仮面ライダーS/L21話
Tale21:宇宙から来るDaemon
・病院。再び行方不明になった雷王院。それによりスタッフの間ではパニックが起きていた。椎名は委員長に雷王院が目の前で何者かに拉致されたと報告し、警察が出動することになる。その一方で西武財閥の本社に戻って、今までに回収した仮面ライダークロニクルのガシャットを開発室から引き戻す。
「……要求を呑むのか?」
会長室に戻ると、将碁が既に待っていた。
「可能性はなくもないってところかな」
「……けど仮面ライダークロニクルは……」
「分かってる。実は少し前に解析が終わっていてね。やはりクロニクルガシャットは変身者が敗北した場合強制的にバグスターに変換する機能がついていた。いや、そもそもガシャットを始めて起動した時既にかなり濃度のバグスターウィルスが使用者の体内に感染するよう仕向けられていた。これを使うことは即ちどうやってもバグスター化が避けられないって事だよ」
「……それをあの男と父さんのために檀正宗に売り渡すのか?」
「……場合によってはそうなるだろう。嵐山が地球にいない今、警察も嵐山の下にはいない。そして嵐山から提供された警察用のクロニクルガシャットがある。その警察に雷王院君の捜索を依頼した。なんとか三日以内に檀正宗の下から雷王院君を救出できればこのガシャットを渡すことはない。それに僕達も動かないわけじゃない」
「まだ何か手を?」
「噂をすればだよ」
椎名がドアの方を見る。と、ノックの後
「失礼します」
瑠璃が入ってきた。いや、瑠璃だけじゃない。
「……ちっす」
利徳も一緒だった。
「……どっかで見たことがあるような……」
「彼は一か月前に雷王院君と行動を共にしていたクロニクルプレイヤーだ」
「……あ!何回か襲ってきた中学生!!」
「本宮利徳!!けど、本当にあのライトニングさんが倒されて捕まったのかよ」
「……ああ。事実だよ」
「……約束してくれるんだよな?バグスターを倒した経験値は優先的に俺にくれるって」
「もちろんだ。それによる願いも君が好きに叶えていい。ただし、この戦いが終わった場合そのガシャットは返却してもらいたい。また、クロニクルガシャットの危険性は既に説明したとおりだ。だからそのガシャットを僕達に寄越してくれれば君は戦わなくても構わない。その上で何か願いがあると言うのならその権利を君に与えてもいい。僕達としては戦力が増える分、君の増援は助かるんだけどどうかな?」
「……俺、まだレベル30だけどいいの?」
「大助かりさ。……将碁、君には僕の代わりにフェイトローザのガシャットを貸す。これでセーブレベル10ダークネスゲーマーに変身できるはずだ」
「……ダークネスドライバー使ってないのにか」
「格好いいだろ?ダークネス」
将碁が失笑する。椎名がガシャットを投げつけた。
「ところで利徳君。君、雷王院君の連絡先とか知らないか?そこのニートは彼の連絡先を削除してしまったようだからね」
「知ってるよ。けど捕まってるなら電話なんて出られないと思うけど」
「いやいや。電話番号からGPSを使って場所を探るのさ。すぐに警察に連携する」
「……何か報酬頂戴」
「いいだろう。そこのお姉さんのパンツと10万円、どっちが欲しい?」
椎名の質問。瑠璃が無言でガシャットのスイッチを押す。馨が全力で宥める。
「俺、彼女いるし。年上あまり好きじゃないし。と言うか何か幽霊いない?」
「幽霊じゃありません!」
椎名が馨の説明をする。利徳は別に興味なさそうだった。
「ふぅん。じゃあ10万円で」
「たやすいものさ。この作戦がうまく行ったら100万円をあげよう」
「……そんなにホイホイ大金くれて大丈夫なの?俺中学生だよ?」
「今の僕達は猫の手だって借りたいくらいなのさ。それがレベル30の中学生なら喉から手が出るほど欲しいものだ。歓迎するよ、本宮利徳君」
それからそれぞれが自己紹介をする。済み次第椎名が警察に連絡して雷王院の電話番号を提供した。ちなみにかつて嵐山が使っていたらしい権力ルートを使っているためそこそこ警察を自由に扱える状態らしく、レベル50のエグゼスターを10人分派遣してもらえるようになった。もろもろの準備を終えれば既に夕方。将碁達は既に帰宅していた。
