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仮面ライダーS/L19話

Tale19:宇宙へと駆けるTempest

・東京都千代田区麹町。とあるアパートの一室。そこに嵐山親子はいた。
それまでの職場である西武財閥本社が大手町にあり、麹町との距離はかなり近い。しかし、それがカモフラージュにもなるだろうと敢えてこの場を隠れ家に選んだのだ。その隠れ家に客人が来ていた。檀正宗である。
「……今日は何の御用かな?先代社長」
「そう構えなくてもいい。私はただ1つ情報を持ってきただけだ」
「情報?」
「そう。嵐山本部長、君はバグスターになれば仮面ライダーにもなれるという情報をね」
「……!」
驚いたのは嵐山だけではない。少し離れたところで話を聞いていた瑠璃も表情に出していた。
「条件は?」
「話が早くて助かるよ。君達親子には、セーブ、リボルバーそしてライトニングの3人の仮面ライダーを始末してほしい。そのためにレベル100のガシャットを用意してもいい」
「……レベル100……この前はレベル20だったはず……そこまで技術は進化しているのか……」
「全く新しいものを作り出す才能は息子には負けるがこれでも息子が生まれた時には既に開発者として飯を食っていたのだから純粋な実力ではまだ私の方が上だよ」
「……西武椎名は手出ししなくても?」
「昨日見に行ったが彼はまだ戦える体ではない。敢えてライダーの力を使う必要もないだろう。さあ、どうするかね?嵐山本部長。君がバグスターになり、私のためにあの3人を倒してくれるのであればレベル100のガシャットを用いて仮面ライダーになれる。私のように歳に似合わない若い肉体を手に入れることだって出来る」
「……一晩考えさせてくれ」
「……いいだろう」
会話は終わった。正宗は出されたお茶を一気飲みした後、軽く会釈をしてから嵐山家を去った。
「……お父さん、どうするの?」
「ライトニングによって仮面ライダークロニクルは浸透する前にほとんど鎮火された。プレイヤーももはや数えるほどしかいないだろう。もはや仮面ライダークロニクルでの願いであいつを蘇らせてやることは難しい。だがバグスターになれば私の記憶から抜き出してバグスターとしてあいつを復活させられるかもしれない」
「……本当にそれでいいの?」
「……瑠璃。檀正宗を信用できるか?」
「……分からないよ。ライトニングや西武椎名からクロニクルプレイヤーを守るために私にレベル20のガシャットをくれた。それが2週間程度でもうレベル100、しかもバグスターになれだなんて……」
「……瑠璃、お前まで無理してあの男の指示に従う必要はない。聞けばライトニングは檀正宗と互角に渡り合えたらしい。なら乗ったふりをしてレベル100をもらい、檀正宗とライトニングの生き残った方を倒せばいい」
「……西武将碁達は?」
「あれはまだレベル20止まりだ。西武椎名もまだ本職には復帰できていない。これ以上レベルが上がる事もないだろう。それに、あの二人は完全な敵とは言えない」
「どうして?」
「……瑠璃、今日はとある目的のために動いてもらいたい」
「え?」


Transfer。将碁と武、それから馨が来院する。もちろん要件は父・巌の見舞いだ。しかし、
「今日は帰れ」
巌の病室を訪れるとそこには白衣姿の雷王院がいた。
「…………お前に言われる筋合いがあるのか?」
「担当医だ。今、あの人は面会謝絶だ」
「……面会謝絶?お前が隠してるんじゃないのか?俺と会わせないようにするために」
「誰がそんな心の狭い事をするか。お前じゃあるまい。……担当医として言うがお前の父さんはもうそろそろ限界を迎えようとしている。一日に起きていられる時間がほとんどなくなってきている。昨日も丸一日眠っていた。危篤になったら病院から連絡が行くからそれまで雑魚バグスター相手に仮面ライダーごっこでもしてろ」
「……仮面ライダーごっこだと?」
明らかに表情を変える将碁。しかしそれを遮って武が前に出た。
「ぶっ飛ばしてやるから表に出ろよ」
「ここは病院だ。それも近いうちに必ず亡くなる人達ばかりのな。それより早く無に帰りたいのか?」
「……」
