見出し画像

キラッとプリチャンVSアイドルタイムプリパラ!~友情!ダイヤモンドタッグマッチ!!5話「ダグラス・マネー・オブ・スクランブル!!」

・それは今から2年近く前の話だ。

「あなたがダグラス?」

町のちょっとしたイベントである町内一武闘会、予選サバイバルでその言葉を聞いたのは、ゆいとにのが初めて会った時だった。

「……にのはダグラスじゃないっす。一文字も合ってないっす」

はじめは特大級にやばい奴に声をかけられたと思った。けど決勝で戦い、ただのやばい女子小学生ではないことが分かった。同じ日に出会ったゴッドアイドルのあの人と言い、あの日は何かの運命だったと思わざるを得ないだろう。それから戦う機会はなかったがそれが今、久しぶりに訪れようとしていたのだ。

「……よし、今日もやるっすよ!」

いい目覚めだった。赤城財閥の科学技術と女神が残したという超人回復システムによって昨日受けたダメージも回復している。

「あ、にの」

「おはようっす。すず」

「おはよう、にの。昨日はにのがすずの大事な勝負に付き合ってくれたから今日はすずがにのの大事な勝負に付き合う番だよ!」

「ありがとうっす。すず。でも相手は強敵っす。あの時の精霊にも勝った協力コンビっす」

「……うん。あのしゅうかって子はとんでもない実力だってわかるよ」

「……しゅうかだけじゃないっす。公式戦での勝率こそ低いっすけどもゆいも決して侮っちゃいけない相手っす。昨日戦ったまりあ先輩ほどの防御力はないっすけど意味不明っぷりでは負けてないと思うんす」

「……うん。そうだね。すずも全力で頑張るよ。……じゃあ、行こうか」

「……っす!!」

そして赤城家特製リング。にのとすずが到着する頃には既にほかのメンバーも集結していた。しかも何やら様子がおかしい。

「まりあ、なにがあったの?」

「あ、すずちゃん。なんでもあんなちゃんがまた新しい何かをするみたい何です」

「あんな先輩が?」

「あら、ようやくそろったようですわね」

リングの前。あんなが腕を組んでいた。隣のえもも不思議そうな顔をしていたためこれから何が起こるかは知らないようだ。

「ちょっとあんな、なにする気なのよあんた」

「決まっていますわよ。ベスト8での特製リング。さらの全力の一撃はもちろんそれ以外の攻撃で既にボロボロになってしまっています。な・の・で!!」

あんながどこから出したのかスイッチを押す。と、背後で特製リングが急に浮き上がり、それが高度10メートルの高さで静止すると同時に大爆発。次の瞬間、発生した炎が収束して新たなリングが姿を見せた。

「これがベスト4にふさわしい天空リングですわ!!」

「それだけじゃないよ?」

いつの間にか天空リングの上にめるがいた。めるはコーナーの鉄柱に着いたスイッチを押す。と、突然にめるの体がバスケットボールへと変貌した。

「!?」

「あれはムーフボールと言ってあの状態でいると骨折などのダメージが回復する仕掛けになっていますの。でも、ボール故蹴り飛ばされたりもしますし、その場合通常よりもダメージが強くなるように設計されていますわ。これが準決勝にふさわしい天空闘技場ですわ!!」

「ちなみにボールになった後は30秒経過するか、誰かにボールの外側にあるボタンを押してもらうか、リングの外に出ると元に戻れるよ」

めるボールが天空から落ちてくると、元の姿に戻って着地する。

「このリングで戦うことに同意する方は前へ!」

「……あたし達は無条件なんだ」

えもがつぶやくと、すぐに正面にすず、にの、ゆい、しゅうかが一歩前に進んだ。

「……虹ノ咲さん、」

「みらいちゃん……」

「まだ虹ノ咲さんの話、よくわかってないけれども。でも、今は一緒にがんばろ?」

「……うん!」

そしてみらいと虹ノ咲も一歩前に出た。

「ベスト4の8人が全員賛同いたしましたわ。これで問題はないですわよね?」

「あはは……さすがは赤城財閥」

「でも、参加選手たちが望むなら止める理由もありませんよね」

あいらとなるが頷き、めが姉ぇが判決を下す。

「ええ、それでは赤城財閥に用意された天空リングを以て準決勝、ベスト4を始めたいと思います!!」

めが姉ぇのアナウンスを受けてにのとすず、ゆいとしゅうかが跳躍。一気に10メートル上のリングの上まで到達する。同時にリング周辺にファンネルカメラが出現し、リングの上の様子がシームレスにモニタリングされる。