「……中々忙しい毎日だね全く。……けど、そろそろあれも完成しそうだ」
椎名がパソコンの表示を変える。そこにはいくつかの画面が映り、完成率の欄には90%と表示されていた。
・翌日。朝7時に椎名から召集があり、将碁達が集まる。
「警察隊から連絡が入った。雷王院君の場所が分かったらしい。僕達の到着を待ってから突入するそうだ」
「場所は?」
「神保町にある檀正宗の私邸だ。表向きに彼が死亡した6年前以来誰も近寄らなかったらしいから今まで誰も調査してこなかったそうだ。どのみちここからすぐだ。急ごう。早ければ10分後には彼らとの戦いが始まる」
それから全員で瑠璃の車に乗って現場に向かう。椎名の発言通り5分程度で現場には到着した。
「……椎名、向こうは気付いてると思うか?」
「当然だね。ほら、」
椎名達が降車する。前方では既にエグゼスターに警官した警官隊が臨戦態勢を取っていた。そのさらに前方。檀私邸から武がゆっくりと歩み寄ってきていた。
「……」
左手でドグマフルボトルを振り、右手でネビュラトリガーを構える。
「ドグマ!!ガンガンリボルバー!!エクシーズマッチ!!Are you Ready!?」
「変身」
「背信のロックンロール!ドグマトリガー!!イイイイェェェェェェイ!!!!」
ドグマのフルボトルをネビュラトリガーに差し込み、引き金を引けば武の姿が新たなる姿へと変貌する。
「……FIRE」
無造作に引き金を引く。と、秒速2発で発射されたビーム弾が次々とエグゼスターを弾き飛ばしていく。
「お、おい、あんなのと本当にやり合えるのかよ!」
「利徳は瑠璃さんと共に中に。ここは俺が行く」
将碁が前に出る。その手に持っていたのは
「ジャンクセーバー!」
「変身!」
「アクセル!アクセス!!アクシズ!!フルスピードフルスロットルボーイ!!アイムアレベル3スピードゲーマー!!」
「将碁、フェイトローザじゃなくていいのか?」
「あいつ相手じゃぶっつけ本番より慣れてるこっちのほうがいい」
「……それなら僕も」
「椎名は下がって!まだ戦える体じゃない!」
「そうかい、それなら頼んだよ」
「任せろ!」
セーブが走り出す。
「……将碁か」
「武!!あの野郎が憎いのは俺も同じだ!その俺達がどうして戦わないといけないんだ!?」
「全部あいつが悪いんだ。あいつに地獄を見せるために利用できるなら何だって利用してやる。だから邪魔をするな」
「お前は間違ってる!」
「何が正しくて間違ってるかなんて誰にも分からない!」
リボルバーの射撃。セーブはすべて紙一重で回避していく。そしてリボルバーの懐にまで接近し、トリガーを持つ右手の関節を決める。
「癪だけど、もう少し待ってくれ!父さんには主治医であるあいつが必要なんだ!」
「それ自体がもう無意味だ!クロニクルガシャットの力を使えば人間を生き返らせることが出来る!だったら……!!」
「そんなの……!!」
セーブがリボルバーを一本背負い。しかしリボルバーは受け身を取って逆にセーブを投げ飛ばす。
「ウェポンスライド・杈(さすまた)!!」
「もういっちょ!!」
手に持った杈でセーブがリボルバーの右手を封じる。
「エレメンタルスライド・ライト!!」
その状態でセーブの両眼が何度も光り、リボルバーに目くらましをする。
一方。利徳と瑠璃が檀私邸に潜入し、先へと進んでいく。地上階は全て調べたが雷王院の姿は見当たらない。一応、瑠璃が冷蔵庫の中を確認したがトラウマになりそうなものは入っていなかった。
「姉ちゃん!!こっち地下室みたいなのがある!!」
「姉ちゃん……いい響き。私、弟が欲しかったんだぁ……」
「ラリるなぁぁ!!」
二人が地下室への階段を下りていき、鉄扉の前までやってきた。開けようと思っても開けられない。それを確認してから二人は同時にガシャットのスイッチを押す。
