仮面ライダーS/L29話
Tale29:その目的はBe the one
・仮面ライダークロニクルの終焉から2か月が過ぎた。
西武財閥と衛生省そして総務省とで全力を挙げてそのフォローを行なう事となった。
まずバグスターとなってしまった人間だが一度身辺調査として招集した際に体内に特殊な因子を移植したことによりバグスター形態に変身しづらくし、仮に変身したらすぐ衛生省に連絡が行くようになっている。表向きにはバグスターとしての力を振るわない事を約束できるなら人間としての権利を保障すると日本国憲法に追記する形を取った。
次に沈黙を続ける上級バグスター達やいつ襲来するともしれないエボルトの魔の手を対策するために仮面ライダー達による組織・Cyber-Resistance略してCRが設立。内閣総理大臣からの勅命により、西武将碁、喜屋武、雷王院歴、西武椎名の4名はここに属することとなった。この4人以外にも上級バグスターになる可能性があるとされる郡山馨、さらには現在昏睡状態であり、半ば植物人間と言ってもいいが万一覚醒を果たした場合の嵐山瑠璃もまたCRに属することとなっている。その一方で一連の流れに加担したとされる檀黎斗、檀正宗、嵐山宗男の3名については懲役666年とCRへの有無を言わさぬ助力が厳命され、全員がバグスターにされた上、スタンドアローンサーバの中に幽閉され24時間365日CRへの助力または衛生省からの尋問に答える事が義務付けられた。
当然、この数か月の事件はCR参加メンバーやクロニクルプレイヤーなどの固有名称を除いて国内は愚か世界中にまでニュースとして知られることとなり、半年後の2021年度の歴史の教科書にも記載されることが決定している。CR参加者には迂闊に余計な情報を話さないように厳命がされていて口止め料としてそれぞれ4億円が支払われた。衛生省は監察医を筆頭とした科学者達をより一層集めてはエボルト対策として仮面ライダー技術の発展と、バグスターを人間に戻すための技術の開発のため多忙な日々を送っている。
しかし、CR所属の4名に関しては口止め料の4億を貰わなかった代わりにCRとしての任務は絶対に果たすがしかし日常の自由は保障してもらいたいとの依頼を要請、受領されたことによりそれぞれ自分らしい自由な生活を送っていた。
「のはいいけどあのクソ野郎どこで何してるわけ?」
CR本拠地。かつての檀コーポレーション跡地に建設された総務省直轄の施設で暇を持て余している武がスマホをいじりながら言葉を飛ばした。
「武君。いい加減雷王院君をそう呼ぶのはやめたらどうだい?」
山のようにある資料を読みながら椎名は答える。あれからいつ何が起きてもいいようにCRへの常駐が日常と化している。確かに口止め料は拒否したが給料は普通に入ってくるため職務を放棄するわけにもいかずしかしどこかへ遊びに行くと言うのも憚れるため必然的にここで暇を持て余すことになっていた。
「将碁は何やってるんだ?」
「彼の希望でね。今まで僕に頼りきりだったから自分でもガシャットとかの開発が出来るようになりたいって勉強してるのさ。今はお隣のラボにいるよ」
「……ラボって確か元凶3人衆が幽閉されているところだよな。大丈夫なのか?」
実際いつの間にかバグスターにされていた武は何が起こるか分からない関係上、黎斗達との面会は禁じられている。まあ、会いたくもないと言えばそこまでだが。
「うまくあのサーバが作動しているみたいだよ。それに馨さんも一緒にいる。……暇なら僕の仕事を手伝ってよ」
「……それはそれで詰まらなさそうだからいいや」
武が電脳空間から漫画を取り出す。2か月ですっかりバグスターとしての能力を身に着けた武はそれに全力で甘えていた。当然衛生省もただ見過ごすわけではなく色々データを取るための実験を依頼しているのだがまだまだ武には分からないことが多い。本人としては移動や衣食住が楽になったとかであまり気にはしていないらしい。
