見出し画像

仮面ライダーS/L10話

Tale10:ここから始まるChronicle

・檀コーポレーション本社ビル。フロント前。
「……瑠璃さん遅いな」
「椎名にも相変わらず連絡が通じない。何かあったのか?」
将碁と武が受付のお姉さんの不審がる視線をものともせずソファでスマホをいじり倒している。やがて、
「遅くなったね」
いつも通り黒スーツの黎斗がやってきた。
「檀社長……」
「それじゃ社長室へ来てくれ」
「待ってください、まだ椎名が……」
「彼は来ない。本社でのトラブルがあってね」
「……」
二人は顔を見合わせてから仕方なく黎斗の後をついていく。エレベータに乗り、最上階にある社長室を目指す。
「瑠璃さんはいいんですか?」
「彼女には別の仕事を頼んである。先程の戦いの報告は聞いている。その際に車を故障させていたようだから新しいものを購入しに行ってもらっているよ」
「……」
「檀社長、あのサンダーウルフバグスターって何なんだ?」
武はやぶらから棒に尋ねる。
「瑠璃君から聞いてないかな?あれは自然発生したバグスターだ」
「……ならこれまで戦ってきたバグスターは自然発生したバグスターではないとあなたは認めるのですね?」
「……そのあたりも後で話そう」
やがて社長室。既に嵐山がソファに座っていた。
「……よく来てくれました。西武将碁さん、喜屋武まるたさん」
嵐山が立ち、隣に黎斗が座る。対面に将碁と武が座った。
「……檀社長、俺達に話って何ですか?」
「この話は本来君達から私達にすべき話だと思うのだがね。……瑠璃君から聞いているとは思うが今まで君達が相手してきた多くのバグスターは実は我々が作り上げた人造バグスターだ」
「それに関して質問は1つだけです。人造バグスターは誰かの感染を必要として誕生するものですか?」
「いいや。培養槽で作られる。誰の犠牲も作ってはいないよ」
「……しかし確かワイバーンバグスターの時に反社会党勢力の議員が襲われていました。他にもあの人造バグスターのために犠牲者は出ているのではないでしょうか?」
「それがどうした」
「……」
「君達仮面ライダーは強くならねばならない。そうして自然発生した高レベルのバグスターに立ち向かい、彼らを殲滅しなければ人類は救われない。そのための少数の犠牲に、文字以上の何の価値がある?」
「俺達は誰一人として犠牲を強いるつもりはありません。バグスターウィルスを根絶して人類を救うために仮面ライダーになったんです。それなのに俺達を強くするためって名目で犠牲者が出てしまっては意味がない!」
「じゃあどうする?君達がまともに戦った自然発生したバグスターはサンダーウルフバグスターだけだ。つまり3か月前の初戦と先ほどの2回だけ。その間に10体以上のバグスターとの交戦があったから君達は先ほどのサンダーウルフバグスターにも勝利できた。レベル3やレベル10の力も制御できるようになった。違うかな?」
「違います。レベル3はともかくレベル10は椎名によってもたらされたものです」
「違わない。西武椎名は偶然この件に巻き込まれた存在だ。当初は想定していない存在。確かにレベル10の力を複製できたのはいい誤算だったが所詮は誤算に過ぎない。衛生省にバグスター根絶のための役割を与えられたのは飽くまでも檀コーポレーションに過ぎない。西武財閥には出しゃばってもらっては困る。何が起きるか分かったものではない。結局西武椎名が出しゃばったためにグラファイトのようなイレギュラーが発生したのだから」
「そのグラファイトもレベル30の状態で仕向けたのはあなたのはずだ。西武財閥が出しゃばったのは確かかもしれないがだからと言ってあなたが完全に対象を始末するためにバグスターを用意して差し向けるだけの権限が与えられている筈がない」