「ゆい!真剣勝負っすよ!!」

「にの、あたしも全力でやるよ!!」

「おっと、ゆいもにのもわたくしもいることを忘れてもらっては困りますわよ」

「すずの事も忘れないでよね」

「それでは!!これよりダイヤモンドタッグマッチの準決勝第一試合を開始したいと思います!!身長142センチ、体重33キロ、超人強度99万パワーの虹色にのちゃんと身長145センチ、体重38キロ、超人強度92万パワーの黒川すずちゃんからなるブレイキンスクランブルと、身長150センチ、体重44キロ、超人強度は93万パワーの夢川ゆいちゃんと身長159センチ、体重52キロ、超人強度は140万パワーの華園しゅうかちゃんのペア・ドリームマネーの勝負を始めたいと思います!!」

めが姉ぇのアナウンスと同時にすずとしゅうかがリングの外に出る。これによりにのとゆいがリングの上で相まみえることになった。

「それでは、見合って見合って……試合開始っ!!」

号令がかかると同時、にのとゆいがリング中央にて手四つで激突を果たす。体格ではゆいが、超人強度ではにのが上回るが組み合ったパワーは互角。

「さすがだね、にの……!」

「ゆいも前に組んだ時よりはるかに強くなってるっす」

「……そりゃそうだよ。あたしはいつからぁらを超えていきたいんだから!」

「にのだって、シオン先輩を超えていきたいっす!らぁらとシオン先輩がライバル同士であるようににのとゆいも絶対に白黒はっきりしないといけない関係っす!!」

「おおっと!!リング中央!凄まじい気迫の二人がぶつかり合っています!!動きはありませんがどちらも既に30秒以上の硬直!先んずれば制すか、先に動いた方が負けるのか、これは見ものです!!」

「あ、動きますよ!」

あいらの言葉が終わると同時、ゆいの髪がツインテールへと姿を変えてにのの両足の太ももにまとわりつく。

「これは……!!」

「いくよにの!!らぁら式アイアンプレッシャー!!!」

「これは!!ゆいちゃんによって両足を封じられたにのちゃんが手四つのままゆいちゃんに押されていく!!しかも両足が少しずつ開脚されていくことで踏ん張りが弱くなっていきます!!」

「だけじゃありませんね。もしあのまま押し切られてしまった場合前後開脚の体勢で押しつぶされることでにのちゃんの股関節にひどいダメージが加わると思います」

「スピードを重視したにのちゃんにとってこの状態はひどく不都合ですよね」

「ぐぬぬぬ……!!」

ゆいに押されて少しずつ股を開かされていくにの。力の入らない方向で膝を曲げられることでどんどん使える力が落ちていく。足を抑えられているため巴投げで回避することも出来ない。ちらりとリングの外を見る。

「……」

冷や汗をかきながら、しかしすずは何も言わずにこちらを見守ってくれている。

「……そうっすよね。今はにのの戦いっす!!すずがすずの戦いを全うしたようににのもにのの戦いを全うするっす!!シオン先輩のためでもらぁらのためでもない、にのとゆいのために!!」