・研究室。衛生省が24時間365日フル監視しているサーバで将碁がガシャット開発の学習をしていた。
「違う。そこをそうしてしまったら汎用性がなくなるぞ」
「いや、あの悪魔を相手にするのに汎用性より圧倒的なパワーの方が必要だ」
「パワーだけではエレガントではないよ。対策されたらおしまいだ」
まるで旧式Windowsのイルカの如くデスクトップ上でまったりしながら音声データを飛ばす3人を完全に無視して将碁は黙々と作業をしている。
「将碁君。何してるの?」
馨が浮遊しながら缶コーヒーを持ってきた。
「馨さんのボディを作ってるんだ。バグスターである武が仮面ライダーになれるように馨さんにもライダーシステムに似たボディを作ることで実態を得られるんじゃないかって」
「……私のためにしてくれてるんだ……」
「それだけじゃないけど。仮面ライダークロニクルは危険だから駄目だけど民間人を守るためのシステムとかは必要だと思う。俺達だって活動できる範囲には限界があるし。そういう時には無人のライダーシステムとかが必要になってくると思うんだ。そのテストをしながら馨さんにボディを用意しようと思って」
「……でもどうせなら仮面ライダーみたいな無機質な感じじゃなくて普通の人間の女の子みたいな可愛いのがいいかな」
「……女の子?」
将碁が手を止めて疑いの目で振り返れば馨のビンタが炸裂する。
「女の子ですぅ!!6年前からこの感じであまり実感ないから18歳の女の子みたいなものなんですぅ!」
「……18歳もちょっと怪しいけど」
「このロリコン!!」
頬を擦りながら将碁は仕事を再開する。
「実際この案は衛生省には伝えてあるんだ。絶対にこいつらに悪用されないようにって条件はついてるけど許可もされている」
「そうなんだ。……でも同い年の男の人に体用意されるってなんだかキモイかも」
「……手足のない爬虫類タイプに変更しようかな。汚い水の中でしか生きられない魚タイプにするのもアリか?」
「何でそんなこと言うの!?」
「……夫婦漫才をするのは自由だが」
再びビンタで宙を舞う将碁を見ながら嵐山が口を開いた。
「瑠璃の様子はどうなんだ?私には当時前後の記憶が削除されていて覚えていないのだが意識不明の状態なのだろう?この体では見舞いにも行けない」
「……父さんの病室に入れ替わるように入院してあの野郎が診ているそうですよ」
「ライトニングが?……動けない年頃の娘を仇敵に任せることになるとはこれも私に与えられた罰なのだろうか」
「……流石のあいつも患者を相手に好きなようにはしないと思いますけど……」
Transfer。
「今日はここまでです」
鏡執刀医がマスクを外して汗をぬぐう。
「鏡先生、ご足労だけでなくお手伝いまでしていただきありがとうございます」
続けて雷王院もまたマスクを外して汗をぬぐう。
「いえ、しかし驚きました。雷王院先生が執刀医の免許を獲得するなんて」
「所属は終末医のままですがね。いざとなった時に自分の手で応急処置しか出来ないなんて分野が違うとはいえ医者としてはちょっと名折れているような気もするので」
「……CRの所属になったと聞いていますが?」
「あれは基本的にあいつ等で十分でしょう。私は月の悪魔に備えるだけです。今の患者も理由ですが私は基本的にここで以前同様終末医を続けてもいいそうなので」
「ですがご自愛ください。今までも何度か戦闘により現場を離れることがあったようですから。他の分野はともかく緊急手術を主に担当している執刀医でそれはアウトです」
「はい。肝に銘じます」
鏡執刀医との初手術を終えた雷王院が瑠璃の部屋へとやってくる。
「……」
