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仮面ライダーS/L32話

Tale32:悪魔を引き裂くTempest

・2つの廃墟で戦うセーブVSデモンザウラーとビルゴサイトVSエボルト。
「くっ!どんな馬鹿力してるんだよ!!」
ダイナ・ストロングタイプに変身して力比べをするも押し切られかけているセーブ。そのセーブの耳に衛生省からの通信が響く。声の主は嵐山だった。
「将碁君。君達から見て北東2キロの方角で別の戦闘が発生している」
「別の戦闘!?」
「ビルゴサイトの反応も確認できているが、向えるか?」
「む、無理だ!」
なんとかデモンザウラーのホールドを解いてセーブが距離を取る。
「ミラクルタイプのレボリウムウェーブ!!」
ダイナ・ミラクルタイプとなって異次元にさよなら光線を発射する。命中したデモンザウラーの背後に時空の歪みが出現し、ものすごい力と速さでデモンザウラーを吸引し始める。
「ビギャァァァァァァゴッ!!」
デモンザウラーは地面に手を突っ込んで吸引へ抵抗。その状態で目からビームを発射。
「何!?」
光線を発射し続けていたセーブの胸に命中。光線が中断され、セーブが元の姿に戻って転倒する。
「……おいおい、あのチートタブレットでも歯が立たないのかよ」
ヘリの中に椎名を預けながらリボルバーが戦場を見下ろしてドン引きする。
「た、武君」
「喋らない方がいい。また入院レベルだぜ」
「も、もう慣れたさ……それよりも……」
「分かってる。将碁の奴がもし負けそうになった時はお前と同じように回収してトンずらしてやるさ」
言ってリボルバーはヘリから再び飛び降りる。
「……あれが向こうの戦いか」
空中。少しだけだがビルゴサイトとエボルトの戦いが見えた。
「この妙に肌に障る謎の不愉快。あれが多分エボルトだな。新世界に転生しても何となく覚えてるみたいだ」
数秒の観察を終えて着地。正面ではドラム缶……否サンクチュアリゲーマーのセーブが軽く持ち上げられて腰関節を決められて悲鳴を上げていた。
「セーブ!」
「キメワザ・ガンバズクリティカルバースト!!」
「FIRE!」
接近しながら必殺の一撃を発射。150トンの威力がデモンザウラーの顔面に命中し、衝撃でデモンザウラーがセーブを離してしまう。
「今だ!!」
「分かってる!」
「キメワザ・ヴィクテムクリティカルフィニッシュ!!」
着地したセーブが同時にエネルギーの込められた膝蹴りをデモンザウラーの下腹部に叩き込む。
「ギギゲゲゲエゲゲギャァァァァゴッ!!!」
鈍い悲鳴を上げて膝を折るデモンザウラー。セーブとリボルバーが並ぶと同時に幻のようにその場で姿を消した。
「……死んだのか?」
「そこまでダメージは与えられていないはずだ。それよりも……」
「……向こうか。エボルトとビルゴサイトが戦ってるぞ」
「ビルゴサイトがエボルトと?」
「そうだ。どういうわけだかな」
「……ビルゴサイトを操っている奴はエボルトとは敵対関係にあるのか」
「お前たち、聞こえるか?」
そこへ雷王院からの通信が届く。
「いきなりお前の声を聴かせるんじゃない」
「うるさい。それより一度撤退しろ。連戦で相手出来る程エボルトは甘くない。どういう訳か知らないがビルゴサイトがそこにいるならそいつに相手を任せて一度撤退して休むんだ」
「……それは衛生省からの指示か?」
「そうだ。戻れ」
「……了解」
渋々二人は変身を解除。降下してきたヘリに乗り込んでその場を後にした。


「……お、向こうは終わったか」
ビルゴサイトを突き飛ばしたエボルトが様子を見る。
「委縮しているのか慎重なのか。らしくないそぶりだ」
