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仮面ライダーS/L30話

Tale30:まとうはRegina

・CR。雷王院や衛生省も交えた緊急会議が行われた。議題はグルーラーやビルゴサイトだ。
「データを解析するにグルーラーはハザードスマッシュに極めて近い存在であると見受けられます。ただ、これまでのスマッシュやハザードスマッシュは地球人か宇宙人化の差異はあれど人間ないしは人型を改造して誕生したものであるのに対してグルーラーは非人型の宇宙生物を改造した可能性が高いようです」
椎名がレポートを読み上げればその場にいた将碁達はもちろんリモートで繋いだ衛生省の役員達も驚きの反応を示す。
「雷王院君、何か心当たりはあるかい?」
「心当たり?」
「そう。旧世界でも非人型のスマッシュがいたとか」
「……いや、どうだったか。ただスケールがスケールだからエボルトは宇宙怪獣を相手にしていた可能性はあるな」
「宇宙怪獣?STMCかい?」
「あそこまでじゃないがまあ、普通に宇宙に住んでいる巨大生物の事だ。俺も直接見たことがあるわけじゃない。宇宙連合達の話で少し聞いたことがあるだけだ。だとしたらエボルトが宇宙怪獣を素材にスマッシュを作ったとしてもおかしい話ではないだろう」
「巨大って言う割には3メートル級だったけど?」
「……仮説だがあまり大きなサイズの改造はエボルトでも不可能と言う可能性がある。今回たまたま発見した小型の宇宙怪獣を素材にしたんじゃないか?」
「……じゃあ数はそんなにいないわけか。まあこちらはそこまで脅威じゃなかった。人的被害はともかく僕達が協力すれば勝てない相手ではない。問題なのはビルゴサイトだ。雷王院君、何か見解は?」
「対エボルト用に連合が作り上げた人造ライダー兵器だな。以前にも言ったかもしれないが旧世界でエボルトはライダーシステムを完成させてその力で数々の惑星を破壊した。つまり現実のライダー1号はエボルトにあたる。そのエボルトの技術を解析して地球では檀黎斗をはじめとした科学者たちがフルボトルやライダーシステムを開発して仮面ライダーを完成させた。それを連合がより高い技術で且つ量産型として開発したのがビルゴサイトだ。それこそSTMC規模で生み出されたがほぼすべてがエボルトによって滅ぼされたと聞いている。檀黎斗がさっき言ったように地球上の技術でこれを開発、複製するのは不可能だ」
「……そんなにすごいものなのか?」
「地上から3G程度までなら余裕で大気圏を突破して宇宙にたどり着き、重力兵器及び反物質兵器を内蔵することで一撃で地球と同規模の惑星なら破壊が可能なうえそれと同じ威力の攻撃を100発までなら耐えられる強度。積まれたAIはスーパーコンピュータの50倍の精度を持ち1秒で5000以上の戦術パターンを計測、対処できる。これらの全てを2メートル以内の人型に収められ年間数兆体以上製造されたらしい」
「……何でそんな化け物がいて地球の技術でエボルトの迎撃が出来たんだ?」
「逆だ。ビルゴサイトが数年にもわたってエボルトの戦力を削り続けてそこそこ疲弊した状態で地球にやってきたからこそ対処が出来たんだ。それに桐生戦兎によって奴の弱点が発見されそこを集中的に攻撃することで奇跡的につかめた勝利だ。それでも完全に撃破には至らず封印するのが精いっぱいだった」
「……そこまで前大戦で役に立ってくれた量産型兵器が何故か今地球にいて僕達に襲い掛かってきたわけだ。ひょっとしなくても1体だけが相手だからって脅威じゃないわけじゃないよね?」
「もちろんだ。クロノスのポーズに対応できないようだがそれ以外の性能はクロノスやデーモンと互角以上だと言っていい。さっきも言ったが、一撃で地球を破壊できる武器を持っているんだ。おまけに目的も不明。正直すぐに動いた方がいいと思う」
「……具体的に何か案はあるかな?」
「お前達も見たようにクロノスのポーズには対応できていない。だからポーズで止め、発見し、全火力を集中させて破壊する。尤もこれは確実だがしかし決して効率がいいとは言えない作戦だ」
「……理由は?」
「まず相手の居場所が分からないと言うのとさっきも言ったように奴は自由に惑星と宇宙とを移動できる。いくらクロノスでも宇宙空間には対応していないし手段も限られている。地上や宇宙にいるとも限らない。海底に身を潜めているかもしれないしどこかの山の中で待機しているかもしれない」