「話をそらしてもらっては困るな」
「逸らしてなんていません。ただ檀社長、これまでの件をすべて話してください。そして来るべきバグスターとの戦いのために協力しましょう。それが俺達に与えられた使命であり、俺と武と椎名からの要求です」
将碁が言い切ると、黎斗は無言する。見かねたのか数秒してから嵐山が口を開いた。
「檀社長。彼らの戦力は必要不可欠です。当初の予定通りに彼らと再び協力しましょう」
「……嵐山本部長……」
嵐山の言葉が終わる。しかし黎斗はまだ無言のままだった。


道中。仕事を終えた雷王院が夕食を食べるために町を歩いていた。なるべくあの二人に会いそうにないラーメン屋を探すのが最近の日課だった。
「……ん?」
赤信号で停車している車。開いた窓からは血の匂いがした。
「……西武椎名……!?」
「……え」
後部座席に横たわる知人の姿を見て雷王院は言葉を発した。


檀コーポレーション。社長室。沈黙が続く空間。夕暮れのためカラスの鳴き声と押し黙らされながらも漏れる複数の吐息が沈黙をせかす。やがて黎斗は口を開いた。
「答えはNOだ!!」
「檀社長!?」
「貴様たちなど私にとっては人形同然!どうして人形に情けをかけなければならないのだぁ!?」
黎斗は咽そうになるほど大笑いしながら立ち上がり、デスクに戻ると何かをクリックする。
すると、壁が忍者屋敷のそれのようにひっくり返り1つの姿が出現した。
「それは……!?」
「エグゼスターだぁぁぁ!!!今までの貴様達の戦闘データをもとに生み出した仮面ライダーでもバグスターでもない全く新しい私の新兵器!!これを以てすれば誰の手を借りる必要があると言うのだぁぁっ!?」
「……檀社長……」
「一人も逃がしはしないぞ!!」
さらに黎斗は懐からバグヴァイザーとガシャットを取り出した。
「あれは!!」
「デンジャラスゾンビ!!」
「変身!!!あびゃぁぁぁぁぁ!!!」
黎斗は白と黒のライダーに変身を遂げた。
「さっきの仮面ライダー!?」
「まさか檀社長だったのかよ!?」
「今の私は仮面ライダーゲンム!!レベル10ゾンビゲーマー!!どんな幻でも夢でもこの私を消し去ることなど絶対に不可能!!」
叫びながら黎斗……ゲンムは走り出し、将碁と武に迫る。
「「スターライトドラグーン!!」」
「「変身!!」」
ゲンムの手が二人の首に迫る直前に二人はレベル10への変身を完了し、同時の前蹴りでゲンムを吹っ飛ばす。
「ぬぐおおおおえええええ!!!」
窓を突き破って10階の高さから地面に叩きつけられる。しかしそれを気にしていられない。エグゼスターと呼ばれた怪人がまっすぐこちらに向かってきていた。しかも突然にその姿がシマウマのような姿に変わり、加速した突進で二人をまとめて吹っ飛ばす。
「まさかスライドフォーミング!?」
「……だけじゃなさそうだ!!」
起き上がってから二人が見る。シマウマ型になったエグゼスターの額からハンドガンが生えて来て勢い良く火花を散らす。銃弾の斉射だ。華美に作られた社長室は瞬く間にスケルトンへと早変わりし、ソファもテーブルも粉々となった。
「……危なかった」
背中から煙を上げながらつぶやくのはリボルバーだ。咄嗟にレベル3の防御力をトレースして嵐山の盾になったのだ。しかし嵐山の方が巨体だったからか左腕から出血が見られた。
「大丈夫ですか……嵐山さん!?」
「だ、大丈夫です……それよりあのパソコンを……!あれには人造バグスター作動キーがあります!この状況であれを使われたら……!!」
「俺が行く!!」
セーブが走る。斉射を終えて人型に戻ったエグゼスターが今度は両手に二挺のハンドガンを握り向かってきたセーブを迎え撃つ。