武は無造作にガシャットを出す。が、
「ちょっと待って!ここ病院!」
馨が二人の間に割って入る。
「あなた達は仲間ではないかもしれないけど、敵同士でもないじゃない!仮面ライダー同士で戦うなんてやめなさいよ!」
「敵同士じゃない?俺達にとってはこいつは檀黎斗や檀正宗、バグスターよりかも絶対に許せない敵だ!」
「そんな、なに言ってるのよ……!」
「……どうした?何ぶつぶつ言ってる?」
馨が見えない聞こえない雷王院は白衣の懐に手を伸ばしていた。戦意はないようだがいつでも迎撃できるように構えている。見えない馨越しに武を睨みつけているが、その武の目に自分の姿が映っていない事に怪訝に気付く。
「……お前、何を……」
何か言いかけた時だ。
「……雷王院先生……」
後ろから声が聞こえた。巌だった。
「……西武さん……」
「……息子達が来たのだろう……?……通してやってくれないか……」
「……」
雷王院は数秒病室の中を眺めてからわずかに俯き、静かにドアを大きく開けた。それによって将碁と武、馨が病室の中を見る。
「……父さん……」
今までと違う父の姿。1週間程度しか離れていなかったがしかし以前見た時とは様子が違った。心音や呼吸などを測る装置がベッドの傍に設置され、人工呼吸器越しに弱々しい声がわずかに漏れる。近づいて詳しく様子を窺えば以前見た時よりかもさらに痩せているように見えた。
「……将碁……」
「……父さん、また痩せて……」
「……先生……」
「……西武巌さんは4日前から何も食べていない。ずっと点滴だけの状態だ」
ドアを閉めた雷王院。発言を受けた将碁と武が雷王院を強く睨む。
「……落ち着いてよふたりとも。まさかこの人が敢えて食べさせなかったとでも思ってるの?」
馨が嘆息交じりに。実際そんなことはないと二人とも分かってはいるが怒りが消えないことは確かだ。
「……先生、私はあとどれくらいかな……?」
「……」
雷王院は一瞬だけ将碁を見ようとしたがしかし代わりに俯く。
「……恐らく2週間は持たないかと……」
「……そうか……」
「何だって……!?ま、まだ5か月目だろ!?あと一か月持つんじゃなかったのか!?」
「……6か月が上限だと鏡先生から聞かなかったのか?」
雷王院の肩を掴む将碁。雷王院はそれを手で払う。
「……ガシャットを捨てろ」
「……何だと?」
「あと2週間、平和に過ごせと言ってる。ガシャットがある限り奴らはお前達を見逃さない。雑魚バグスター相手ならどうかは分からないが、奴らに狙われてその2週間をお前達が別の病院で過ごす可能性は低くなるだろう」
「……それならお前はどうなんだ」
武が一歩前に進む。
「バグスターからも嵐山さんからも檀正宗からもお前は狙われている。そのお前がここにいたらおじさんは危険なんじゃないのか?」
「……何が言いたい?」
「離職しろよ。ここはおじさん達が最期の時を平和に過ごす場所だ。それなのにどいつもこいつからも狙われてるお前なんかが白衣着込んで立っていい場所じゃないだろ?今までならともかくお前、この前こいつの家での戦いで変身前見られてるんだぞ?椎名からおじさんの主治医だって事もばらされてるし。それなのにまだここにいるなんてどうかしてるんじゃないの?」
「ちょっと、喜屋くん!?」
馨を無視して武は続ける。
「将碁、ガシャットを貸してくれ。レベル20でこいつをぶっ飛ばす」
「……」
将碁は黙ってスターライトドラグーンのガシャットを渡す。
「……お前達、ここまで馬鹿だったのか……!?」
「馬鹿はお前だよ、人の心も知らないくせに。そんな奴が白衣着てんじゃねえよ。ほら、表出ろよ」
武がガシャットのスイッチを押す。
「喜屋くん!!」
「変身」
馨の制止を無視して武はレベル20のリボルバーに変身する。
「おらぁ!!」
「くっ!!」
リボルバーが雷王院の肩を掴んで開いた窓の外まで投げ飛ばす。
3階の高さから雷王院が投げ落とされ、地面に落下する寸前。
「スクラァッシュドラァイバァァァ!!」
スクラッシュドライバーが電子音を叫ぶ。
「ライトニングゼリー!殴ぅる痺れぇるぶっちぎるぅ!!ライトニングインチャージ!!」
「変身」
「ブルァァァァァァァァァァアッッッ!!!」