「……それでも確実と言えば確実なのはそれしかないか。極めて非効率的だけれども」
「幸い、セーブのレベル50ならポーズの中でも動ける。つまり手数は1つじゃないわけだ。そいつがタブレットで何か索敵に有利な技を使えば案外簡単に終わる話かもしれない」
「……けどポーズで止めるって事は一切支援を受けられないって事だよな」
「そうなるな。ビルゴサイトを破壊するまでずっと止まった時間で動き続けることになる。作業時間がどうなるのかも分からない。1時間や2時間ではまず終わらないだろう。場合によっては日にちや一週間単位になるかもしれない」
「……それでも地球を守るために必要なんだよな?」
「ああ、必須だ」
「……なら俺はやる」
「……私は気が進まないんだがね」
正宗が葉巻を吸う。
「いや、あんたを野放しにするわけにはいかない」
「?」
雷王院は正宗からガシャットを奪うとそれを武に渡す。
「お前がやれ」
「……俺が?」
「正直言って檀正宗以上に信用ならないし不安で仕方がないが、ただのバグスターではないゲムデウスバグスターのお前ならいくらでも体力が回復する。何時間でも何百万時間でも動ける。寿命もない。将碁はそうはいかないだろうからもしも将碁がダウンしてもお前が後を継いで続行できる。……この任務、お前に出来るか?」
「……俺だってお前の事は信用できないし命令されたくもなければ同じ空気も吸いたくない。報酬にその頭ぶち抜きたいもんだ」
「……」
視線が交差する数秒。
「……だが、まあ。地球のためだからな。仕方ないから引き受けてやるよ。精々時間の止まった世界で流れ弾食らわないように神様にお祈りでもしてるんだな」
「……ふん、いずれお前を部屋の隅でガタガタさせてやる」
武は奪い取るようにクロニクルガシャットを手に取る。
「将碁、やるか」
「……事故でも駄目だからな?一応地球にまだ必要みたいだし」
「はいはい」
言いながら二人がガシャットのスイッチを押す。
「ネオスターライトドラグーン!!」
「仮面ライダークロニクル」
「「変身!!」」
「胸に秘めた熱い思い!!感じるフリーダム!!アイムアレベル50サブリメノンゲーマー!!!」
「今こそ刻は極まれり!!」
「ポーズ!!」
変身が完了すると同時に世界から時間が消え去り、CRにはセーブ・サブリメノンゲーマーとクロノスが姿を見せた。
「……行くぞ」
「ああ」
しかし二人は動かない。二人でタブレットに何を映してどの能力を得るか考えるところから始めることにしたのだ。
結果、
「六道仙人!!」
結果六道仙人の姿と力を使って地球上のすべての生命反応、熱源反応を把握。
「……ここか!!」
元の姿に戻ってからセーブ先導でクロノスが後を追いかける。
「……そんなことまで出来るのか」
その後止まった筈のCRで何者かの呟きが聞こえた。


旧仙台市。かつて起きた大事変により現在は地図から消されている町。あれから20年以上経過した今でも封鎖されているそこへ二人がやってきた。その中心地。そこにビルゴサイトは直立不動で存在していた。
「見えた!」
セーブがタブレットを操作する。
「一撃で片を付けてやる!!ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォー!ヘル・アンド・ヘブン!!」
ガオガイガーの力を発動させその両手に尋常でないエネルギーを纏って移動エネルギーのままビルゴサイトに突っ込んでいく。しかし、
「……え!?」
セーブが接近すると、当り前のようにビルゴサイトが動き出しカウンターの飛び廻し蹴りがセーブの顔面に炸裂する。
「馬鹿な!?動けないんじゃなかったのか!?」
クロノスの足元に転がってくるセーブ。それを飛び越えてクロノスが走り出す。
「……」
ビルゴサイトはクロノスのパンチを受け止めてから計測を開始する。
「それはさせない!」
セーブが再びタブレットを操作し、
「ウルトラマンマックスの力!ギャラクシーソード!!」
マックスの姿に変わり、全長数キロメートルものバカでかい光の刃をビルゴサイト向けて振り下ろす。それを見たビルゴサイトはクロノスを蹴り飛ばしてから光の刃を両手で受け止める。
「おいおい、完全に受け止めてやがるぞ……!?」
「けど動きも止まってる!!」
クロノスが走り、ビルゴサイトの背後に回り込みその背中を殴りまくる。しかし10秒以上殴っても効果はないように見えた。