あれから2か月も経過するが瑠璃が目を覚ます様子は一切ない。脈拍や脳波などは正常を示しているし、体内からバグスターウィルスは変身に必要な最低限量しか検出されていない。やはり目の前で人外の存在となった両親が殺し合い、その末に母親から殺されそうになった精神的外傷が原因なのだろう。それに近い光景は過去の世界で見ている。エボルトのせいで父親を乗っ取られた少女の姿だ。自分とはあまり関わり合いはなかったうえ桐生戦兎によれば旧世界での記憶は引き継いでいない様子。今更あったところでどうにもない相手だからアドバイスを求めるような事も出来ない。
「……二人連続でなかなか厳しい相手を任されたものだ」
誰にも聞こえないよう小さく呟いた。
翌日。CRに警戒命令が出された。
「椎名、何が起きたんだ?」
「ああ。何やら小笠原諸島の方で港に停めてあった船が朝起きたら跡形もなく消えていたらしい。盗まれたわけでも破壊されたわけでもない微妙な状態でね。もしかしたらバグスターの仕業かもしれないからいつでも出撃できるように僕達はここでしばらくの間待機する事になったのさ」
「……あの野郎はいないけどな」
CRリビングにいるのは将碁、武、椎名、馨だけだった。実際雷王院は衛生省に自分が動くのはエボルト関係の身で他は他の連中を優先させてほしいと依頼をしてある。その依頼のために口止め料を受け取っていない。これを椎名は知っているが将碁達は聞いていないのだ。
「……せっかく戦いが一段落ついたって言うのにね」
「椎名、何か言ったか?」
「いや別に。……ん、追加の情報だ」
椎名がメールを読む。十数秒ほど経過して席を立つ。
「将碁、武君、馨さん。出撃のようだ」
「バグスターか?それともスマッシュ?」
「まだ詳しい状況は分かっていない。だが現地のスタッフからの報告では見たこともない化け物が発見されたらしい」
「見たこともない化け物か」
「とにかく行くぞ」
4人が椎名の車に乗り込み、東京湾へと向かいそこから用意されていた衛生省のフェリーに車ごと乗って出発。
「2時間程度で到着するはずだ」
「そんな猶予あるのか?」
「俺なら多分一人で先行できるけどどうする?倒せなくてもせめて様子を探るくらいなら……」
「いや、駄目だ。船を消した相手と同じとは限らないがもし同じだった場合相手は船一隻を跡形もなく消し飛ばすか何かしらの方法で移動させられる異能の使い手。それを君一人で相手させるわけにはいかないよ。それにさっき入ってきた情報によれば相手は複数いるらしい」
「……姿とかの情報はないのか?」
「肉と骨の位置が逆転した恐竜の姿をした体長3メートル程度の銀色の怪物らしい」
「何じゃそりゃ。人型ですらないのかよ」
「……まだこの段階ではバグスターかスマッシュか特定できないな」
「他に情報はないのか?と言うかその怪物は何をしているんだ?港町で猫とでも戯れているのか?」
「いや、そいつが近くにいると車だろうが民家だろうが一瞬で消えてなくなるらしい。また、この情報は1時間ほど前のものであり、それ以降は定期連絡すら来なくなったらしい」
「……スタッフはやられた可能性が高いな」
「確か衛生省のスタッフはレベル50のエグゼスターを使っているんだよな?ってことはそのレベル50エグゼスターでも倒せない奴が複数いる可能性が高いのか」
「らしいね。……憶測をしても仕方がない。到着するまでの間は休んでおいた方がいい。と言うか僕が眠い。1時間したら起こしてくれ」
言うと椎名はソファに横たわってそのまま眠ってしまった。
「……のんきだな」
「まあ西武財閥の会長続けながらCRやってるから忙しいんだろう。その分月の給料が200万超えてるってさ」
「今度何かおごってもらうか」
「いや二人とも。椎名君は遊んでるわけじゃないのに……」
馨が嘆息するが将碁と武は漫画を読み始めてリラックスしていた。
やがてフェリーが小笠原諸島に到着。遠目で見ても悲惨な状況になっているのが見えた。
「……人も建物も車もないな」