「にのちゃんのリボンが巨大化しました!!翼のように広がったリボンの羽ばたきによりにのちゃんの体が浮き上がっていきます!!」

「わ、わわ!!」

「ついにゆいちゃんまで浮かび上がりました!!」

「いくっすよ!!」

にのがフロントインディアンデスロックで自身の右足だけでゆいの両足をホールドし、自身の両腕でゆいの両腕を閂ホールドする。

「いくっすよ!!アヴァランチスタンプ!!!」

リボンの羽ばたき。それが地面とは逆方向に風を飛ばした時、にのはゆいの背中から地面に激突する。

「くっ……うううっ!!」

「ああっと!!にのちゃんのアヴァランチスタンプが炸裂!!両手足を封じられた状態から背中に強烈な一撃が叩きつけられました!!」

「だけじゃないっすよ!!」

「ま、まさか!!にのちゃんのリボンが再び羽ばたき、全く同じ態勢のままにのちゃんとゆいちゃんが空へと舞い上がります!!」

「第二撃!アヴァランチスタンプ!!」

「だ、だったら!!」

「あああ!!空中でゆいちゃんがツインテールを使ってジャイロを形成!!落下を阻止しました!!」

「それだけじゃないですよ!」

「あ、ゆいちゃんの方が風力が上です!!」

ツインテールジャイロの風力によりゆいはにのを逆に持ち上げる形で空へと舞い戻り、コーナーポストへとまっすぐ突進を開始する。

「これは、まさか!!」

「早速使わせてもらうよ、あんなちゃん!!」

「や、やはりそうです!!!ゆいちゃんはにのちゃんを背中からコーナーの鉄柱にたたきつけました!!それにより今回赤城財閥によって作成されたギミックが発動し、にのちゃんの体がムーフボールへと変貌してしまいました!!」

「にの!!」

「行くよ!!」

ゆいがそのボールを全力で抱きしめながら跳躍。そしてボールが下になるようにボディプレス。その機能により通常の倍の威力がにのを襲う。

「ええい!!」

2回ドリブルしてから鉄柱に向かってサッカーボールのように蹴り飛ばす。が、

「そこまで!!」

鉄柱に激突する寸前にまるでキーパーのようにすずがスライディング気味にボールを受け止めた。そして一瞬の間をおいてからすずがそのボールをゆいに向かって投げ飛ばす。

「む!」

受け止めようと構えるゆい。しかし、

「っす!!」

「え!?」

ゆいにぶつかる前の空中で30秒が経過したことでにのが元の姿に戻り、意表をついてゆいにフライングボディプレスを叩き込む。

「これはうまい!!つい先ほど追加されたばかりの変則ルールでありながらそれを利用した工夫スキル!しかもこのやり方だと直接すずちゃんが攻撃したわけではないため、仮にこのままゆいちゃんをダウンさせてもサインなしで通常KO扱いになります!!」

「ま、まだKOまではいかない……」

「だから連続攻撃するっす!!」

腹を抑えて立ち上がるゆい。そこへにのがワンレッグタックルを打ち込み、ゆいを正面に吹っ飛ばす。さらに落下前にその両足を掴み、ジャイアントスイングで真上の空へと投げ飛ばす。

「そのツインテール、また使われたら厄介っすね!!」

空中でにのがゆいの伸びたツインテールを使ってゆいの両手を手錠のように縛り上げる。そして地面と垂直になるような形で空中でチョークスリーパーホールドに遷移する。

「いくっすよ!!ダグラスドライバー!!」

「だ、ダグラスって何!?」

ゆいの疑問の声と同時にゆいは亜音速で膝からマットの上に叩きつけられた。

「ぎいいいぃぃぃ!!」

「こ、これは、ゆいちゃんの両膝の半月板が破壊された音です!!通常、ドライバー系の技ならば頭から叩きつけることでダメージを優先させますが、あのダグラスドライバーは膝から落とすことで両足を破壊する技のようです!!」

「通常ならこの時点でほとんど勝負は決まっているようなものですけれども」

「……この勝負はタイマンじゃありませんからね」

なるの言葉が終わると同時、

「そう言う事ですわ」

「っす!?」

手錠のように縛り上げられたゆいの手の上にしゅうかが逆立ちで着地し、両足でにのの両腕をホールドする。

「やっちゃえ!しゅうか!!」

「スパンコールラップ!!」

ゆいがしゅうかの体を真上へと押し投げ、しゅうかがその勢いを使ってにのの両手を決めたままにのの背後に回り込み、背中合わせの状態でにのの背後に逆立ち着地する。脇の下から入れられたしゅうかの両足がにのの二頭筋をがっちりとロックし、肩関節の破壊に移行する。にのがしゅうかの技に苦しめられている間にゆいがツインテールを解除してにのから一度離れる。

「!」

「来ると思ってたよ!!」

「あたしだって!!」

そして、2歩下がったところでコーナーから飛んできたすずのドロップキックをゆいもドロップキックで相殺させる。同時、すずがスケートボードを召喚し、着地したばかりのゆいの足元を崩す。さらに独走するスケボーはにのを決め上げるしゅうかの体を支える両手にも激突して技を解除させる。

「すず!!」

「にの!!」

「あああっと!!にのちゃんが頭からリボンを外し、すずちゃんのスケボーの上に着地すると同時にリボンをすずちゃんへと投げ、それをすずちゃんが自分の頭に付けました!!」