首をポキポキ鳴らすエボルト。するとビルゴサイトが殴りかかってくる。
「こちらもそろそろ終わらせよう。いつまでもお人形さん相手にウォーミングアップしているほど暇でもない」
エボルトはその拳を受け止めるとたやすく肘と肩の関節を決め、ビルゴサイトの右腕を肩口から引きちぎる。
「お人形さんじゃハザードレベルは吸収できない。破壊するだけの無駄足だ」
そして引きちぎった腕をこん棒のように振り回してビルゴサイトを滅多打ちにしてそのまま動かなくなるまで殴り続けた。

・夜。
「衛生省はグルーラーやデモンザウラーのような宇宙怪獣をスマッシュに改造したと思われるあの銀色の怪物をハザードモンスターと言う分類で呼称することにした」
包帯姿の椎名がモニタの前に立つ。
「ハザードモンスターは十中八九エボルトが生み出したものとみていいだろう。しかしその目的は不明。資料からするにエボルトは妙に回りくどいというか本気で何かをしようとする傾向にない。つまりゲームか何かだと思ってその駒としてハザードモンスターを生み出しては僕達と戦わせているものと思われる」
「ならビルゴサイトは?」
「それが問題なんだ。今日エボルトと戦っていたことからエボルトの敵であることは間違いない。しかし僕達特に将碁に対しては執拗なまでに襲い掛かってくる事から僕達にとっても敵であることは間違いないようだ」
「バグスターの脅威が終わったって言うのに今度は二正面対決か」
「正確に言えばバグスターも動きを見せていないと言うだけで実際にはほぼ何も解決していないと言うのが正しいけどね」
「……仮にだ」
「何かな?」
「仮にバグスターと協力できたとしたらどうなる?」
「……実際マグテラーバグスター……いやキングバグスターかな。彼はバグスターは地球の生物だと言っていた。その地球をエボルトが滅ぼそうとしているなら協力できる可能性は無きにしも非ずだよ。そもそも君達が最初にスマッシュと遭遇した時はパラドと協力したわけだしね。けど僕達も彼ら上級バグスターの一人であるアイギスバグスターを撃破している。恨まれていてもおかしくはない。共闘できるかどうかはまだ微妙なラインだと思うけどね」
「そうか……」
「けど実際手は必要だぜ?今のところモンスターにもビルゴサイトにも抵抗できるのは将碁だけ。しかも1分間だけしか変身できない姿でしか倒せないんだ。俺達じゃ時間稼ぎすら怪しい。椎名、無理を言っているのは分かるけどもっと高いレベルのガシャットは用意できないのか?檀親子や嵐山だっているわけだし不可能じゃないんじゃないのか?」
「……実際そこなんだけどね。衛生省はあまりあの3人に戦力を握らせたくないようなんだ。武君。君に全く気付かれないように君を改造しただけの技術があるようにあの3人に下手に僕達の体を触らせると何をされるか分かったものじゃない。況してやあの3人にライダーとして戦わせようとあの檻から出せばそれこそ何が起きるか分かったものじゃない」
「……椎名」
将碁が瑠璃に視線を移す。
「……ああ、ごめんよ瑠璃ちゃん」
「……いいんです。父やあの二人がとんでもないことしてたのは事実ですし。かと言って私もレベル20じゃ何の役に立てるかもわかりませんし……。私なんていないと思ってくれて考えてくれれば……」
「瑠璃ちゃん……」
「……すみません。久々に体動かしたからか気分がすぐれなくて……もう休みますね」
「あ、ああ。一人で帰れるかい?」
「大丈夫です……失礼します」
瑠璃が一礼して退室する。直後に椎名が馨に目配せする。
「……気が利くんだか利かないんだか」
馨は嘆息してからサムズアップして瑠璃の後を追いかけた。

