仮面ライダーS/L24話
Tale24:復活のTrigger
・西武財閥。会長室。もう何日目になるか分からない暗い空気。
「……」
テーブルをはさんで無言のままコーヒーやお茶を飲む将碁、雷王院、そして武。
結局あの戦いで武は正宗に放置され、ドグマトリガーも使えなくなり、行き場所も戦力もなくしてしまっていた。仕方なく気まずい空気の中、元の西武財閥コンビニ店員に戻ったわけだが今日は椎名に呼び出された。
「で、俺に何か用?」
「ああ。君に用があるんだ」
浮遊しながらコーヒーを運ぶ馨からコーヒーを受け取りつつ椎名がとある画面をモニタに表示させてみせる。
「これは……」
「そう。嵐山が根回ししていたんだろうね。現状仮面ライダークロニクルは日本の大半から姿を消した。警察による回収作業が進んでる証拠だよ。しかしあるエリアに関してはそうではない。そのエリアこそが旧沖縄エリア。現在の海龍王国だけは警察の手が回っていない。ばかりか共産党の武装勢力達が仮面ライダークロニクルを所有しているようで純粋な戦闘兵器として扱っているようなんだ」
「……今から30年くらい前か。共産主義の危ない宗教集団に沖縄が乗っ取られ、日本国からの独立を宣言。空港や港を支配して許可なく島の外には出さないようにするだけでとどまらず世界全ての首都として海龍王国を名乗った」
雷王院がスマホを見ながら内容を読み上げる。それを聞いて武は酷く陰鬱そうな表情を取る。
「まさかとは思うが、」
「そう。経歴調べたけど、喜屋君さ。この海龍王国の出身だよね?しかも勝手に国王名乗ってる喜屋武キリエブルの息子で長男。どういう事情かは分からないけど約10年前。君が中学を卒業する頃に王国を出て東京で住み始めている。将碁や雷王院君はそれを知っているのかな?」
椎名からの質問に二人は答えず武の方をちらりと見やる。
「……俺に王国への手回しをしろって言うのか?」
「これはあくまでもお願いだよ」
「任意同行と言う名の拉致強行みたいな感じの?」
「僕自身にそんな気持ちはない。ただし、実際最善だと思ってる。檀正宗がどうして君を手下に置いていたと思う?雷王院君への復讐だけじゃない。仮面ライダークロニクルの大量入手のためにも君を利用しようと思っていたからだ」
「……」
武は押し黙る。実際、薄々とそうではないかと言う気はしていた。正宗が自分を利用する理由の中にそれが含まれていないという確証はなかった。
「最善ってのは俺を使えば楽って事か?」
「それもある。けど、檀正宗が君を手放した理由が分からないかい?」
「それは、」
「椎名」
雷王院が口をはさんだ。
「こいつに持って回した言葉が通じると思うか?もっと直接的に言わないと通じないぞ。……お前が身内を売らないとその身内がバグスターによって蹂躙されかねないと」
「何だと……!?」
「雷王院君。忠告はありがたいけど君はなるべく彼とは話さない方がいい。今は喜屋君に戦力がないから戦闘沙汰にはならないけどそれでも面倒なことになるのは変わらないんだからさ」
「……ふん、」
「喜屋君。雷王院君が言ったとおりだ。檀正宗は嵐山が帰ってくるより前に海龍王国を狙い、仮面ライダークロニクルの残り全てを奪いに来る可能性が否定できない。あの上級バグスター達が動くかどうかまでは分からないが、檀正宗仮面ライダークロノス一人相手でもクロニクルプレイヤーじゃかなりの脅威に間違いない」
「……相手は一応国家だぞ。大胆な事をするとは思えない」