「コピーの分際で!!」
胴体だけをスライムに変えて銃撃をすべて無効にしつつセーブはエグゼスターの背後に背中合わせで着地。同時にホースキックでエグゼスターを正面に蹴飛ばす。
「いいタイミングだ!!」
そこへリボルバーが走り込み、前面に倒れこんできたエグゼスターの腹に槍をぶち込み、貫通。天井にくし刺しにする。
「スターライトクリティカルフィニッシュ!!」
「FIRE!!」
「あ、馬鹿!!」
セーブが振り向くと同時、リボルバーのハンドガンから極太ビームが発射されてエグゼスターを余裕で消し飛ばし、そのまま衝撃は天井からビルの屋根を貫通し、爆発炎上。燃え盛る瓦礫が部屋の中に落ちて来て瞬く間に大火災を巻き起こす。
「……やべえ……」
「避難するぞ!!」
セーブとリボルバーが嵐山を担いで窓から飛び降りる。夕暮れとは言えまだ定時になっていない会社だ。火災が起きて中にいる人たちが慌てて避難する。しかし悲観的か、建物の崩落の方が早く見える。
「私の会社に何をする!?」
火災現場を見ていたら正面からゲンムが走ってきてセーブにドロップキック。
「ぐっ!!」
セーブが、建物から避難してきた人々の中に突っ込んでいき、複数人が巻き込まれて転倒する。
「す、すみませ……」
「私の社員に何をする!?」
謝罪のセーブ、その際に後ろを向いた瞬間にゲンムがセーブをドラゴンスープレックスで背後に地面に頭から叩き落す。
「ぐっ!!」
「セーブ!!こいつの言うことに耳を傾けるな!!偽善だ!!偽善でお前の注意をそらそうとしているんだ!!」
「私の会社を破壊した張本人が何を言うか!!」
セーブに声を飛ばすリボルバーの腰にゲンムのローリングソバット。
「ぐっ!!」
吹き飛ばされるリボルバー。しかしされながらハンドガンの射撃。
「!」
至近距離からゲンムの顔面に火花。
「このっ!!」
怯んだゲンムに背後からセーブがタックル。
「なら!」
「!」
吹っ飛ばされた勢いのままゲンムは起き上がったばかりのリボルバーの顔面にエルボータックル。
「ぐううっ!!このっ!!」
今度は吹っ飛ばされずやや仰け反りの体勢になりながらもゲンムの胸に発砲。
「ばびぼぉぉぉ!!!」
射撃に耐えながらゲンムがリボルバーのハンドガンを握る右腕を両手で抑え込み、力ずくでハンドガンをむしり取る。さらにそのまま低姿勢のショルダータックルを放ち、今度こそリボルバーを押し倒す。
「ぶううぅぅぅぅぅん!!!」
唸りながらゲンムは跳躍。10階の社長室に窓から入り込む。
「これは大事なものだ」
引き出しから1つのガシャットを出す。ついでに燃え盛る社長室ながらかろうじて起動していたパソコンで操作する。と、ゲンムと同じようにこちらに跳躍で来ようとしていたセーブとリボルバーの前に突然エグゼスターが出現し、ダブルラリアットで二人同時に地上に叩き戻す。
「こいつ……2体目か!!」
「まさか量産してるのか!?」
「その通り!!」
二人が着地すると同時今度はゲンムが窓から飛び降りて着地する。そしてベルトから取り外したバグヴァイザーをエグゼスターに叩き込む。
「!?」
驚く二人。やがて驚愕の意味は変わる。バグヴァイザーを打ち込まれたエグゼスターの姿が著しく変貌したからだ。それは今までに倒してきた人造バグスターを無理矢理1つに融合させたかのようなキメラエグゼスターだった。
「ぶっはっはっはっはっはっはっは!!!!実験は成功だ!!!実戦で実験が成功できるのは天才の証!!さあ!!こいつらを潰せ!!キメラエグゼスター!!」
「ixdyhnfcbbbbbbse;ohuiohnuihbuyiguy,lgiojnl.hui.tgf,ihlniybhuuilyhni.」
