仮面ライダーS/L36話
Tale36:総て覇玉のLightning
・その日、世界は騒然に包まれた。ある意味人類の何割かがバグスターになった時以上の衝撃が視界を通じて全人類の注目と恐怖を奪った。世界中どこに行ってもあらゆる全てが水没していて若年や女性では立つ事さえままならないほどの暴風雨がどこもかしこも狂ったように吹き荒れ続けている。おまけにバグスターでもスマッシュでもない異形の何かが神出鬼没しては人々を飲み込んで消失させていく非常事態。
「……困ったことになったね」
CR。最上階を会議室にして水没までの姑息を稼いだその場所で椎名達が集まった。当然その中に雷王院の姿はない。
「椎名、本当にあいつがビルゴサイトを操っていたのか?」
「……状況証拠だけじゃそうとしか言えないけど、確定ではないよ。あのゼノンって人から情報を聞けたらよかったんだけどね。けどいくつか不審な点はあったんだ。まず、以前エボルトがここを襲った時に嵐山が勝手に外に出てしかも行方不明になっていたエボルトリガーを用いて変身した。外に出るには外にいる人の手を借りる必要があったし、何よりエボルトリガーも、もし嵐山が電脳世界に持ち込んでいたとしたならとっくにチェックに引っかかっているはずだ。つまり、外で何者かに保管されていた。その人物が非常事態とは言え衛生省の許可なしに嵐山を外に出してエボルトリガーを渡して変身させた。僕も衛生省もそう考えているよ」
「けどあいつ確かその前にビルゴサイトに襲われて病院送りになってなかったか?」
「エボルトはビルゴサイトに戦闘データを集めていたって言っていた。そして実はライトニング3にも似たような機能があったんだ。だからあの時、ビルゴサイトに襲撃されたんじゃなくて戦闘データの交換を実戦形式で行なっていたのだとしたら……」
「……でも、」
「そう。どちらもエボルトが動いたことで意味を持たなくなった。ビルゴサイトは瞬く間に破壊されたし、雷王院君はまだまだ全然エボルトに対抗できなかった。計画が動き出す前にエボルトによって破壊されたから闇に葬られそうになった。宇宙連合のゼノンが昨日現れたのもビルゴサイトを新しく修理して雷王院君に送るために地球の傍まで来ていたって事なんだろうね」
「……すべてはエボルトを倒すためか。けど結局あいつはエボルトに寄生されてしまった」
「……しかもあの野郎、自分から変身してたぞ。寄生はされてるかもしれないけど洗脳はされてない。つまり、自分の意思でこんなことをしたんじゃないのか?」
「……精神的に限界だったんだろうね。エボルトを倒すために暗躍までしていたのにそれらがすべて裏目に出て、徹底的に叩きのめされて、宇宙連合からも見捨てられて。当然彼のやったことは許されるべきじゃないけどさ」
「……エボルトと共に殺すことになるのか」
「それすら難易度はかなり高いだろうけどね」
「でも、倒さないといけない。このままじゃ世界が滅んでしまう」
「……けどどうする?アクセラレータでも勝てないんだろ?より上のチートが出てきちまって、しかも世界はこのざま。新しいガシャットも作れそうにない。詰んでるんじゃないのか?」
武がコーラをシェイクさせながら……馨に全力で止められながら言う。その時だ。
「ならばとるべき手段はただ1つぅぅ!!」
壁をぶち破って……すり抜けて黎斗が奇声と共にやってきた。
「黎斗社長!?どうやってここに!?自力で脱出を!?」
「……やっぱりね。嵐山以上に檀黎斗の警備が妙に厳重に見えたのはフェイクで本当はいつでも脱出できるようになってたってわけだ」
「そう。ライトニングによってな」
「ビルゴサイトの件にあなたも関係していたというわけだ」
「いかにも。設計図もなしにビルゴサイトを模倣することは新世界の地球では不可能だ。だからライトニングによって宇宙連合にビルゴサイトのレンタルが依頼され、そしてこの私が連合には秘密裏にリバースエンジニアリングしていたのさ!!」
「……ビルゴサイトを地球の技術で複製できるのか?」
「無理だな。材質が足りない。だがあのシステムだけは模倣できた。そこでどうだ諸君?私のアイデアを聞いてみる気にはならないか?」
「……一応聞いておくけど?」
「仮面ライダークロニクルを今一度全世界にばらまくのだよ」