「希望的観測だよそれは。それに海龍王国は自称国家であって現在でも扱いとしては日本の一都道府県に過ぎない。たとえ事実上中国に支配されていると言ってもね。既に在留米軍が撤退して20年以上経過している。檀正宗に攻められてしまえば長くはもたないだろう。噂によれば君の父君であるキリエブルさんは既にレベル90のクロニクルプレイヤーだ。それを檀正宗が狙わないわけがなく衝突は避けられない。レベル90では将碁のネオスターライトドラグーンガシャットのような力でもない限りはクロノスには勝ち目がない。だから、」
「……俺は勘当されたも同然だ。もうまともに王国に近付くことすら出来ないと思う」
「……聞いてもいいかな?」
「……本当なら俺は15歳の誕生日に国王を継ぐはずだった。親父がもう当時時点で60近かったからな。けど俺はそれを拒んだ。ただでさえ王子の立場が面倒だったのに王にでもなったらもっと面倒になる。その結果3つ年下の弟が次期国王になり、俺は国外追放。去年ぐらいに弟が正式な王になって既に子供も何人かいるらしい。俺の出る幕じゃない」
「……ほう、僕が調べた情報では弟君の情報はなかった。権力でも調べられない伝手がまだ身内の君はあると言う事かな?」
「……勘当された身とは言え故郷を売れない」
「なら、このまま滅ぼされるのを待つだけかな?」
「……あの国はそう簡単に滅ぼされたりしない」
「何か根拠はあるのかよ坊ちゃん」
雷王院がスマホ漫画を読みながら言葉だけを放った。同時に椎名が頭を抱え、将碁が嘆息。武が表情を歪める。
「誰が俺と会話していいって言ったんだ?」
「ンなことはどうでもいい。相手は時間だって止められるうえレベル100を超えた存在。在留米軍がまだ配備されていたとしても止められる保証がないんだぞ?共産党も宗教屋も現実を見ずに自分の考え1つと暴力だけで何もかも解決できると思ってるからたちが悪い」
「お前……!!」
「理由はどうあれお前が故郷を庇うつもりがないのは構わないが、大量且つ高レベルのクロニクルガシャットが檀正宗の手に渡ると絶対面倒臭そうな事態になるからそれを防ぎたいって言ってるんだ。お前の気持ちなんざどうでもいい。いいから情報源と島へのルートを吐けって言ったんだよ、裏切者」
「……誰がお前なんかに教えるかよ」
吐き捨て、武は会長室を去っていった。
「……雷王院君」
「椎名、奴に理屈なんて通じない。俺への恨みだけでそれまでやってきたこと全部投げ捨てるような刹那主義の奴だぞ。厄介な力は取り除いた。なら今度は情報と情報源を取り上げるべきだ。檀正宗は何も洩らさなかったようだがあの様子じゃお国の情報は持っているようだしそれが仮に檀正宗に漏れたら面倒だ。場合によってはそのためだけにもう一度あのトリガーの力を許可されて敵として立ちはだかりかねない」
「それをさせないように穏やかに事を進めたかったんだけどね……!」
「あの手の奴に優しくして何か希望を与えても無駄だぞ。それに縋るだけで何も変化を起こすわけじゃない。ああいう奴はそれこそ絶望でもさせて全ての希望を奪い去ってからその上で目の前に餌でも垂らして体よく利用するか、それも出来ないようならたったと始末するに限る」
「……以前から思っていたけれども、将碁や喜屋君が君に恨みを抱いている理由は分かったが逆に君はどうして彼らにそんな冷たいんだい?この前の旧世界の話とかあの3つのフルボトルと言いトリニティドライバーと言い、君達3人は旧世界でも仮面ライダーの仲間として戦ってきたんじゃないのか?」
「仲間と信じて戦い、宇宙を守るためあの野郎を叩きのめしてやっと希望溢れる新世界にたどり着いた末にこんな結果が待ち受けて居ようって言うのならそれこそ否応なしにハザードレベルがインフレ起こすほど絶望の1つや2つもするものさ。出会って10年以上経とうが結局誰一人として相手の事は何一つも分かっていなかったんだ。……そこに悲しみを抱かないまでに人外に変身した覚えはない」
言って雷王院もまた部屋を出ていった。