0,1秒での変身を終えてライトニングチャージが着地する。
「雷王院!!」
直後、空からリボルバーが降ってくる。
「……砕く!」
リボルバーの射撃をものともせずにその胸に拳を叩き込む。
「ぐっ!!」
一発でレベル20の装甲に亀裂が走り、降ってきたばかりなのに一気に屋上よりも高くまで吹き飛ばされる。さらにライトニングは跳躍し、一瞬で上空を舞うリボルバーに接近。
「ちょうどよく砕く!!」
そして廻し蹴りの一撃をリボルバーのベルトに刺さった2つのガシャットに叩き込む。
「!?」
スターライトドライバーとスターライトドラグーンのガシャットに不和が生じ、武は空中で変身前後の姿を交互に繰り返す。
「戦う意思も覚悟も度胸も価値もないだけの甘ったれ小僧が仮面ライダーを名乗るなぁぁぁぁっ!!!」
「ライトニングディスチャージ!!」
ドライバーが電子音を奏でるとライトニングの両眼が光る。
「ネオ超電導光線キャノン!!!」
「このクソガキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ライトニングの両眼から放たれた光線がリボルバーに命中し、亜音速で一気に地面にまで突き刺さる。
「がぁぁっ!!!」
光線が2つのガシャットをリボルバーの下腹部ごと貫通し、地面に深さ70メートル以上の穴をあける。その穴の近くに
「……ぐっ、」
変身を解除された武が落下し、ドライバーから壊れたガシャットが零れ落ちてはそのまま穴の中に落ちていった。
「……ふん、」
その武の傍に着地したライトニング。激痛故苦しんでいる武のドライバーを無理矢理腰から引きちぎって穴の中に投げ落としてから巌の病室まで跳躍。窓から中に入ると変身を解除した。
「……お前、」
将碁が身構える。
「お前はいつまで父親から逃げるつもりだ?いつまで親のペットに成り下がっていれば気が済むんだ?」
「……だ、誰が……!」
「残ったガシャットを渡せ。今ここで破壊する。もうお前に仮面ライダーなど名乗る資格もありはしない」
雷王院が怒りの形相のままに将碁に詰め寄る。その時だ。
「そこまでだよ」
ノックもなしに開かれたドアから椎名と何故か瑠璃が入ってきた。
「……西武椎名……」
「雷王院君、君の言うことはごもっともだけどね。流石に病院が騒ぎになってる。落ち着いてくれよ」
「……」
雷王院は伸ばした手を下ろし、巌の方を振り向く。呼吸器越しで表情は見えない。しかし、バイタルマシンはやや異常な数値を示していた。
「……出ていってくれ。元々面会謝絶なんだ」
「……分かったよ。行こう、将碁」
「……けど、」
「これ以上はおじさんの体に障ってしまう。それに、話したいこともあるしね」
椎名が背後の瑠璃を見る。と、その瑠璃はなぜか表情を青くしていて、
「ゆ、」
「ゆ?」
「幽霊!?」
馨を見ては声にならない悲鳴を上げて倒れてしまった。見れば馨は半透明の姿でぷかぷかと浮いていた。雷王院が疑問の表情をしている中、将碁と椎名は顔を見合わせて嘆息した。


中庭。先程の戦いで出来た大穴を中心に警察が立ち入り検査を行なっているためそこよりは離れた場所。ベンチに将碁、椎名、瑠璃が座り、正面で馨が浮かび瑠璃と自己紹介をし合う。
「……で、どうして瑠璃さんが?あんた敵じゃなかったっけ?」
「……えっと、味方ではないかもですけども……」
瑠璃は俯く。と、椎名が答えた。
「実は、嵐山親子の指名手配が解除されててね。それでいてここに見舞いに来る途中だったこの子を捕まえて色々聞こうと思ってたんだ」
「……それを本人の前で言うお前相変わらずすごいよ」
「……お父さんは警察に仮面ライダークロニクルの強化型ユニット……この前将碁さんが戦ったレベル50のガシャットを渡してその代わりに私達の指名手配を解除したんです」
「……中々いきなりぶっ飛んでるね。まあ、賄賂なのか示談なのかは分からないけども警察が君達親子を逮捕も捜索もしないとなった以上、警察に通報しようとしてもまあ無駄な話だね」
「……瑠璃さんはどうしてここに?」
「……一応お見舞いって形なんですけど……」
「それだけじゃないよね?指名手配が解除されたとは言え僕達がいる可能性の高いここに君が来るなんて普通の行動じゃない。さては父親に何か言われてここに来たんじゃないのかな?」