「は!?いまさら何言ってんだあんた!?」
「落ち着け。人間をバグスターにすると言うのに変わりはない。だがビルゴサイトのシステムを使えば全人類があれと同じく恐ろしい速度と質で戦闘データを吸収していくらでも強くなる」
「……全人類をビルゴサイトバグスターにでもするつもりか……!?」
「質を復帰できるまでの間、数に頼るのはそんなに悪い事かな?」
「そういうことを言っているんじゃない!俺達は全人類をバグスターにするのは反対だって何度も言っているだろう!!」
「ならどうする?このまま地球を滅ぼすつもりか?既にバグスターになっている民間人達でもこの状況では自衛すらままならない。そうでない人間など以ての外。かと言って君達が助けて回るにはあまりに何もかも足りない。なら彼ら自身に戦ってもらうしかないだろ?最悪の場合でもバグスターなら水没したって死にはしない。時間稼ぎにはもってこいの話ではないかな?」
「どうしてあんたもあいつも手段を択ばないんだ!?」
「選んでいる余裕がどこにあると言うんだ!?今のライトニングはエボルトと融合していて君でも歯が立たなかっただろう!?少しでもゆとりが出来るまで手段を選んでいたら人類はバグスターにもならずにこのまま全滅するしかないぞ!?」
「……けど……」
「なあ、いいか?」
利徳が挙手した。
「俺が持ってるこのクロニクルパラドックスガシャットを量産できないのか?既に制御されていてもう変身状態で負けてもバグスターにはならないんだろ?」
「……確かにそれは元々上級バグスターの強化アイテムのようなもの。下級を増やす意味はないだろうからその機能は薄いだろうな」
「けどそれを使えば体内にバグスターウィルスが感染されるぞ?」
「それでもすぐにバグスターになることはない。それは将碁さん達見てれば分かるよ。バグスターにせずに今、自衛でみんなの命を守るにはこれしかないんじゃないかな?」
「……けど、危険だ……」
「危険だからって貴様は指をくわえて破滅を待つだけなのか?それが貴様が仮面ライダーである意味なのか?どうなんだ西武将碁!?」
黎斗が将碁の襟首をつかみ上げる。
「……分かった。俺の意地よりみんなの命だ」
「…………いいんだね?」
「ああ。椎名、量産と配布にはどれくらい時間がかかる?」
「数が数だからね。まともなやり方じゃ何か月もかかるよ」
「……それじゃ……」
「けど、まともじゃないやり方なら方法はある」
「それは?」
「ブライトタブレットの力だ。あれで何かしらのコピー技術を使えば魔法みたいに一気に大量生産だってできるんじゃないのかな?」
「……確かに出来るかもしれない……」
「それに……おっと、」
椎名がマウスを操作してたら何か誤ったファイルを開いてしまったらしくモニタ画面が変わる。
「これは?」
「あ、ああ。バグスターになった人達の身体検査みたいなものさ。それのゲーム部門だね。一般人とバグスターになった人達とで同じゲームをやらせてスコアを競わせたんだけど、あまり差異がなくてね。ただそれだけの結果だよ」
「……けど、これごく一部だけだけど俺達仮面ライダーよりかも圧倒的にスコアが高い……。そう言えば仮面ライダークロニクルの時も単純にレベル差以上の差異があったな」
「将碁、どういうことだ?」
「…………椎名、これは使えるかもしれない」
「……え?」
富士山・樹海。
「何かこれ大変なことになってるんじゃないの?」
パペットが気に持たれながらキングとカイトに話しかける。
「そうだな。まさかライトニングとエボルトが組むとは思わなかった。あの二人は今、全てを終わらせようとしている」
「……そう。その通りだ」
「!?」
声。見れば雷王院がすぐ近くにいた。
「ライトニング……!!」
「上級バグスター。そしてキングバグスター。地球の害悪はお前達で最後だ。俺の手で粛清してやる」
「……すべてをエボルトに踊らされているだけの馬鹿野郎が……!!パペット、カイト。お前達は逃げろ」
「けど、キング……」
「いいからいけ!!お前達じゃ歯が立たない!!」
キングがバグスター形態に変身する。対して雷王院も2つのフルボトルを出す。
「ライトニング!ライダーシステム!!エボルマッチ!!!Are you Ready?」
「変身」
