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とある3人の話

どうも、黒主零です。早速ですがヘッダー画像はメルティックスターですが今回のお話はメルティックスターはおろかアニメの話ではありません。

諸事情につき今回の登場人物は3人なのですが以下3人に代替して語らせていただきます。それぞれ元ネタとはあまり関係ありません。

キン肉マンゼブラ:技巧の神に愛されれているが1億パワーはもらってない。完璧超人。超人強度は1300万パワー。キン肉族3大奥義マッスルインフェルノは使えません。でもその技巧は健在です。ラージナンバーズではない、野良の完璧超人です。アイドル超人と戦ったことはないがアイドル超人と戦った奴と戦ったことは何度かあるが、勝率は低い。

キン肉マンマリポーサ:飛翔の神に愛されているが1億パワーは(以下略)。正義超人。超人強度は90万パワー。キン肉マンによる本物のマッスルスパークを受けて正義超人とは何かに目覚めました。ビッグボディが誘発されるようなパワフルな技を得意としていたが……。

キン肉マンビッグボディ:強力の神に愛されているが1億(以下略)。正義超人で超人強度は120万パワー。アイドル超人と戦ったことは一度もない。しかし正義超人としては破格の超人強度から勝率はそこそこ高い。実は素人だった時にマリポーサから戦術を学んでいる。

では、以下から物語を開始します。

・ある日のことだ。

「マリポーサ、なにをしている?」ビッグボディは声をかけた。

「ああ、」マリポーサは木人を相手に何か奇妙な技を仕掛けていた。既に何度か試されているのか壊れた木人がいくつも足元に転がっている。

「技を開発しようとしていたんだ」

「技?」

「そうだ。……マッスルスパークを」

「……マッスルスパーク……。お前が前にキン肉マンに使われて負けたあの技か。確かに悪くない技かもしれないがキン肉マン以外にあの技を完成させたものはいないって噂だ。俺だってそうそう出来ないだろう。……その技の完成のために先週の大会には参加しなかったのか?」

「……それだけが原因ではないがな」

「……じゃあほかにどんな原因があるというんだ?」

「……ビッグボディよ、お前は最近の超人レスリングで違和感を感じないか?」

「違和感?」

「そうだ。確かに私たちは超人だ。だから常人には出来ないド派手なプロレス技を使う事が出来、多くはそれを必殺技(フェイバリット)として1度技を掛けたら最後、確実に勝利へと試合を運ぶ」

「……それの何が問題なんだ?それぞれ自慢できる、誇りに持ったフェイバリットを磨きに磨いて、抵抗させずに相手を叩き潰す。それを互いに仕掛け合う。それが超人レスリングと言うものだろう」

「だがな、ビッグボディ。超人レスリングと言うのは元々古代ギリシャの人々が行なってきた互いに相手を高め合うためのものだ。相手をリスペクトし、自分を鍛える。心身ともに精進するためのものだ。当時すでに軍隊やパンクラテオンと言った相手を殺すためだけの体術があったにも関わらず、レスリングは相手を殺さない。その精神から現代まで多くの武術が生まれたと言っても過言ではない。それに我々正義超人はそれこそ互いに何度も試合を重ねて技を磨き、体も心も鍛えて世界に混とんをもたらす悪魔超人と戦うためのものとして日々邁進しているのだ。単純な日々の刺激だけでは来るべき実戦で足が竦むとして時折大会と言うものが行なわれているが、超人レスリングは、やはりそう言うものではないのだと私は思う。だから最近の文字通り相手の息の根を止めてでも必ず叩きのめすようなド派手な技を主体とし、選手はもちろん観客も超人委員会でさえもそれを推奨している。……私にはどうしてもそれが受け入れられないのだ」

「……お前の言いたいことは分かった。それに対して言いたいことも山ほどある。で、しかしどうしてマッスルスパークに発展するんだ?」

「受けてみてわかったがあれは確かに決まれば一撃で相手を戦闘不能にする技だ。だが決して相手を殺すことのない技なんだ。自らの全てをかけて、相手を労り、決して殺すことのない技。その在り方は本来のレスリングと言うものと同じなのではないかと私は至ったのだ」

「……よくわからない話だ」

ビッグボディはため息をついた。そこで、

「どうした?何をしている?」

「ゼブラ!」

ゼブラがやってきた。

「木人1つ借りるぞ」

言うや否やゼブラは木人を空へと放り投げると、自身も舞い上がる。そして木人の首に両足を巻き付かせて風車のように高速回転。そして木人をうつぶせにするように地面にたたきつける。

「おお!!」

「……足しか使わない技・アステカセメタリーとでも言ったところか。イメージ通りではなかったがまあ完成と言ってもいいかもな」

「……いい技だ。うつぶせにたたきつけるから背骨をへし折って相手を死なせてしまう事もない。それでいてみている者を圧倒するような流麗な技。これぞ正義超人にふさわしい。やはりゼブラは一味違うな」