「どんなに硬いんだよ……!!」
「……」
やがてビルゴサイトは受け止めていた光の刃を片手で殴り砕き、振り返るとクロノスを一撃で殴り倒す。
「リスタート」
「がはっ!!」
ポーズが解除され、クロノスが変身解除され武が廃墟の中を転がりまわる。
「武!!」
叫ぶセーブへビルゴサイトが走ってくる。ギリギリ対応できる速度だったがセーブはぎりぎりで対処が遅れたせいで飛び蹴りをもろに食らってしまい、タブレットを落としてしまう。
「やっぱり慣れないのは駄目だな……!」
武が立ち上がりガンガンリボルバーのガシャットを出す。
「ガンガンリボルバー!!」
「変身!!」
「ガンガンバキュンバキュン!!ガンガンズギャンズギャン!ガンバズギャットリボルバー!!!」
「行くぞおらぁ!!」
リボルバーになってハンドガンを連射しながら接近。が、ビルゴサイトは見もせずに射撃をその背中で受け止めつつ接近したリボルバーを後ろ蹴りで吹っ飛ばす。
「な、何だこいつ……滅茶苦茶強い……!」
「……やっぱ使うしかないか!」
セーブが腕時計に触れる。
「Acceleration!」
「行くぞ!!」
「Believe in Nexus!!」
サブリメノンアクセラレーターへと変身し、一瞬でビルゴサイトを殴り飛ばす。空中で体勢を立て直したビルゴサイトの顔面にセーブのキックが炸裂、スマッシュされたピンポン玉のように勢いよく地面に叩きとされ、2度バウンドしてから着地するビルゴサイト。
「……こうなればもう安心だな」
リボルバーが警戒しつつも息をつく。と、
「武君!聞こえるか!?」
「椎名か。どうした?こっちはポーズは解除されたけど将碁が押してるぞ」
「スマッシュ反応がある!昨日の奴だ!」
「へ?」
直後、まるで竜巻のようなものが地面から発生して廃墟が一瞬で消えていく。そして地面の中からグルーラーが姿を見せた。しかも昨日のと違って背中にキャノン砲が生えていた。
「……パワーアップしてるぞあいつ」
「今援護に向かってる!何とか持ちこたえていてくれ!!」
「わ、分かった!」
リボルバーがグルーラーの口に気を付けながら接近。すると、グルーラーは背中のキャノン砲から何か発射する。それは先ほど吸い込まれた廃墟が超圧縮されたものだった。
「吸い込んだものを砲撃として吐き出せるのかよ!!」
ギリギリで回避するリボルバ-。しかし、
「うわっ!?」
「やべ!」
振り返ればセーブに命中してしまっていた。高度を落とすセーブ。そこへビルゴサイトが突進し、ノーガードの腹に膝蹴りを叩き込み、そこから首を両手で締め上げる。
「ぐううううううううううううううう……!!」
「将碁!!」
走るリボルバー。すると、急に逆方向に引き寄せられた。グルーラーが吸い込みを始めたのだ。
「このタッグ、やべぇ……!!」
リボルバーは一瞬考えてからガシャットのスイッチを押す。
「キメワザ・ガンバズクリティカルバースト!!」
「FIRE!!」
リボルバーは必殺の一撃を発射する。それはビルゴサイトの両手に命中。衝撃にセーブの首を絞める手が外れ、逆にそれをセーブが掴み、
「てやーりゃああああああああああああああああああ!!!!」
ジャイアントスウィングでビルゴサイトをグルーラー向けて投げ飛ばす。リボルバーが完全に吸い込まれる前にビルゴサイトがグルーラーの中に吸い込まれ、突然吸引が収まる。
「な、何だ!?」
二人が見て数秒。悶えるグルーラーの背中をぶち抜いてビルゴサイトが出現する。
「……あれから脱出できたのかよ……!?」
倒れるグルーラーを見もせずにビルゴサイトが突進。ラリアットの一撃でリボルバーを吹っ飛ばし、再び変身を解除させる。
「つ、強すぎる……」
「くっ!」
セーブが急行して武に追撃しようとするビルゴサイトの手を止め、背負い投げ。
「もうあまり時間がない……!」
焦りながらもビルゴサイトへの攻撃を続ける。流石に強度を誇るビルゴサイトもこれまでの攻撃を受けた事でその装甲には幾度も亀裂が走っている。僅かに煙も出てきている。限界は確かに近いようだ。しかし、異変は起きた。倒れていたグルーラーがまた動き出し、吸引を始める。セーブとビルゴサイトはほぼ同時ないが生身の武はものすごい勢いで吸われていく。
「武!!」
セーブは助けようとするがビルゴサイトのサブミッションがそれを遮る。その時だ。
「何とか間に合ったか」
椎名の声。それは上空のヘリコプターから。