「仮面ライダークロニクル!Riding the game! Ride in the end!!!」
「スカイフォールイカロス!!」
「「変身!!」」
「最初で最後の空からクイーンオブザスカイ!アイムアレベル20イカロスゲーマー!!」
変身を終えてパンチの一撃で鉄扉を撃ち破る。と、
「…………くっ、」
「ライトニングさん!!」
鉄扉の先、独房のような部屋には手足が変な方向に捻じ曲げられた姿の雷王院が倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
「……利徳か……。どうしてここに……」
「そんな事より早くここから脱出を……!」
「……それは無理な相談だな」
「!?」
声。振り向けば、
「あう、」
アイジスが倒れ、その背後だった場所には正宗が立っていた。
「あれは……」
「檀正宗……!」
「まさかまだクロニクルプレイヤーが残っていたとは。どうかな?年俸2000万円で雇われてみないかな?」
「ま、また中学生に大金吹っ掛けてくる奴が出てきた!?」
「逃げろ利徳……。奴は人類を滅ぼすつもりだ……」
「それは言いがかりだよ。私は全人類をバグスターにしようとしているだけさ」
「人類を滅ぼすという意味では変わらない……!!」
「ふん、まあいいさ。2度もドライバーとフルボトルを奪われた君に何が出来るというわけでもない」
正宗がクロニクルのガシャットを懐から出した。
「仮面ライダークロニクル」
「変身」
「今こそ刻は極まれり!!」
そして正宗はクロノスへと変身。起き上がったばかりのアイジスを蹴りつける。
「あぐっ!!」
アイジスの体が宙を舞い、天井に大文字に張り付く。
「元から価値はないと思っていたが裏切りまでするとなれば君はもう絶版だ」
クロノスが天井に張り付いたアイジスの足を掴んで地面に叩きつける。
「がああっ!!!」
「お、おい!!それ以上やったら姉ちゃんが死んじまうぞ!!」
「なら止めてみるかな?君に出来るかどうかはまだ分からないが」
「……くっ!」
「利徳、お前だけでも逃げろ!!レベルを上げていつかこいつらを……!」
手足が折れた状態ながら雷王院が何とか立ち上がってクロノスをにらむ。それをあざ笑いながらクロノスがアイジスの頭を踏みつける。
「あうううううううう!!!」
尋常でない圧力がかけられ、アイジスの頭部に亀裂が走る。その時だ。
「……何の用だ?」
クロノスが声を出す。見ればその背後にパラドがいた。
「上、面白いことになってるぜ?」
「……何?」
地上。
「スタンド!!」
「キメワザ・ジャンククリティカルスピード!!」
リボルバーがファンネルを飛ばし、ビームの雨を降らせばセーブが超スピードを発揮してその雨を回避しながら急接近する。
「てやーりゃああああああああああああ!!!!」
そしてセーブの飛び蹴りがリボルバーのネビュラトリガーに叩き込まれる。
「くっ、」
リボルバーの手からトリガーが吹き飛ばされ、2歩後ずさると同時着地したセーブがレベル2の姿になる。
「フリーズ・エレメンタルスライド!」
タブレットを操作し、地面に転がったネビュラトリガーを地面ごと凍結させる。直後からリボルバーの姿が点滅し、武の姿とリボルバーの姿を前後する。
「馬鹿な……!?レベル3ごときでこのドグマトリガーが……!?」
「それまでレベル20が上限だったのにいきなりレベル100以上の力を与えられて使いこなせるわけがない。スペックよりかも使いやすさが勝負を分けるんだ」
「赤くもないくせに!」
リボルバーがセーブの頭を掴み、片手でその体を持ち上げて100メートル以上投げ飛ばす。
「ぐっ!!」
警官隊が止めていた装甲車に激突し、走行車が横転。セーブの全身に亀裂が走る。その間にリボルバーが氷を踏み砕き、トリガーを拾い上げる。
「勝負は力こそパワー!スペックだけが勝敗を分かつ決定的要因!!レベル100を超えた俺に敵はない!!」
リボルバーが射撃。咄嗟にセーブが回避。直後背後にあった装甲車がまるで蹴られたサッカーボールのように吹っ飛んでいき、100メートル以上離れた民家に激突。爆発炎上した。