「……ただのネックシザースだろうに。技の完成度は俺も認めるが」

「よしてくれ。俺は不甲斐ないただの完璧超人だ。お前達のような正義超人とは違うんだ。それよりマリポーサ、ビッグボディ。委員会から依頼が入った。辺境で悪行超人が暴れているそうだ。今から退治に向かってほしい。一緒に来てくれるか?」

言葉はなく、二人はうなずいた。

・辺境の町。

「ツァァァァ!!」

ゼブラが相手の背後に回り込み、タックルで押し倒してからボストンクラブで相手の両足をへし折る。

「オラオラオラ!!」

ビッグボディが相手を剛腕で持ち上げて真上へと投げ飛ばす。

「メイプルリーフクラッチ!!」

そして相手の後ろからまたがり両足を両脇に入れてクラッチ、両手で相手の両腕を掴み上げてクラッチ。その状態で上空から地面に激突。相手の両手足と腰を粉砕する。

「くっ!!」

マリポーサは相手の打撃をひたすらガードする。それはキン肉マンが得意とする肉のカーテンと言う防御法だ。やがて相手が殴り疲れ、拳を痛めて攻撃を休ませると同時にマリポーサは巴投げの要領でブリッジした自身の腹の上に乗せ、

「はっ!!」

腹筋の力で相手をそのまま真上へと吹っ飛ばし、マリポーサも追随。空中で数度腹筋同士を激突させ、丹田から衝撃を全身に流し込むことで身動きを封じる。そしてある程度の高さまでくると、相手の背後に回り込み相手の左肩にまたがり、右足の膝裏で相手の首をホールド。

「正義超人究極奥義マッスルスパーク!!」

丹田からの衝撃と首絞めによる酸欠から行動不能になった相手と背中合わせになり両手で相手の両手首をつかみ、両足同士で絡み合わせ、相手の体をコの字にホールド。そのまま高高度から地面に激突。

「がはっ!!」

相手に強制的に四つん這いさせるように二人分の体重を乗せて落下。落下の衝撃が両手足・両肩・腹部に伝播し、衝撃の中心点になった腹筋が崩壊。マリポーサが相手から飛び降りると同時に相手は吐血して倒れた。

「……終わったな」

「マリポーサ、今のはマッスルスパークか?」

「ああ。キン肉マンのそれと比べたら少し形は違うが私はこれでいいと思う。相手も死んでいない」

「……死んでいないのはほかの二人もそうだ。だが、殺さない技と言うのはまあ理解できたな。まさか手足も腰もおらずに相手を絶対に戦闘不能にするとは思わなかったがな」

「ビッグボディ、これが私がマッスルスパークで求めたものなのだ」

3人は悪行超人を縄につけて委員会へと送り届けた。

・翌週。久々に3人は3人そろって大会に出場した。まず最初に戦ったのはビッグボディだった。

「行くぞ!!」

ビッグボディが相手を剛腕で投げ飛ばし、跳躍して追随。空中で足を首にかけて強制窒息。そこから背中合わせにして相手をコの字に固めた。

「あれは!!」

「マッスルスパークだ!!」

マリポーサが見る前でビッグボディは技を完遂させた。マリポーサのそれをはるかに超える威力で相手が四つん這いにマットにたたきつけられる。

「がふっ!!」

「ん、少し技がずれたか?」

ビッグボディが飛び降りて相手を見る。肘と膝が立った状態でマットにたたきつけられていて、両肘と両膝が粉砕骨折していた。しかし吐血はなく意識はないが呼吸はしている。

「死んでないならOKだ」

「まさかそんなことがあるか!!」

マリポーサが声を上げた。

「何?」

「いいかビッグボディ!最初のブリッジをカットしてはいけない。あれで相手の腹筋を弱める!その後の首絞めでも意識は奪わない!最低限の意識を保たせた状態でマッスルスパークを決めないと今みたいに相手の両手足を折ってしまう!それにあらかじめ腹筋を弱らせておかないと落下の衝撃が腹筋に集約しない。場合によっては腰や背骨に強いダメージを与えてしまうかもしれないんだ!こんなものはマッスルスパークなんかじゃない!!」

「……人の技にケチつけるのが正義超人の在り方だというのか?」

「今の技で正義超人を名乗ってほしくはない!お前の乱暴なだけのメイプルリーフクラッチと何が違うというのだ!?」

「……3回戦で待ってる。そこでどっちがまともな正義超人なのか決着をつけよう」

「……いいだろう」

そうしてビッグボディの代わりにマリポーサが相手とともにリングに上がる。

「とうっ!!」

試合開始早々スライディングで相手の足をすくい、前に倒れた相手を腹筋で真上に吹き飛ばす。マリポーサも上昇して空中で何度も腹筋同士をぶつけ合わせて相手の腹筋の耐久を弱める。が、