「じゃあ雷王院君。実験を始めようか」
「ああ。まさかこんな形になるとはな」
ドアを開けて姿を見せる雷王院。その腰には見たこともないベルト・V3ドライバーが巻かれていた。
「行くぞ」
「ライトニング!!バージョンティガ!!Are you Ready!?」
「変身!!」
「不死身のサンダーボルト・ライトニングスリィィィイイイイェェェェェェイ!!!」
「え……!?」
驚きで見上げるセーブ。直後、赤い姿のライトニングが降ってきてグルーラーを拳の一撃でぶっ飛ばす。
「まさか、ライトニングの強化形態……!?」
「そう。これが仮面ライダーライトニング3だ!!」
着地したライトニングが武を拾い上げてそのまま上空のヘリコプター向けて投げ飛ばす。
「あの野郎絶対しめるぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「っと!」
椎名がギリギリで武をキャッチしてヘリコプター内に引き寄せる。それを確認してからライトニングがグルーラーに向き直る。
「ストラーダ!!」
ライトニングが言うとその手に銀色の槍が出現。さらに背中にも純白のマントが出現する。
「……ライトニング3ってそう言う事かよ」
「無駄口するな。お前はそいつに集中しろ」
四足歩行の背中に大穴が開き、四肢の全てがひん曲がった状態ながらグルーラーは起き上がり、再び吸引を始める。対してライトニングは槍を構えそれをグルーラー向けて投げ飛ばす。
「はあっ!!」
投げた槍は瞬く間にグルーラーに吸い込まれ、数秒後に激しい迅雷を伴ってその体内を突き破ってライトニングの元に戻ってくる。
「Ready Go!!ボルテックフィニッシュ!!」
「ぐおおおおりゃああああああああああああああ!!!」
のたうち回るグルーラーに突っ走り、巨大化した槍で串刺しにする。次の瞬間、一縷の雷鳴が轟き、グルーラーは消し炭となった。
「……チャージは比べ物にならないようだな」
それを確認してからセーブは残りわずかな時間だがビルゴサイトに突進を開始。ビルゴサイトもそれを予測して行動を開始。
「はああああっ!!!」
セーブの音速を超えたキック。それを受け止めたビルゴサイトがその足の関節を決める。が、骨がへし折られるより先にセーブはもう片方の足でビルゴサイトを蹴り飛ばし、カナディアンバックブリーカーの姿勢で飛翔。
「てやーりゃああああああああああああああああああ!!!!」
そして上空2000メートルからマッハ50の速度でキン肉ドライバー。速度のままに勢いよくビルゴサイトを頭から地面に叩きつければ爆音とクレーターが生まれる。
「……」
ボロボロになりながらもビルゴサイトが立ち上がった時にはセーブはガシャットのスイッチを押していた。
「キメワザ・ヴィクテムクリエイションバースト!!!」
「てやーりゃああああああああああああああああああ!!!!」
無数の光の翼を広げ、一瞬で100体を超えるほどに分身。それらが一斉に光り輝く拳を亜光速でビルゴサイトに叩き込んでいく。
「117、2169、99999発目ぇぇぇぇぇっ!!!!!
99999発の拳を叩き込め終わると、セーブがサンクチュアリゲーマーの姿に戻り、直後ビルゴサイトは倒れて大爆発した。
「……ん?」
セーブが振り向く。一瞬だが爆発前にビルゴサイトが何かを空に飛ばしていたように見えたのだが様子を見ても何もない。恐らく破片か何かだろう。
「……終わったようだな」
セーブが将碁の姿に戻り、ライトニングの傍に歩み寄る。
「……ああ」
「……どうした?初変身で体調でも悪くなったのか?」
「そんなところだ。今日はこのまま休ませてもらいたい」
「……あ、ああ」
ライトニングが雷王院の姿に戻り、二人はともにヘリに乗り込んで東京へと帰っていった。

その夜。
「……」
深夜3時過ぎに雷王院が外に出る。しばらく歩き、やがてちょっとした広場にやってくる。そこに
「……」
ビルゴサイトが立っていた。
「……」
「ライトニング・バージョンティガ!!Are you Ready!?」
「変身!」
「不死身のサンダーボルト!ライトニングスリィィィィィイイイイェェェェェェイ!!!」
変身を完了し、ビルゴサイトへと殴りかかる。
それから1時間後。騒ぎを受けて駆け付けた椎名達の前には血だらけで倒れる雷王院の姿だけがあった。
「……な、なにがあったんだ……!?」
椎名はとりあえず雷王院をCR配下の病院へと運ぶことにした。