「武……」
セーブが怒りを滲ませた声を発する。その時だ。二人の索敵機能が同時に高熱源を察知する。
「……何だ……!?」
空を見上げる。そこには巨大な影。
「何が起きている?」
そこへクロノスや利徳達もやってくる。見えた巨大な影はスペースシャトルだった。
「まさか……」
雷王院がつぶやき、シャトルが檀私邸を踏みつぶすように着陸する。そして、
「いい気分だ。これほどまで高揚する帰還はそうそうない」
中から嵐山が姿を見せた。
「……嵐山本部長だと?随分な登場だな、何をしていた?」
「檀正宗。お前の目論見の一部にならないための陰謀をしていたまでだ」
「ほう、スペースシャトルなどに乗って宇宙旅行にでも出かけていたのか?宇宙人の友達でも出来たのかね?」
「その通りだと言ったら?」
「私が手を出すまでもなくその頭は末期のようだ」
「末期なのはお前の方だ」
嵐山は笑いながらベルトを腰に巻く。
「!?あのベルトはまさかエボルドライバー!!」
雷王院が驚愕。やがて嵐山はポケットからフルボトルを2つ出して振り始める。
「フルボトルだと?」
「これがお前を倒す力であり、そして私がこの地球を支配するための力だ!!」
2つのフルボトルをドライバーに突き刺す。
「サタン!!ライダーシステム!!エボルマッチ!!!Are you Ready?」
「変身」
「デーモン!デーモン!!デッドデッドデビィィル!!ヌゥハハハハハハハハハ!!!!!」
邪悪な電子音、闇のエネルギー。黒い輝き。それらがすべて嵐山の姿を変えて、やがて生まれた闇の中からその姿が現れた。
「……何だ、その姿は……貴様、仮面ライダーにはなれないのではなかったのか!?」
「我が名は仮面ライダーデーモン。月に眠りし悪魔から力を譲り受けたこの星の支配者だ!!!」
デーモンはシャトルから飛び降りると、そのシャトルを持ち上げて空高く投げ飛ばす。投げ飛ばされて1秒でシャトルは大気圏を突破し、10秒足らずで天王星に墜落して粉々になった。
「……ふん、私と違って選ばれなかった老人ごときが随分威勢をよくしてくれるようだな」
「間違えないでもらおうか。私こそが選ばれたこの星の支配者だ」
睨み合うデーモンとクロノス。ゆっくりと歩み寄り、互いの距離が20メートルを切った瞬間。一瞬で両者の位置が入れ替わった。
「!?」
「み、見えなかったぞ……!?」
セーブやリボルバーが驚嘆。見れば両者のボディには僅かな損傷や汚れが見える。つまり、今の一瞬で攻防があったという事だ。
「……なるほど。少しはやるようだ」
「まだまだこんなものではない」
互いに振り向き、マッハ2の速度で接近。10分の1秒速20発の攻防を応酬。それを潜り抜けてデーモンがクロノスの両手を掴み、大腰の要領で地面に投げつける。
「くっ、」
再び互いの場所が入れ替わり、しかしクロノスは深さ100メートルの大穴の底で大文字に倒れていた。そこから0.1秒で地上に戻ってきてはデーモンの背中に飛び蹴り。生まれた衝撃波がセーブとリボルバーの二人を大きく吹き飛ばし、その変身を解除する。が、
「何かしたかな?」
デーモンは無傷でその一撃を背で受け止めていた。0.3秒後にクロノスの足を掴み、ジャイアントスイングの要領でクロノスを空高くまで投げ飛ばす。
「無料で世界一周旅行をお届けしよう!!前会長!!」
宣言通り、クロノスはミサイルめいた速度で数多の陸と海とを貫き、30秒後にデーモンの足元に戻ってきた。
「ぐふっ!!」
顔面からマッハ99の速さで地面に激突。その数秒後に周囲200キロの範囲で震度3の地震が発生する。
「と、とんでもないパワーじゃないのか……!?」
将碁と武が戦慄する。いや、この二人だけじゃない。椎名も瑠璃も雷王院も利徳もパラドでさえも無言で戦慄するのがやっとだった。
「い、いや、奴にはまだあの力がある……!」
雷王院の言葉。言葉通りに立ち上がったクロノスはベルトのボタンを押す。
「ポーズ」
全ての時間を停止させるクロノスの切り札。