3人だけがフェリーから降りて港町に足を運ぶが、そこは港町とは言えないコンクリートしかないエリアとなっていた。言葉通り、通行人も建物も車も電柱も何もない状態だ。
「目につくものは片っ端から消し去ったって感じかな」
3人はいつでもガシャットを出せるようにして腰にベルトを巻いた状態でゆっくりと様子を窺うため移動を開始する。やがて本来銛があるところに到着するがしかしそこに森はない。木の一本すら生えていなかった。
「……破壊じゃないよな?爆撃して消し飛ばす系かと思ってたけど」
「いや、二人とも。これを見てくれ」
椎名が抉り返された土を見る。
「……木が根元から引き出されている跡だ。つまり相手は破壊するわけでも燃やすわけでもない。純粋な力か何かで木を根こそぎ引きずり出したうえでそれを跡形もなく消し飛ばす2種類の力を持っていると考えられる。……僕はこれに近いものを複数見たことがあるよ」
「それは?」
「カービィと弥勒法師」
「「……なるほど。つまり、」」
そのタイミングで異変は起きた。正面にある山が騒音を立てながらものすごい勢いで消えていく。本体なら土砂崩れどころではない現象を土砂崩れすら起こさずに引き起こしているのだろう。3人は顔を見合わせてから急行する。やがて走ること15分。それは確かにいた。
「gggggyyyyyyyyyoooooooooooooooooooooo!!!」
報告にあったように肉の上から骨が出ているような姿の銀色の恐竜じみた3メートルほどの怪物がそこにはいて、口を開けてはまるで掃除機のように山を土砂に分解しては吸収していた。
「あれで人も家も船も全部吸い込んだんだな」
「体積から見ると一瞬で消化しているようだから助ける見込みはないだろうね」
「……とりあえずぶっ殺すぞ!」
3人が同時にガシャットを出す。
「ネオスターライトドラグーン!!!」
「ガンガンリボルバー!!」
「インフェルノスペクター!!」
「「「変身!!!!」」」」
「レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ホワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!」
「ガンガンバキュンバキュン!!ガンガンズギャンズギャン!!ガンバズギャットリボルバー!!」
「メーデー!メーデー!!メーデー!!!インフェルノスタート!!!アイムアレベル100インフェルノゲーマー!」
3人がその場で変身を終える。
「……あれ?椎名が車なしで変身できてる?」
「あれは一時的なものだったからね。インパクトが勿体なかったけどやっぱり利便性優先さ」
「ともあれ、行くぞ!」
3人が走る。
「あれのコードネームはグルーラーだ!」
グルーラーが口を開ければそれをふさぐようにセーブがヘッドロックを仕掛けて可能な限り口を閉ざし、ローズが手首から伸ばした蔦でそれを補強する。その間にリボルバーが遠距離からの連射でグルーラーにダメージを与えていく。
「武!あまり派手な攻撃はするな。ロックが外れる」
「分かった!じわじわとやらせてもらう」
連射を続ける。多少衝撃はあるようだがセーブもローズも問題なく動きを封じ込めている。やがてグルーラーの被弾部分の皮膚や肉が少しずつ破れていき、見たこともないような色の出血が土に落ちていく。
「そろそろよさそうだな」
セーブが一度後ずさり、
「オープンウィング!!」
サブリメノンゲーマーへと変身してタブレットを操作する。
「本当は意趣返しで吸い込んでやりたかったけどどんな影響あるか分からないけど手段を変えさせてもらう!」
言いながらセーブの姿が日番谷冬獅郎のものに変わる。
「卍解・霜天に坐せ!大紅蓮氷輪丸!!」
白い斬魄刀を振りかざし、猛烈な勢いで冷気が溢れ出し、グルーラーを一瞬で凍結させる。
「今だ!!」
凍り付く前に離れたローズがガシャットのスイッチを押す。