・夜。嵐山家。衛生省が瑠璃のために家賃を払い続けていたためまだこの部屋は無事だった。
「……はぁ」
久々に我が家で眠る。とは言え昨日の記憶と言うものは存在しない。夏休みが明けた後、1学期の頃に何をしていたのかと問われているようなそんな感覚。
「……お腹空いた」
当り前だが家賃は平気だが冷蔵庫の中身は全滅していた。よく考えれば夕食を食べていない。それどころじゃなかった。コンビニかどこかに買いに行こうとしてももう夜も遅い。若い女性一人で出歩くには少し心もとない。
「え。私いるよ?」
「でも馨さん他の人に見えないじゃないですか」
「う~ん。けどポルターガイストで普通の人相手だったらどうにでもなると思うんだけどなぁ」
「……それもそうですね。じゃあちょっと行きますか」
「早いね判断!」
瑠璃はすぐに着替えて家を出る。そう言えば車がない。最後どこに乗り捨てたのかいまいち覚えていない。だから仕方がない、歩いていく。近くのコンビニまで15分の道のりを歩く。
「馨さんは何も食べられないんですよね?」
「そうなんだよね、残念ながら。最後にまともに食べたのはもう1年くらい前かも」
「お腹が空かないのはそれでいいのかもしれませんけど、食べられないのはちょっと困ります」
会話しているうちにコンビニが見えてくる。と、そこでは
「ウガァァァァァッ!!」
「ビビジョオオオオオ!!!」
ドッグバグスターとキャットバグスターが戦っていた。あまり強そうには見えない事から仮面ライダークロニクルの犠牲者同士が何らかのはずみで変身して戦っているのだろう。当たり前だが法律違反であり、場合によっては処罰されてしまいかねない。
「何より邪魔!」
「スカイフォールイカロス!!」
「変身!!」
「最初で最後の空からクイーンオブザスカイ!アイムアレベル20イカロスゲーマー!!」
速攻で変身して2体のバグスターに迫ると、頭部への素早い廻し蹴りで2体まとめて昏倒させる。
「お、おおお。容赦ない。これが女の子の腹ペコパワー」
「この感じだとレベルは10に至らない感じですね。可愛そうですけど人間としても満足な質ではないでしょう。このままCRに引き渡しますか」
アイジスが2体の頭を掴んで飛び立とうとした時だ。
「え」
気配を感じ、バックステップ。直後鋭い何かが迫り、2体のバグスターが斬首されて消滅した。代わりにそこに姿を見せたのはガルーダバグスターだった。
「!?お、お母さん……!?」
「って事はあれは上級バグスターのアイギス!?」
馨が身構え、しかしガルーダは何もしようとしない。代わりにアイジスに歩み寄るとその頭の上に手を置き、数秒後には消滅した。
「……えっと、馨さん幽霊って信じます?」
「……何より否定したいのが多分私だと思うんだけどね」
それから程なくして衛生省の職員がやってきて、コンビニ弁当を食べながら瑠璃が状況を説明する。緊急性がないこともあって他のメンバーへの報告は夜が明けてからすることとなった。
そして夜が明けてCR。瑠璃から報告を受けた将碁達が頭を悩ませる。
「アイギスは瑠璃さんの母親で、けど確か母親としての記憶は情報でしか知らずに興味を持っていない。だから母親として死霊の姿で最後に会いに来たって線はそうそうないだろうな」
「そもそもファンタジーすぎるだろ」
「……今のこの状況で何がリアルでスーパーでファンタジーかなんて考えるだけ無駄だろ」
「瑠璃ちゃんに身体検査を受けてもらったけど特に異常は見当たらなかった。本当にただあいさつに来てそのまま消滅した可能性がある。或いは上級バグスター達の間で何かが起きているかだね」
「……それを機にうまく上級バグスター達と連携が組めればいいんだけどな」