「……そ、そんなことは……」
瑠璃はそっぽを向いて口笛を吹く。
「「……昭和かよ」」
将碁と椎名は同時に突っ込む。
「と、言いますかですけども。前にも言ったと思いますけどこの人……馨さんは未知のバグスターウィルスが認められているので本当にあまり接しない方がいいと思うんですけど」
「それだけどこの前上級バグスターのパペットって奴が言ってたけど、郡山さんが感染してるバグスターはやがて上級バグスターを生む特別なウィルスらしいよ?だから逆にストレス掛けないようにこうして連日接していたら大丈夫みたいだし」
「……上級バグスター?」
「知らないのか?仮面ライダークロニクル配った時に何か変なのいなかったか?あれとかグラファイトとかがそうだよ。檀正宗とかあんた達が協力してるんじゃないのか?」
「わ、私は聞かされてない……!仮面ライダークロニクルだって檀正宗が完成させたとしか……」
「……なるほどね」
椎名がスマホにメモしていく。ついでに録音も既に開始しているし、会長室にあるパソコンにもリアルタイムで情報が送られている。
「檀正宗は明らかに上級バグスターと連携してる。将碁達を勧誘するためにレベル100のガシャットを用意するくらいの設備もある」
「れ、レベル100の話なら私に所にも来ました……」
「……」
瑠璃の発言に一同は表情を固めた。やがて馨が口を開く。
「えっと、瑠璃ちゃん?さっきから君そこそこ口軽いけど大丈夫なの?どちらかと言うと君の敵側の私が言うのもなんだけど……」
「え?……今のってNGな話なんですか?」
「……将碁。今更だけど君達がかつて檀黎斗と手を組んでた時でもそこそこ質問攻めにすれば結構情報引き出せたんじゃなかったのかな?」
「と言うかぶっちゃけあの頃でも必要以上と言うか結構中々喋ってくれてたよな。正直罠か何かだと思ってたけど、素だったのか」
「……え、え?」
混乱する瑠璃。他3人は何だかいたたまれなくなってそれ以上は何も言わないことにした。
「じゃあ真面目な話だ。君達は今どこで生活している?」
「それは、父から言わないように言われてます」
「その父親はどうしてる?」
「今日は出社するらしいです。本部長の座もそのままみたいですし」
「……かと言ってそのまま再就任できるようにはしていないはずだがね。もしかしたらまた会長の捺印を利用されたか」
「……瑠璃さんは、どうするつもりなんだ?本部長はともかくかなりの確率であんたは利用されているだけだぞ?そのままバグスターや檀正宗と手を組んだ状態のままでいるか?それとも、俺達の味方になるか?」
「いえ、多分それはあり得ません。私の目的は飽くまでも亡くなったお母さんを仮面ライダークロニクルの特典で生き返らせることですから」
「……それだよ。仮面ライダークロニクルはレベル10ごとに願いを1つ叶えられるって聞いたけどどうやって願いをかなえてるんだ?」
「……それは……」
「あ、分からないって顔してる」
「あううう……」
「もう西武君……ってふたりとも西武君か。とにかくあまり女の子を虐めない方がいいわよ。と言うか今この場で一番強いのその子だって忘れてない?」
馨の発言で将碁が表情を固める。実際自分はスターライトドラグーンのガシャットを破壊されてしまったため最高レベルは3止まり。椎名は10だがまだ瑠璃から受けた傷が治りきっていないから戦えないだろう。そして瑠璃はレベル20まで変身できる。もしこの場で戦闘になったら勝ち目はない。つまり、この場は何とかして戦闘を起こさないようにする必要がある。それこそ場合によっては瑠璃が父親から何かしら命令されている任務を果たさせる必要があるかもしれない。とは言え、本人に戦う気はなさそうなのが気になる。つまり、檀正宗はともかく嵐山は自分達を今ここで消すつもりはないという事だ。なら一体何が目的で瑠璃をここに来させたのか。
将碁の思考がひと段落した時だ。椎名の社用携帯からスパイシーホットケーキの着メロが流れてくる。
「失礼。会社からだ。……もしもし。僕だ。…………何だって!?」
椎名の表情が変わる。
「……分かった。すぐに向かう」
「どうした?」