「ゆ、ユメすごい……!」

「あの二人、でら油断できない……!!」

「いくっすよ!!」

スケボーで爆走。亜音速で迫るにのがリング中央にゆいとしゅうかを置き、円を描くようにリング内を駆け巡る。

「……あ、あれ!?すずちゃんは!?」

「……っ!!上ぎゃあ!!」

しゅうかが上を向く。すずはリボンによる飛翔でさらに高く舞い上がっていた。

「にのがスピード出して円運動でどこから来るか分からない状態なのに、すずちゃんは空から攻撃のチャンスをユメ伺ってるって事!?」

「ゆい!あれをやるぎゃあ!!」

しゅうかが足払いでゆいを転がせると、その体を持ち上げて空へと投げ飛ばし、その背の上に飛び移ってサーフボードのように宙を泳ぐ。

「VIPインフェルノ!!」

そのまま飛翔して空中のすずに向かっていく。

「考えたね。空の上にいるのはすずだけ。だから2対1の状況になる。地上で合流したら今度は空から攻撃を狙われるだけ。でも、すずだって負けてないよ!!」

「ああっと!!すずちゃんがVIPインフェルノを真っ向から受け止めました!!」

「その程度なら!!」

ゆいの上でしゅうかがゆいの頭を受け止めているすずの両腕を閂にしてゆいへのホールドを振りほどき、空中疾走を再開させる。

「こ、これは……!!」

「ダグラス・マネー・スクランブルぎゃ!!」

「おおっと!!これはすごい!!しゅうかちゃんがゆいちゃんと協力することでにのちゃんの得意技であるポップンビットスクランブルとすずちゃんのスイングスケートスパイラループを組み合わせました!!」

「しかも本来ならスケボーが担うサーフボードの役目をゆいちゃんが行なっていることでゆいちゃんがすずちゃんの両足をがっちりと掴んでいます。これですずちゃんは容易には体勢を立て直すことが出来なくなりました。逆にしゅうかちゃんは体勢の変化がしやすい状態になっています。完全にあの二人のお株を奪う双極必殺技(ツープラトンフィニッシュホールド)になっていますね」

「でも、完全上位互換と言うわけではないみたいです」

なるが言うと同時、

「そろそろにのも混ぜるっすよ!!」

「あああっと!!今まで超スピードで円運動していたにのちゃんが空へと舞い上がった!!そう言えばにのちゃんはリボン抜きでも空が飛べましたね!!」

「空中での加速が出来ないだけでにのはデフォルトで空を飛べるっすよ!!それ、フライングカナディアンバックブリーカーっす!!」

「あああっと!!にのちゃん!!ゆいちゃんにショルダータックル!それで怯んでしゅうかちゃんと離れてしまったゆいちゃんを肩に担ぎどんどん飛翔!!高度を上げていくごとに増していくGがゆいちゃんの体中を襲います!!」

「ゆい!!」

「君の相手はすずだよ!!」

しゅうかの顎にすずがサマーソルトキック!しかしぎりぎりでしゅうかはそれを受け止め、

「マネーツイスター!!」

足を掴んだまま反時計回りに高速回転し、掴んだままのすずの左足の膝関節と股関節を脱臼させる。

「うううっ!!」

「チャリンチャリン!!」

そのまますずを真下の地面へと投げ飛ばし、自身はその勢いを利用してゆいたちへと飛んでいく。

「すずちゃん以外の3人がどんどん高く舞い上がっていきます!!現在の高度は地上4000メートル!!既に10分以上も空中戦が続いています!そして驚くべきことにこの試合中まだ誰も友情パワーの類を使用していません!!」

「……そう言う事か……だったら!!」

「ああっと!!落下中のすずちゃんが黒く輝きだします!!これは純真のブラックジュエルパワーです!!そう言えばこの4人の中で唯一ジュエルの力を使えるのがすずちゃんです!!もちろん武器の使用と言うわけではないのでルール的に問題はありません!!現在のすずちゃんの超人強度は1300万パワー!!そのパワーを生かしてすずちゃん再び空高く舞い上がりましたぁぁっ!!!」

