くために!!スーパー最強ダークネス投げ!!」
「今度は虹ノ咲さんの腰回りを完全にホールド!!既にホールドしている手足と合わせて完全に身動きを封じたうえで虹ノ咲さんを背後のリングポスト代わりにそびえたつ岩盤に投げつけましたぁぁぁぁぁっ!!!」
「ぐふっ!!!」
髪によるホールドは解除された。だが尋常ではないダメージが虹ノ咲の全身を襲っていた。
「これが本物の超人レスリング……!!」
「だいあ、大丈夫だもん?」
「大丈夫だよ、だいあ。こんなことになるなんて思わなかった」
「だいあ……」
「どうしよう、だいあ。楽しくて仕方がないんだ……!!」
笑みをこぼしながら血だらけで立ち上がる虹ノ咲。その間にえもはツインテールを結びなおしていた。
「これで完全復活。あんな!!」
「待っていましたわ!!」
サインを出してからあんなが隣のリングから飛び移ってくる。同時にえもが虹ノ咲の腰にタックル。受け止める虹ノ咲だったがその腕をツインテで防ぎ、素早く虹ノ咲の股下を潜り抜け、えもが虹ノ咲の足を掴んで虹ノ咲の体を持ち上げる。
「こ、これは!!」
「上出来ですわ!!」
そのまま飛び上がったえもに向かってあんなもまたミサイルのように突っ込んでくる。あんなが虹ノ咲の背後から足で首をキャメルクラッチしつつ両足をホールド。その間にえもが両足で虹ノ咲の両腕を封じつつあんなのツインテをがっちりと掴み、自身のツインテは長く伸ばして虹ノ咲の両足をグルグル巻きにしたうえであんなにがっちりと掴まれる。
「「レボリューションコンビネゾン!!」」
「おおおっと!!!!今一度繰り出されました双極必殺技(ツープラトンフィニッシュホールド)!!!本来は両膝から落とす必殺技ですが今回はどうやら先ほど同様に頭から岩盤にたたきつける気のようです!!!」
「みらいは……!!」
きりもみに高速回転しながらえもはちらりと隣のリングを見る。しかしそこにみらいの姿はなかった。
「みらい!?」
「おおっと!みらいちゃんからサインが出ました!!」
「え、みらいどこ!?」
周囲を見渡す。めが姉ぇの視線を追う。しかしどこにもみらいの姿が見当たらない。やがて衝撃だけが来た。
「こ、これは!!」
「待たせたね」
「ああああ!!!!みらいちゃんが!!!えもちゃんのすぐ後ろに忍び寄っていたぁぁぁぁぁっ!!!!」
「みら……」
「行くよ!!」
みらいがノーガードとなっているえもの腰回りをがっつりとホールド。万力めいたものすごいパワーが加えられえもが吐血。それによりツインテの呪縛から解放された虹ノ咲はレボリューションコンビネゾンから脱出!
「虹ノ咲さん!!」
「みらいちゃん!!」
いつしか二人は空中で体勢を変えて、みらいがえもにキン肉バスターを、虹ノ咲があんなにキン肉ドライバーをかける体勢になっていた。そして虹ノ咲がみらいを肩車する形に移行する。
「この技はもしや!!」
「「マッスルドッキング!!!!」」
放たれた双極必殺技(ツープラトンフィニッシュホールド)。一筋の流星となり岩盤リングを貫通爆裂し、大地に再び大きな爆発を巻き起こす。やがて発生した砂嵐と爆炎の全てを消し飛ばし、えもとあんなに完璧なマッスルドッキングを叩き込んだみらいと虹ノ咲の姿が見えた。ピンク主体の虹色の輝きが水晶のように光り輝き、フィニッシュを飾る。
「……」
「……」
みらいと虹ノ咲が技を解除してやや離れる。と、無言のまま吐血してえもとあんなの二人が崩れ落ちた。
「だ、ダウンです!!!」
「……あれはもう立てませんね」
「サイコマンさんと同意見です」
「私もですね」
解説役の3人が続けて意見を述べる。それを受けてめが姉ぇがジャッジを下そうとした時だ。
「「ふんぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」」
「まさか!!!」
赤と黄色いの輝きを稲妻のように走らせながらあんなとえもが立ち上がった。
「……そう言えばマッスルドッキングは元々みらいちゃんとえもちゃんによる双極必殺技(ツープラトンフィニッシュホールド)。えもちゃんにはあの技の詳細が分かっている。それを踏まえて今の衝撃にかろうじて耐えることが出来たのかもしれない」
「……でもそれって……」
「ええ、恐らくはもう限界を超えているでしょう。それでも私達をミスジャッジさせるとは恐ろしい少女たちですね」
サイコマンは素直に称賛をあらわにする。その眼光の先で立ち上がったえもとあんな。
「まだ、まだ終わらないんだから……!!」
「わたくしに……敗北などあり得ませんわ……!!」
「……だったら絶対に倒すための技で……!!」
みらいがピンクジュエルのパワーを開放し、超人強度が8000万パワーを超える。そしてあんなとえもの頭を鷲掴みにするとそのまま飛び上がり、真っ逆さまになったあんなとえもの間に入り込んで両足を彼女達の脇に入れ両手で彼女たちの手を掴む。
「私も手伝う!!」
そこにさらに虹ノ咲が参入し、みらいの肩の上に着地してあんなとえもの片足2本を完全につかむ。
「「マッスルドッキング・セカンダリーサイドインパクト!!!」」
「こ、これは!!マッスルドッキングのカスタム版!?」
「「いっけぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」」
あんなとえもはフリーになっている手足でもがくが効果はなく、そのまま再び地面に叩きつけられた。今度は完全に二人の意識は消し飛び、ジュエルパワーのオーラも消滅した。
「……流石にしんどかった……」
みらいと虹ノ咲が下りると同時、今度こそ解説の3人からは試合続行不可能の合図が出た。
「そこまでです!!あんなちゃんえもちゃんWノックアウト!!よって準決勝第二試合勝者はダイヤモンドスマイルのみらいちゃんと虹ノ咲さんに決定しましたぁぁぁぁっ!!」
めが姉ぇのアナウンスに客席が沸く。
「ふう、」
みらいが脱力し、倒れそうになったところ虹ノ咲に支えられる。
「ありがと、虹ノ咲さん……」
「ううん。私の方こそありがとう。私にこんな楽しい勝負をさせてくれて……」
「……本当だね」
「え?」
いつの間にかえもとあんなが意識を取り戻していた。しかし勝敗がすでに決していることを察しているのかそこに戦意はない。疲れ切ってはいるが穏やかな表情でえもは続けた。
「すっごく楽しそうに笑ってるじゃん」
「よかったですわ。また新しいライバルに出会えて」
「……えもちゃん、あんなちゃん……」
「みらい、だいあ!あたし達の分まで決勝、楽しんできなさいよ!」
「情けない顔なんてしたら許せませんの!」
「「……うん!!」」
4人は顔を見合わせて、笑った。
「……いよいよ決勝戦ですね」
解説室から控室に戻る途中。あいらとなるが話をしている。
「色々あったけどまだ二日目なのよね」
「決勝戦は明日ですからこんな分厚い試合がたった三日のうちに繰り広げられたことになりますね」
「神アイドル超人としてデザイナーズ10として血が騒いできちゃうよ。飛び入りしちゃダメかな?」
「流石にそれは……あれ?」
なるが立ち止まる。続いてあいらも立ち止まった。前方。見慣れた顔がうずくまっていたからだ。
「……あいら~なる~……よかった……み、水~ご飯も~」