将碁が小さく呟く。すると、アラートが発報された。
「今度は何だ?」
「……デモンザウラーが現れたらしい。場所は昨日と同じ。現状ビルゴサイトやエボルトの反応はないから単品。だけどどっちが現れてもおかしくない」
「……様子見と言いたいところだがそうもいかないんだろうな。よし、出撃しよう」
将碁、武、椎名がヘリに乗り込む。
「お前はまたお留守番だ。ゆっくり休んでろ」
「お前達こそちゃんと俺を休ませるよう働くんだな。何かあったら俺が出撃しないといけなくなる」
「……元気そうで何よりだよ」
将碁は勢いよくドアを閉めてヘリが離陸した。


昨日と同じ廃墟。そこで暴れて瓦礫などを破壊してまわるデモンザウラー。既にエグゼスターの攻撃部隊が出撃しているが1分と持たずに全滅した。そこへヘリが到着する。
「衛生省はビルゴサイトへの対処優先度を下げた」
「どういうことだ?」
「エボルトやモンスターを優先して攻撃していいって言うことだ。つまり、」
「……アクセラレーターを使っていいって事だな」
「ああ。けどむやみやたらと使わないでくれよ」
「分かってる」
セーブとリボルバーがヘリから飛び降りる。
「キスショットアセロラオリオンハートアンダーブレードの力!!エナジードレイン!!」
着地と同時にセーブの姿が変わり、デモンザウラーを遠隔でドレインし始める。肉体の異変に気付いたデモンザウラーが振り向き、転がっていたエグゼスターの残骸を掴み上げてセーブに向かって投げ飛ばす。
「迎撃は!!」
リボルバーが銃撃して投げられてきた残骸を破壊。すると、
「ビギャァァァァァァゴッ!!」
「!?」
自分で投げた残骸に乗ってきたのか、眼前にデモンザウラーが着地してリボルバーの頭を鷲掴みにする。
「ぐああああああああああああああ!!!」
1秒で仮面に亀裂が走りリボルバーが絶叫。
「武!!!……くっ!!」
セーブは元の姿に戻り、
「Acceleration!」
腕時計のスイッチを押した。
「Believe in Nexus!!」
サブリメノンアクセラレーターへと変身し、0.0001秒で接近。リボルバーの頭部を鷲掴みにするデモンザウラーの腕を払いのけ、超高速でその腹にパンチの連打を叩き込んでいく。目には見えない謎の力に押されて後ずさるデモンザウラー。辛うじてセーブの姿を確認できた時には既にその拳が腹をぶち抜いていた。が、デモンザウラーはその腕を掴んで一気に圧力を加えていく。
「……くっ、」
圧力に腕が軋む。しかしセーブは無理やりデモンザウラーを振り払い、真上に投げ飛ばす。
「てやーりゃああああああああああああああああああ!!!!」
そして真っ逆さまに落下してきたデモンザウラーの頭にサマーソルトキックを打ち込み、セーブの足は脳天から股間に至るまでデモンザウラーの体を真っ二つにした。
「……こいつらにも生殖能力あるのか?」
小さく呟くと同時、デモンザウラーは地面に落ちることなく大爆発して消滅した。それを確認してからセーブはサブリメノンゲーマーの姿に戻る。
「お、終わったのか?」
「ああ」
リボルバーに手を貸し、起き上がらせる。と、上から椎名の声が響く。
「将碁!武君!!大変だ!!CRにエボルトが現れた!!」


CR。突然出入口のドアをぶち破って中年姿のエボルトが入ってきた。
「エボルト……!!!」
「久しぶりだな、ライトニング。新世界でもお前は退屈しないで全く面白いものを俺に見せてくれる。あまりに面白そうだったから混ぜてもらいに来たんだ」
「……誰が貴様のためになど!」
雷王院がV3ドライバーを腰に巻き、フルボトルをセットする。
「ライトニング・バージョンティガ!!Are you Ready!?」