「げっげっげっ!」

相手は腹筋を捨て、マリポーサの首にクロスチョップ。

「くっ!」

「このまま落としてやる!!」

そのままマリポーサの首を絞めにかかった。が、マリポーサはその手を払い、相手の腹筋に膝蹴りを打ち込み、怯んだ相手の背後に回り込んでから右足で首を絞める。

「行くぞ!!正義超人至高の奥義・マッスルスパーク!!」

コの字に固め、相手をマットの上にたたきつける。リング全体が揺れるほどの衝撃。四つん這いとなった相手の両手足を貫く威力。しかしその威力が腹筋に到達した時点で相手は吐血せず、代わりに腹筋が破けて大量の血が溢れ出す。

「な、何だ!?」

慌ててマリポーサが飛び降りて様子を確認する。計算では腹筋同士の激突だけでここまで腹筋が崩壊することはない。落下の衝撃で初めて破ける程度のものだが、しかし今眼下には完全に破壊された腹筋とそこから流れ出る血が見える。

「……マリポーサ、やっぱお前は俺以上に強いよ」

リングの外からビッグボディ。

「途中までは完ぺきだった。だがあの時の膝蹴り。あれが鋭すぎてお前の計算を狂わせたんだ」

二人の前で対戦相手は病院に運ばれていった。

「……何やってるんだか」

それを遠巻きに見ながらゼブラはキン肉バスターで相手の下半身の筋肉を破壊した。

・そして3回戦。マリポーサとビッグボディがリング中央で激突する。

「はっ!!」

すぐさまマリポーサは巴投げの要領で自身を下へ、ビッグボディを上に持ち込ませ腹筋で相手の腹筋と丹田を殴り飛ばす。そしてそのままマリポーサは舞い上がり、再びビッグボディの腹筋へ腹筋をぶつけにかかる。しかし、マリポーサの腹筋と激突したのはビッグボディの腹筋ではなく拳だった。

「ぐふっ!?」

「俺が相手だからって力みすぎたようだな。いつもより威力が強すぎて俺が高く飛んじまった。だからお前の第二撃が届く前に俺は体勢を立て直せたんだ。そして今から俺は俺のやり方でお前を倒す」

空中で停止したマリポーサの顔面をわしづかみ、そのまま米俵を担ぐようにマリポーサの体を仰向けに自身の肩に打ちのめす。そこから半回転してマリポーサを下に、自身がマリポーサの両足をわきに挟み腰にまたがり両手を掴んでホールドする。

「お前に侮辱されたこの技でお前を砕く!!メイプルリーフクラッチ!!」

両手足をクラッチされた状態でマリポーサは高高度から地面にたたきつけられる。落下の衝撃でマリポーサの両手足と腰の骨が粉々となる。

「……ん、」

しかしビッグボディは違和感を感じて飛び降りる。見れば手足がひん曲がって倒れたままのマリポーサの体が淡く光っていた。

「……こ、この技は……駄目なんだ……」

「馬鹿な!!意識があるのか!?」

驚くビッグボディ。その眼前ではひん曲がった筈の手足が元の関節通りに動き、マリポーサがゆっくりと立ち上がってきた。

「確かにこの技は強力だ。悪魔超人相手にだって十分通用する。それを磨くのは悪い事ではないかもしれない。だが、仲間を相手に使っていい技ではない……!私たちは殺し合いをしているわけではない……!!」

立ち上がったマリポーサはこれまで以上のスピードで突進。反応できないビッグボディをリングロープにまで弾き飛ばし、真上にバウンド。追随したマリポーサがビッグボディの真下に到着。

「またマッスルスパークか?諦めろ!お前も俺と一緒で技より力!マッスルスパークなんてあいつにでも任せておけよ!」

「そうかもしれない。だが、今のお前に分からせるためにはこの技しかない!!」

そうしてマリポーサは技を続ける。しかし放ったのは腹筋ではなくドロップキック。腹筋同士を合わせた時よりはるかに強烈なダメージがビッグボディの腹筋と丹田を襲い、先ほど以上に高く吹っ飛ぶ。

「だから力みすぎだと……」

「いや、十分だ」

ビッグボディ、迎撃のパワーブロー。しかしマリポーサはそれを予想していたように両足の間でそれを受け止めながら両手の掌底でビッグボディの顎を穿つ。

「うぐっ!」

怯むビッグボディ。その間にマリポーサはビッグボディの背後に回り込み素早くビッグボディの両肘の関節を外す。そして背中合わせになり両足同士を絡み合わせ、しかし両手はキャメルクラッチするように相手の顎を固定する。