「終億の霹靂!!エボルレイライトニング!!ヌゥハッハッハッハッハッハ!!!」
「決着をつけてやるぞ、キング!!」
「黙れ!!ゲームオーバーになるのはお前だ!!」
走る二人。その速度はマッハ以上。常人は愚か、上級バグスターであるパペットやカイトの目にも見えない速度での超高速戦闘だった。
「ふっ!!」
ライトニングの放った徒手空拳をキングはすべて左腕の盾で受け止め、時には受け流し、盾から剣を抜き放ってはその衝撃波だけでライトニングの体勢を崩し一気に切り込む。
対してライトニングは廻し蹴りで斬撃をずらして回避。キングの左腕をがっちりと脇に挟んでホールド。
「グレネードスープレックス!!」
肘の関節を決めた状態でスープレックス気味にキングを真後ろに投げ込む。
「ふっ、」
キングは剣を地面に突き刺して落下の衝撃を相殺。そのままライトニングの首に両足をひっかけて
「ギロチンブリッジ!!」
両脚の脚力をすべて使ってライトニングの首を締めつつ、腹筋のあたりから肉体の両断をもくろむ。
「少しは体術もやるようだな。だが!!」
ライトニングはキングの両足を払って倒立状態となったキングの脇腹に廻し蹴り風の膝蹴りを叩き込む。
「ぐっ!!」
キングの全身が地面から離れて吹き飛び、何本もの大木を貫いてはなぎ倒していく。
「ふんっ!!」
空中でキングは体勢を立て直し、剣から着地。切っ先が地面に触れた衝撃で周囲のバラバラになった大木の残骸がすべて消し飛び、ライトニングの突進を数秒停滞させる。その間隙にキングは突進。その勢いをすべて生かした刺突の一撃がライトニングの脇腹に刺さる。
「ほう、」
「余裕などかましていられるものか!!」
そして、
「エターナルブラスト!!」
ライトニングを貫いた剣からエネルギーの塊が放出され、一瞬で半径500メートル以内が黄金の炎に包まれて灰も残らずにすべてが消えていく。
しかしその中でも二つの影は健在。
「大した温度だ」
ライトニングはわき腹から剣を引き抜き、ボディアッパー。
キングはそれをガードして、後ろに下がる勢いを利用して片手で背負い投げ。
逆側の手で着地したライトニングがその手を軸にコマのように回転して両足のかかとをキングの右足の脛に叩き込む。
「人間と同じ弱点が通用するものか!」
「人体詐欺かよ!」
キングはその両足を片手で掴み上げてライトニングを真上に投げ飛ばす。
「エターナルサンダーボルト!!」
「俺を相手に電撃とは……っ!?」
直後、キングの放った雷撃はライトニングをたやすく貫通し、大気圏を突破。10光年先を航行していた宇宙連合の調査部隊が乗った宇宙戦艦3隻をも貫通して撃墜させた。
「ふう、思った以上にきつい一撃だった」
しかし着地したライトニングは無傷だった。
「……傷はいつでもいくらでもリセットできるのか」
「3人分のゲージを持ってると思ってくれればいい。で、次はエターナル何かな?ソード?シールド?ゲート?トラップ?えっと、あと何だったけか?」
「何度刺されても死なないって言うのなら跡形もなく消し飛ばすだけだ!」
接近のキング。その勢いだけでライトニングの肩口から鮮血が舞う。そしてその上で両者が正面から組み合い、しかしライトニングだけ肩口の傷跡から摂氏数万度以上の熱が生じてその肉体を猛烈な勢いで燃焼、光に昇華させていく。
「これは……」
「エターナルサンクチュアリ。今の俺の近くにいると傷は決して治らず逆に通常の何倍もの速度で広がっていく。そしてこの剣は相手の防御力を計算しない」
「バグスターの主にしては小細工がお好きなようで……」
「だが、お前を滅するには十分だ」
キングはライトニングを組み合った姿勢のまま持ち上げて頭から真後ろの地面に叩き落す。ノーガードで数百トン以上の衝撃を叩き込まれたライトニングは頭部から亀裂を走らせながら立ち上がる。と、
「ほっ!!」
「くっ!!」
そこから神速の裏拳を放ち、振り返る前のキングの腰に叩き込まれた。
「くっ……!!」
想像以上の衝撃を受けたキングは正面によろけ、しかし倒れない。その代わりに振り向くまでの0,0001秒に1万回以上の裏拳を腰に受けていた。
「そう言う貴様は随分と地味な攻撃ばかりを使うんだな。世界中を異常気象にしたとは思えない」