・夜。定時後に武は自宅に帰らずタクシーや電車を乗り継いで空港に赴いてそこから飛行機に乗り、目的地を目指す。
「……」
手にはガンガンリボルバーのガシャットがある。何度かスイッチを押してみたが当然変化はない。ドグマトリガーに適応するために体内のバグスターを完全に除去されたのだから当たり前だ。
「……結局今は何も残っちゃいない」
それだけ呟くと到着までの時間、眠ることにした。
やがて数時間後。飛行機が空港に到着する。場所は長崎の空港だ。王国に近い事もあってここにも王国の息がかかっている。が、近いとはいえ本拠地ではない関係であまり王国の事情は入ってきていない。
「……来たぞ」
とある喫茶店。そこに武が入れば店主は表情を変える。
「……まさか本当に来るとはね。思ってなかったな、王子」
「その呼び方はやめろと言ったはずだ。と言うか今王子って呼ばれると弟の息子みたいに思われるだろ」
「あまりその話もしない方がいいっすけどね。その情報、国外にはほとんど出回っていないんだ。……で、本当に行くんすか?王国に」
「……ああ。親父のガシャットを奪う。クーデターを起こして俺が王国を乗っ取る」
「……親父さんだけでなく弟さんの命も奪う必要がありまっせ?その家族も」
「革命には流血は必要なものだ。……で、揃っているか?」
「もちろん」
店主がウィンクすると、店内にいた10人ばかりの客がウィンクを返す。老若男女様々なメンツでとても同じ集団には見えない。これが王国に侵入するためのクーデターのメンバーと言う事なのだろう。数は少ないがしかし全員王国の市民権を持っている人物だ。潜入自体はたやすいだろう。
「……これを」
店主がクロニクルガシャットを渡す。
「レベルは?」
「45。俺らが用意できた中では最高レベルっす」
「……まあ、仕方ないか。じゃあ行こうか」
武の合図で一斉に席を立つ。長崎・令和の出島。そこは王国民もしくはその王国から許可を得た者しか通過できない海上高速道路が通っている。武達一同は飽くまでも喫茶店の一員としてキャンピングカーに乗って海上高速を走り抜ける。関所の審査の際には武は奥に隠れることで発見を阻止。無事に3つの関所を通り抜けて王国に到着した。
「……10年ぶりかな」
本土に足を踏み入れた武。懐かしいような日々感じている日常のような空気を肌で感じる。目指すは王宮。店主が実家に隠していた専用車両に乗り換えて移動を開始する。この専用車両は武がまだ王子だった頃、専属運転手だった店主が王宮より配備された専用車両だ。今でもまだ検閲を受け続けている関係で正式なものとして王宮まで進むことが出来る。今回は年に1度の王への謁見を題目にして王宮へと向かう。入国審査以上に厳しい審査を複数抜けて車両はついに王宮の敷地内へと到着する。
「王子、大丈夫ですか?」
「……王子って言うな」
実際武は顔面蒼白で鳥肌を立たせていた。もう二度と戻ることはないと思っていた王宮にまたやってくることなど、夢の中でしかありえないと思っていた。まさか現実になるとは思っていなかった。しかもこれから自分はクーデターを起こすのだ。父や弟を手に掛けたうえで。
「……そうでもしないと檀正宗にこの王国は滅ぼされてしまう」
武は用意されたローブで顔を隠した状態で店主の後に続く。店主以外は全員同じ服装をしている。そしてそのローブの下に武器を用意しているのだ。
「王への謁見に参りました!」
「入れ」
やがて玉座の間に到着する。10年ぶりに見る弟の顔はますます父親に似ていた。恐らく自分にも似ているだろう。しかしまるで面影がない。無理もない。ここを出た時にはまだ小学生だったのだから。しかし、父王……先代の王の姿が見えない。隠居しているのだろうか?