「これぞ!アレンジ版マッスルスパークだ!!」

そしてそのままマットの上に高高度から激突落下。関節を外され宙ぶらりんになった両手は無抵抗に左右に広がり、胸元と両脚から着地。ビッグボディの体はコの字よりかも逆V字のように固められていた。

「馬鹿な奴だ」

ゼブラは一部始終を見ていた。そう、ビッグボディよりも先にマリポーサが崩れ落ちる姿をも。

「……落下する前にクソ力は解除され、その上で通常以上に鋭角を保つあの技を放てば相手の腰骨に自身の腰がやられてしまうのは明確。顎をクラッチしていても超人強度の差から落下の衝撃を受けるのは顎ではなくあいつの両腕。せっかく顎撃ちで相手が失神していたのだからおとなしく元祖メイプルリーフクラッチで仕留めていれば確実だったものを。……そこにロマンを感じないわけではないがな」

ゼブラが拍手する。それを引き金に観客の間で拍手が喝采し、ビッグボディが目を覚ますと相手が倒れていて、9の声が聞こえ、自身の勝利が確定していた。

・夕暮れ。大会自体は決勝でゼブラがビッグボディをマッスルスパークでねじ伏せて優勝した。

「お前、本当にマッスルスパークが使えたんだな」

「一応練習はしておいたからな。だが俺好みじゃない。二度は使わないだろうな」

「そう卑下してくれるな。負けた俺が道化じゃないか」

「さて、一番最初に負けた奴が夕食をおごる約束だったな、マリポーサ」

「……納得はいかない」

「諦めろマリポーサ。最後の技を仕掛けたのはお前だがそれでも最後に立ち上がったのはビッグボディだった。お前は負けたんだ」

「……ビッグボディ、今から勝負だ。そこで本当の決着を……」

「マリポーサ、うざい。敗北を認めろ。そんで俺のメイプルリーフクラッチを侮辱したことを謝れ」

「……誤りはしよう。だが、あの技は……」

「いいか?お前は負けたんだ。勝てなかったからって相手の切り札に文句を言うなんて最低だぞ。罰としてお前はしばらくの間俺たちに何か意見を言うことを禁じる」

「!そんな資格がどこにあるんだ!?過剰反応だ!せめてもう一戦……!!」

「そうか。罰が足りないか。なら文句だけじゃない。正義超人として活動することも禁じる」

「……そんなことを言うお前に正義超人を名乗る資格などない!!そんなマスクなど脱いでしまえ!!破ってやる!!」

マリポーサはビッグボディのマスクに手を伸ばす。が、それはゼブラにはじかれた。

「……決裂だな」

「……ゼブラ!!お前はどうしてそいつの味方をするんだ!?真のマッスルスパークが使えるお前ならわかるはずだ……!!」

「真も偽もない。マッスルスパークはただの技だ。お前の意気は認めるがそれ以上ではない。況してや正義超人が必ずしも目指すべきものでもない」

「それはお前が正義超人じゃないから言えるんだ!!お前は実力があるのに本来継承するはずだったキン肉族3大奥義を継承しなかった!!思い切りの足りないお前がどうして口を挟めるんだ!?正義超人になろうと思えば委員会に言えばいつでもなれるのにどうして正義超人にならずに完璧超人のままでしかもそれに対して文句や卑下ばかりする!?」

「……俺のせいだとでも言うのか?お前が無様に負けたのは俺のせいだとでも言うのか?」

「そんなことは言っていない!!」

「お前は負けたんだ。勝てなかったくせに偉そうな口を利くのも大概にしろ。あまり失望させないでくれ」

「……ゼブラ……!!」

「……そういうわけだ。暫く頭でも冷やしとけ。その間は俺がマッスルスパークを使ってやるから安心しろ」

「ビッグボディ!!」

マリポーサは叫ぶ。しかし、ダメージから二人を追うことは出来ず、夕暮れの中二人の背中を見送る事しかできなかった。


・1年が過ぎた。マリポーサは一人、悪魔超人や悪行超人と戦い続けた。その功績からマリポーサを主体とした対悪組織が結成され、委員会からいくつか賞状が与えられた。犯罪を犯して悪行超人に落ちたものとの戦いで部下だった正義超人を失い、しかし友情パワーに目覚めたマリポーサはマッスルスパークを使わずして相手を絶対に死なせず叩きのめす技をその身に宿した。ゼブラとの再会は果たせたがビッグボディとはまだ再会できていない。そしてマッスルスパークの完成も果たせてはいなかった。

「ああっと!!ビッグボディ選手、伝家の宝刀マッスルスパークを発動しました!!」

「……」

ふと付けたラジオでマリポーサはそれだけを聞いた。