「花拳繍腿などに価値は抱いていないのでね。尤も相手に依るがな!!」
ライトニングが走り、同時に展開したキングの両腕のガードに膝蹴り。命中した直後に足を高く上げてガードを無理矢理蹴上げる。
「っ!!」
「Ready go!!!!エボルテックフィニッシュ!!!!」
一瞬でキングの背後に回り込み、その両腕を手首をつかんでホールド。そのまま跳躍して大気圏を突破。
「プラズマギミックインフェルノォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!」
「チャ~オ!!」
掴んだ手首からキングの全身をサッカーボールほどの大きさのプラズマの塊へと圧縮してオーバーヘッドシュートで思い切り地球に向かって蹴放つ。
「ぐううううううっ!!!!」
1秒も経たずにキングは球体の姿のままで四国大陸に叩き落され、激しい衝撃により信じられない速度で四国の大地が崩落していく。
「玉、取ったりかな?」
ライトニングが四国大陸だった残骸の一部に着地する。そこには赤黒く染まった海と無数の岩塊だけが広がっていた。キングの姿はどこにもなかった。
「……え!?」
CR。アイテムの完成を待つ将碁達の前に傷だらけの青年が出現した。
「あれは確か、キングの人間体!!」
「西武将碁……」
「……キング、どうしてお前がそんな……いや、お前程の奴をここまで痛めつけられる奴なんて限られてるか……」
「や、奴を止めるんだ……。このままでは奴は世界の全てを消し去ってしまう……。そして……」
キングの視線は将碁達の後ろにいた馨へと注がれた。
「え、え?」
「……君だけが我々の最後の希望……」
それだけ言ってキングは倒れ、黄金の光に消えていった。
「……私が、最後の希望……?」
「そう。気が付かなかった?」
「!?」
声。今度は後ろ。見ればそこには角永がいた。
「マンモスバグスター!!」
身構える武と利徳。
「お前達は必ず無駄なそして面倒くさい抵抗をするってエボルト様が言ってたぜ。だから潰しに来た」
角永がサングラスを外すとマンモスバグスターの姿に変身する。
「利徳、将碁は戦えない。俺達だけで何とかリターンマッチを果たすぞ!!」
「武君。僕もやろう」
「……私も行きます」
武、椎名、利徳、瑠璃が前に出てガシャットを構える。
「ガンガンリボルバー!!」
「インフェルノスペクター!!」
「仮面ライダークロニクル・パラドックス!!」
「テンペストフォールイージス!!」
「「「「変身!!!!」」」」
4人が一気に変身して既に突進を始めていたマンモスへと向かっていく。
「相変わらずすごいパワー……!!」
アイジスが誰より早く先行してマンモスを真っ向から受け止めてはパンチ一発で殴り倒す。
「キングが死んだからアイギスの暴走はないと信じたい」
ローズが蔦を伸ばして起き上がったマンモスを縛り付け、
「瑠璃ちゃん、外に!!」
「はい!会長!!」
そしてアイジスがマンモスを持ち上げて飛翔。利徳が明けた窓から外に飛び出る。なお、ローズの蔦はずっと伸びっぱなしでしかしマンモスの動きを捉えたままだ。
「よし、」
「喜屋武」
「うん!?」
外に飛び降りようとしたリボルバーを黎斗が止めた。
「忘れ物だ。キングが死んだ以上、止める必要もないだろう」
「これはネビュラトリガー……!!!使ってもいいのか……!?」
視線はローズに。
「……後できちんと検証する」
「分かった!!」
リボルバーは一度変身を解除して
「ドグマ!ガンガンリボルバー!!エクシーズマッチ!!Are you Ready!?」
「変身!!」
「背信のロックンロール・ドグマトリガー!!イイイイェェェェェェイ!!!!」
「……妙な感覚だな」
しかしリボルバーが窓から飛び降りて、アイジスにタコ殴りにされていたマンモスに射撃を与える。
「喜屋武!!新しいトリガーは今まで君が使ってきた様々な姿に変身できる!!」
「……って事は、」
突進してきたマンモス。それをリボルバーはかつてのレベル3の姿で受け止める。
「!?」
「ドグマナイトトリガー!!!」
そして槍の一撃でマンモスを薙ぎ払う。
「くっ、生半可なガンゲーマーの分際で……」
「何か言ったか?絶滅種!!」
立ち上がったマンモスに射撃しながら接近。手が届く距離になったら再び槍で刺突。激しい火花をあげてマンモスが数歩後ずさる。