「変身!!」
「不死身のサンダーボルト!ライトニングスリィィィィィイイイイェェェェェェイ!!!」
「へえ、それが新しいライトニングの姿か」
「エボルトォォォッ!!!」
地を蹴ってミサイルのように突進するライトニング。しかし、放たれた拳はエボルトの生身の手によって受け止められる。
「!?」
「蒸血」
そしてエボルトの姿がブラッドスタークのものへと変身される。
「お前にはこの姿を見せるのは初めてだったかな?」
「氷室親子を惑わした姿か……!!」
「氷室ぉ?ああ。そう言えばそんな奴もいたかな?」
「貴様!!!」
エボルトの手を払い、ライトニングはベルトから出した槍でエボルトを突き飛ばす。
「飛び道具か。剣よりかも槍の方が向いてるんじゃないのか?」
「うるさい!」
接近。槍がギリギリ届く射程にとどまって連続で攻撃を放つ。しかしエボルトはいずれもたやすく受け流していく。
「……ふん、やはりな。この前のあいつと同じ。ラーニングしようとも所詮お人形遊びをしていてこの俺に届くわけがないだろ?」
「!?」
エボルトは槍を掴んで吹き飛ばし、ライトニングの胸に掌底を叩き込む。
「ぐっ!」
「きゃ!」
ライトニングが吹っ飛び、テーブルが砕け散り、瑠璃と馨が後ずさる。
「ほう、嵐山の娘か。どうだ?父親に代わって俺のおもちゃになると誓えば少しは力を貸してやるぞ?ん?」
「だ、誰があなたなんか……」
「そうかい。じゃあ死ね」
「させない!」
直後、隣の部屋から壁をすり抜けて嵐山がやってくる。
「お父さん!?」
「エボルト!!貴様はこの俺が倒す!!」
そう言って嵐山が取り出したのはエボルドライバーだった。
「サタン!ライダーシステム!!Are you Ready!?」
「変身!!」
「デーモンデーモンデッドデッドデビィィィィル!!ヌゥハハハハハハハハハ!!!」
「ほう、」
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
デーモンに変身した嵐山がエボルトの襟首をつかんで軽く持ち上げた状態で突進。いくつもの壁をぶち破って一気に外にまで出る。
「どこに行ったかと思えばお前が持っていたままだったのか?」
「うるさい!!せめてこの力でお前を刺し違えねば我が罪が微かでも晴れる兆しなし!!」
「ならお前は永遠の罪人だ」
「!」
エボルトはデーモンの手を払いのけて腹に膝蹴り。それだけでデーモンの巨体を宙に舞わせ、かぎ爪でデーモンの上半身を大きく切り裂く。
「がああああああああああああああああ!!!」
「くっ!!」
そこへライトニングが走ってきて、電光迸るパンチをエボルトの顔面に叩き込み、100メートル以上ぶっ飛ばす。
「くっ、」
「月に帰れ!!」
デーモンが急接近。エボルトの腕を掴んでジャイアントスウィングでエボルトを空の彼方へと投げ飛ばす。大気圏を突破し、しかしエボルトは月に降りなかった。
「!」
最初に気付いたのはライトニングだ。デーモンの背後に突然時空の歪みが出現し、
「嵐山!!」
「!」
叫んだ時にはすでにそこから伸びたエボルトの手がデーモンの背中を貫いていた。
「ぐふっ!!」
「俺の力のわずかしか使ってないくせに俺をそこそこ楽しませてくれるじゃないか、嵐山」
エボルトが腕を抜くと、デーモンはその場で膝から崩れ落ちる。
「その力返してもらうぞ」
「くっ!」
ライトニングが走り、エボルトに手を伸ばすが
「遅い!!」
エボルトのかぎ爪は振るわれてライトニングとデーモンをまとめて切り裂いた。
「くっ!!」
「ぐふっ!!」
両者は変身が解除されて生身のまま地面に倒れ伏す。
「待って瑠璃ちゃん!!