電話を切った椎名が松葉づえをついて立ち上がる。
「嵐山本部長が動き出した。君達にも来てほしい」

・千葉県浦安市。世界で1番目に有名なネズミがいるテーマパーク。その地下施設。そこに嵐山はいた。
「……レベル100程度では上に立てない。ならば」
嵐山が進出した。それはスペースシャトルだった。
「は!?嵐山本部長がディズニーランド地下に秘密建築されたスペースシャトルに乗って宇宙に向かう!?」
道中のタクシー。将碁が素っ頓狂な声を上げる。ちなみに隣には椎名と瑠璃、さらには浮いているが馨もいる。中々きつい。
「そうだ。どういう訳か分からないが僕の会長権限をフルに活用しているらしい。何が目的は全く分からないがあの嵐山がここまで権力をフル活用して好き放題に行動を起こしているんだ。絶対に何か目的がある」
「瑠璃さん、何か聞いてないのか?」
「わ、分かりません……!お父さんからはあなた達に接触しろ、戦うなとしか言われてなくて……」
「くっ!瑠璃ちゃんは時間稼ぎの囮だったのか!」
急行するタクシー。やがてディズニーランドの駐車場に到着した瞬間。大きな音が響いた。見ればやがてスペースシャトルが姿を見せ、轟音と業火を巻き上げて空へと飛んでいく。
「あの中にお父さんが!?」
「馨さん!この前のポルターガイスト!」
「無理に決まってるでしょ!?」
「待て!何か来るぞ!!」
煙を吐いて大空へと消えていくシャトル。その煙を割いて何かが近くに飛来してきた。それはバグスターでもエグゼスターでもない灰色の人型モンスターだった。
「何だこいつ……バグスターか!?」
「こんなの……見たことない……!」
身構える将碁、椎名、瑠璃。
「椎名はまだ無理だろ? 瑠璃さん、手伝ってくれるのか?」
「お父さんが何をするのか分からない。だからそれを確かめるまでは……!」
将碁と瑠璃が同時にガシャットを押してその腰にベルトが出現する。
「ジャンクセーバー!!」
「スカイフォールイカロス!!」
「「変身!!」」
「レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ホワッチャネーム!!アイムア仮面ライダー!!!」
「最初で最後の空からクイーンオブザスカイ!アイムアレベル20イカロスゲーマー!!」
モンスターを前に立つセーブレベル1とアイジスレベル20。
「……どうしてレベル1に?」
「今の俺の手持ちで一番防御力がある。俺は何とか気を引き付けるから瑠璃さんがアタッカーを頼む」
「……分かりました」
言ってセーブが走り出す。久しぶりのずんぐりむっくり&タブレットだが問題はない。
「スライドフォーミング・ゼブラ!!」
仮面ライダーシマウマに変身して四足歩行でモンスターへと接近する。その間にアイジスが飛翔する。モンスターは正面からセーブを受け止め、たやすく投げ飛ばす。しかしセーブは空中で器用に身をうねらせて着地。ぱっかぱっか言いながらモンスターを中心に円運動。モンスターが顔を回していると、
「そこ!」
アイジスが急降下して後頭部に飛び蹴り。前のめりに倒れるモンスターにセーブがのしかかり何度も踏みつける。が、あまりダメージはなくモンスターに弾き飛ばされてしまう。
「やりづらい!」
セーブは空中で元の姿に戻り、着地。
「ウェポンスライド・アックス!」
タブレットから斧を取り出し、
「トマホゥゥゥゥクブゥゥゥゥメラン!!!」
叫びながら投げつける。しかしモンスターに片手で弾き飛ばされてしまう。
「あ、やっぱ駄目だったか」
「何してるんですか!?」
突っ込みを入れるアイジス。その時。
「それはこっちのセリフだよ」
声。直後モンスターが弾き飛ばされる。
「……お前……!」
セーブが見ればそこにはパラドがいた。
「直接会うのは初めてかな?俺はパラド。パラドックスバグスター。上級バグスターの一員だよ」
その青年は一瞬で青と赤の竜人のような姿に変身する。
「上級バグスターがどうしてここに……!?」
「んなことはどうでもいいだろ?それよりこいつだよ」
パラドは前方で起き上がるモンスターを見やった。
「ブルホーン・スマッシュ……!どうしてこの世界にスマッシュ怪人がいるんだ?」
パラドが疑問の声を作った。