「馬鹿な……この俺が貴様ごときに……」
「Ready go!!!ドグマフィニッシュ!!」
「FIRE!!!」
銃口から放たれた螺旋状のビームがマンモスの巨体をたやすく吹っ飛ばし、貫通。さらにビームはジグザグにマンモスの全身を貫きまくり、
「馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
マンモスが完全に跡形もなく爆発するまでひたすらその巨体を貫き続けた。
「おっしゃ!!久々のキルスコア!!」
リボルバーがガッツポーズをとる。
「……本当はあの超級バグスターのデータが欲しかったんだけどね」
ローズが嘆息しながらもリボルバーの肩をたたく。同時、黎斗が電子変換で姿を消したことに気付いた。怒気を孕めながら振り向くと、異常に気が付いた。
「……雷王院君……!?」
ローズが、リボルバーが、アイジスが、利徳が、将碁が振り向くと、CRの屋上にライトニングが立っていた。
「角永が倒されたか。まあ、試作だから当然の結果か」
「雷王院……!!」
将碁が睨む。しかしその手に握るガシャットは存在しない。代わりにリボルバーが前に出た。
「会いたかったぜクソ野郎。その気に入らない面が二度と思い出せないくらいに風穴を開けてやる」
「角永ごときを倒した程度で調子づいているようだな、クソガキ野郎。整形手術をしてやろうか?お代はお前の命でいいぞ?」
「摂る!!」
リボルバーが引き金を引き、銃口から一気にビームの束を複数発射する。
対してライトニングはそれらを片手で受け止めてリボルバーの動きに集中。
「こっちだ!!」
「見えてる!!」
一瞬で背後に回ったリボルバーを振り返らずにその顎に逆サマーソルトキックを打ち込んでぶっ飛ばす。
「ごふっ!!」
「その姿、忌々しい。だがちょうどいい」
振り向き、拳の一撃でリボルバーの顔面を貫通し、肘に引っかかったところでリボルバーを持ち上げて空高く投げ飛ばす。
「バグスターだろうと再生できないほどに滅却してやる」
「Ready go!!エボルテックフィニッシュ!!」
「プラズマギミッククェェェェェェェェェェェェイクッッッ!!!!!」
空中でかなりの速度で再生しているリボルバーの眼前まで迫り、トラックよりも巨大化させた両腕でリボルバーを挟み込み、
「チャ~オ!!」
歪んだ電子音と共に挟み込まれたリボルバーに地球を2回蒸発させられるほどのガンマ線が放出され、
「がああああああああああああっ!!!」
稲妻が曇天を集め、吹きすさんだ稲妻の中でリボルバーは跡形もなく消し飛んだ。
「武ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!」
「っ!!」
叫ぶ将碁。直後アイジスが飛翔してライトニングに向かっていく。
「よすんだ瑠璃ちゃん!!」
マッハ90の速度で空を飛び回るアイジスが超高速でライトニングに攻撃を加えていく。
「もう一度俺の患者になるかい?ただ今度は両手足を炭化させたうえで飽きるまで愛でさせてもらうけど」
「覚えはありませんがあなたには患者として世話になったようです。その借りであなたを元に戻します!!」
「女の子をいたぶるのは趣味なんでね!!死なない程度に悲鳴をあげろ!!」
暴風雨がやまぬ暗い空で激突を繰り返すライトニングとアイジス。最初こそ互角に見えたが徐々にアイジスの動きが鈍くなっていくのが見えた。
「くっ!!」
「待て将碁!!何をする気だ!?」
「ガシャットを取りに行くんだ!」
「無理だ!!勝ち目がない!それにあのガシャットはもう限界だ。恐らくあと一度くらいしかまともに戦えない!」
「けど……!!」
「今ここで将碁が無理をして仮に何かあったらあのガシャットをどうするつもりだ!?」
「……椎名……」
「行くんだ。瑠璃ちゃんがやられたら今度は僕がやる。時間稼ぎくらいは出来たらいいと思っている。それ以上は無理だから早く行くんだ!!」
「……すまない……!!」
将碁が走り出す。すぐに椎名の手配でヘリが出て将碁が嵐の空を飛んでいく。
どんどん小さくなっていく窓からは幾度かの雷鳴だけが見えた。
「……くそっ!!!」
将碁はただ唇を噛んで拳を握ることしか出来なかった。