「これで貴様を絶版にしてやる」
「……ほう、これがポーズか」
「……何!?」
停止された空間の中、クロノスはもとよりデーモンでさえも普通に言動していた。
「馬鹿な……!?体内に大量のバグスターを宿していなければこのポーズからは逃れられない筈……!!」
「どうやらこのポーズは完全に時間を停止させるわけではないようだ。世界の時間を数百分の1程度に遅くするだけ。なら貴様よりも数百倍速く動けばそれで済む話だ」
「な、な……」
「第二ラウンドと行こうか」
止まった空間の中、デーモンが走り出しクロノスにパンチの応酬。
「デビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビデビ!!!!!!!!!」
止まった空間の中でさえ秒速数千万発のパンチがすべてクロノスに命中。
「……がぼっ!!」
「リスタート」
ダメージ故かポーズが解除され、同時にクロノスが膝を折る。
「……え?」
再開された時間。そこでクロノスがうずくまっている事態に将碁達は顎を落とす。
「まさか、ポーズ中に動いただけじゃなくてクロノスを倒したとでもいうのか……?」
「……いや、倒すまではいかないな」
将碁の疑問にデーモンは首を鳴らしながら答える。
「仮面ライダークロノス、どうやら時間を止めるだけが能ではないようだ。毎秒ごとに攻撃力も防御力も段違いに上がっていく機能があるらしい。本来ならとっくの昔に破壊されているはずだがまだ変身が解除されていないのが証拠だ」
「……なるほど。これが宇宙の力か」
クロノスが立ち上がる。そのボディはダメージが見て取れるほど鮮明で痛々しいがしかし変身が解除されるというほどではない。つまりデーモンの言葉に間違いはないようだ。
「そうか。貴様も断片的ながら旧世界の事を知っていたな」
「眉唾物だったがね。しかしならばこそ手段は選べないな」
クロノスが言うと、その隣に強烈な電磁波のようなものが発生する。
「……バグスターか」
やがて姿を見せたのはカイトだった。
「なるほど。本当にあの悪魔の力を得ているようだ」
「カイト!」
パラドが一歩前に出る。
「パラド。どうしてその男を止めなかった?」
「間に合わなかったんだよ。それにまさかここまで強いとは思わなかった」
「……これは由々しき事態だ。一度撤退する。檀正宗もいいな?」
「……仕方があるまい」
「ほう、逃がすとでも?」
「追えるなら追ってみたまえ」
クロノスが小さく笑えば次の瞬間にはクロノスもパラドもカイトも武も姿を消していた。
「……これがバグスターの瞬間移動いや、電子変換移動か。確かにこれでは手出しできないな……さて、」
デーモンがゆっくりと将碁達を見やる。
「瑠璃、何をしている?まさかそいつらと組んだわけじゃないだろうな?」
「だ、だってお父さん何も言わずに宇宙に行くんだもん!」
「まあ、お前にはあまり話したことがなかったから仕方がない。それに足止めをしてもらいたかったからな。お前は十分役に立ってくれた。さて、西武椎名。交渉と行こうか。クロニクルのガシャットを寄越してもらおう」
「……結局そこに変わりはないのか……!」
「抵抗しようなどとは思わない事だ。この私の実力はご覧になっただろう?」
「……嵐山、奴はどうした?」
雷王院が口を開く。
「奴?ああ、あいつか。ふ、私にこの力を与えてくれたよ。条件としてこの地球を支配してほしいとな。この力があれば十分に可能だ」
「地球の支配だと……?」
「そうだ。奴は別に地球がどうしても欲しいというわけではない。ただ面白いシナリオが欲しいだけだ。だから私はそれを実行することにしたのさ。たとえ実力行使をしてでもこの地球を支配する。人類だろうとバグスターだろうとこの私が完全に支配するのだよ」
「……完全に奴の手下に成り下がったわけか」
「だとしたらどうする?ライトニング。いや、その力も奪われてしまった今のお前には何も出来なかろう。……さあ、西武椎名。ガシャットを寄越してもらおうか」
デーモンがゆっくりと椎名に歩み寄る。