声。瑠璃が走ってくるのが見える。嵐山は吐血しながらなんとか起き上がる。
「お父さん!!」
「来るな!瑠璃!!」
「父は強しってか?まあ俺も強いし一理あるのかもしれないなぁ」
「貴様!!」
雷王院が立ち上がりエボルトの首を絞める。
「ん~?何か気に触れたかなぁ?」
「この悪魔め……!!」
「生身のお前など遊び相手にもならないわ!」
エボルトが軽く手を振るうとそれだけで雷王院は嵐山もろとも吹き飛ばされて馨と瑠璃の足元に転がる。
「お父さん!雷王院さん!!」
「親子もろともに消し飛ばしてやる」
エボルトがゆっくりと歩み寄る。その歩みが近まるにつれて瑠璃は違和感を感じた。
「……これは……」
嵐山のベルトからエボルボトルが抜け出ると漆黒だったその色が純白に変わり、瑠璃の胸の中に吸い込まれて溶け込んでいく。
「何が起きている……?」
エボルトと雷王院が表情を変える。そして瑠璃の腰にベルトが巻かれた。本来ならガシャットが差し込まれるそこには先程の純白のフルボトルが既に内蔵されていた。さらに、
「これは……」
瑠璃が懐からガシャットを出す。スカイフォールイカロスのガシャットだがしかしガシャット名がテンペストフォールイージスへと変わっていた。
「……」
スイッチを押す。
「テンペストフォールイージス!!」
「……変身!!」
ガシャットをベルトに近付けるとガシャットがバックル部分と一体化して電子音を奏でる。
「聖なる守護の翼、降臨せよ!アイジス・テンペスト!!!」
そして、瑠璃は新たなる姿・仮面ライダーアイジス・テンペストへと変身を遂げた。
「……馬鹿な、ガシャットとフルボトルが完全に融合して新しい仮面ライダーを生み出したというのか!?」
「エボルト、私はあなたを許せない!!」
アイジスが超低空超音速飛行で一気にエボルトへと接近し、1秒間に200回以上のキックを繰り出す。
「くっ!この俺でもキックが見えない……!?」
「たぁっ!!」
やがてアイジスのキックがエボルトの腕の装甲を粉砕し、本体を遠く吹っ飛ばす。
そしてアイジスが着地すると同時、エボルトの足元から竜巻が発生し、エボルトの全身を切り刻んでいく。
「この力、いったい何がどうなっている……!?」
「テンペストフィニッシュ!!」
4枚の純白の翼を広げ、マッハ20の速度でアイジスが飛翔。空を貫くほどにその翼に風が纏わりついていき、その翼がエボルトに命中した時竜巻ごとエボルトの体がまっぷたつになる。
「ば、馬鹿な……!?」
ブラッドスタークとしての下半身が爆発し、竜巻もまた大爆発して上半身だけとなったエボルトは傷だらけになって頭から地面に叩きつけられる。
「……な、何が起きたんだ?」
そこへ将碁、武、椎名がやってきた。
「……まさかあれは瑠璃さんなのか……!?」
3人が驚く中、アイジスは一瞬でエボルトの傍まで接近する。
「……逃がしはしない、地球の敵……」
エボルトの首を掴んで持ち上げる。
「くっ……こ、ここは俺の完全な負けのようだな……」
血を吐くエボルト。やがてその血が時空の歪みとなってエボルトの姿だけを完全に消した。
「……逃がしたか」
呟くアイジス。やがてその姿が一瞬ノイズに歪むと次の瞬間には瑠璃の姿に戻っていた。
「……私、今何を……」
「……今の瑠璃さん、バグスターみたいに電子変換しなかったか……?」
「……これはもう一回丁寧に瑠璃ちゃんを調べる必要がありそうだ」
「……もしかして上級バグスター達が本当に動き出したのか……?」

電子空間。ゲームセンターをモデルにしたような世界。
「……アイギスはうまくやったようだな」
「全く回りくどいやり方だ。俺は好まん」
「俺も正直言って反対だね」
「私はまあ、別にいいかな。最高の一人さえ見つければ」
「今は好き嫌いをしている場合じゃないぜ、みんな」
音ゲー、格ゲー、パズルゲーム、UFOキャッチャー、インベーダーゲームの席からぞれぞれ立ちあがる5人。
「そろそろ俺達バグスターがもう一度遊ぶ時間が始まるんだから」
マグテラーがにやりと笑い、カイト、グラファイト。パラド、パペットが後に続いた。