「長崎から来たそうだな」
「はっ!」
「……土産話を聞かせてもらおうか。……なあ、兄貴」
「!?」
直後、目の前にいた店主が宙を舞った。
「まさかこの私がこんなことをやらされるとは」
声。見れば店主のいたところに女性に見える何かが立っていた。
「あんた、バグスターか……!?」
「一度会ったことがあるのをお忘れですか?」
「……そう言えば……確かアイギス……!!」
パラド達上級バグスターの一人。グラファイト、マグテラー、パラド、パペット、カイト、そしてこのアイギスからなる6人が上級バグスターだ。と言うことは、
「まさか既に……!?」
「ええ。この国はつい先日私の手でバグスターの領土としました」
「……そ、そんな……」
「兄貴。もうここは兄貴の知っている国ではない。バグスターの国家になっているんだ」
「まさかお前も……!?」
「そう。見ろよ、この姿を」
王が玉座から立ち上がると、一瞬その姿にノイズが走り次の瞬間にはシーサーのような姿になっていた。
「もう俺の名前はティーダバグスター!!人間なんてとっくにやめているのさ!!」
ティーダが走る。秒速100メートル以上の速度で迫り、一瞬で武は吹き飛ばされて妙な体勢のまま右方20メートルにあった壁に叩きつけられる。
「ぐっ!!」
一瞬だけ目に入った景色では先ほどまで一緒だった老若男女のメンバーが血祭りにあげられていた。もはやそこに残っていたのは粉々となった血肉だけだ。
「ば、バグスターに乗っ取られてるならどうして檀正宗は俺を……」
「あなたは何か勘違いをしているようですね。檀正宗はバグスターの力を手に入れていますが所詮は人間。我々バグスターが真に協力するはずがないでしょう?彼はこの王国のクロニクルガシャットを欲しがっているようですが私としてはそれを彼に渡すつもりは毛頭ありません。……おやりなさい」
アイギスが囁くと、奥の部屋から小さな子供が姿を見せた。場違いに武が一瞬戸惑うが次の瞬間、その子供はラブラドールバグスターに姿を変えた。
「!?そ、そんな小さな子供までバグスターに……!?」
「したのではありませんよ?その子は生まれた時からバグスター。……さあ、あなたと同じ血を持ちながらバグスターではない卑しい存在を駆逐なさい」
アイギスの声に従い、ラブラドールまでもが武に向かって突進してくる。武はとっさにクロニクルガシャットを取り出すが、そのガシャットにラブラドールが噛みつく。
「くっ!」
ガシャットから手を離したのは武の戦士としての直感が冴えていた証拠だった。次の瞬間にはガシャットは氷漬けになり、そして粉々になった。
「噛みつかれると凍るうえ粉砕されるのかよ……!」
後ずさる武。牙をむき距離を詰めるはティーダバグスターとラブラドールバグスターの親子。死を覚悟しつつ、武が懐に手を伸ばす。出したのはガンガンリボルバーのガシャット。当然スイッチを押しても反応しない。
「……ここまでか……!」
武が目を閉じる。直後。
「レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ホワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!!」
「ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「!?」
電子音。そして屋根をぶち抜いてセーブとライトニングが降ってきた。
「お、お前達!?」
「話はあとだ!逃げろ武!!」
セーブが突進し、ティーダを突き飛ばす。それを見て激高したラブラドールが向かおうとすればライトニングが横から蹴り飛ばす。
「……この国はもうおしまいだな。お前の仕業だな、アイギスバグスター」
「あなたがライトニングですか。話はパラド達から聞いています。しかしいくらあなたでもこの国から生きて帰ることは出来ません」
「それはどうかな?」
ライトニングは刃を出し、再び向かってきたラブラドールを切り払い、アイギスに向かっていく。
「ぐおおりゃあああああああああ!!!!」
「ふっ!」
ライトニングが稲妻を纏った刃を振るう。しかしアイギスはそれを袖で受け止める。
「袖!?」
「はっ!」
さらにアイギスはその場で一瞬ノイズに姿を消し、次の瞬間にはガルーダバグスターとしての姿を見せていた。
「それがお前の本当の姿か!」
「バグスター種族の繁栄のため、あなた方にはここで消えてもらいます」
ガルーダが飛翔し、空から破壊光線を吐き散らす。ライトニングは回避しようとしたが、背後に武を見てその場にとどまる。
「目からビームキャノン!!」