「インフェルノクリティカルフィニッシュ!!」
「一気呵成!!」
両手から出した長大な蔦が左右に広がると刃のように鋭くなり、まるで巨大なはさみのようになるとそのまま凍結したグルーラーを挟み込んで一気に両断する。
「やったか!」
バラバラの粉々の水分となったグルーラー。それを3人で確かに確認し、勝利を喜び合おうとしたその時。
「……ん?」
リボルバーが異変に気付く。見ればグルーラーの残骸があった場所に銀色の姿が立っていた。
「……」
「あれはハザードスマッシュか……!?」
「いや……あれはどこかで見覚えがある……。確か、旧世界でエボルトの進撃を止めるために宇宙連合で開発されたという人工量産型ライダー・ビルゴサイト……!」
「ビルゴサイト……?旧世界の奴がどうしてここに……?」
警戒の3人。その視界の中でビルゴサイトはゆっくりと動き出し、3人に向かって全力疾走してくる。
「敵なのか!?」
ビルゴサイトの飛び蹴りをサンクチュアリゲーマーに戻って受け止めるセーブ。それを単眼モニタで視認し、分析をするビルゴサイト。数秒の分析を終えると、途端にセーブの下腹部のガシャットに拳を叩き込む。
「ぐっ!!」
変身解除はされなかった。だが、わずかにエラーが走っているのかセーブの姿が強制的にサブリメノンゲーマーになってしまう。しかも操作するより先にビルゴサイトがタブレットを奪い取る。
「やべっ!!」
「まずい!!」
手を伸ばす3人。だがそれより早くビルゴサイトはタブレットを操作。ビルゴサイトの姿がウィングガンダムゼロカスタムに変貌し、その翼で飛翔。両腕のツインバスターライフルを3人に向けて発砲する。
「!?」
咄嗟に防御態勢を取った3人。だが、それが意味をなさない程の大爆発が起きた。
「……ぐっ、」
爆発が収まった爆心地。煙が霧のように発生するクレーターの中で将碁、武、椎名の3人がうずくまっていた。
「……」
着地したビルゴサイトは元の姿に戻るとタブレットを地面に叩きつけて粉砕。その上で右腕をバスターライフルへと変貌させて3人に向ける。だが、次の瞬間には対象3人の姿が消えていた。
「……?」
ビルゴサイトは周囲数百キロをレーダーでくまなく調べたが対象の反応がない。それから数分ほど様々な方法でレーダーを活用させたが結果は変わらず、やがてどこかに飛び去って行った。
「危ないところだったな」
東京。CR。気付けば将碁達3人はそこにいて正面にはクロノスが立っていた。
「……檀正宗……!?」
「私がポーズで回収しなければ君達は絶版となっていた。感謝するのだな」
言い終わると正宗の姿に戻る。
「勝手に外に出られなかったはずだ」
「ライトニングが外部操作を行い、制限付きで出られたのだよ。変身と解除とポーズの使用はライトニングの許可が必要だった。ギリギリのところで間に合ったようだが」
「……どうして俺達を助けたんだ?そのまま逃げる事も出来ただろう?」
「そんなことをすればあのサーバの中にある私のオリジナルデータが削除されてしまう。……黎斗。あれに見覚えはあるか?」
「……あるともさ」
黎斗の立体映像が出現する。
「ビルゴサイト。対エボルト用量産型人造ライダー兵器。本来なら旧世界でエボルトに全滅されたはずだ。あれは地球の技術で複製するのは不可能だった」
「……それがどうして新世界のこの地球にいるんだよ」
「……考えられる可能性は1つだけ。旧世界でビルゴサイトを製作した宇宙人がその記憶と技術を引き継いだままこの地球に今、姿を見せて何かしらの行動を開始しているという事さ」
「……いったい何が起きているんだ……?」
月面。
「……面白いことになってきたものだ」
全身が月面に埋まったままのエボルトが笑い声をこぼす。
「……これは俺もそろそろ動いてもいいかもしれないな」
ひとしきり笑った後、エボルトは月面から腕を伸ばした。