「くっ!速い……!!」

すずよりも200メートル上空にいたしゅうか。しかしかなりの速度でその距離が縮められていく。

「……後ろから、いや下から攻められるよりはましですわ!」

「おっと!!しゅうかちゃんが飛翔を止めました!!これは真っ向からすずちゃんを迎え撃とうという魂胆のようです!!」

「すずのブラックジュエルの力、簡単に止められると思わないでよ!!」

「簡単だと思ったことなどありませんわ!!」

「そして今空中で二人が激突しました!!!まるで下から上に落ちる黒い稲妻となったすずちゃん!しかし、そのタックルをしゅうかちゃんは両手ならず両足とおなかも含めた五体の全てで受け止めた!!」

「くっ!!」

「……勢いを殺しきれませんでしたわ……。ですが!!」

しゅうかは吐血しながらすずの背後に回り込み、両足ですずの両腕をホールド、両手ですずの両足首をホールドし、すずを強制的に仰け反らせる。

「スパンコールアウシュビッツ!!」

「出ました!!時の精霊ガァララでさえも完封したしゅうかちゃんのサブミッションホールドです!!すずちゃん、完全に手足と腰を決められてこのまま背骨がおられるのを待つだけと言う状態です!!」

「お、折られてたまるか……!!」

すずの体が黒く輝き、上体をゆっくりと起こし始める。

「何て力ですの……!!ガァララでさえ封じ込めたのに……!ですがわたくしも負けてなるものですか!!」

「熱い!!高度2000メートルでサブミッションの静かなる、しかし熱い戦いが繰り広げられています!!これはしばらく硬直状態が続きそうです!!一方、それよりさらに2000メートル上空にいるにのちゃんとゆいちゃんはどうなっているでしょうか!?」

高度4000メートル超。ゆいはにののカナディアンバックブリーカーを振り払い、しかし宙に浮いたまま手四つで組み合っていた。

「ゆい、楽しいっすね……!!」

「……ユメそうだね、にの!!初めて会った時からにのはすごい子だって思ってた。あたしはまだらぁらの足元にも及ばないのににのはシオンさんから一本取ったこともある。多分まだまだにのには追い付いていないと思う。でも、だからってユメ諦めないんだから!!」

「ゆいの熱い思い、二重丸っす!でも、忘れてないっすか?現在時刻はまだ11時。朝と呼べる時間帯っすよ?」

「……まさか……」

「はああああああ!!!朝の力発動っす!!」

にのの背後に時計版のようなものが出現し、にのからオーラが吹き上がる。

「こ、これは!!なんという事でしょうか!!にのちゃんの現在の超人強度は1億!!神の領域に到達しています!!」

「あれは、時の精霊の力ですね。単体では神の領域には達しませんけれどもにのちゃんの切磋琢磨の友情パワーとうまくマッチングすることで1億パワーに達しているようです」

「多分にのちゃんが1億パワーに達することができる相手は同じマイドリームのメンバーか憧れるドレッシングパフェのメンバーだけなのでしょうけれどもそれでもとんでもないものです」

「ああっと!!その1億パワーの力でゆいちゃんが一撃で叩き落されました!!」

「うううっ!!」

「どうしたっすか!?この程度でらぁらを超えられると思ってるっすか!?」

頭から下に落下していくゆい。それに簡単に追いついてはガードの上からゆいに蹴りを叩き込むにの。ガードの上からだというのにゆいは吐血するほどのダメージを受ける。ガードした両腕は骨髄レベルでボロボロだ。

「これ……もう駄目かも……こんなにユメダメージ受けたのは……にのと初めて戦った時ぶりかも……ああ、そうだ……ダグラスってあの時の……そうだ……ユメそうだよ……あたしにとってらぁらは目標だったけど、にのは……にのは初めてのライバルだったんだ……。きっとにのにとってもユメ同じ……二人は……ずっと違う人を目標にしたライバル同士で、その目標としている人もライバル同士で……これってユメすごい……ユメすごい運命なんだ!!」

空中でゆいが体勢を立て直す。同時にその目がユメ目に変わり、追撃してきたにのの膝蹴りを顔面で受け止め、しかしユメ目がそのダメージを完全に打ち消す。

「きたっすか。ユメ目モード!」

「だけじゃないよ!!アルティメットユメ目モードだよ!!」

「あああっと!!と、突然天空の空間が歪み始めました!!これは、ゆいちゃんのユメ目が空間を変えているようです!!」

「ミーチルちゃんのそれと比べると範囲そのものはかなり狭いですが、威力の方は比べ物にならないようですね」

砕けたはずのゆいの手足が完全に回復し、1億パワーを誇るにのと真っ向から手四つでぶつかり合う。ゆいとの接触点から少しずつにのの朝の力が抜き取られていき、逆にゆいに昼の力が付与されていく。