両目から光線を発射して破壊光線を真っ向から受け止める。
「お前……」
「勘違いするな!お前には聞きたいことが山ほどあるんだ。勝手に死なれちゃ困る。さっさと消えろ!!椎名が外で待ってる!!」
「……もう何でもいいや」
「んあ!?」
「……疲れちまった」
「死ぬのか!?」
「まさか」
武がその場でひとしきり爆笑する。狂ったように壊れたようにそんな自分をあざ笑うように、慰めるように。やがて、その体が一瞬ノイズにまみれる。そして、
「ガンガンリボルバー!!」
「変身!!」
「ガンガンバキュンバキュン!!ガンガンズギャンズギャン!!ガンバズギャットリボルバー!!」
「何!?」
ライトニングの背後。武がリボルバーへの変身を遂げていた。
「仮面ライダーリボルバーレベル100ガンバズゲーマー!!」
変身を遂げたリボルバーがハンドガンを出して速射。秒速3発で発射された弾丸は空にいたガルーダの両翼と額を撃ち抜く。
「うううっ!!」
「弟と故郷が世話になったな。まさか義妹がバグスターになるとは思わなかったが撃ち抜くだけだ」
破壊光線を中断し、墜落してきたガルーダの胸や翼を執拗に撃ち抜くリボルバー。
「やめろ!!」
セーブを振り払ってティーダが突進してくる。
「綺麗な嫁さんと幸せにすればいいだろ?ただし、あの世でな」
それをリボルバーは片手で受け止め、投げ飛ばし、空中でティーダの胸を撃ち抜く。
「がぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
想像だにしない火力に貫かれたティーダがノイズまみれの血をまき散らしながら玉座の間を転げまわる。それを見ないままリボルバーはライトニングに向かおうとしていたラブラドールの額を撃ち抜く。
「が……わ……」
撃ち抜かれた額の部分を中心にラブラドールの肉体がゆっくりとしかしどんどん加速して消滅していき、ティーダとガルーダが視線を向けた時には完全に消滅し、経験値となってリボルバーに降り注ぐ。
「兄貴ィィィィィィィィィィッ!!!」
ティーダが全速力で突進を開始。対してリボルバーはガシャットのスイッチを押す。
「キメワザ!!ガンバズクリティカルバースト!!」
「FIRE!!」
そして向けた銃口から必殺の火力が発射されて向かってきたティーダをぶっ飛ばし、その手足を消し飛ばしつつ胴体に大きな穴をこじ開ける。
「くっ……そ……」
衝撃と閃光が終わり、血だらけの床に王の姿が倒れる。それをリボルバーが歩み寄って見下ろす。
「……家族を捨てたばかりか、家族の幸せさえも奪うのか……!?」
「……俺は喜屋武まるたではなく、喜屋武だ。ただ、仮面ライダーとして蔓延るバグスターを倒しただけ。俺はもうそれでいい」
「……修羅のつもりか……くっ!!」
「……じゃあな。地獄で全員分の食卓を用意しておけよ。そう遠くない内に行くかもだから」
リボルバーがそう言うと、王はその場で涙を流しながら消滅した。
それを見届けてからガルーダの方を振り向く。ガルーダは既にアイギスの姿に戻っていた。
「……くっ、人間風情がどうしても我々バグスターに逆らうつもりのようですね……!」
「少しの間だけだがお前達バグスターと行動して分かったことがある。バグスターはごみを捨てない。ばかりかごみも仲間にする。けど、人間はごみを捨てる生き物なんだ。だからお前達には消えてもらう」
「……後悔しますよ。あのまま手駒として使われているのを放棄したばかりかこの国を滅ぼしたことを」
「関係ないな」
リボルバーが引き金を引く。銃弾は発射されたがアイギスが去った後の空間を貫いた。
戦いが終わり、玉座の間は血の臭いと静寂だけが支配した。
「……武」
セーブとライトニングが歩み寄る。やがてリボルバーが変身を解除したのを見て二人も変身を解除する。
「そう警戒すんなよ。さっきも言ったように俺はもう喜屋武まるたじゃなくて喜屋武なんだ。倒すべき相手はもう間違えない。……それでも正直お前は心底憎たらしくて仕方がないがな」
「……こっちのセリフだ。……どうして変身できた?」
「さあね。クロニクルガシャットを持っていたからじゃないのか?使ってはいないけど」
「……まあいい」
「ああ、帰ろうぜ。俺達の町に」
「……そうだな」
そうして3人は王国を去った。ちなみに昨日の段階でまだ武が見えない状態だった馨にストーキングさせていたからすぐに椎名に情報がいきわたって行動に移せたらしい。武は難色を示したが逆に馨には叱られるのであった。
また、海龍王国は王族が全員消えたこともあり、次の王を決めるためバグスターになった国民全員で血で血を洗う戦いが勃発したのだがそれはまた別の話。