ゲンムが奇声を上げると、それ以上に音声とも知れない異音を放ちながらエグゼスターが走り出す。
「あれはやばそうだな……!」
「社長よりまず先にあいつを潰す!!」
二人が呼吸を合わせてエグゼスターに走り、タックル同士の形で激突を果たす。しかし吹き飛ばされたのは二人の方だった。
「レベル10が二人だぞ!?」
「これまでの人造バグスターのレベルの合計値だとしたら50くらい行ってるな……!!」
「馬鹿め!!戦いは算数ではない!!」
ゲンムがはしゃぐ。と、エグゼスターが12本の触手をまるでビームのように勢い良く伸ばし、立ち上がったばかりの二人を再び突き飛ばす。と、今度は二人も受け身を取ってから跳躍し翼を広げて空へと飛翔する。
「行くぞ!!」
リボルバーがセーブに槍を手渡し、セーブの両足を掴んでジャイアントスイング。槍を向けたままセーブはミサイルのようにまっすぐ投げ飛ばされてエグゼスターの胸に槍を突き入れる。
「poopo[[]]]][::l@:l[l@:lp@:@:\@@[ll@\lp@\lp@koojjhniuhhu.」
「リボルバー!!」
「ああ!!」
セーブが槍を使った梃子の原理でエグゼスターを真上に跳ね飛ばすと、リボルバーが高速で飛び回りながら二丁拳銃からの射撃を次々とエグゼスターに命中させていく。無理矢理融合させられていた関係からかどんどんボディが剥がれ落ちていく。
「とどめを!!」
セーブが再び飛翔した瞬間、
「刺すのは私だぁぁぁぁっ!!」
「シャカリキクリティカルストライク!!」
ゲンムが自転車の車輪のようなエネルギー刃を投げ飛ばしてセーブの両翼に命中。
「!?」
丸鋸のような回転斬撃を受けてセーブの両翼はついに背中から切断された。
「がああああああああっ!!!」
「セーブ!!」
リボルバーが見下ろす中、セーブは将碁の姿に戻って墜落。背中……肩甲骨のあたりから流血を出す。
「ばはははぁ!!そろそろ限界だよなぁ!?」
ゲンムが奇声をあげながら将碁に歩み寄る。
「……い、今の技……あの時、助けてくれた……」
「ああ、そうだ!まだ貴様たちに利用価値があったからな!!だがもうない!!だから始末するのだよ!!すべてはまだまだ私の計画通り!!実験の範疇に過ぎないのだから!!」
ゲンムは将碁のスターライトドライバーからジャンクセーバーのガシャットを引き抜き投げ捨て、代わりにハザードトリガーを差し込んだ。
「こ、これは……!!」
「さあ!!力を見せろ!!ハザードアップ!!!」
ゲンムがハザードトリガーのスイッチを押す。
「バグルアップ……ズンズガズンズガズンズガスターライトデンジャラスイッチ・オン!ヤベーイ!」
「うあああああああああああああああああああ!!!!」
「ぶべぼっはっはっはっは!!!!」
「セーブ!!」
黒い輝きを放ちながら将碁は再びセーブレベル10として立ち上がった。しかしその姿は漆黒。全身いたるところまですべてが闇のように真っ黒だった。
「…………」
セーブはすぐ後ろで馬鹿笑いしているゲンムに後ろドロップキックを叩き込み、吹っ飛ばす。
「ごべっはっひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ゲンムは建物の壁に頭から激突し、大爆発した。
「……何だ!?」
リボルバーがセーブの前に着陸する。と、
「……」
セーブは無言のままリボルバーに迫り、その首を右手で強く握りしめる。
「せ……」
何か言おうとするリボルバー。しかしその腹にセーブは膝蹴りをぶち込んだ。
「がばっ!!」
一発で白銀の装甲に亀裂が走る。2発目でリボルバーの体が10メートル以上吹き飛ばされ、変身が解除される。
「……な、んだよ……」
吐血しながら武はこちらに迫りくるセーブを見た。