「こ、このまま押し切られてなるものかっす!!」

空中で何度も向きを変え、ベクトルを変えて二人が何度も激突を重ねていく。既に空中戦を始めて20分が経過している。徐々に徐々に両者のダメージが蓄積されていくがしかしゆいのアルティメットユメ目や昼の力は消える兆しを見せない。

「にのは……にのは負けない……!!」

やがて二人の速度は音速に達し、空中でせめぎ合っていたしゅうかとすずを追い越した。

「……ゆい!」

「にの!!」

気を取られた一瞬。その一瞬ですずはしゅうかのスパンコールアウシュビッツを振りほどく。

「そんな……!!」

「にのぉぉぉっ!!」

黒い輝きを放ちながらすずがにのへと追走。ぶつかり合いながらのゆいとにのよりややすずの方が早い。

「間に合え……!!」

「行くよ!にの!!」

「くうううっ!!外れない!!!」

ゆいはにのと69の形で向き合い、自身の両足をにのの両脇に入れ、自身は両腕にのの両足を、股関節を完全に決めた状態でホールド。さらにツインテールが伸びてにのの両足首をホールドする。

「ユメ目パワー全開!!」

昼の力とユメ目パワーと桃色の友情パワーが重なり合い、ゆいが徐々に腰を落としていき、にのは強制的にコの字型へと体を曲げられていく。

「ユメイジングバスタアアァァァァッ!!」

「間に合ええぇぇぇぇぇっッッ!!!」

ゆいの攻撃により、にのがマットに叩きつけられる寸前。にのの頭とマットの間にすずが割り込んだ。

「え!?」

「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

「す……ず……?」

にのの頭を抱きかかえるように胸で受け止めるすず。着弾点の胸はもちろんその衝撃を受け止めた両腕からも激しい出血がにのを襲った。

「すず!!どうして……そんな……!!」

「す、すずに出来ることは……これ以上もうないよ……勝ってね……にの……くっ!!」

すずは吐血しながらゆいの下腹部に血だらけのエルボーを打ち込み、ゆいをコーナーサイドにまで吹っ飛ばすと、にのを抱きしめる形で気絶した。

「すず!!」

「ま、まさかの展開です!!すずちゃんがユメイジングバスターを庇ってダウンしました!!……い、いえ!!これは戦闘続行不可能です!!」

めが姉ぇがあいらとなるが首を横に振るのを見て付け加える。

「けど、これはもう……」

あいらが小さくつぶやく中、にのがゆっくりと立ち上がる。すずを抱き上げて優しくリングの外へと寝かせる。

「……にのは、にのはゆいに勝つ!!すずのためにも!にの自身のためにもっす!!」

にのが切磋琢磨の友情パワーを開放。正面でゆいの傍らに着地したしゅうかを見る。

「そこで休んでるといいわ」

「しゅ、しゅうか……」

「にのはわたくしが倒しますわ」

「やれるものならやってみろっす!!」

「試合再開です!!天空リング中央でしゅうかちゃんとにのちゃんが激突!!あっと!!1秒と待たずににのちゃんがしゅうかちゃんごと飛び上がりました!!しかもすずちゃんの残したスケボーに乗って空中を疾走します!この技は!!」

「スイングスケートスパイラループっす!!」

しゅうかの両腕を閂にしたまま空中をマッハ3で疾走し、カーブするたびにしゅうかの両腕に亀裂を走らせる。さらに強烈なGによりしゅうかの背中にまで亀裂が走る。あまりの衝撃に少しずつしゅうかの上半身のスーツが破けていく。

「わたくしだって負けてなるものですか……!わたくしだって……わたくしだって……!!」

「!?」

しゅうかが震脚。二人の足場になっていたスケボーが真っ二つにへし折られ、バランスを崩したにのの腹部にしゅうかの膝蹴りが2発撃ちこまれ、ついにしゅうかが上半身裸になると同時に自身の胸ににのの顔面を引き入れ、乳房でにのの顔面を鷲掴みにしながら両手をにのの後頭部で組んでホールド。