「ど……し……」


闇色に染まったセーブが倒れて吐血している武に迫る。周囲には異音をばらまくエグゼスター、炎の中を逃げ惑う人々、反対側の歩道から小笑いしながらそれを眺めているゲンムのみ。しかし1つの足音が静かに近づいていた。否、響いたのは足音だけじゃなかった。
「トリニティセレクト!!」
電子音。しかし今までのどのそれとも違う。
「ライトニング!!シングルオン!Are you Ready!?」
「……変身」
「孤高のサンダーボルト!!ライトニング!!イイイイエェェェェェェェイッ!!!」
「ん?」
ゲンムがその音に振り向いた瞬間、その顔面がマッハ3でぶん殴られ、まっすぐエグゼスターめがけて飛んでいく。
「な……だ……」
武が音のした方を見る。そこには今まで見たこともないライダーが立っていた。全身漆黒。しかしところどころ緑や紫のラインが走っている。そして何よりガシャットではないものがベルトに刺さっていた。その姿に虚憶が疼いた。
「……仮面ライダーライトニング……!?」
ライトニング。そう呼称された仮面ライダーは武を一瞥してから走り出し、こちらに振り向いたセーブのベルトに刺さったハザードトリガーにパンチをぶち込む。
「!?」
「……」
ライトニングの拳の一撃はハザードトリガーを粉砕し、セーブの変身を解除する。
「……ライト……にん……」
「……」
ライトニングは気絶して倒れ掛かった将碁をその胸で受け止め、武の傍に寝かす。
「ぎざばぁぁぁぁぁぁ!!!」
奇声。見れば異形だったエグゼスターをも吸収したのか、化け物同然の姿となったゲンムが8本の腕を振り回していた。
「ライトニングぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
ゲンムがまっすぐライトニングに迫る。しかしライトニングはその突進を片手で受け止めると同時にもう片方で作った拳をゲンムの胸にぶち込む。
「ご……お……おおおお……」
ライトニングの左腕はゲンムの胸を貫通していた。
「……」
ライトニングはその状態のままゲンムのベルトからガシャットを取り外す。
「何を……あ、うああああああああああああ!!!」
胸を貫かれたまま変身が解除され、黎斗の姿に戻った瞬間周囲には鮮血がほとばしる。
「……仮面ライダーとしては不死身でも所詮お前はただの人間だ」
「ラ……イト……ニングゥゥ……」
ライトニングが腕を引き抜くと、黎斗は自ら生み出した血だまりの中にうつ伏せに倒れた。
「……」
ライトニングがデンジャラスゾンビのガシャットを踏み砕くと、見上げた空に異変が起きる。
「ようやく会えたね、仮面ライダーライトニング」
「……キングバグスター……」
「ご名答」
空の一角に巨大なMの文字が出現しそこから青年の声が響く。
「我々バグスターはこの戦争(ゲーム)に君を招待するよ」
「……戦争だと……」
「そうだ。君とバグスターの生存戦争(サバイバルゲーム)さ。僕を倒さない限りバグスターは無限に生まれ続ける。僕と戦いたいのなら7人の上級バグスターを倒さないといけない。再び君と会えてゲームが出来る日を楽しみにしているよ」
そこまで告げると声もMの文字も消えた。ライトニングはしばらく空を見上げていると、やがてその場から去っていった。
「……」
戦いの終焉を見極めた嵐山はマンホールの下から姿を見せる。その場に立っているものは他にいない。
「……救急車を呼ぶか」
スマホを操作しながら嵐山は黎斗の傍に歩み寄り、血塗られた懐からガシャットを盗み出す。
「……安心して眠っていろ。仮面ライダークロニクルは私が完成させてやる」
それだけ言って嵐山は救急車が来る前に黎斗をマンホールの下に捨てた。