「ヌーディバストスパンコールブレイズ!!」

「こ、これは!!しゅうかちゃんが自分のおっぱいでにのちゃんの視界と呼吸をふさぎながら完全に頭部をロック!そのまま時計の針のように高速回転を始めました!!そしてそのまま……にのちゃんを背中からマットの上に激突させたぁぁぁぁっ!!」

「やっぱおっぱい禁止がいいですよね」

「なるちゃんってば……」

遠い目をするなる。その視線の先。

「……受け身は取ったつもりだったんすけどね……」

マットの上で大文字になって倒れるにの。その隣でうつ伏せになって倒れるしゅうか。既にしゅうかは気を失っているようだった。

「……技をかけた方が先に失神していますね。しゅうかちゃんの体力切れの方が早かったようです」

「けどにのちゃんだってもう立てない筈です……」

「……さすがは神アイドル。お見通しっすね」

「にの……」

「……にのにはもう指一本動かす体力は残ってないっす。この勝負はにののま……」

「まだだよ!!」

ゆいはにのを抱き上げた。

「まだだよ!ダグラスはまだ立って戦えるでしょ!?」

「……にのはダグラスじゃないっすよ。一文字も合ってないっす。もはやにのは……」

「立ってよダグラス!!にのがだめでもまだダグラスなら立って戦えるでしょ!?意識があるのに諦めるだなんてそんなのドレッシングパフェは認めないよ!!」

「……意識があるのに諦める……っすか。そうかもしれないっすね……。シオン先輩達は命がけで戦っていた。そんなにのが命あるのに諦めるだなんてぇぇぇっ!!!」

「た、立ち上がりました!!にのちゃん、満身創痍を超えている体で立ち上がりました!!!」

「そんな……あり得ないわ……」

「神アイドルの目でもあの子の限界を見誤る。……あの子は本当にゴッドアイドルの妹分なんだね」

リング中央。立ち上がるにの。対応するようにゆいも立ち上がる。

「……昔聞いたことがあるっす。シオン先輩とみれぃ先輩が拳と拳でぶつかり合って一撃ずつで決着をつけたことがあるって」

「……うん。だからあたしも次の一撃で絶対ににのを倒すつもりで殴るよ。ううん、にのだけじゃない。相手が誰であっても次の拳だけで倒す」

「にのもっすよ。それくらい出来なければゴッドアイドルの先輩たちに顔向けできないっす」

二人はゆっくりとがっちりと拳を固め、静寂を誘う。幾ばくかの静寂の後に一歩を踏み込んだ。

「ゆいいいいいいいいぃぃ!!!!」

「にのおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

にのの拳の方が先にゆいの顔面にぶち込まれ、頬骨と鼻骨を粉砕する。砕けた骨の欠片たちが大小と内側からゆいの目玉を突き破っていき、さらには首の骨に亀裂を走らせる。そこでやっとゆいの拳がにのの胸にぶち込まれ、にのの体を後方にぶっ飛ばす。

「がはっ!!」

ロープに背中から叩きつけられ、吐血したにのは弾力に負けて前方に吹っ飛び、意識を失って倒れかけていたゆいに衝突。吹っ飛ばされたゆいは後方鉄柱に叩きつけられ、スイッチを背中で押す。にのが倒れると同時にゆいはムーフボールへと変貌した。そして、高度2000メートルから落ちてきたスケボーの残骸がボールに落下。同時にスイッチが押され、

「……え?」

今のダメージが完全に帳消しになるまで回復したゆいの姿がリングに戻る。きょとんとしながら正面で力尽きたにのの姿を見た。

「こ、これは強運!しかし、結果は変わらない!!とんでもないグッドラックにより、ゆいちゃん今のダメージを帳消しにしました!!そして、にのちゃんは完全にダウン!!神アイドルの二人も今度こそ絶対と太鼓判を押し、今、10カウントに到達しました!!最後まで立ち残っていたのはゆいちゃんです!!よって勝者はマネードリーム!!」

「……か、勝ったんだ……ギリギリだったけど……あたし、勝ったんだ……」

そこでゆいもまた倒れ、脱力により気を失った。

「……まったく。よくやるものじゃ」

完全に試合終了のアナウンスがされてからミーチルがリングにやってくる。

「……まったく。羨ましい限りじゃ。ゆい、にの、しゅうか。それに、すず」

ミーチルはにっこりと微笑み、4人を一気に担ぎ上げて天空リングから飛び降りた。